風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  よも”ヤマ”話 >  ’92・5~’93・5 青年期 >  よも”ヤマ”話  第56話  南八ヶ岳・横岳

よも”ヤマ”話  第56話  南八ヶ岳・横岳

よも”ヤマ”話  第56話  南八ヶ岳・横岳 〔長野県・山梨県〕 ’93・5
八ヶ岳・硫黄岳 2760m、八ヶ岳・横岳 2829m 【名峰百選 21峰目】


迫力ある岩峰姿を魅せる八ヶ岳・横岳

   八ヶ岳 やつがたけ (八ヶ岳中信高原国定公園)
南北に30km・東西に15kmに渡って30座を越える2000m峰を擁する八ヶ岳は、山容が南北で大いに異なり、それぞれに違った魅力を備えている。

南八ヶ岳は主峰・赤岳 2899メートル をはじめ、阿弥陀岳 2806メートル ・横岳 2829メートル ・権現岳 2715メートル などの岩峰を連ねて、稜線は痩せて嶮しくダイナミックな姿を魅せている。 
 
一方、北八ヶ岳は、北横岳 2480メートル を盟主に樹木に覆われたなだらかな山々が続き、山腹には池沼や草原がひっそりと点在し、静かで瞑想的な雰囲気を漂わせている。




南八ヶ岳主稜線縦走 行程図

    行程表            駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 茅野市街よりバス(1:00)→美濃戸口バス停(1:30)→小松山荘
     (2:50)→赤岳鉱泉(2:00)→硫黄岳(1:30)→横岳(1:00)→赤岳石室
《2日目》 赤岳石室(0:50)→赤岳(0:50)→赤岳石室(0:05)→地蔵尾根分岐
     (2:30)→行者小屋(1:45)→小松山荘(1:30)→美濃戸口バス停よりバス
     (1:00)→茅野市街


外は本降りの雨で小屋の中にこんな
「懐かしくて暖かい」ダルマストーブがあれば
沈殿になっちゃうよね

   影の・・《1日目》 前回と同じくまたもや沈殿
この年の正月に中央アルプスの厳冬期を・・、しかも「行ってはいけません!」の宝剣岳にも登って有頂天となっていたこのタワケ・・。 この勢いで、積雪期に大同心岩を抱く八ヶ岳随一の峻峰・横岳を縦走する計画を立てていた。

今回は山を下りてから小海線を伝う『乗り鉄』もするべく、鉄道&バスでのアプローチとなる。
だが、山と『乗り鉄』の”バイリンガル”があっさりとお流れとなる。 それは、小松山荘に入った翌日が本降りに近い雨で、前回の八ヶ岳と同様に小松山荘で連泊・沈殿となってしまったからである。

この沈殿での日程の先送りはバカらしいので行程表には書いていないが、本当は《1日目》とあるのが《2日目》だったりして・・。




前回の八ヶ岳山行で撮った
コレが強烈過ぎて
また登りたくなっちゃいました

   《1日目》・・本当は《2日目》 硫黄岳から横岳の核心部分へ・・
小松山荘の建つ《美濃戸》から少し行くと《行者小屋》への道をすぐに分けて、そのまま林道の砂利道を歩いていく。 約1時間程歩くと、《柳沢》の《北沢》に遮れるように林道が尽きる。
板の桟道で沢を渡って、白樺の樹林に囲まれた沢の右岸の土手の上を歩いていく。
やがて樹林帯が途切れ、河原の方へ降りていく。 ここからは、河原の上を岩にペンキで示された指標通り歩いていくが、雪は沢に流されて氷だけが残ってよく滑る。 

沢をつめていくと、正面に横岳西面の鋭い岩峰群が立ちはばかってくる。 この威圧感ある横岳の偉容を見ながら《ショウゴ沢》を渡ると、辺りが開けて《赤岳鉱泉》に着く。 途中は凍った沢でアイゼンが必要かと思えば、全く雪のない夏道になったり・・と、アイゼン着脱の判断が厄介だ。 


ザクザクと突き出す
大同心岩と小同心岩
 
《赤岳鉱泉》の山荘の背後には《大同心・小同心》など、横岳の岩峰による“オブジェ”が間近に迫って立ち並び壮観だ。 硫黄岳へは、《赤岳鉱泉》の裏手から《ショウゴ沢》の左側に延びる尾根を登っていく。 
 
尾根に取り付くと、先程の偉容から想像するのと違って、樹林帯の中をジグザグに切る“普通”の登山道が続く。 時折、樹木越しに阿弥陀岳が望めるだけの単調な登りが1時間程続き、ひと汗かかされる。 

やがて、森林限界を越えると雪に覆われてこんもりとした急斜面となり、これを直線的に登っていくと《赤岩ノ頭》というピークに登り着く。 ここからは稜線通しの道となり、少し上部で北八ヶ岳方面・《オーレン小屋》への道を分けて、幅の広い雪付きの稜線に突き出る岩の突起を越えると、硫黄岳 2760メートル の頂上だ。 正面には硫黄岳の火口壁が、堤防のようなトーチカを造ってる。


硫黄岳の火口壁が魅せる
天然の要害(トーチカ)

硫黄岳の山頂は長い火口壁となっていて、岩が規則正しく整然と並び立つ眺めが印象的だ。 
この眺めゆえに、濃霧に巻かれた時などは現在位置を見失う“リングワンダリング”に陥りやすい。 
視界の悪い時などは、東側の奥にある火口壁の縁には立ち寄らない方がいいだろう。 

だだっ広い硫黄岳の山頂より、大きなケルン群に導かれて南下すると高山植物の保護柵があり、その柵に沿って緩やかに下っていく。 夏の花の季節であれば、美しい花の饗宴に酔える事であろう。 


積雪期は花はないが
富士が裾野を広げる姿が魅られる

しばらくすると、保護柵の切れ間に《硫黄岳山荘》が建っている。 ここまでは通過に何の不安もない平坦な道だが、ここからはいよいよ核心に迫る横岳の岩峰越えだ。 横岳へは、《大同心峰ノ頭》の平らな岩を右に見送り、佐久側の鎖に取り付く。


横岳・カニノヨコバイ
見た目は簡単そう・・なんだけど

ここからが、横岳への最大の難所・“カニノヨコバイ”と呼ばれる、下のスッパリ切れ落ちた岩のハングを巻くトラバースとなる。 それは平均台より僅かに幅のある程度のヘツリで、しかも当時は鎖がなかったのである。


登っている最中に
ガスが上ってきて雲上人に

このヘツリ巻きで横岳の本体を周りこんでから、頭上にそびえる頂上へ向かってルンゼ状の岩塊を登っていく。 登りきると、“岩の芸術峰”・横岳 2829メートル 頂上だ。 


盟主の上から盟主を望む
横岳から望む赤岳

横岳の頂上からは、これから乗り越えるダイナミックな岩峰群がズラリと並んで見渡せる。 
また、《赤岳鉱泉》で見上げた《大同心峰・小同心峰》の大岩壁を、今や下に見下ろして眺めるようになっている。


これより横岳の核心部分を伝って赤岳へ

この岩峰が演出するすざましい眺めこそ、横岳を我が【名峰百選】に選んだ理由である。 横岳の頂上で、雪をまとった岩峰の“オブジェ”を心ゆくまで堪能したら先に進もう。

   ※ この先は次回の『第57話 八ヶ岳主稜線縦走』に続く。








関連記事
スポンサーサイト



No title * by 鳳山
八ヶ岳の山容は厳しいですね。素人はとても登れそうもありません。硫黄岳の火口壁、確かにトーチカのように見えます。

ナイス

No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。

八ヶ岳は山容は厳しいですが、ぢ・つ・わ・・、雪山の初心者向けの山なんですよ。 現に、私が最初に八ヶ岳に訪れた時は、夏の白馬大雪渓で使う6本爪アイゼンでしたから・・。 それで怖い思いをしたのと、あの雪山の絶景が忘れなくなり再び、今度は足裏全体に爪のある8本爪アイゼンとピッケルを持ってきましたね。

このように、山をナメな素人でも行ける山ですよ。 でも、怖い思いをするかも・・ですけど。

No title * by たけし
北八ツの冬はかろうじてクリヤできましたが、夏の硫黄岳から横岳、赤岳だけでヘトヘトになりました・・・・涙

No title * by 風来梨
たけしさん、こんにちは。

私はアイゼンでカッパの足の裾を踏んで、稜線上のセンターラインでバッタリこけました。 その緊張感があったので、何とかクリアできました。

下りは宇宙一安い『伝家の宝刀』のクマクダリを駆使して、腰がヘロヘロになりました。

まぁ、そんなレベルです。 そして今は、かつて抱いた『奇跡の体力』を思い返しては、枕を涙で濡らしています(涙)

コメント






管理者にだけ表示を許可

No title

八ヶ岳の山容は厳しいですね。素人はとても登れそうもありません。硫黄岳の火口壁、確かにトーチカのように見えます。

ナイス
2019-02-18 * 鳳山 [ 編集 ]

No title

鳳山さん、こんばんは。

八ヶ岳は山容は厳しいですが、ぢ・つ・わ・・、雪山の初心者向けの山なんですよ。 現に、私が最初に八ヶ岳に訪れた時は、夏の白馬大雪渓で使う6本爪アイゼンでしたから・・。 それで怖い思いをしたのと、あの雪山の絶景が忘れなくなり再び、今度は足裏全体に爪のある8本爪アイゼンとピッケルを持ってきましたね。

このように、山をナメな素人でも行ける山ですよ。 でも、怖い思いをするかも・・ですけど。
2019-02-18 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

北八ツの冬はかろうじてクリヤできましたが、夏の硫黄岳から横岳、赤岳だけでヘトヘトになりました・・・・涙
2019-02-22 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんにちは。

私はアイゼンでカッパの足の裾を踏んで、稜線上のセンターラインでバッタリこけました。 その緊張感があったので、何とかクリアできました。

下りは宇宙一安い『伝家の宝刀』のクマクダリを駆使して、腰がヘロヘロになりました。

まぁ、そんなレベルです。 そして今は、かつて抱いた『奇跡の体力』を思い返しては、枕を涙で濡らしています(涙)
2019-02-23 * 風来梨 [ 編集 ]