風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  『日本百景』  >  『日本百景』 秋 >  第354回  谷川連峰・国境稜線 その2

第354回  谷川連峰・国境稜線 その2

『日本百景』 秋  第354回  谷川連峰・国境稜線 その2  〔群馬県・新潟県〕


美しき山岳稜線を魅せる
谷川岳と一ノ倉岳
※ 夏の茂倉岳稜線より

  谷川岳 たにがわたけ (上信越高原国立公園)
群馬・新潟県境にそびえる谷川岳 1977メートル は嶮しい山容を示し、ロッククライミングのメッカとなっているが、その一方で遭難者も多く“魔の山”としても知られている。 
この山は、山頂部に三角点のある“トマの耳”と、その北に最高点の“オキの耳”の2つのピークを持つ双耳峰で、山麓から仰ぎ見ても、この『耳二ツ』はよく目立つ。 

群馬県側の東斜面は雪崩・豪雨などの浸食作用で嶮しい谷を刻み、中でも一ノ倉沢の谷は容易に人を寄せつけず、クライマー達の初登攀 とはん 争いの舞台ともなった。 
山頂からは、燧ケ岳・越後三山・苗場山などの眺望が素晴らしい。




谷川連峰・国境稜線 行程図

    行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR越後湯沢駅より鉄道利用(0:30)→土合駅(1:00)→巌剛新道入口
     (3:40)→肩ノ小屋分岐(0:05)→谷川岳・トマの耳(0:15)→谷川岳・オキの耳
     (0:20)→肩ノ小屋(2:00)→大障子避難小屋
《2日目》 大障子避難小屋(1:20)→万太郎山(2:30)→エビス大黒ノ頭(1:30)→仙ノ倉山
     (0:50)→平標山(0:40)→平標山ノ家(1:40)→平標登山口よりバス
     (0:40)→JR越後湯沢駅
   ※ 前回の『第353回 谷川連峰・国境稜線 その1』の続きです

  《2日目》 国境稜線を伝って越後湯沢へ
稜線の他の小屋と比べればまとも・・とはいえ、やはり“ドラムカン”だった。 強い風が吹くと嫌な揺れが・・、みぞれが降ると甲高い嫌な音が・・。 ここで言いたい事は、どのような状況であれ、眠れる強い精神力!?が必要という事である。 冗談ぽく述べたが、眠れなければ明日しんどい思いをするのは自身の事である。 しっかりと睡眠を取っておきたいものだ。

・・さて、今日は行程時間9時間近くと、かなりの長丁場だ。 また、想像以上にキツいアップダウンがあり、かなり体力も必要だ。 それを踏まえてガイドしていきたいと思う。 長丁場である・・ということを踏まえて、極力早くの出発を心掛けよう。 この時期(10月下旬)の日の出は6時過ぎだ。
日の出と共では、少々出発が遅すぎる。 空が明るくなって、視界が利く5時半には小屋を出たいものである。 


晴れていたなら
爽快なスカイラインが広がる
※ 夏山で望んだ万太郎山

さて、ワテの訪れた時は、昨日の空からの予想通りみぞれ混じりの荒天であった。 防寒をしっかりして(特に手)、出発しよう。 小屋を出ると、眼前にそびえる《大障子ノ頭》に向かって登っていく。
この登りはそれ程大したモノではなく、むしろ起きがけで冷えている体を暖めるには都合がいい登りである。 だが、緩やかなのはここだけで、これを越えてからの万太郎山の登りは、日頃の運動不足を嫌という程に思い知らされる急登となる。 

荒天ゆえに何も見えぬままひたすら登ると、万太郎山 1954メートル の頂上に着く。 
万太郎山は国境稜線のほぼ中央に位置し、谷川岳とも程よく離れているので、晴れていれば360°の絶景が見渡せる事だろう。 だが、残念な事に今日は白霧の世界で、立ち止まれば寒いだけなので早々に通過する。 なお、この頂より《土樽》へのエスケープルート『吾策新道』が分岐しているので、体調不良時の備えとして把握しておこう。 


夏のこの斜面は
ニッコウキスゲのお花畑となる
※ 夏山で撮った写真より

万太郎山からは両側にササが密生する長ったるい下りで、本日のように荒天しきり・・の時は少々ストレスが溜まる。 これを下りきるだけで30~40分はかかるであろう。 下りきると《毛渡乗越》という鞍部に出るが、その手前に《オジカ沢の頭》の避難小屋と全く同規格の“高床式ドラムカン”もとい避難小屋が建っている。


見た目はオジカ沢のドラムカンよりボロいが
板スノコはフラットだしィ
草に埋もれて日が当たらない分涼しいしィ

この避難小屋は、地図表記では「’96年に建て替えられた」との事なので、これを目にすると“建て替えてこれか!?”という印象を強く抱いてしまう。 ちなみに筆者はこのドラムカンに泊った事があるが、見てくれとは違ってかなり快適であった。 ただ雨降りだと、雨がドラムカンに当たってやかましいだろうね。

さて、このササ道を下りきった《毛渡乗越》からが、この稜線最大の登高となる。 狭いスペースにある《毛渡乗越》で『川古温泉』への下山路(このルートは長く徒渉点もあるので、エスケープルートには不向き)を分けて、《エビス大黒ノ頭》へ向けて直登気味に登っていく。


稜線最低点の《毛渡乗越》と
その先に盛り上がる《エビス大黒ノ頭》
高低差が320mにも及ぶイッキ登りだ

《毛渡乗越》が稜線上の最低点で標高は1568mであるから、実に320mのイッキ登りとなるのだ。
時には直登・・、時にはジグザクのつづら折りを交えての息も着かせぬ急登を、1時間以上耐えねばならない。

ワテの抱く谷川連峰は、東面の峻険な谷以外は総じてなだらかな草原をイメージしていたので、この急登はイメージとのギャップでかなりキツく感じたのであるが。  また、《エビス大黒ノ頭》までは数度のコブがあり、このコブに近づくごとにあらぬ期待を抱いてしまうので、“外れた”時の精神的ダメージも大きい。 なお、この日は荒天で気づかなかったが、この登路中の群馬県側は切り立った崖となっているので、縁に寄り過ぎぬように注意しよう。 


空がグスついてロクに撮れなかったので
夏に見た情景をひとつまみ
コレ何つまみ目だよ

やっとの事で登りついた《エビス大黒ノ頭》からも荒天ゆえに何も見えず、古びた道標の錆びた鉄柱を利用した“ベンチ”でひと息とため息を着くしかなかった。 ここも、晴れていれば絶景を見渡せるとの事なので、返す返す残念である。 


見た目は“カワイイ”が中身はカワイくない
エビス大黒のドラムカン

さて、《エビス大黒ノ頭》からは、再び枯れササの覆う道となる。 これは《エビス大黒避難小屋》の建つ所で終わり(この小屋は、少しおしゃれなドラムカンであった。 いうなれば、《大障子避難小屋》の“小型版”といった所か・・)、これより谷川連峰の最高峰・仙ノ倉山に向けての最後の急登となる。
標高差で約250m。 《エビス大黒ノ頭》への登りのような鋭さはないが、これまでの急登でヘタっているふくら脛にはかなりコタえる登りだ。 

仙ノ倉岳の東面の登りは今までの岩稜とは打って変わって、草付きのストレート斜面をつづら折りで急登していく。 たぶんこれは、この斜面の方角がやや南に振れている為に完全な雪食を受けなかったからあろう。 坂の状況はどうあれ、キツい急登には変わりない。 ただ、唯一の救いは、この辺りから天候が急速に回復して青空も見られるようになった事である。 


天気が急速に回復して
山を登る喜びを得る事ができた
空が晴れてきたので
これよりは秋の写真おば

青空に突き上げる峰に向かってつめていくと、両側が白い柵で仕切られた頂上台地上に出る。 
後はウイニングランの如く、白い柵に仕切られた“プレミアムロード”をつめると、谷川連峰の最高峰にして唯一2000mを越える仙ノ倉山 2026メートル の頂上だ。


荒天ゆえに侘しさ漂う
谷川連峰最高峰・仙ノ倉山頂上

仙ノ倉山の頂上は広く、また整備されていた。 おそらく、ここまでは一般のハイカーも多数やってくるのであろう。 頂上に着いた時は、再び曇天となったので、《アリバイ写真》もそこそこに出発する。 
だが、この仙ノ倉山も、晴れていれば連峰でもトップクラスの展望が広がる・・との事である。 
これを望めなかったのは、返す返す残念である。

・・さて、仙ノ倉山からは今までの状況から一変して、全ての通路に木道が敷かれたハイキングコースとなる。 そして、仙ノ倉山へ向かうハイカーのいでたちを見ると、縦走装備でデカいザックを背負ったワテは完全な“場違い”となる。 仙ノ倉山から平標山の間は広い草原地帯となる。 
夏ならば、きっとお花畑が群生している事だろう。 この木道上で唯一唯一気をつける事があるとしたなら、それは木道が濡れている・・、又は氷が乗っている事であろう。 


雪が半分乗った木道は
ズル滑りの恐怖がつきまとう

この上に足を乗せると、見事な位ハデに転倒する。 転んだ本人が言うのだから、他山の石として留意して頂きたい。 木道で尾根上の広い草原を突っ切って鞍部まで下ると、平標山への登り返しが始まる。
この登りは完全に整備された石段の道で、《エビス大黒ノ頭》や仙ノ倉山のキツい登りを顧みると、少し腹立たしくも感じる。 この石段をつめると平標山 1984メートル の頂上だ。


平標山から三国峠方向を望む

絶景に思わず“ヤッホー”

平標山の頂上では、再び青空が広がってきて、ようやく念願の山景色を頂の上から堪能する事ができた。
ただ心残りは、この平標山からは、仙ノ倉山に隠されて谷川岳の主脈が望めない・・という事である。
だが、この頂からの眺めも捨てたものではない。 南方は、三国峠へ向けてライトグリーンの大草原がうねりとなって連なる絶景が望めるのである。

そして、その草原をめぐって一段づつ木道を下っていく高揚感は、この山の最大の魅力となろう。
遙か下の小高い台地に建つ《平標山ノ家》までの高原ロードを、カメラを片手にゆっくりと下っていこう。


平標山からは美しい草原を
眺めながら下っていこう

約40分一般のトレッキングハイカーに混じって下っていくと、《平標山ノ家》である。 
山の展望はここで終わりなので、心ゆくまで素晴らしい山岳風景を楽しもう。 
後は、完全にハイキングコースとなった『平元新道』を下っていく。


麓から紅葉の平標山を望む

今度の魅せ場は、麓の紅葉だ。 美しく染まる木々の紅葉を楽しみながら、ゆっくりと下っていこう。
これを下りきると、《上信越自然歩道》となる林道に出る。 後は紅葉を愛でながら歩いていこう。 


美しく色づく紅葉

やがて舗装道路となり別荘地が見え出して下界に近づいている印象が濃くなる。 
そして、舗装道が国道と合流する所が、この山旅のゴールである《平標登山口》のバス停だ。 
後は、バスに乗って上越新幹線の乗車駅であるJR越後湯沢駅に戻ればいい。 


美しい紅葉並木を見ながら・

バスは1日8本あるので、15:45発のバスに乗ることができればその日の内に帰る事ができる。 
こんな素晴らしい紅葉があるのに、せせこましくバスの時間に追われることはない。 
カメラ片手にゆっくりと歩こうではないか。












関連記事
スポンサーサイト



コメント






管理者にだけ表示を許可