2019-01-05 (Sat)✎
路線の思い出 第294回 根室本線・厚内駅 〔北海道〕
入っていたテナントも廃業し
窓という窓が埋められていた厚内駅舎
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’15)
滝川~根室 446.8km 976 / 424
※ 新得~帯広を除いた数値
池田~釧路 運行本数(’16)
札幌~釧路 特急【おおぞら】6往復
池田~釧路 6往復
池田~浦幌 下り2本、上り1本
池田~厚内 上り1本
厚内~釧路 下り1本
音別・白糠・大楽毛~釧路 区間運転 上下5本づつ有
※ 2016年の台風災害により、現在は東鹿越~新得は不通となっている
現在は不通区間に代行バスを運行
厚内駅(あつないえき)は、北海道十勝郡浦幌町字厚内にあるJR北海道・根室本線の駅で、浦幌駅管理の無人駅である。 単式・島式2面3線ホームを有し、駅舎側の本線である1番線を基本的に上下線とも使用し、交換する場合のみ下りは2番線、上りは3番線を使用する、いわゆる「1線スルー」のホーム使用形式となっている。 ’15年度の1日平均の乗車人員は、10人以下との事。
上下列車の交換時以外は
母屋寄りホームに上下列車が入線する
1線スルー構造となっている
※ ウィキペディア画像を拝借
島式ホームへは屋根なし跨線橋で連絡している。 朝に上下1本の当駅始発釧路行・芽室行(休日は帯広行)の列車がある。 無人化後、駅長事務室跡を改装して「海猫」と言う軽食喫茶店が入居して営業していたが、2000年ごろから休業に入りそのまま閉店した。 2016年現在、店舗跡はドア、窓とも板貼りされている。
駅名の由来は所在地名からで、アイヌ語の「アプナイ」(釣り針・川)に由来するとされるが、定かではない。 このほか、「アックナイ(小獣を捕る川)」に由来するとする説もある。
特急を撮るなら間違いなく
コチラの《尺別浜》ですね
根室本線の海を背景に撮る『撮り鉄』の撮影名所は、尺別~音別の《尺別浜》が知られているが、ワテの見た感じではこの尺別の湿地帯を横断して海に至る情景より、今回の『路線の思い出』で取り上げる《厚内浜》の方が好みなのである。
広大な海際の湿地帯をゆく
《尺別浜》もいい撮影地だよ
まぁ、『撮り鉄』の連中に知れ渡った《尺別浜》は、広い湿地帯の中を縦断して海際に至るので、道路などの障害物は皆無で自由にアングルを取る事ができるのに対して、《厚内浜》は線路と海の間に厚内の小さな波止場につながる道があり、アングルをどのように採っても道路のガートレールがはいってしまうのである。 また、電柱も乱立して、『撮り鉄』目線から云えば「全くもって使えない」撮影場所なのである。
線路と海の間に道路が走り
電柱が建ち並ぶ
『撮り鉄』目線では有り得ない
撮影場所の《厚内浜》
:
だから『撮り鉄』は一人もいなかった
だが、『撮り鉄』達が撮る『鉄道写真』ではなく、ワテが撮りたいと思うジャンルの風景が“主”で鉄道車両が“従”の立ち位置となる『風景鉄道』に当てはめてみると、この《厚内浜》は大いに「アリ!」となるのである。
その「アリ!」の理由を語っていくとしよう。 「大いにアリ」の理由の1つ目は、厚内漁港に漁船がつながれていて、列車と「波止場風景」を絡めて撮る事ができる事である。
陸に上げられた漁船を入れると
波止場風景の『風景鉄道』写真に・・
港につながれた漁船が醸し出すその「表情」によって寂れた波止場風景にもなるし、あるいはこれより漁に出る出港情景と重ねる事もできるのである。 まぁ、訪ねた時が冬の正月なので、漁に出る船も無く「寂れた波止場風景」は必定であったが。
この時にやってきた
『特上のうな重』4段重ね
時刻表を持たないと
予期せぬドラマが起る事がある
急に差し出された『特上のうな重』に
生涯でたった2回の『流し撮り』をしてしまったよ
『特上のうな重』に我を忘れて
シャッターを押しまくったよ
繋がれた漁船と貨物列車は
イメージバッチリ!
2つ目の理由は、「砂浜に降りれる事」である。 これで海の寄せる波を取り入れる事ができるのである。 《尺別浜》は高台からの俯瞰撮影地で、自由にアングルは取れるが寄せる波を強調する事はできないのである。
銀の海・・
寄せる波は浜で戯れる彼らにとって
銀色に輝く津波の如く・・
:
砂浜に降りると
写真の魅惑が溢れている
3つ目は寄せる波の情景の豊かさが《尺別浜》の方が段違いに上なのである。 また、《厚内浜》の砂浜や波止場の岸壁から線路を望むと、全ての時間帯で概ね順光なので「寄せる波を前に持ってきて陽の光で白く輝かす」などの撮影の構想が否応なしに膨らむのである。
浜に降りて寄せる波を強調すると
波が陽の光で白く輝き・・
《尺別浜》は昼前から完全逆光になる
:
逆光を活かすのも
写真の醍醐味だけど・・ね
逆に《尺別浜》はほぼ全日逆光気味で、「撮影構想」を膨らます前に逆光に対応した露出補正やアングルを考えねばならなくなるのである。
そして、何よりも上だと思ったのが、「撮影場所」の雰囲気である。 それは、ただ「鉄道を撮るだけ」の場所である《尺別浜》に比べて、この《厚内浜》は砂浜で打ち寄せる波に戯れるウミネコ達、凍るような寒い波止場の岸壁でじっと釣り糸を垂れる初老の釣り人のいる情景、寄せる波が描く1つ1つ異なる波模様・・など、魅惑満点なのである。
寄せる波が魅せる情景・・
これが決定的な差の一つとなった
ただ単に通過する列車の時間を待つだけ・・では、やはり“飽き”がくるのだ。 だが、「列車待ち」の合間に打ち寄せる波を見ているだけで、全ての「退屈」が退く波と共に消え去るのだ。
退いていく波が残す白い「波の花」も
この地にやってきたワテを虜にさせた
そして、退いていく波跡が生み出す「波の花」も、また魅せてくれるのである。
だからか・・、あっという間に空が薄暗くなる午後4時の「この地を引き上げる」時間がやってきた。
15:30を周った位だというのに
もう陽が沈んで暗くなっていた
でも、この寂れた波止場は去り際の時も魅惑的な情景を魅せて、より離れ難くさせるのである。
それは、夕日前の斜陽に照らされて寂れた小波止場が黄金色に輝き、そのいっとき後には落日が織りなす黄昏色に代って、この変化はより寂れた波止場風景を感じさせてくれたのである。
落日間際の日の光は
波止場を黄金色に輝かし・・
いっときすると陽の光は
柔らかい黄昏色に変わって
寂れた波止場情景を醸し出していた
この魅惑的な変化を最後まで見届けたから、危うくこの地を去るべく乗るべき帯広行の列車に乗り遅れそうになったよ。 北の冬の暮れは早い。 乗り込む列車の時刻16:37には、駅舎の屋根の上には三日月が光っていた。
・・初めて訪ねた時から数年の時が経って、再びこの駅を訪れた時には繋がれていた船は数える程しかなく、波止場はより寂れていたようであった。 だが、波止場に至る道路は広く拡幅されて、周囲の家々も漁師町の家ではなく普通の居宅が目立っていた。 この撮影地も鉄道としての魅力をポロポロと落とすJR北海道と同じく、かつての魅惑を失いつつあるようであった。
- 関連記事
スポンサーサイト
No title * by 風来梨
●さん、こんばんは。
●さんも駅寝経験者でしたか。 それも、私と同じ中坊デビュー・・。 私の「初めて」は、越美北線の越前下山駅です。
駅の長椅子にあった座布団を被って雪の寒さに耐えましたよ。
あれからボタンの掛け違えで、現在に至ります(笑)
ヨタ話は置いといて、鉄道と海の情景を撮るなら最高のシチュエーションの撮影場所でしたね。 でも、今年の正月旅行で再訪したなら、漁港はより寂れてほとんど船が繋がれていませんでした。
周囲に住む人も漁業からはなれたのか、漁師町の雰囲気を持たない普通の建付けの居宅が目立ってましたね。
また一つ、私の知ってる鉄道の名景が消えたのかな・・と寂しく思いますね。
●さんも駅寝経験者でしたか。 それも、私と同じ中坊デビュー・・。 私の「初めて」は、越美北線の越前下山駅です。
駅の長椅子にあった座布団を被って雪の寒さに耐えましたよ。
あれからボタンの掛け違えで、現在に至ります(笑)
ヨタ話は置いといて、鉄道と海の情景を撮るなら最高のシチュエーションの撮影場所でしたね。 でも、今年の正月旅行で再訪したなら、漁港はより寂れてほとんど船が繋がれていませんでした。
周囲に住む人も漁業からはなれたのか、漁師町の雰囲気を持たない普通の建付けの居宅が目立ってましたね。
また一つ、私の知ってる鉄道の名景が消えたのかな・・と寂しく思いますね。
厚内駅は中坊の時に、初めての駅寝をした思い出深い駅です。
待合室の隣の飲食店のカラオケがうるさくてなかなか寝られなかったのですが、その飲食店もとうの昔につぶれていたんですね。
せっかく駅寝したのに、厚内浜に行った記憶はありません。
何も考えずに、始発に乗って次の目的地に行ったんだろうなと…。
こんないい景色が広がるのならば、ちょっとゆっくりしていけばよかったです。