2010-12-13 (Mon)✎
名峰百選の山々 第2回 『83 光岳』 静岡県・長野県 赤石山系(南アルプス国立公園) 2591m
コース難度 ★★★ 体力度 ★★★★
名峰百選の山々の第2回目は、南アルプス南端の名峰・光岳(てかりだけ)を御紹介しよう。
この山は南アルプスの一般的な登山ルートの最南端という事で、南ア主稜部の山々ような華やかさはないが、いぶし銀のような味わいのある魅力を魅せてくれる。
だが、静けさが売りの山だけあって、あまり登高者のいない不明瞭なルートが登頂ルートとなり、また登山口に宿泊施設がない事などから、安易な登山は不可能な山でもある。 それを踏まえて、光岳への最短ルートとなるが、道が不明瞭で『秘境ルート』との異名も持つ易老渡から面平を通るコースを取って光岳に登ってみよう。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 飯田市街より車(2:00)→便ヶ島(0:30)→易老渡(5:00)→易老岳分岐
(2:25)→光小屋・光小屋より光岳往復・所要30分
《2日目》 光小屋よりイザルヶ岳往復・所要30分(1:50)→易老岳(3:20)→易老渡
(0:40)→便ヶ島より車(2:00)→飯田市街
《2日目》 光小屋よりイザルヶ岳往復・所要30分(1:50)→易老岳(3:20)→易老渡
(0:40)→便ヶ島より車(2:00)→飯田市街
さて、光岳は前述の通り、南アルプスの一般ルートが敷かれている山の最南部に位置する。
光岳の先にも登山ルートは存在するが、全て踏跡程度が残るのみの難路で、到底普通のハイカーが入り込める領域ではない。 従って、この山が南アルプスの最南端だと捉えても問題はないのである。
そして、その最南端という山のそびえたつ位置は、山の麓の登山口も人里から遠く離れて奥に分け入った秘境という事になる。 街と呼べる飯田市より60km・車で2時間で、内30kmは遠山川林道という冶山林道を延々奥に入り込まねばならない。
また、林道を奥に分け入って登山口に着いたとしても、登山口には山小屋などの宿泊施設はなく、また登りの所要時間がある程度身体が山に慣れていたとしても、片道8時間はかかるハード行程なのである。
従って、車で着いて登山開始などという甘い考えは実行不可で、前日に車で登山口までアプローチして、そこにテントを張って過ごすか、車中泊で乗り切るかの選択をせねばならない。 その事を踏まえて、この山には臨んで頂きたい。
それでは、光岳へ登ってみよう。 車を止めてテント幕営なり車中泊なりができるのは、登山口の易老渡より2km程奥の林道終点となる便ヶ島の土場だ。 この便ヶ島の土場は、以前山荘があったのだが、無許可営業という事で摘発を受けて閉鎖させられた・・というエピソードがあるいわく付きの土場だ。
無許可とは言え山荘の有った所だから、トイレだけは取り壊されずに使用されているようである。
ここから2km・30分程、来た道を戻って最早沢瀬となりつつある遠山川を渡る。
光岳へは遠山川を
簡易橋で渡る所から始まる
この橋を渡ると、登高1400mのバカ登りが始まる。 急な登りと鬱蒼とした眺めのない薄暗い樹林帯、そして時折荒れた作業道が交差する精神的にしんどい道だ。 何か気を引くものでもあれば多少はマシになるものだが、そういうものは皆無なのでのっけから疲れが溜まる。
交差する作業道を過ぎると、アザミやイバラの棘花が密集する中をジグザクに登っていく。
このジグザクの通り抜けでイバラなどに服を引っ掛けないよう注意しよう。 引っ掛かりが激しくなると服が破れる懸念もあるからだ。
このジグザクの登りは急で、かなりキツイ。 標高差にして400m登りつめると、夏でも通路が枯葉で埋まり鬱蒼とした面平に着く。 ここは平坦地で休憩するにはいいかもしれないが、とにかく鬱蒼としたヌタ場で雰囲気はあまり宜しくない。 だが、平坦地はここを逃すと易老岳からの下降開始点までないので、座り良い切り株を見つけて上手く休憩を取ろう。 面平の標識のある地点が整地されていて休憩適地となろう。
面平を出ると、シラビソやコメツガの樹林帯の延々たる急登となる。 最早、登る以外に何もない感じの急登だ。 時折伐採跡の隙間から聖岳や兎岳が望めるものの、足を止めて感嘆する程の眺めではなく、山を眺められるからと荷物の上げ下ろしを繰り返すと余計に疲れるので、自重して黙々と登ろう。
延々と登っていくと、やがて2254mの三角点の岩稜のピークの上に立つ。 ここまで、易老渡より標高差にして1300m登ってきているのだ。 だが、その苦労に対する御褒美は皆無である。
つまり、樹林に囲まれて眺望は全くないのである。
この小ピークと呼ばれる岩稜の上からは、ようやくキツい登りから開放されるが、今度は倒木が進路を塞ぐ痩せた稜線を行くようになる。 岩場のコルを跨いで足場の悪い潅木交じりの岩肌をよじ登ると、これまたB4サイズの板切れ道標が掲げてあるだけで鬱蒼とした樹林に囲まれた易老岳の分岐に着く。
ここも何もなく、面平同様に雰囲気の悪い所だが、とにかく腰を下ろせる所なので目一杯休憩を楽しもう。 なお、この易老岳分岐は《迷い岳分岐》との別名がつけられる程の所で、光岳方面・茶臼岳方面、そして今登って来た易老渡方面と、どれも似たようなシラビソの樹林帯を縫うような感じで道が延びており、道のロストには十分注意したい。
光岳方面へ進むと、やがて三吉ノガレというガレ場を通るので、これを覚えておけば道ロストのリスクは軽減できるだろう。 このガレ場をたわむ様に上下すると三吉平を過ぎ、涸れ沢に沿って登っていくが、ようやくこれより視界が広がってくる。
そして、今までの鬱蒼とした暗い森林地帯を通っていたのが夢幻か・・と思えるような山岳情景がワッと広がってくる。 後は、草原となったセンジヶ原に流れる清らかな水で喉を潤し、山を眺め、花を愛でながら光小屋へと進んでいこう。
光小屋は静岡県営で、畳敷きの素朴な小屋だ。 また、目の前に露営地もあり、テント幕営も楽しめる。
そして、光岳へは小屋から片道15分程だ。 三角点の立つ2591mピークは樹林に囲まれて眺望はないが、頂上より少し先に下って山の名称の由来となった光石(てかりいし)という白く光った岩峰の立つ所に出ると、近くて遠き深南部の道無き山々が望まれる。
今日は、光小屋で泊り、翌朝絶好の眺めを味わって、来た道を下っていこう。 帰りも半端でない程にキツく、身体がデキていないハイカーは、身体がある程度デキるまでこの山は敬遠した方が言いように思われる・・との事を付け加えて筆を置くとしよう。 それでは、センジヶ原とイザルヶ岳の『楽園の朝景』をひとつまみ。
南ア最南部のイサルヶ岳より眺める
荒川・赤石・聖・上河内の名峰
雲海を渡って 光岳より先は
北アの峰々へ行けそうな 玄人好みの山が連なる
ほのかに染まる明け空に
“おぼろ月”ひとつ
- 関連記事
スポンサーサイト
No title * by カムイ
先輩、今よりスゲー太ってたんですね。
No title * by 風来梨
でも、この身体の時が、最もパワーがあったよ。
この時、7時間のコ-スタイムの所を4時間15分で行った事もあったから・・。 でも、10㎏近く痩せたけど(70㎏そこそこ)、馬力もなくなって、本物のメタボになっちまったよ。
悲しいねぇ~。
この時、7時間のコ-スタイムの所を4時間15分で行った事もあったから・・。 でも、10㎏近く痩せたけど(70㎏そこそこ)、馬力もなくなって、本物のメタボになっちまったよ。
悲しいねぇ~。