風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第361回  観音滝・氷結

『日本百景』 冬  第361回  観音滝・氷結 〔大分県〕


飛沫が凍るほどの枝垂れ滝

   観音滝  かんのんたき  落差 77m  大分県・佐伯市(旧 宇目町)、藤河内渓谷の滝

   滝へのアプローチ
国道326号線の大分・宮崎県境の西方約10km
国道326号線の県境付近にある藤河内林道入口より車利用(0:30)→藤河内渓谷駐車場

     行程表
駐車場より300mで渓谷遊歩道入口・遊歩道は約3kmで徒歩で滝まで約1時間


藤河内渓谷・観音滝 位置図

別府の街を出て2時間足らずで、国道326号の大分・宮崎県境に差しかかる。 国道326号は思った以上に良い道で、やや甘い予想の通りに事が運ぶ。 ここから『藤河内渓谷 9km→』の指示通りに右折して、細い渓谷林道をつめていく。 渓谷までの道中にある『湯~トピア』という《木浦内鉱泉》の温泉施設がある所までは集落もあるようで、時折対向車にも出くわす。

この『湯~トピア』を過ぎると渓谷まではあと3kmだが、これよりはかなりのウネウネ道で、路肩も頼りなくなるので注意が必要だ。 約30分ほどで、渓谷入口前の駐車場に着く。 駐車場から渓谷入口までは舗装道を300mほど歩かねばならない。 なお、この車道は渓谷入口の所で反れて沢を渡るが、その橋の手前で行き止まりとなっている。

遊歩道の入口には『観音滝まで徒歩60分』との手書き表示がある。 今2時ちょうどだから、往復所要で2時間と滝前30分で4時半帰着の修正した予定通りに事が運んでいる。 ここから急傾斜を登って、沢の右岸(下流からなら左側)の土手に取り付く。 大きなハングとなって出張っている巨大一枚岩を建設工事の戸板桟橋のような橋で越えていく。 こんな橋が3つほどあるだろうか。

これを越えて「10分は歩いたな」との感触を得た時に、道脇に挿された道標には『滝までアト55分』との文字が。 滝まで60分で行けるのか、のっけから不安になってくる。 滝までに70分も80分もかかるようでは、帰りは暗くなって厳しくなってくる。 それでなくてもまだ2時過ぎだというのに、日差しが柔らかい斜陽となりつつあるし。

自然の力・・
甌穴を魅せる『ひょうたん淵』

道はほどなくハシゴで沢を渡り、左岸(進行方向右手)に取り着く。 ここからは、沢歩きの予想に反して完全な登山道と化する。 左側には沢はあるのだが雑木林で隠されて見え辛いし、また時間に追われて気が急いているせいもあって、あまり視界には入ってこない。

この探勝路は《観音小滝》という滝や、甌穴や淵や小さなナメ滝が点在する渓谷遊歩道だそうなのだが、急傾斜に落葉という登山道然とした周囲の情景がそれを全く感じさせない。 また、手書きの道標は、『滝までアト40分』までは5分刻みに表示があったのだが、それ以降は飛んでしまって『アト20分』とその20m先にある『観音滝⇒15分』という紛らわしい二つの道標のみになっていた。

『滝までアト40分』を過ぎると登山道然の遊歩道は傾斜を増し、急ぎ足を続けていると息が荒くなり始める。 そして、先程の『滝まで』の20分と15分の道標を越え、土手の中腹の三叉路に登り着く。

そこに立つ樹林にプラカードが掲げてあって、『↑観音滝上部・木山内岳』と『←観音滝』と記されてあった。 だが、山中には滝音は全く響かず、また沢も見当たらない。 「ホントか?」と半信半疑で左手の土手を乗り越えてみると滝観音の祠があって、そのすぐ脇が崖崩れ状となった沢への下降道が刻まれてあった。

歳を重ねる毎に身体能力の退化が止まらない(といっても、生涯一度たりとも走り幅跳びで3mの壁を越えた事がないなど、元から身体能力は低いが)ワテとしましては、伝家の宝刀『クマ下り』を発動せねばならなかったよ。 で・・、クマ下りで10mほど下ると、漸く見えてきました《観音滝》が。


見えてきました観音様が

上部の岩盤からの湧き水を
チョロチョロと落とす潜流瀑みたいだ

水量が少ない一枚岩の滑り滝で、それゆえに滝の落水音が全く響き渡ってこなかったのであろう。
だが、奥まった沢の中で、冬とともなれば一日中陽が射さぬ幽谷の中にひそむ滝・・という事で、見事に落水の縁が氷瀑となっている。

落水の迫力を求めるなら期待ハズレかもしれないが、コレはコレで幽谷の気品が漂ってきていい雰囲気だ。 また、滝までの道程の嶮しさと、また滝直前の嶮しさも情感深くいい。 なお、「滝直前の嶮しさ」であるが、滝つぼへの降り口は補助ロープに細引きが結ばれているだけの土砂崩れで、下降には要注意が必要だ。


下降場所が解り辛く厄介だ

そして、見つけ辛い所にあるので、よく見渡す事が必要だろう。 この時の筆者は下りルートを見つけ出せずにテンパって、滝左岸の崖を直下りしようと思った位だから・・(この崖下りは、御来光の滝の番匠谷より小マシに見えた)。

ルートを発見できたなら登山経験者(但し、筆者を除く)なら問題のないレベルだろうが(筆者も伝家の宝刀『クマ下り』と、ゴキブリ並の生命力と、不様を恥と感じぬ強い心〔別名・鉄面皮〕があるので大丈夫!)、難路に対して経験不足の人なら下るのが躊躇われる眺めである。

この細引きを伝って下ると、落水の両側を氷瀑で囲まれた滑り滝を魅せる巨大一枚岩盤がそそり立つ。
後は、この場所に立った者だけがその場で感じる感性を、存分にカメラを通してフイルムに刻み込もう。


氷の滴が奏でる情景

そう、いつまでも、たとえ色褪せようとも、その時の感性を・・、そのままの情感での表現が適うフイルム原版に。 この瞬間が随時に蘇る時、磁気記録というニセモノでは決して味わえないフイルム写真を取り続けていた喜びを感じる時である。


氷が岩を削り
このような紋様を描き出したのか


両脇に氷結を従えた王道を
滝滴が滑り落ち

巨大一枚岩盤を伝う滑り滝と、氷瀑布と。 そして、その感動をフイルムに焼き付けて、随時その感動が手元で蘇る瞬間を創造しえた事で思った以上に時間を費やし、感動の赴くままにふと時計を見たら、「ゲッ、4時3分前」。


氷の結晶に魅せられて
気がけけば落日間際の冬の4時前

これはヤバイ。 下手すれば、日が落ちるまでにこの『ほとんど登山道』の渓谷遊歩道を脱出できない危機に直面するのだ。 まぁ、カメラバッグだけの空身なので、上りより遅くなる事はないだろうが。
でも、途中で無理クリに《観音小滝》や渓谷の淵を撮ったので、渓谷の下行を終えて駐車場に戻り着いたのは5時3分だった。 でも、まだ明るかったので良かった良かった。

















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