2019-01-15 (Tue)✎
『日本百景』 冬 第362回 夕張 〔北海道〕
空気を運ぶ単行気動車が
住宅が建ち並ぶ中に消えていく
夕 張 ゆうばり (富良野芦別道立自然公園)
夕張市(ゆうばりし)は、北海道中部空知地方の市(地方自治体)である。 夕張メロンの産地として知られる。 北海道の中央部に位置し、かつては石狩炭田の主力炭鉱街として栄えたが、1990年までに全ての炭鉱が閉山した。 その後にヤミ起債が発覚し深刻な財政難となり、2007年3月に財政再建団体(現在の財政再生団体)に指定された。
地名の由来はアイヌ語の「ユーパロ(鉱泉の湧き出る所)」からで、北方探検家・松浦武四郎の『郡名建議書』には、アイヌ語の「イユウ・パロ(温泉(鉱泉)の・口)」と示されている。
夕張岳を主脈とした夕張山地と空知山地に跨る石狩炭田の南部に位置し、かつて市域に多くの炭鉱があった。市域東側には山林が広がり、その山林や集落部から流れる川は南部で合流し、夕張川として南部を渓谷を作りながら流れている。 この夕張川に多目的ダムが建設され、それで川がせき止められてできたダム湖がシューパロ湖である。
人口は市域の西側、紅葉山地区から夕張地区まで、谷間を縫うように走るJR北海道石勝線夕張支線に沿って集中している。 炭鉱が稼働していた頃は石炭輸送で黒字業績だった石勝線の夕張支線も、炭鉱が全て閉山して久しい近年では輸送密度が100 (人/km/日)を割り込む程となっている。 このような状況から、2019年の3月末をもって夕張支線は廃線となる事が決定している。
かつて栄えた事を示す遺構
といっていいだろう
撤去された貨物側線の跡が
雪に埋まる光景は
清水沢駅にて
かつては北海道随一の炭鉱街として栄えた夕張も、エネルギー革命で石油への燃料シフトの移行により斜陽化し、1990年の三菱大夕張炭鉱の閉山をもって、全ての炭鉱が消えたのである。 それに伴い人口が流出し続け、最盛期は12万人近くいた人口も今では8200人程度と激減し、その減少率は我が国随一の数値を示している・・との事である。
利用客もないのに義務の如く停まって
ドアを開閉して去っていく
:
これが廃止を控えた路線の日常
それでも鉄道は
最後のその日まで
雪を蹴って走り続ける
夕張の街も、閉山後の振興策として観光誘致を図ったが、石炭によるガラス工芸の失敗や、スポーツの著名な選手もいないままに「スポーツ振興都市」を銘打ったりする迷走が続いて、尽く失敗しているようである。
また、観光資源の面でも夕張シューパロダムの建設により、かつてシュウパロ湖対岸にあった炭鉱に向けて架けられた世界的に稀有な橋梁形式であり、建築学的に貴重な三弦橋を水没させる・・という自らで観光資源を消失させる迷走ぶりとなっている。
文化登録遺産と言っていい程に
建設学的に貴重な三弦橋
※ ウィキペディア画像を拝借
この貴重な文化遺産を
ダム建設の公共事業費
欲しさに水没させるとは・・
※ ウィキペディア画像を拝借
「炭鉱跡」という観光資源の活用でも、同じ産業史アピールである足尾銅山や石見銀山がそれなりに上手くやっているのを見ると、何か歯がゆくもなる。 それは、”それなりに上手くいっている”足尾銅山や石見銀山・・、特に足尾銅山は、鉄道と上手くタイアップしているのである。 石見銀山の方は『世界遺産』の恩恵が大きいけれど。
いつも思うのは早々に諦める気質を
口惜しく感じる想い
でも、この町(夕張市)は、観光客の集客の要とも成り得る鉄道を捨てる事を選択したのだ。
活用次第では活きる鉄道を、市の財政支援の約束の見返りに切り捨てようとしているのである。
この事で、恐らく観光事業は振るわない・・とワテは予測する。 そう、方法ならいくらでもあるのだ。
その一つの手法が、「石炭の歴史村」とタイアップして蒸気機関車を運行させる事で、それが実現すればかなりの収益を見込めるものを・・と思うと口惜しくなる。
成功している所は
鉄道をも使って
観光客を呼び込んでいるのだ
何を言いたいかというと、「成功するには、現状では”使えなかった”鉄道をも使って集客・動員する事が必要だ」って事である。 バスとマイカーだけでは、思ったように集客できないだろう。 特にマイカーなんてのは、「観光客として最もアテにならない」のであるから。
「雪に強い鉄道」神話は崩れ去って
:
不慣れで雪に弱いエトランゼの運転する車で
観光客を呼ぼうというのか
ワテの考えた『鉄道による町おこし策』は、今の夕張駅・・いや『幸福の黄色いハンカチ』の聖地・日吉地区に近い鹿ノ谷駅から、線路を《石炭の歴史村》まで延長(要するに元に戻すワケですネ)させて、その間を石炭を積んだ『ミニSL』よるトロッコ列車を仕立てるのである。 費用はかかるだろうけど、爆発的に観光客は増えるよ。 まぁ、ワテはSLは興味ないからパスだけど。
ワテの考えた鉄道活用法は
SLの運行と新夕張に駐車場を設けて
鹿ノ谷駅まで鉄道に乗ってこさせる
駐車場料金との”ダブル取り”
ここで何故に『鹿ノ谷駅』を始発にしたのかというと、「ここを訪れる観光客は、必ず夕張支線を使って鹿ノ谷駅まで来なくてはならない」って事を仕向ける理由もあるからである。 そして『ミニSL』が走るとなると、マイカー観光客も”必ず”これに乗るべくやってくるのだ。 だから、駐車場は鹿ノ谷ではなく新夕張駅周辺に設けて、マイカー観光客から「駐車料金を取って鹿ノ谷まで列車に乗せる」という”ダブル取り”で金を出させるのである。
でもこの町は鉄道を
『不要』と断じたのだった
でも、この町は、その場での支援欲しさに「線路を剥がす」事を選択したのだ。 それは、夕張市が路線廃止の代替条件として、駅施設の無償供与と複合商業施設の入ったバスターミナルの建設を求め、その供用開始の道筋がついた時点での廃止を容認するというのである。 それに、「在来線を捨てたくてしょうがない」管轄鉄道事業者のJR北海道が食いついた・・って事なのである。
夕張市の廃止同意という“渡りに船”に
廃止したくてしょうがないJR北海道が
喰いついた形で廃止が決まった
こういう全てに渡ってチグハグだらけの「町おこし策」だから、他の話題に上らない町の施設の整備状況も、観光客を誘致するには程遠い現状なのである。 それは、去年とこの正月の2年に渡って、廃止が確定した夕張支線を『乗車&撮り鉄』をすべく訪ねた時に見た状況から感じた事である。
廃止が決まってからは
こういう路線を詣でるのは
エトランゼの鉄道好きのみ
それは、夕張の玄関口である新夕張駅の最寄りにある『道の駅・夕張』のトイレが、2016年の北海道豪雨災害で地盤沈下を起こし、そのまま使用不能で閉鎖されているのである。 この道の駅自体が農協『Aコープ』の駐車場の転用のようなもので、『Aコープ』の開店時間は店内のトイレ使用が適うが、閉店後は「トイレのない道の駅」となってしまうのである。
『幸福の黄色いハンカチ』のロケセットを
再現したという『思い出広場』も
雪に埋もれて放置されていた
:
その光景は産業の斜陽で寂れた
『炭鉱の町』そのままだった
また、映画『幸福の黄色いハンカチ』にあやかって、《ゆうばり国際ファンタスティック映画祭》を開催して映画ファンを呼び込もうとしているが、シーズンオフ(映画祭は2月中旬~末の開催で、ワテの訪れた年末年始はシーズンオフとなる)に見た『黄色いハンカチ・思い出広場』の施設が放置された惨状を目にして、「コレはコケるな・・」と端的に思ったものである。 現況は案の定コケていて、夕張市は映画祭の運営から既に手を退いていて、以降はNPO団体による主催となっているようだ。
そして、地の恵みである温泉も、源泉を汲み上げるポンプの故障で風呂釜が水に浸かって使用不能となり、それ以来1年以上の長期に渡って休業・閉鎖されているのである。 ’17年11月からの長期に渡っての休業・閉鎖は、何でも財政再生団体である夕張市が、ポンプの修理と浸水した設備の修繕費を出せない為との事である。
1年以上閉鎖が続いている
夕張温泉・ユーパロの湯
:
閉鎖を知らずに訪れた時は
前のアーチ門の大半が雪で埋まっていたよ
※ グーグル画像を拝借
《石炭の歴史村》も、遊園地の併設など企画は盛り上がったが、赤字続きで観覧車やジェットコースターの施設は野ざらしのままに放置され、’08年度中に全て撤去されている。 また、運営元も市の財政破綻から、夕張市で唯一の成功事業者である『夕張リゾート』を経て、NPO法人炭鉱(ヤマ)の記憶推進事業団」に運営を移管されている。
石炭の歴史村の施設も
NPO法人に下げ渡し
かつてあった遊園地施設は
撤去されるまでの数年間は
風雪に野ざらしだったそうだ
※ 上下ともウィキペディア画像を拝借
唯一成功しているのは、先程に記した《マウントレースイスキー場》とホテルを運営する『夕張リゾート』のみである。 雪質も良く、札幌から車で1時間ちょっと、駅(今年の3月末で無くなるが)から徒歩で行けるスキー場はすごぶる好条件なスキーリゾート地なのだが、この『夕張リゾート』は強欲なシナ人に買収されたといい、ホテルの接客態度などは傲慢になっている・・との噂が立っている。
唯一成功している『夕張リゾート』も
強欲なシナ人率いる中国資本の手に
※ ウェブサイト・じゃらんの画像を拝借
このように尽く失敗してるし、一人の観光旅行者としての立場に立つワテとしても、風呂が壊れて1年以上放置され、『道の駅』のトイレが使えない所に旅に訪れる気が湧かないのである。
そして、シーズンオフの『黄色いハンカチ・思い出広場』で目にした状況に、文化・芸術の分野でも花開く事はないな・・と思ったのである。
あと何回街に向けて
テール灯をかざすのだろう
あと何回
街から戻ってこれるのだろう
だから、恐らく鉄道が廃止となる年の正月、この年末年始をもって夕張に足を運ぶ事はないと思うのである。 まぁ、山を破壊して成しえる娯楽・スキーはしないしね。 炭鉱の歴史についても興味はあるが、それなら「棄てられた残骸」に哀愁を漂わせる羽幌の《築別炭鉱》の跡を訪ねるよ。
観光客を呼び込むには
あまりにも雑な夕張という街
:
恐らくこのテール灯が
ワテ最後の『夕張』だろうな
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No title * by 鳳山
炭鉱が無くなって寂れた町は九州にも多いですが、その後の経済振興・観光振興も苦労していますね。夕張はいろいろポテンシャルはありそうですが、外国資本に頼ればろくな事にはなりません。
No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
仰る通り、夕張市はポテンシャルがある分だけに勿体無いですね。 折角の貴重な歴史的財産の三弦橋をダム湖に水没させたり、ヤミ起債で財政と信用を失ったり、観光客を呼ぶべくの「道の駅のトイレ」や「温泉」といった施設を壊れたまま一年以上放置したり、活用法を考えずに鉄道を放棄したり・・と、やってる事がチグハグ過ぎますね。
「夕葉リゾート」も、シナの経営者が買い取ってから、ホテルの接客が悪くなったと評価されてるようですし、今までホテル前にある夕張駅の面倒(乗車券の販売とか取次)をみていたのに、シナの経営者に代わってから打ち切られたようですし。
以前と違って、地元に貢献しなくなったようです。 でも、夕張で成功してるのは、この「夕張リゾート」だけなんですよね。
仰る通り、夕張市はポテンシャルがある分だけに勿体無いですね。 折角の貴重な歴史的財産の三弦橋をダム湖に水没させたり、ヤミ起債で財政と信用を失ったり、観光客を呼ぶべくの「道の駅のトイレ」や「温泉」といった施設を壊れたまま一年以上放置したり、活用法を考えずに鉄道を放棄したり・・と、やってる事がチグハグ過ぎますね。
「夕葉リゾート」も、シナの経営者が買い取ってから、ホテルの接客が悪くなったと評価されてるようですし、今までホテル前にある夕張駅の面倒(乗車券の販売とか取次)をみていたのに、シナの経営者に代わってから打ち切られたようですし。
以前と違って、地元に貢献しなくなったようです。 でも、夕張で成功してるのは、この「夕張リゾート」だけなんですよね。
No title * by pikes peak
いや同感です。大切な資源として残す選択肢も考えて欲しかったです。
昨夏、新夕張の道の駅で、車中泊の予定を組み、行って見るとトイレが閉鎖されていて、結構ハラハラさせられました。
夜のテールライト、身にしみるいい画です。
昨夏、新夕張の道の駅で、車中泊の予定を組み、行って見るとトイレが閉鎖されていて、結構ハラハラさせられました。
夜のテールライト、身にしみるいい画です。
No title * by 風来梨
pikes peakさん、こんばんは。
鳳山さんも仰っていましたが、夕張市は大自然に囲まれていて、九州の旧炭鉱街よりポテンシャルも高く恵まれてるのに、その財産を自らで喪失させてるのですよね。 勿体無い話です。
私も『道の駅・夕張』で車寝する予定でしたが、トイレがないので清水沢駅周辺の公衆トイレ付の駐車場にしましたか、その夜はこの旅で唯一大雪に遭って、夜明け前の3時半からレンタカーの雪降ろし&進路確保の為の除雪をさせられました。 コレをしないと閉じ込められますから。
これにコリて最終日の車寝場所は、沼ノ沢の公衆トイレ前(コチラの方が雪が少ない)にしましたよ。
鳳山さんも仰っていましたが、夕張市は大自然に囲まれていて、九州の旧炭鉱街よりポテンシャルも高く恵まれてるのに、その財産を自らで喪失させてるのですよね。 勿体無い話です。
私も『道の駅・夕張』で車寝する予定でしたが、トイレがないので清水沢駅周辺の公衆トイレ付の駐車場にしましたか、その夜はこの旅で唯一大雪に遭って、夜明け前の3時半からレンタカーの雪降ろし&進路確保の為の除雪をさせられました。 コレをしないと閉じ込められますから。
これにコリて最終日の車寝場所は、沼ノ沢の公衆トイレ前(コチラの方が雪が少ない)にしましたよ。