風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  『日本百景』  >  『日本百景』 冬 >  第359回  龍宮ノ潮吹

第359回  龍宮ノ潮吹

『日本百景』 冬  第359回  龍宮ノ潮吹  〔山口県〕


竜宮ノ潮吹
冬の荒波が海洞の中で吹き上がる
神秘的な光景が目の前に

   龍宮ノ潮吹 りゅうぐうのしおふき  (北長門海岸国定公園)
《龍宮》とは津黄漁港西北端の海蝕地形の総称で、一帯は第4紀洪積世の玄武岩からなる海蝕地形である。  潮吹とは波で削れた流紋岩の洞穴に打ち寄せる波が突入するごとに、圧縮された洞内の空気が外に出ようとして海水を噴出する噴潮現象の事である。
 
冬の季節風である北東の風が吹き荒れて海が荒れる時ほど潮が高く上がり、時には30m以上も吹き上がるのである。 潮吹の穴は縦約1m・幅約20cmほどで、その下に洞穴がある。
 
遠くから眺めると龍が天に向かって昇る様子に似ていると言われ、飛び散るしぶきは太陽を反射して銀の砂をまくような光景が見られる。 この奇観は古代から「龍神のなせる業」として里人の間の信仰を集め、とりわけ干ばつの際には近郷より雨乞いに集まる民が多かったという。




荒れ狂う波が岩礁に
打ち付け怒涛となる情景
そんな情景がある所は
決まって交通不便な最果ての地だ

この項目で取り上げる『北長門海岸』は西日本の端に近い所に位置し、その位置づけゆえに交通が不便な所である。 しかし、交通が不便な所ほど、魅力的な情景がひそんでいるものである。
この『北長門海岸』の海岸線では、潮と風が永きに刻み込んだ“芸術”があちらこちらに現れて、旅人の目を満足させてその心を癒してくれる。 

さて、今回は、従来の『日本百景』の探勝で有りがちな厳しい行程は避け、肩肘を張らない“旅人”としての旅を演出しようと思う。 それでは、海と潮の香りに疲れた心と身体を癒しにいこう。


北長門海岸(青海島・龍宮ノ潮吹・川尻岬)の位置図

西日本の西北に位置する『北長門海岸』への玄関口は《長門市》である。 だが、この《長門市》まで向かうのが“ひと苦労”なのである。 関東はともかく、関西圏からの直通の便もない。 それどころか、隣県の島根や広島からも“使える”直通の便がないのである。 位置的にいうと、陸の孤島のような所である。 

そして、『北長門海岸』の代表的な景勝地である《青海島》以外には、観光目的の交通便が皆無なのである。 この事から、マイカーやレンタカーといった自動車利用が必要不可欠となる。
だがマイカーだと、ここまで運転してくるのが大変だ。 従って、《萩》や《津和野》・《秋吉台》といった観光名所のついでに寄られるのがいいとこで、ほぼ忘れられている所である。 


坂巻く波が岩礁を巻き込んで
著名な観光名所を遙かに凌ぐ
魅惑の情景が続く冬の日本海の海岸線へ

だが、ワテが『日本百景』の一つに選んだ所だ。 先に挙げた観光名所を遙かに凌ぐ美しい情景を、訪れた先々で魅せてくれるのである。 「苦労はしても、決して“徒労”には終わらない」、そんな情景を訪ねてみよう。


国定公園としては
知名度の低い北長門海岸
その国定公園からも外されていた
荒ぶる波の情景
ワテが訪れた当時は国定公園外だった

車を西の海岸線へ向けて進めると、《千畳敷》や《二位ノ浜》などの海水浴場や景勝地に出る。 
だが、目的地はここではない。 目的地は、もっと荒波が激しく旅情濃き岬の海岸線だ。
千畳敷への分岐を過ぎると道は細くなり、切り立った海岸線に沿ってクネクネと曲がりくねった道となる。
途中に幾つかの小さな漁港を過ぎると、お目当て景勝地《龍宮ノ潮吹》に着く。 


『日本百景』に選びし
波涛が織りなす神秘の情景へ
※ 長門市の観光ウェブサイトより

荒れ狂う波が
岩をも貫いた

波が荒れ狂う海の海岸線は、岩壁が荒波の浸食を受け無数の海食洞を形成するのであるが、下方の岩盤が堅い岸壁では、上方への浸食を受けて筒状の海食洞が形成される。 そして、それが地上まで突き抜けた時、打ち寄せる波を高々と地上に吹き上げる迫力満点の景色を魅せてくれる。 季節は北風が吹き荒れて、荒波が押し寄せる冬がいい。 

外海が荒れて敬遠される冬場だが、海岸線に出ると荒波が様々な情景を岩礁というキャンバスに描き、打ち寄せる波濤が様々な現象を魅せている。 時に激しく、時に懐かしく、時に不思議な・・、心をわくわくさせる情景が岬まで延々と続いている。

また、この奇勝は古くから民の信仰を集め、この潮吹きを「龍神様」として奉る《元乃隅稲成神社》がある。 この神社は「もとのすみいなりじんじゃ」と呼ばれ、全国各地の稲荷さまを奉る神社と一文字違う『成』の字を使っている神社である。


海の迫る丘に
赤鳥居が建ち連なって
※ 長門市の観光ウェブサイトより

それは津和野にある《太皷谷稲成神社》も同じ『成』の字を使っている事から判るように、この神社の出自は《太皷谷稲成神社》からの分社との事である。


建ち並ぶ赤鳥居をくぐり抜けて
波打ち際から望む「竜宮様」の袂へ
※ 長門市の観光ウェブサイトより


冬の荒波が高ければ高いほど
この地の安寧と五穀豊穣を叶える
“龍神様”が空高く舞い踊る

それは御神体である「潮を噴き上げて空を舞う龍神様」が、この地の民の安寧と五穀豊穣の願いを汲み取ってそれを叶える「願望が成就する稲荷神社」という事で、願望成就の一文字『成』がつけられている・・との事である。


海の碧や周囲の緑と相対する
鮮やかな赤鳥居のコントラスト
※ 長門市の観光ウェブサイトより

海の碧や周囲の緑と相対する鮮やかな赤鳥居が並ぶコントラストは、《龍宮ノ潮吹》の神秘的な情景を一層引き立ててくれる。 また、赤鳥居をくぐり抜けて波打ち際の高台へ至る高揚感も、仕立てられた観光地では生じない“旅心”をくすぐるのである。


海の迫る丘の上から
果てしない海を望む高揚感
※ 長門市の観光ウェブサイトより

冬の日本海が魅せる荒れ狂う海の情景や、波が岩礁に打ちつけるごとに願いを叶える龍が空を舞う神秘の情景を堪能しつつ、長門の街へと戻っていこう。

旅情誘う冬の荒波情景

前哨となる波涛が
岩にぶち当たり


波濤が“怒涛”に変わった


引き波が岩に
美しい筋絵を描き


荒れ狂う海が語る“冬”を
堪能したら帰路に着こう

《北長門海岸》の観光拠点である《長門市》までには《油谷湾》・《黄波戸こわど》と温泉が点在し、また内陸へ向かうと名湯・《長門湯元温泉》があるので、この地の著名観光地の萩や秋吉台を訪ねる前にひと風呂浴びるのもいいだろう。










関連記事
スポンサーサイト



No title * by 日本一周
この半島にはこんないいところがあるんですね。
私は東後畑の棚田に行っただけで、鳥居の神社も潮吹き岩もいけなかったです。
油谷のホテルにも泊まったんですがねえ…。
再度ゆっくり行ってみたいけど、ちょっと遠い…。

No title * by 風来梨
日本一周さん、こんばんは。

確かに遠いですよね。関東からだと特に・・。 関西の私から見た秋田県の阿仁合とか、青森県の深浦に例える位に。

逆に、この地に有名な棚田がある事は知りませんでした。 雪を被った冬の棚田風景は、被写体として「美味しそう」ですね。

あと、この近くには、「知る人ぞ知らん」という位にマイナーな匹見峡があります。 この時は、チェーンを着けてこの匹見峡の雪景色を見に行きました。

コメント






管理者にだけ表示を許可

No title

この半島にはこんないいところがあるんですね。
私は東後畑の棚田に行っただけで、鳥居の神社も潮吹き岩もいけなかったです。
油谷のホテルにも泊まったんですがねえ…。
再度ゆっくり行ってみたいけど、ちょっと遠い…。
2018-12-23 * 日本一周 [ 編集 ]

No title

日本一周さん、こんばんは。

確かに遠いですよね。関東からだと特に・・。 関西の私から見た秋田県の阿仁合とか、青森県の深浦に例える位に。

逆に、この地に有名な棚田がある事は知りませんでした。 雪を被った冬の棚田風景は、被写体として「美味しそう」ですね。

あと、この近くには、「知る人ぞ知らん」という位にマイナーな匹見峡があります。 この時は、チェーンを着けてこの匹見峡の雪景色を見に行きました。
2018-12-23 * 風来梨 [ 編集 ]