2019-03-29 (Fri)✎
路線の思い出 第309回 石勝線〔夕張支線〕・夕張駅、鹿ノ谷駅(廃止を控えた夜) 〔北海道〕
雪降る夜の夕張駅で
折り返しの時を待つ最終列車
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’83)
南千歳~新得・新夕張~夕張 148.5km 4413 / 288
〔夕張支線 新夕張~夕張 16.1km〕 〔夕張支線単独の輸送密度は
118人キロ/km(’13)〕
運行本数
夕張支線内は1日5往復
夕張駅(ゆうばりえき)は、北海道夕張市末広2丁目にあるJR北海道・石勝線の駅である。
石勝線夕張支線の終着駅で、単式ホーム1面1線の駅である。 1998年頃に一度無人化された。
2007年より簡易委託による乗車券の販売が再開され、駅構内ではなく駅舎の背後にあるホテルのフロントで取り扱っていたが、現在は取り扱っておらず新夕張駅管理の無人駅となっている。
主要産業の変化に伴い、駅は路線を短縮する形で1985年・1990年と2度移転された。
以前は石炭の運び出しの便を図るため、市の奥地である夕張市福住の現在は石炭の歴史村の来客駐車場敷地となっている所に駅があった。 その当時は駅員が配置され、夜間滞泊も行われていた。
だが、相次ぐ炭鉱閉山の影響により過疎化が急速に進行、夕張市は観光を主要産業に位置付け開発に乗り出し、1985年に市の中心部夕張市本町4丁目の夕張市役所及び夕張市民会館裏の夕張鉄道・旧夕張本町駅構内跡地に移転した。 これが2代目夕張駅である。
駅移転後も《石炭の歴史村》の
管理事務所として使用された初代夕張駅舎
※ グーグル画像より拝借
初代夕張駅の駅舎は、駅移転後は《石炭の歴史村》の管理事務所に転用されていたが、管理事務所が歴史村敷地内部に移転した為、2006年に解体された。
2代目夕張駅の駅舎は3両の貨車を改装し連結したものであった。 貨車はワフ29500形2両ととワム80000形1両の3両連結で、車輪を付けたまま駅舎に改造された珍しい例であった。
この駅舎は、「町の玄関口として貧弱である」という声も強かった。
”二代目”夕張駅
:
貨車を車輪も取らずに
そのまま待合室として使っていた
グーグル画像より拝借
市政方針の転換(石炭産業から観光への返還)によるリゾート開発に伴い、夕張市末広2丁目のホテル前に新駅を設置する構想が浮上した。 しかし、勾配と駅間距離の短さから実現せず、1990年に夕張駅自体が新駅の予定地点へと移転する事となった。 これが現在(3代目)の夕張駅である。
2代目旧駅舎は《石炭の歴史村》のSL館と遊園地「アドベンチャーファミリー」の間に長らく設置されていた。 2度の駅の移転にあたり、「歴史的背景を無視している」、「路線短縮がゆくゆくは路線廃止につながる」という反対意見もあった。
鹿ノ谷駅舎
「鉄道は必要ない」と断を下した町のハズレに
ホツンとあった大きな”廃屋”
鹿ノ谷駅(しかのたにえき)は、北海道夕張市鹿の谷三丁目にあるJR北海道・石勝線(夕張支線)の駅で、単式ホーム1面1線を有する。 無人駅である。
北海道炭礦汽船(通称・北炭=三井財閥系の炭鉱運営会社で現在は所有した炭鉱の全閉山により国内石炭産業から撤退し、石炭輸入販売、ガラス加工業となっている)の全盛期は、駅周辺の鹿の谷地区は幹部用住居が存在する高級住宅地であり、夕張北高等学校・夕張工業高校に通学する学生で賑わった。
かつての夕張鉄道線との接続駅で、広い構内には同鉄道の車両区・保線区などを有し拠点となっていた。 平和炭鉱(夕張炭鉱の1つ)の閉山により夕張鉄道線が廃止となり、構内は大幅に縮小された。
なお、沿線自治体の夕張市が、鉄道施設の無償供与と鉄道廃止に伴うバスターミナルの整備など、バス利便の向上等を条件に夕張支線の廃止に同意した事で、’18年春以降に夕張支線廃止が予定されている。
それに伴い当駅も廃駅となる予定である。
『かつての栄光』から幹線指定されていた
夕張支線も廃止転換対象に
この月の末で、かつては石炭輸送で賑わい旧国鉄でも五指に入る黒字線だった石勝線の夕張支線が路線廃止となる。 この事からも「鉄道が活きる為に必須なのは、旅客輸送より貨物輸送である」という事が明らかになった。
その石炭産業もエネルギー施策の時代の移り変わりと共に寂れて、ほぼ全ての炭鉱が閉山となってしまった。 石炭産業に携わる者は次々と流出し、今まで賑わっていたのが夢幻の如く、夕張の街だけが炭鉱跡を残したまま取り残されたのである。
石炭産業の衰退と共に取り残された夕張の街は、人も金も流失して街が窮乏していったのである。
それを取り繕う為に、融資を受ける金融機関の心証を良くするべくの不正な決算操作、いわゆる『ヤミ起債』問題を引き起こして『財政再建団体』(現在は『財政再生団体』)に指定されてしまったのである。
石炭の歴史村の施設も
NPO法人に下げ渡し
かつてあった遊園地施設は
撤去されるまでの数年間は
風雪に野ざらしだったそうだ
※ 上下ともウィキペディア画像を拝借
その夕張市は、”町おこし”策でも迷走している。 石炭産業の遺構を活用したガラス工芸に失敗し、夕張メロンでも思ったように税収が上がらず、映画祭の開催でも招へいしたメディア側に主催権を奪われて撤退するなど、尽く失敗しているのだ。 こうして窮乏から抜け出せぬまま、今度はリゾート開発に乗り出したのである。
『幸福の黄色いハンカチ』のロケセットを
再現したという『思い出広場』も
雪に埋もれて放置されていた
:
観光客誘致を謳いながら
商売道具を放置する心根が
何をやっても失敗する原因なのだろうね
だが、これも海外資本・・、特に強欲なシナの資本介入を招き、結果は安く買い叩かれて”勝ち組”は《夕張リゾート》を買収して運営するシナ資本のみ・・となっている現状にある。
リゾート産業も外国資本に
安く買い叩かれて失なった
この街の再生はあるのだろうか?
※ ウェブサイト・じゃらんの画像を拝借
その他も町おこし策を『観光客の誘致』としながら、温泉施設はポンプの故障で1年以上放置するわ、『道の駅・ゆうばり』のトイレは豪雨災害で壊れたまま放置で24時間の使用(昼間時は農協スーパーのトイレの間借り)ができないわ、歴史的に貴重な遺構である三弦橋をダム湖に水没させるわ・・と、観光客誘致どころか自爆行為に走っているのである。
1年以上閉鎖が続いている
夕張温泉・ユーパロの湯
:
閉鎖を知らずに訪れた時は
前のアーチ門の大半が雪で埋まっていたよ
※ グーグル画像を拝借
正直言うと、夕張支線の廃止問題がなければ、風呂もなく、『道の駅』も使えず、歴史的景観を水没させるような街を観光で訪れようとは思わないのである。 夕張で唯一訪れる目的となる、花の名峰・夕張岳も既に登頂済だしね・・。
この貴重な文化遺産を
ダム建設の公共事業費
欲しさに水没させるとは
※ ウィキペディア画像を拝借
その『町おこし策』がメチャクチャな夕張の街が、次に支援を受ける為にやった事は石炭輸送を失って赤字となった鉄道の廃止で、夕張支線を廃止にするその思惑は廃止をせがむJR北海道からの無償の用地下げ渡しと、バス転換におけるバスターミナル建設の為の国や道からの資本投入や融資である。
でも、観光でなりわうのなら、”使えない”と断じた鉄道をも活用しての観光客誘致が必要なのである。
鉱山が閉山となった街でも、栃木の足尾銅山は旧足尾線の《わたらせ渓谷鉄道》とタイアップして観光客誘致に成功している。 なぜなら、道の細い山奥に所在する鉱山街ではバスでの観光客輸送は安全面に問題があり(特に冬季)、観光客の心証も「訪れるのが危険な所は避ける」ようになるからだ。
こんな貴重な建築遺産を
水没させるような街
:
道路の安全を問う以前に
観光客の心証は最悪となろう
※ ウィキペディア画像を拝借
それに、マイカーでやってくる観光客の動向ほど当てにならないモノはないのである。
しかも、夕張までの道のアクセスもそれほどに良くなく、しかも風呂も『道の駅』も壊れたままで放置・・とくれば、(マイカーの)観光客に「来てください」という方が無茶なのである。
お定まりの撮影地で
それなりのモノも撮れたし
:
これで夕張支線を終えようと思っていた
そんな夕張の街への疑念もあって、ワテも「夕張支線の『撮り鉄』を終えたら、早々に引き上げよう」と考えていたのである。 そして、お定まりの撮影場所でそれなりに満足できるショットが撮れて、「夕張支線は廃止となるから、これで終わり」とドライな気持ちで引き上げたのである。
撮れた写真とは裏腹に
ドライな気持ちが先行していた
だが、根室の《春国岱》や《温根沼》、層雲峡の氷瀑などをめぐっている内に、「夕張支線はアレで足りたのかな?」と思うようになってきたのである。 「路線廃止となる」・・それは、もう二度と撮れなくなる事なのだと今更に気が着いたのである。
普通なら訪れて撮れただけでも
幸運この上ない事なのだが
:
若き日に追い求めた情熱の熱さが
このような感情を呼び覚ましたのだろうね
それは、かつての廃止ローカル線で何度も味わった「口惜しさ」なのである。
そう・・、いくら撮っても「もっと撮ってればよかった」、「あのアングルを試せていたらなぁ」という、”ないモノねだり”の贅沢な後悔である。 まぁ、他の人から見れば、「訪れる事ができて、写真を残せただけでも幸運」なのだけれど。
それで、宗谷ラッセルを撮る予定を変更して、急遽夕張支線の方へレンタカーを向かわせたのである。
でも、風呂もなく、『道の駅』も使えず・・の悪条件は変わりなく、訪れるにあたって「食事の予定」と「泊る(もちろん車寝)場所」は、夕張に向かう道中で念入りに計画を練ったよ。
撮影地はこの場所と決めたよ
:
向かっている最中は撮影イメージより
今晩の夜食の方が気になって・・(笑)
それで、層雲峡温泉で早めに風呂に入り、今晩の夜食は夕張のセイコーマート(できたてのカツ丼が美味い!)と決めて、高速を飛ばして岩見沢から夕張に入る。 その時ふとイメージで思い浮かんだのが、「消えゆく路線を惜しむ感情の表現方法」だったのである。
撮りながら思った事 それは
:あと何回街に向けて
テール灯をかざすのだろう
あと何回
街から戻ってこれるのだろう
せっかく再度夕張を訪れても、前と同じくお定まりの撮影地で撮るのでは計画変更までして来た意味が無いのであるから。 ・・で、思いついたのが、「去りゆくテールランプ」の情景である。
かつては炭鉱経営者など富裕層が居住する鹿ノ谷から夕張の街へと向かう列車のテール・・、「この情景をもって、夕張支線とお別れする事にしよう」と思いながら、静かにレリーズを落とした。
観光客を呼び込むには
あまりにも雑な夕張という街
:
恐らくこのテール灯が
ワテ最後の『夕張』だろうな・・と
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No title * by 風来梨
バンポマダムさん、こんばんは。
コメント有難うございます。
廃止される路線を惜しみ追いかける側の思いと、路線を切り捨てる事で活路を見いだそうとする側・・。 この相容れない思いは、心の奥では「何とかしたい」という思いで同じなんですよね。
だから、どちらも切ないのだと思いますね。
コメント有難うございます。
廃止される路線を惜しみ追いかける側の思いと、路線を切り捨てる事で活路を見いだそうとする側・・。 この相容れない思いは、心の奥では「何とかしたい」という思いで同じなんですよね。
だから、どちらも切ないのだと思いますね。
No title * by きゃみ
こんばんは。
北海道最後の炭鉱線もとうとう消えてしまいますね。よくここまで生き残ってくれたと言ったほうがいいのかもしれませんが・・・。
80年代の北海道の路線図を穴が開くほど眺めていたものにとってはなおさら寂しいです。
次は札沼線?留萌線?でしょうか・・・
北海道最後の炭鉱線もとうとう消えてしまいますね。よくここまで生き残ってくれたと言ったほうがいいのかもしれませんが・・・。
80年代の北海道の路線図を穴が開くほど眺めていたものにとってはなおさら寂しいです。
次は札沼線?留萌線?でしょうか・・・
No title * by 風来梨
きゃみさん、こんにちは。
夕張支線は、9往復から5往復に減便された時点で廃止の趨勢が決まった気がしますね。
でも、やりようによっては、第2の山口線になれた要素のある路線だったと思います。 まぁ、国鉄の分割民営化でJRとなった訳ですが、そもそもの区分けがまずかったですね。 北海道・四国は単独経営が無理なのは分割以前から指摘されてましたし、その対策が基金の積立で、こんな低金利時代が来るとは、当時は夢にも思わなかった訳ですしね。 分けるのなら、北海道に東海道新幹線を、四国に山陽新幹線を附与すべきだったと思います。
もう、北海道を救う手立ては、再国有化以外にないでしょうね。
それと、札沼線の北海道医療大学~新十津川は、今年の5/6限りでの廃止が確定したようです。 最後に鉄道ファンがお名残り乗車しやすいようにゴールデンウイーク明けを廃止日にしたとの事です。
そして、日高線の日高門別~様似も地元自治体が廃止を容認したとの事です。
夕張支線は、9往復から5往復に減便された時点で廃止の趨勢が決まった気がしますね。
でも、やりようによっては、第2の山口線になれた要素のある路線だったと思います。 まぁ、国鉄の分割民営化でJRとなった訳ですが、そもそもの区分けがまずかったですね。 北海道・四国は単独経営が無理なのは分割以前から指摘されてましたし、その対策が基金の積立で、こんな低金利時代が来るとは、当時は夢にも思わなかった訳ですしね。 分けるのなら、北海道に東海道新幹線を、四国に山陽新幹線を附与すべきだったと思います。
もう、北海道を救う手立ては、再国有化以外にないでしょうね。
それと、札沼線の北海道医療大学~新十津川は、今年の5/6限りでの廃止が確定したようです。 最後に鉄道ファンがお名残り乗車しやすいようにゴールデンウイーク明けを廃止日にしたとの事です。
そして、日高線の日高門別~様似も地元自治体が廃止を容認したとの事です。
画像が美しいのでなおさらです。