風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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名峰百選の山々 第24回  暑寒別岳

名峰百選の山々 第24回  『3 暑寒別岳』 北海道
増毛山系(暑寒別天売焼尻国定公園) 1491m コース難度 ★★  体力度 ★★★
 

雨竜沼湿原より眺める
暑寒別岳
 
今回は、暑寒別岳を完全に踏破する山旅をしてみよう。 でも現実的には、登山口が奥まった所にあって車がなければアプローチが厳しい事、そして下山先からの車の回収がほぼ不能な事から、現実的には不可能と断じてもいいのであるが、そこは北海道最大の高層湿原をめぐり、北海道・・いや我が国でも有数の花の峰の頂に立つ夢のプランを追ってみようと思う。
 

『北海道の尾瀬』といわれる
雨竜沼湿原もめぐる贅沢な山旅
 
   行程表              駐車場・トイレ・山小屋情報
雨竜町市街より車(1:00)→南暑寒荘(1:10)→雨竜沼湿原(0:50)→雨竜沼湿原展望台 
(1:20)→南暑寒別岳(2:30)→暑寒別岳(1:30)→五合目(1:30)→暑寒荘より車 
(0:50)→増毛町市街
 
雨竜町市街より32km・車で約1時間で、まるで教会のように立派な施設の建つ南暑寒荘に着く。 
国定公園の指定に伴って新築されたそうだ。 自動水洗の便所にまで整備された施設の充実は便利でいいのだが、何か引っ掛かる気持ちもある。 なお、この南暑寒荘は、安価で宿泊できて(平成7年現在・700円)キャンプ場もあるので、ここで宿泊して翌朝早く登り始めるのがいいだろう。 
 
白竜ノ滝

南暑寒荘を出ると、砂利道のつづら折りが1kmほど続く。 砂利道が途切れると、立派な吊橋でペンケペタン川の渓流を渡る。 
ここから道は登山道らしくなり、ぬかるみの入った土や岩コロの急登となっていく。 しばらく登ると、下の沢から瀑音が響き渡ってくる。 これが、ペンケペタン渓流の景勝・《白竜ノ滝》だ。
 
この滝は落差36mの水量豊な瀑布で、単調な登りの合間での一服の清涼剤である。 登山道上からも見渡せるが、余裕があれば滝直下まで降りてみよう。 《白竜ノ滝》を過ぎると吊橋で対岸の山に移り、ジグザグの急登となる。 しばらくこの急登に耐えると、ペンケペタン川の清流が近づき道が平坦となる。
後は笹の刈り分けられた道をくぐり抜けると、お待ちかねの《雨竜沼湿原》が視界に広がる。 

湿原には木道が敷設され、行きと帰りで湿原を一周できるようになっている。 さぁ、《雨竜沼湿原》を探勝してみよう。 木道を進むごとに、花に囲まれた沼やヒツジグサを浮かべた沼、雲をたなびかせた空を映し出す沼・・と、様々な個性をもった池塘が現れる。
 

湿原の中央部を蛇行する
ペンケペタン川の源流
 
暑寒別岳とエゾカンゾウ

また花も、大地をオレンジ一色に染め上げる程のエゾカンゾウの大群落に圧巻する。 ワタスゲの柔らかそうな綿に覆われた沼の風景も印象的だ。 そして、背後に“まったり”とした感でそびえる暑寒別岳と南暑寒別岳もなくてはならない存在だ。 
これらの風景を愉しみながら歩いていくと、あっという間に木道が途切れて湿原の端に出る。


湿原をオレンジ色に染める
エゾカンゾウ

ここから《湿原展望台》まではちょっとした急登で、道も粘土質で歩き辛いが、いってみればこのコース唯一の“難所”で、これを乗り越えれば《雨竜沼湿原》が大きく広がる《湿原展望台》に着く。
この展望台からの眺めは絶品だ。 湿原全体に宝石のように散りばめられた池塘群、湿原全体を血管のように蛇行するペンケペタン川など、山に登らないにしてもせめてここまでは行きたいものだ。
 

展望台より望む雨竜沼湿原
 

南暑寒別岳山頂にて

後は、笹の刈り分けられた広い道を急な登りもなく黙々と歩いていくと、ちょっとした稜線の突起に出る。 ここが南暑寒別岳 1296メートル である。 あっさりと頂上に着き、いささか拍子抜けの感がある。

だが、晴れて視界が良好なら、縞模様の雪をまとった暑寒別岳の美しい姿を望む事ができるだろう。
ここから暑寒別岳までは、200m急下降してから400m登り返すので距離の割に随分と時間がかかり、それなりの体力と心構えも必要となってくる。
 
引き返すならこの辺りがちょうど良く、大概の方は南暑寒荘からは雨竜沼湿原のみを、暑寒別岳は増毛又は箸別のルートを登って登頂し折り返していくのが一般的だ。 もちろん、私自身もそのようにした口ではあるが。
 

          ミツバオウレン     ハクサンチドリと    池塘に浮かぶヒツジグサ
                           ワタスゲ

さて、天気が良ければ眼下に一望できる雨竜沼湿原の池塘群が放つ輝ける蒼き宝石達を目にして、気合いを入れて出発だ。 南暑寒別岳からは、最低コルまで急坂をイッキに200m程下っていく。
辺りはダケカンバとチシマザサが覆う広い尾根道だ。 最低コルはイワイチョウを中心とした湿生のお花畑となっていて水場もある事から、天候などの急変時はここはビバーク地点ともなろう。
 

             イワイチョウ      マシマゲンゲか?    チシマギキョウ
 
だが、ビバークを考えるなら、それなりの装備を担いでくる必要があるのだ。 何の考えもなくこのキツく長い山岳縦走を決行すると、必ずアクシデントに見舞われる事だろう。 従って、南暑寒別での進むか退くかの判断は、とても重要となるのである。 『進む』と決めたなら、以降は水場が皆無なので、持参した水筒は必ず満タンにしておく事が必要だろう。
 
最低のコルからは、暑寒別の頂上まで400m近くの登高となる。 広い尾根道をゆくが、中腹まで進むと潅木帯となり、展望が良い。 潅木が途切れると左側が崩壊したガレ地帯を越えて、続くルンゼ状にガレた急坂をイッキに登りつめていく。 このガレた急坂を乗り切ると傾斜は緩くなって、『花の峰』の称号を受けるが如く、頂上台地に一斉に花が咲き乱れる様を見る事が叶うだろう。
 

山頂付近は
広大なお花畑だ
 
後は、花のじゅうたんを見ながら歩いていくと、程なく頂上大地の西南端にある石が積み上げられた頂上標の前に出る。 暑寒別岳 1491m である。 花の楽園は、これよりがクライマックスだ。
増毛コースの頂上台地の途切れる所まで、延々とお花畑が続いているのである。
 

暑寒別岳頂上にて
 
標高1500mに満たない山で、これだけの花の峰は国内で探しても見当たらないだろう。
『花の峰』の称号はダテではなかったのだ。 しばし、この花の楽園を心ゆくまで味わおう。
だが、まだ下山に3時間以上かかるので、時間の配分と日没時間の把握は忘れずに。
 

可憐に咲くエゾノハクサンイチゲ
でも、あまり花に見とれて
「日が暮れた中で下山」とならぬように
 
さて、下山であるが、増毛ルートを下っていこう。 頂上台地のお花畑が途切れると、箸別コースを右に分けて、いきなりルンゼ状の土砂崖となる。 ここはかなり急で、下までロープが張ってある。

下ると『9合目』の道標があり、これより潅木のトンネルを抜けて、再び展望が良くなると『扇風岩』という風の通り道に当るガレた峰の小突起に着く。 この岩の上に立つと、対峙する西暑寒別岳中腹の大滝(落差70~80mの大滝)を見る事ができる。 振り返ると、白銀をまとった暑寒別岳が印象的だ。
 

『扇風岩』からの眺め
 
ここから7合目の『滝見台』までは、ガレた岩の小突起の上下で、7合目を越えて少し進んだ『釜灰ノ上』という三角点頂上を越えると、またもや土砂崖の急下降だ。 ハイマツに覆われた中の急坂をロープを手繰りながら下っていく。 もちろん、このコースの往復なら、コース最大の『体力どころ』となろう。
これを下ると6合目。 ここまで下ると、傾斜は一段落していく。
 
やがて、ドラムカンで雨水を溜めているものの、水が腐って蚊やブヨが飛び回る雰囲気最悪の水場(もちろん使用不可)の5合目を過ぎる。 その先に続く階段状の坂を下りると、道は今までの土砂崖の急登がウソのように、車さえも通れるほどの林道状の砂利道となり、ダルい林道歩きが1時間少々続く。
 
やがて『佐上台』という2合目を示した道標を過ぎると、長い丸太の段で高度を下げて、今夜の宿・暑寒荘前に着く。 この山荘は無料だが、フトンあり・炊事場有りのコテージそのままの最高級の山小屋だ。
長い道のりを歩いてきた事だし、車を確保して今更町に出ても、増毛の街泊まりとなるので、ここに泊っても一緒の事だろう。 ここは、この最高の設備を備える山荘で今回の山旅を回顧しよう。
但し、この場所に止まるなら、食料は2日分持ってこなければならないが。
 

                カラフトハナシノブ       リシリリンドウ
魅せられた花を思い描きながら
今日の山行の思い出をかみしめよう
 
翌日、歩くと3時間半、車なら50分で増毛の街だ。 夢々にもない事だとは思うが、南暑寒の登山口に車を置いてきたなら、回収はほぼ2日がかりとなるので念の為。

    ※詳細は、メインサイトより『雨竜沼湿原』及び『暑寒別岳』を御覧下さい。
 
 
 
 
 
 
 

 
 


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No title * by オータ
南暑寒までしか行けませんでした。でも湿原は歩いています。
もう二十年も前のことで、まだ植物に興味を持っていなかったので、記憶が薄いのです。

No title * by 風来梨
私も、同じく20年前にこの山に始めて登って、高山植物の素晴らしさ、美しさを知りました。

6月のトップのエゾノハクサンイチゲも、この時この山の頂上で撮ったマイお気に入り写真の一つです。

No title * by tunnel_no2
こちらでは、はじめまして。
暑寒別岳、てっぺんには行ったことはないのですが、雨竜沼湿原は歩きました。15年ほど前、帰郷した折、雨竜沼の写真集を目にし、次の日に出かけました。天気がとても良く、写真集で見た以上の場所でした。おかげで北海道でも一番のお気に入りの場所になってしまいました。しかしながら、北海道に戻った身なのですが、その時以来なかなか足が伸ばせません。

No title * by 風来梨
tunnel_no2様、こんばんは。

トラックバックさせて頂きまして、ありがとうございます。
雨竜沼湿原は、北海道の尾瀬と言われる程に素晴らしい場所ですね。
特に、晴れた日のたなびく雲が池塘に映る様は、なんとも言えない情景ですね。

それと暑寒別の山は、1500mに満たない山とは思えぬほどの大お花畑を頂上大地に抱いています。 海抜200mからの1300m登高とちょっとキツいですが、登り甲斐のある山ですよ。

比較的楽なのは、箸別ルートからだそうです。

コメント






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No title

南暑寒までしか行けませんでした。でも湿原は歩いています。
もう二十年も前のことで、まだ植物に興味を持っていなかったので、記憶が薄いのです。
2011-06-19 * オータ [ 編集 ]

No title

私も、同じく20年前にこの山に始めて登って、高山植物の素晴らしさ、美しさを知りました。

6月のトップのエゾノハクサンイチゲも、この時この山の頂上で撮ったマイお気に入り写真の一つです。
2011-06-19 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

こちらでは、はじめまして。
暑寒別岳、てっぺんには行ったことはないのですが、雨竜沼湿原は歩きました。15年ほど前、帰郷した折、雨竜沼の写真集を目にし、次の日に出かけました。天気がとても良く、写真集で見た以上の場所でした。おかげで北海道でも一番のお気に入りの場所になってしまいました。しかしながら、北海道に戻った身なのですが、その時以来なかなか足が伸ばせません。
2011-09-24 * tunnel_no2 [ 編集 ]

No title

tunnel_no2様、こんばんは。

トラックバックさせて頂きまして、ありがとうございます。
雨竜沼湿原は、北海道の尾瀬と言われる程に素晴らしい場所ですね。
特に、晴れた日のたなびく雲が池塘に映る様は、なんとも言えない情景ですね。

それと暑寒別の山は、1500mに満たない山とは思えぬほどの大お花畑を頂上大地に抱いています。 海抜200mからの1300m登高とちょっとキツいですが、登り甲斐のある山ですよ。

比較的楽なのは、箸別ルートからだそうです。
2011-09-24 * 風来梨 [ 編集 ]