2018-10-29 (Mon)✎
『日本百景』 秋 第352回 田立ノ滝群 〔長野県〕
田立ノ滝群 ただちのたきぐん 長野県・南木曽町
中京圏から手軽な1dayハイクが可能な渓谷が、『日本の滝100選』にも指定されているこの田立ノ滝群であろう。 『100名滝』には『田立ノ滝』として単体滝のように選定されているが、実際は主瀑の天河滝を始めとする滝と瀬と淵がおりなす渓谷の総称である。
紅葉をまとい美しく螺旋を描く
螺旋滝
激しい水勢を見せる
不動滝
不動滝
従って、この『日本百景』では「正しい姿で表記したい」と思う筆者の考えがあるので、真の姿である『滝群』という言葉を用いる事にした。 それでは、前夜出発での日帰り探勝で楽しめる『100名滝』を最も景観が素晴らしい秋の季節に訪ねてみる事にしよう。
田立ノ滝群 位置図
(0:10)→天河滝(0:30)→そうめん滝〔渓谷終点〕で折り返し
(0:15)→不動岩展望台(1:15)→坪栗・田立ノ滝入口駐車場より車(0:05)→うるう滝
(0:50)→中津川市街〔中津川 IC〕
午後で西日になると
綿雲が滝風景を飾ってくれた
綿雲が滝風景を飾ってくれた
この滝群を抱く渓谷は岐阜県と長野県の県境の長野県側で、有名な観光地の中山道の宿場町・妻籠のすぐ近くに位置する。 従って、中京圏は元より、関東や関西圏からの前夜発日帰りの渓谷探勝が可能である。
そのアプローチであるが、中央道を中津川インターチェンジで降りて一般道の国道19号を長野県との県境に向かって20kmほど進むと、県境を越えてすぐに『田立ノ滝』の看板が掲げられた三差路が現れる。
これを右手に入り、180°方向転換するように丘上に上っていく。 その丘上の集落を突っ切って、キャンプ場園地となっている《田立ノ滝キャンプ場》までゆく。
《田立ノ滝キャンプ場》からは、キャンプ場の私道である細い道を進んでいく。 その細い道が途切れた所が《坪栗・田立ノ滝駐車場》である。 道は駐車場の敷地以外は舗装されているが、離合困難な細く曲りくねった道なので運転には注意したい。
《田立ノ滝キャンプ場》からは、キャンプ場の私道である細い道を進んでいく。 その細い道が途切れた所が《坪栗・田立ノ滝駐車場》である。 道は駐車場の敷地以外は舗装されているが、離合困難な細く曲りくねった道なので運転には注意したい。
渓谷入口の駐車場にあった
田立ノ滝群の案内図
駐車場にはトイレと休憩所が設けられている。 駐車場で足回りの支度をして出発だ。
なお、渓谷遊歩道は、ハシゴ階段や渓流の露岩上など登山道然としているので、軽登山程度の足回りは必要である。
なお、渓谷遊歩道は、ハシゴ階段や渓流の露岩上など登山道然としているので、軽登山程度の足回りは必要である。
便所の建物を過ぎると、切り出された石段のある渓谷入口だ。 これを登っていくと、木曽川の支流・大滝川の渓流が寄り添ってくる。 だが、渓流との間には雑木が生い茂り、あまり渓谷を見渡す事ができない。
渓流とのファーストコンタクトは
雑木が邪魔をして見通しが悪い
雑木が邪魔をして見通しが悪い
10分近く歩いていくと渓流の畔にベンチの設けられた休憩場があり、ここに立つとようやく写真が撮れる位の渓谷展望が望める。 ここは《八ヶ瀬》というが、《田立ノ滝》に期待してきた分には物足りない眺めである。
《八ヶ瀬》は期待が大きい分だけに
平凡な眺めだった
平凡な眺めだった
更に歩いていくと、渓流からやや離れた登山道然とした道となり、周囲に樹立する大樹の中を行くようになる。 途中には大木にあだ名をつけて呼称する(例・樅→モミタロウ、欅→ケヤキチ・・等)説明看板が立ち、その左端には霧ヶ滝と駐車場への距離が記されている。
コイツの名は
確か『サワラ大師』だったっけ?
確か『サワラ大師』だったっけ?
駐車場から最初に現れる主要滝まで、2.3kmの距離のようだ。 この樹のあだ名のついた案内看板を5つほどやり過ごすと、《霧ヶ滝》と《螺旋滝》の分岐にでる。 位置としては例の看板によると、『アト370m』の地点らしい。
この分岐では、《螺旋滝》の方へ向かってみる事にしよう。 《螺旋滝》へは手足が必要な位のかなり急な下りを30m程下っていくが、滝はその苦労が報われる素晴らしい景観の滝である。
この分岐では、《螺旋滝》の方へ向かってみる事にしよう。 《螺旋滝》へは手足が必要な位のかなり急な下りを30m程下っていくが、滝はその苦労が報われる素晴らしい景観の滝である。
田立ノ滝群の中で
最も紅葉の彩りが美しかったのは
最も紅葉の彩りが美しかったのは
この螺旋滝だ
落差25mの2段の段瀑で、その名の通りに段が螺旋状にねじれて落水する滝だ。 螺旋の上段を紅葉が彩り、私が見る限りでは最も紅葉が引き立つ滝であった。
紅葉が最も引き立つように
狙ってみたが如何に
難点を言えば、この滝の滝見場所がヘツり気味の滑り易い狭い岩の上で、足場がかなり悪い事であろうか。 この滝を撮り終えたなら、行きに急激に下った土手の傾斜をよじ登る要領で登り返して遊歩道の『霧ヶ滝までアト370m』の地点に戻る。
ここからは、桟道と吊り橋が連続するようになる。 現在はその吊り橋や桟道の取替え工事の真っ最中で、完成した真新しい桟道や吊り橋と、廃止となって放置された旧吊り橋などが見られるようになる。
通路は勿論、新しく付け替えられた吊り橋である。
そして、取り替え工事の済んでない桟道や吊り橋には、橋前に「この橋は3人以下で渡って下さい」の注意書きが掲示されている。 吊り橋や桟道を越えて進んでいくと、やがて眼前に大きな一枚岩盤を滑り落ちる落差35mの大瀑が現れる。 樹にあだ名をつけていた説明看板に距離が記されていた《霧ヶ滝》である。
樹にあだ名をつけた説明看板が
しきりに距離を示していた霧ヶ滝
しきりに距離を示していた霧ヶ滝
見上げると、《霧ヶ滝》の奥にこの渓谷滝群の主瀑である《天河滝》も望む事ができるが、これよりはその望むべく位置にある《天河滝》まで、滝2つ分の標高差100mの登りとなる。
霧ヶ滝より先は
紅葉が見頃となる
この《霧ヶ滝》から《天河滝》への登り道区間が探勝路改良工事の最前線となっていて、朽ちた丸太の土盛り段からアルミ製の階段への付替え工事がなされていた。 だが、これらの工事は実際に大変な仕事だと思う。 段の材料や工具をこの場所に運ぶだけでも凄い労力を要するのだから。
天河滝への登りの途中で
さて、この2つの滝の最上部まで詰める登りであるが、踏み段の取り換え工事がまだ行われておらず、やや滑り易い。 だが、登山道としては、これでも整備された『通りよい道』の部類であろう。
約10分で、この滝群の主瀑・《天河滝》の目の前に出る。
田立ノ滝群の主瀑・天河滝
主瀑・天河滝の迫力は渓谷随一
だが周囲を飾る紅葉は少なかった
だが周囲を飾る紅葉は少なかった
ここは滝前の広い河原の上に腰を掛けて、しばし青空と綿のような千切れ雲と一枚岩に落水を滑らす《天河滝》の織りなす滝オーケストラを堪能しよう。
天河滝のキメ写真はコレかな
思う存分に滝オーケストラを堪能したなら、この滝の上部渓谷へと登ってみよう。 《天河滝》の下からの遊歩道は木段がつづら折りに連なっていて、ジグザクを斬りながら滝の落ち口の上まで登っていく。
これを登って《天河滝》の上に出ると、《天河滝》の上部が花崗岩の織りなす箱庭状になっているのを見る事ができる。 だが、遊歩道上からは雑木が邪魔をしてカメラアングル的には今イチである。
すぐ下に枝分かれする踏跡を伝うと《天河滝》の落ち口の真上に立つ事もできるが、当然滝より転落するリスクも高いので、この踏跡の前に通行禁止の看板が立てられている。
通行禁止の看板の立つ踏跡をたどると
庭園のような滝の落ち口が望めるが
庭園のような滝の落ち口が望めるが
:
コレを辿るのは自己責任の元で
《天河滝》を越えると沢の両岸の岩盤が狭まり、右手に不動岩のともいえる大岩盤が迫り出してくる。 この大岩盤の上が、今回の探勝ルートの折り返し地点だ。 やがて、取替え前の古い吊り橋で沢を渡るが、この吊り橋の前に迫り出した大岩をバウンドして方向を90°変えて落水する分岐瀑の《不動滝》が現れる。
秋らしい雰囲気を魅せる
不動滝
不動滝
大岩でバウンドして流れを変えたこの滝の下段は滝筋が細くて今イチだが、上段は斜瀑気味に珠が弾ける様な落水模様を示し壮観だ。 ここは吊り橋を渡って、滝の脇の遊歩道の朽ちた木段から、この滝の落水模様を狙うとしようか。
不動滝を定石通りに流す
飛沫は横から撮るといいかも
更に飛沫をズームで引っ張ると
滝の脇からの写真を撮って、《ちどり桟橋》と名付けられたこの朽ちた階段をジグザクにつめて《不動滝》の上に出ると、広い河床を沢が嘗めるような眺めとなる。 《竜ヶ瀬》である。 この辺りまで来ると沢の水勢も少し弱くなり、源流に近づいている事が想像できる。
河床が雛壇上となる
《竜ヶ瀬》
《竜ヶ瀬》
《竜ヶ瀬》から更に進んでいくと、《鶴翼ノ滝》という雛段状の流れの上に《雲上橋》という吊り橋がかかっている。 ここが、先程に見上げた不動岩への登り道と渓谷の更に奥にある箱淵や丸淵への分岐なのであるが、この先の渓谷遊歩道は土砂崩れ等があったのか・・、残念ながら100m先の《そうめん滝》を過ぎた所で通行止となっていた。 従って、不動岩の展望台へ行く事にしよう。
不動岩の展望台へは、先程の《雲上橋》を渡って、距離300m・標高差70mを登りつめねばならない。 まぁ、山をやっていれば大した事ないレベルだが、日頃の運動不足な御仁や筆者のように『過去の栄光』にすがってばかりのダメっ子には少々手厳しいかもしれない。 これを登りつめた大岩盤の上からは、紅葉に彩られた山肌に囲まれた南木曽地方の里風景が一望できる。
不動岩展望台より
南木曽の里を望む
南木曽の無名峰に
登頂の夢を馳せて
展望台より望む恵那山は
とにかくデカい
とにかくデカい
また、対峙する恵那山が想像以上にデンと構えている姿が印象的であった。 展望写真と秋色を示すナナカマドの紅葉と青空のシーンを撮り納めたなら、折り返して帰路に着こう。
山肌を彩る紅葉を
逆光でかざしてみた
青空と真っ赤に色着く
ナナカマド
なお、この展望台から林道に出て徒歩3時間で湿原の広がる《天然公園》という頂上丘公園に行く事ができるが、ここまで行くとなると早朝日の出前の出発が必須となろう。
帰りに魅た天河滝は
西日で影が掛かっていた
西日で影が掛かっていた
西日で影っていたので
滝のアップに作戦変更
滝のアップに作戦変更
帰りはマイカーで来ている以上は往路を戻る以外に選択肢はないが、日が西に傾きつつある中を往路で見た滝の斜光に影がかかった別シーンを撮り楽しみながら下っていこう。
今日はあのてっぺんまでを
往復したんだなぁ
《坪栗》の駐車場まで戻ると、あと一つ寄る所がある。 それは、この駐車場から1km下方にある《うるう滝》だ。 この滝は車で眼前まで行けるので、秋の季節で落日が差し迫ったこの季節は車でのアプローチも致し方あるまい。
渓谷遊歩道から
離れた位置にあるうるう滝
《坪栗》への舗装道より分岐した林道を400mほど行くと、沢を渡る橋の先に『うるう滝』との表示があり、車が3台ほど止められるスペースがある。 ここから100mほど先に、落差40~50mと今日見た滝の中で最大の落差がありそうな《うるう滝》が斜瀑気味に白布を掛けている。
田立ノ滝群の中で
最も落差があると思うのは気のせい!?
滝の撮影ポイントまで1~2分で行けるので、残りのフイルムを使い切って、この1dayハイクの渓谷探勝を終えようと思う。
『関東・甲信越の名滝めぐり』を見てネ。 他の名瀑もあるよ!
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No title * by たけし
田立という地名は初めて知りました。
滝群というだけあって個性的なのが数多くあるんですね。
アルミ製の階段を付け替え中とのこと、知る人は知ってるんですね-!
滝群というだけあって個性的なのが数多くあるんですね。
アルミ製の階段を付け替え中とのこと、知る人は知ってるんですね-!
No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
ギアナ高地の滝、見てみたいですね。
規模はこの滝の何倍とあるでしょうね。
でも、紅葉と撮るなら、日本の滝が慎ましくて合ってますね。
ギアナ高地の滝、見てみたいですね。
規模はこの滝の何倍とあるでしょうね。
でも、紅葉と撮るなら、日本の滝が慎ましくて合ってますね。
No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。
付け替え工事は、訪れたその時が工事中でした。 重機などは入れませんから、資材をヘリからの吊り下げか、担いで運ぶ真に御苦労な作業です。 有り難い事ですね。
我が国日本は清き水が育んだ国ですね。
大小様々、公式に名の着いた滝だけでも2500ヵ所以上あるそうです。 無名滝を入れると万は下らないでしょうね。
スケールの大きな国です。 我が国・日本は・・。
付け替え工事は、訪れたその時が工事中でした。 重機などは入れませんから、資材をヘリからの吊り下げか、担いで運ぶ真に御苦労な作業です。 有り難い事ですね。
我が国日本は清き水が育んだ国ですね。
大小様々、公式に名の着いた滝だけでも2500ヵ所以上あるそうです。 無名滝を入れると万は下らないでしょうね。
スケールの大きな国です。 我が国・日本は・・。
ナイス