風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第372回  三江線・なごり桜

『日本百景』 春  第372回  三江線・なごり桜  〔広島県・島根県〕

  『三江線 最後の一年』より
2018年の3月末で路線廃止となった三江線。 若き日は廃止されていくローカル路線を追っかけるのに夢中になっていたが、その趨勢が予定通りに『廃止淘汰』となってからは、鉄道より心が離れていった。
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       《尾関山公園》

最終日の朝

もう明日は見れない情景を
記憶に擦り込むように何度も撮った

3月の”ファイナル”で訪れた時に真っ先に訪れる撮影地をこの《尾関公園》
と決めてその時を待つ。 だが、三江線の路線廃止は3月末日の31日で、この
地域の例年の桜の開花期は4月5~8日位の第一週で、この桜の名所の《尾関
山公園》も例年の開花期通りなら「良くて三分咲き程度、最悪はつぼみのみ」の
残念な状況での撮影となっていたのである。


開花時期より一週間早く
残念な気持ちを抱きながらゆくと
桜の名所は満開の花盛りだった

しかし、季節が三江線の最後を盛大に見送るセレモニーを演出してくれたのか、
桜の開花が1週間早まって三江線のファイナルとなる30~31日に盛大に桜が咲
き誇る満開となったのである。


花に見送られて
最後の一日の就業に入る
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そして山々を目指すようになった。 筆者は思い立つと生活の術をなげうってでもトコトンまで追いかける性質があり、ローカル鉄道の頃は学業をなげうってでも追っかけて、山を放浪していた時は「10ヶ月働いて2ヶ月は山への放浪旅に費やす」といった生活をなげうつような事をしていた。
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          《口羽駅付近》

駅を出て数分歩いた所にある
民家の庭に咲く桜と・・
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でも、歳月が経ち、そういう生活態度は体力的にも気力的にも覚束なくなってきた。 社会的に置かれた立場が、それを許さなくなってきたからである。 そのようになって放浪を諦めてから、また細々と鉄道に戻るようになってきた。
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       《天空の駅・宇都井》

最終日前日のいい天気で撮ったこの写真が
宇都井駅の一番星かな!?

この宇都井は、ワテの『撮り鉄』との相性が悪い撮影地だな・・つくづくと思う。
廃止になってもう撮れなくなった今、この宇都井駅も悔いが残る駅の一つと
なっているのである。
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このように自身のおかれる立場が時と共に変わっていったのと同じように、公共交通における鉄道の地位も変わってきたのである。 いや・・、”変わる”というより”廃れていく”という形容の方が合っているかもしれない。 公共交通における鉄道自体の地位も著しく低下し、若き日に廃止・淘汰を免れた路線も持ちこたえる事ができずに、『路線廃止』が提示されるようになってきたのである。
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          《石見都賀駅の夜桜》

前回の失敗を教訓に
星は諦めて桜の花を取り入れて
見事に(ワテ的)『一番星』に
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そんな状況の中で、過去に災害に見舞われても奇跡的に復旧をした三江線も、災害ではなく人的に「利用客が少なく、経営の改善の見込みのない不要路線」として切られようとしている。 そんな現代の”消えゆくローカル線”の三江線を、ローカル鉄道に夢中となった若き日を思い返して追っかけた最後の春の1日を語ろうと思う。
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       《石見松原駅・桜に見送られて》

地元の人も鉄道追っかけのエトランゼも
万感の思いを込めて
「ありがとう」の言葉で列車を見送った

この石見松原駅は、最終日まで撮った写真が駅だけの”坊主”駅だった。
だが、最終日前日に《三江北線》区間を撮るべく国道375号線を北上して
いると、石見松原駅の対面にある民家横の石垣の上に、大きな桜の樹
一本が満開の花を咲かせていたのである。 これを目にして、急遽変更
してこの駅で「見送りの桜風景」を撮る。
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そういった状況の中で、廃止される路線の駅を上空から撮った俯瞰写真などを目にするといつも思う事が、「こんなに民家があるのに、鉄道は維持できないのだな」という事である。 集落どころか市街地を形成した普通の街の中で、鉄道だけが浮世離れしてるかのように利用者がなく廃止に追い込まれる姿があるのだ。
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       《桜のトンネル回廊の駅・潮》

桜が咲き乱れる潮駅へ


桜満開の駅に到着
特別料金不要の
花見列車も
’18年の春限り


花見列車を俯瞰して
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そう・・、「原野の中で何もない・・、あるいは廃鉱となった旧炭鉱町の廃墟」などという、一つの世代の終わりを示すかのような哀愁を帯びた情景などはなく、廃止される路線の所在する地域でも、極々普通の何不自由のない街風景が”何事もない”かのように存在しているのである。
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       《桜と菜の花のコラボ・沢谷駅》

畑を埋め尽くした菜の花が
眩いばかりの黄金色を輝かせていた


その菜の花の黄金色と
桜のピンク色のコラボで
より春色を演出できた
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その「何事もない」街風景の中では鉄道は埋没してしまうのか、その存在を維持していく事ができないのである。 まぁ、原因を突き止めれば、「道路の整備などで、地域の住民が特段に鉄道を必要としないようになったのだ」という答えで終わってしまうのだが、それでも解せない光景が鉄道の周りにあるのだ。
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       《最終日も『撮り鉄』がいなかった駅・明塚》

駅には行き辛い上に桜も控えめで
最終日だというのに
『撮り鉄』は一人もいなかったよ
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恐らく、三江線も時が経てば、最近の廃止路線と同じように存在した事も忘れられてしまうのだろう。
そして、三江線がかつてあった事を『記憶』として残す者は、訪れて、『撮り鉄』をして、騒いだ『鉄』と呼ばれるワテのような『マニア』だけとなってしまうのだろう。
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          《石見簗瀬駅・郭の中に咲く桜》

堤防に護られた『郭』の中は
人里となっていて
桜の木もあるので春が最も狙い目だった
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ワテが若かりし頃に夢中となった廃止ローカル線が抱いた情景・・、それは前述した如く今の世代とは全く違う「一つの世代」なのだろう。 そして、その「一つの世代」に固執して、その夢を見続ける自分がある事も薄々勘づいている。 また、その自身の抱く「一つの世代」を現在にムリヤリ当てはめようとする自分がいるのも理解しているが、例えそれが「愚かな妄想」だとしても改める事はできないだろうなぁ・・と思うのである。
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       《乙原駅・桜の『一番星』が撮れた駅》

大きく枝を広げる桜の木と


最終日前日は『撮り鉄』が
多く詰めかけていたが


こんな美味しいアングルで
撮る奴は一人もいなかったよ
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ふと思ったのがこの事である。 だが、三江線の最終日を迎えて、地元の人が駅に駆けつけて手を振って見送る姿に、「消えゆくモノを見送る暖かい思いは、世代を越えて人の心に培われているな」と嬉しく思ったのである。
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       《撮り辛い桜回廊の駅・田津》

この一撃にかけた1枚
心に残る撮影行動だったよ

この田津駅周辺は春の桜の季節になると、線路のある土手に沿って『桜並木の
回廊』となるのである。 だが、この『桜並木の回廊』となる駅前をゆく前面道路
が極端に狭く、迂闊に「花見へ」と車も回せないような”厄介”な『桜回廊』なので
ある。

そして、土手をゆく三江線の線路も列車の車窓から桜を愛でる分にはいいが、
桜並木を背景に『撮り鉄』をするとなれば土手上は線路のみで足場が乏しく、
また前面道路も車を駐車するスベースがないなど、かなり撮影の難しい「桜の
名所」なのである。

だが、この田津の『桜回廊』は『撮り鉄』の間では人気のある撮影地のようで、
桜のシーズンになると「桜と三江線」を撮りにくる『撮り鉄』が乗りつける他府
県ナンバー車やレンタカーの駐車で、この細い前面道路の半分が埋まるの
である。 だから、「早いモノ勝ち」の条件の着いた春の撮影名所であった。

なので、この「早いモノ勝ち」の田津で桜を撮るべく一計を案じたのである。
それは、雨が降り出して人があまり寄りつかない状況を狙って訪れたので
ある。 タダでさえ足場のない撮影地であるから、雨など条件が悪くなれば
『撮り鉄』の連中も撮りやすい他の場所へ逃げてしまう・・と考えたのである。

の一計は”ドンピシャ”で、『撮り鉄』と思しき車は4台のみであった・・ってい
うか、雨が降りだす悪条件でも4台もいるのね。
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    《川戸駅・バス転回場の為に桜が撤去されたという》

川戸の桜風景
もはや存在しない桜風景


 なぜならこの桜が切り倒されて
バス転回場となったとの事だから

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そう・・、地元の人とワテを含めた『鉄』と呼ばれる何の関係もない連中が、一緒になって一つのモノの最後を見届ける姿に、廃止のセレモニーは単なるバカ騒ぎではなく人の心の通った行動だと思ったのである。


桜と共に三次発の江津行の
最終列車を見送って

一つのモノの最後を皆で見送った
あの暖かい心を忘れない

そして、毎年の開花状況ならばチラホラがやっとという3月末に、消えゆく三江線に「なごり桜」を満開にして別れを惜しんでくれた空模様にも奇跡が通じたのだな・・と思ったのである。










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No title * by バンポマダム
時代の流れは時として残酷だなぁと思わされました。

涙なしには読めませんでした。。

撮り鉄さん、と言われる方々、これまでさほど関心を持ったことはありませんでしたが
(すみません)
数々のお写真を通じて、とても大切な事を私達に教えてくださっていると思います。

No title * by 風来梨
バンポマダムさん、こんにちは。

地域振興や開拓の担い手として熱い期待の下で建設された路線が、「もう要らない」と捨てられる時が来るのだから、それは『無常』という以外にないですね。

私が若き頃夢中になって追っかけた廃止路線は、恐らく今の世代の子は鉄道路線があった事も知らないと思います。

今の世代が歳を経た時、今当たり前の事が、後の世代には通用しなくなっているかもしれませんね。

でも、ブログやホームページなどの「考えてモノを記述して多くの人に伝える」って事が廃れるなら、後の世代は口だけの荒廃した世の中になってるかも・・と案じる私です。

ツイッターやSNS、電子メールの隆盛で、便りを認める温かさを失いましたから。

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No title

時代の流れは時として残酷だなぁと思わされました。

涙なしには読めませんでした。。

撮り鉄さん、と言われる方々、これまでさほど関心を持ったことはありませんでしたが
(すみません)
数々のお写真を通じて、とても大切な事を私達に教えてくださっていると思います。
2019-03-30 * バンポマダム [ 編集 ]

No title

バンポマダムさん、こんにちは。

地域振興や開拓の担い手として熱い期待の下で建設された路線が、「もう要らない」と捨てられる時が来るのだから、それは『無常』という以外にないですね。

私が若き頃夢中になって追っかけた廃止路線は、恐らく今の世代の子は鉄道路線があった事も知らないと思います。

今の世代が歳を経た時、今当たり前の事が、後の世代には通用しなくなっているかもしれませんね。

でも、ブログやホームページなどの「考えてモノを記述して多くの人に伝える」って事が廃れるなら、後の世代は口だけの荒廃した世の中になってるかも・・と案じる私です。

ツイッターやSNS、電子メールの隆盛で、便りを認める温かさを失いましたから。
2019-03-30 * 風来梨 [ 編集 ]