風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第51話  五竜・遠見尾根

よも”ヤマ”話  第51話  五竜・遠見尾根  〔長野県・富山県〕 ’92・8
大黒岳 2400m 、五竜岳 2814m 【名峰百選 16峰目】、白岳 2541m 、西遠見山 2268m
大遠見山 2106m 、中遠見山 2037m 、小遠見山 2007m


唐松岳頂上小屋から望む
五竜岳の夕暮れ

  後立山連峰 うしろたてやまれんぽう (中部山岳国立公園)
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。

大雪渓と広大なお花畑を擁する盟主・白馬岳 2932メートル 、高山のいで湯とお花畑が自慢の白馬鑓ヶ岳 2903メートル 、山々の姿を映す八方沼と広大なお花畑をかかえる唐松岳 2699メートル 、武田氏の御陵菱を雪形に持つ五竜岳 2814メートル 、2つのピークが吊尾根で結ばれていて他の山から眺めてもひときわ目立つ後立山連峰のもう一つの盟主・鹿島槍ヶ岳 2890メートル など、今すぐにでも飛んでいきたい名峰がそろっている。 

登山コースはどのルートを取っても素晴らしいものばかりだが、特に白馬岳から栂池へ下っていくコースは、山上の楽園を散歩する気分を満喫できる最高のコースである。 その他にも、唐松岳の北側にノコギリ刃のような岩峰を連ねる《不帰ノ嶮》を通るコースや、鹿島槍ヶ岳の北にある《八峰キレット》など、バリエーションコースも豊富である。




後立山連峰(白馬岳~五竜岳)縦走路 行程図

    行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR白馬駅よりバス(0:30)→猿倉(0:55)→白馬尻(1:40)→葱平
     (2:00)→白馬山荘(0:15)→白馬岳(0:25)→白馬岳キャンプ場
《2日目》 白馬岳キャンプ場より白馬岳往復・所要約1時間(0:45)→杓子岳
     (1:00)→白馬鑓ヶ岳(0:40)→天狗平(1:40)→不帰ノ嶮(2:50)→唐松岳
     (0:15)→唐松岳頂上山荘
《3日目》 唐松岳頂上山荘(0:50)→大黒岳(1:10)→五竜山荘・五竜岳へは往復約1時間40分
     (1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト
     (0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅

     ※ 前回の『第50話 不帰ノ嶮』からの続きです。


不帰ノ嶮の難所越えで
培った自信を持って五竜岳へ

唐松岳を越えると、縦走路はめっきりと静かになる。 それは、ほとんどの登山者が最も下山が楽な八方尾根を下っていくからである。 だから今日は、静かに展望を楽しみながら歩く事ができる。


唐松岳の頂で
昨日までに伝ったルートを一望して
さぁ、出発だ
さて、出発してすぐに《八方尾根》の下山ルートを分けて、思ったよりも痩せた岩稜地帯を伝っていく。 
眼前には、懐の深い見応えのある山容を魅せる五竜岳が大きくそそり立っている。 
背後は、唐松岳がピラミタルな山容を示している。



ピラミタルな容姿を魅せる唐松岳と
背後にゴツゴツした岩稜を示す不帰ノ嶮

これらを眺めながら岩稜の中を下り気味に伝っていくと、浮石の目立つガレ場を鎖を伝って下る。 
おおむねルンゼ状の中をいくので大転落事故の心配はないが、油断すると浮石にけつまづいたりして痛い思いをするので注意しながらゆく。


タカネツメクサ
人通りの少なくなる山域では
ゆっくりと高山植物を狙う事ができるね

ザラザラの滑りやすい下りを経て岩稜地帯から樹林帯に入っていくと、牛首・大黒岳の鞍部に出る。
オオシラビソの美林と剱岳・五竜岳の眺めが、いい雰囲気をかもしだしている所だ。 


大黒岳より望む剱岳
鶴翼の如く尾根を広げていた


大黒岳から望む五竜岳
五竜岳を最も魅惑的に望めるのはこの頂だろう

鞍部からはハイマツ帯を登り返し、大黒岳のピークを巻いて右に少し下ると狭い稜線の際に出る。 
ここからシラビソの樹林の間を縫って下っていくと、大黒岳と白岳の鞍部に着く。 


午前中は晴れ間が残っていて
展望も楽しめたが

ここは後立山連峰の稜線上では、最も標高が低い鞍部との事である。
ここからは、白岳の山肌を斜めに刻まれた登山道を見上げながら登っていく。 


ホソバウルップソウ
岩稜らしく砂礫地に咲く花が多く魅られる


イワギキョウ
盆に差しかかれば花の色も濃くなって
”ヤマ”は秋の様相を魅せ始める


トウヤクリンドウ
秋口に咲く古来から薬となるリンドウの花


ミヤマリンドウ
眠りに着く冬の前にその存在を
示すかのような魅惑的な蒼を魅せて

周りは潅木と草付きで、高山植物もチラホラと顔を覗かせる。 白岳に向かって大きく弧を描く登山道を斜めに登っていくと、やがて《遠見尾根》の下山ルートとの分岐を越えて真下に見える《五竜山荘》へ下っていく。 ここまできたなら、是非にも名峰・五竜岳に登っておきたい。 
ここに荷物をデポって、キャンプ指定地の脇からグングンと高度を上げていく。 


五竜岳頂上へは
御領菱を模る岩峰・『G2』への登りだ

五竜岳の見応えのある姿を形成する『G0』・『G2』と呼ばれる岩峰を、それぞれ黒部側に巻きつつ登る。 特に『G2』は、“御領菱”の雪形を刻む岩峰として有名だ。 これらの岩峰が黒部の《餓鬼谷》へ落とすそのヒダをヘツる所では鎖付きとなっているが、昨日通った《不帰ノ嶮》は元より、今日通った大黒岳の鎖場より安易なモノで、通過には何ら心配はない。


イワギキョウ
その要旨は真に岩場に現れる妖精だ

これを越えると、頂上直下の小鞍部から越中側のザラついた岩場に取り付き、巻き気味に登りつめると、頂上標柱の立つ鹿島槍ヶ岳との“分岐点”に登り着く。 本当の頂上は、更に右へ細い稜線を20m位伝った所にある。


五竜岳の頂上にて
何気にポーズを取る若き日のワテ

五竜岳 2814メートル の山頂からは、“パートナー”鹿島槍ヶ岳の“二ッ耳”や『G0』から『G7』まで続く恐竜の背びれのような五竜岳岩峰群、深く切れた《八峰キレット》など飽きない展望が広がる。


この日は見えたのが
最大でこのレベルの曇天だった

だが、それは天気が良ければ・・の事で、この日は鈍重な雲に覆われて鹿島槍が薄っすらと望める程度だった。 山頂での展望は残念だったが、まだ麓まで4時間近くかかる下山が控えているので、展望は次回に託して下山に取りかかる。 

《五竜山荘》までは、往路を忠実に戻る。 ザラ場の下りが多いので、ただでさえコケ安いワテは注意が必要だし。落石を起こすと顰蹙モノなので、これも注意したい。 《五竜山荘》でデポった荷物を回収して、《遠見尾根》コースを下っていく。


オヤマノエンドウ
この時はまた時折に日差しも射していた

先程の道を白岳の分岐まで戻り、岩屑を盛り上げたような山頂に向かって登っていく。
白岳 2541メートル 山頂は縦に細長い感じで、山頂広場は北アの山にしては珍しく荒れていた。
白岳の細長い頂上台地を尽きるまで歩いていくと、右の《白岳沢》に向かって大きく進路を変えて、ザラザラのガレ場を急下降していく。 


ナンブトウチソウ
赤いネコジャラシですね

この下りは調子ついて下ると、必ずといっていい位転倒する。 ここでの転倒は小さな砂利石に乗っかっての“スライディングタックル”なので、全身擦り傷となりかなりのダメージを受けるのである。
コレは、筆者のワテの体験に基づくモノなので本当である。←つまり、スライディングタックルでトライを決めたのね・・。 


ハクサンフウロ
派手にコケた痛さを花で紛らわすワテ

この下りを終えると、痩せた鞍部を越えて西遠見山に向かって登り返す。 どこが頂上か判らぬ樹林帯の中を通り抜ける。 たぶん、素知らぬ内に西遠見山の頂上を越えているのだろう。 

やがて、汚い水溜りのような《西遠見ノ池》を横に見て湿地帯をダラダラと上下すると、ネマガリタケに覆われた大遠見山 2106メートル の山頂に出る。 ここも山頂がどこか判らぬ丘の上だが、晴れていれば五竜岳と鹿島槍ヶ岳が肩を並べてそびえる“風景”が望めるビューポイントなのである。

・・が、生憎、五竜・鹿島槍共演の”ビューポイント”は望めず、雨風が我が身に「ビュー」と吹きつける最悪の展開となっちまったよ。 


雨の中で霞むコオニユリ
雨の唯一の利点は
しっとりとした花姿が撮れる事・・かな?

大遠見山からは、小さく下って北に位置する《平川》側の支稜から南の支稜へ乗り換える。 
後は、
ネマガリタケに囲われた道を何度か上下すると、中遠見山の頂上を経て小遠見山直下の広場に出る。 ハイキング程度のトレッカー達は、ここまでで引き返す事が多いみたいである。 


ゴゼンタチバナ
この花が路傍に現れるとゴールも近い


シモツケソウ
白馬の栂池や天狗原でよく見かけた花です

ここからはダケカンバの樹林帯を越えて整備された《見返り坂》を下り、《地蔵ノ頭》の山頂公園を通ってリフトの乗場に下り着く。 リフトに乗って、足をブラブラさせながら山の余韻に浸るのも結構“乙”である。 ちなみに、雨の日はハイカーが少ないのか、リフトは運休中で歩かされたよ。
・・で、「足をブラブラ~」の至福の時は、次回の時まで”お預け”となる。


下山口で見かけたのは
里山に咲く花だった
 
《アルプス平》からは、テレキャビンを利用して下る。 テレキャビンで、標高差800mをイッキに下りて山麓駅へ・・。 山麓駅に着いたなら、山麓駅の向かいにあるクアハウスで汗を落としていくとしよう。 JR神城駅からの松本方面の列車は、1時間に1本程度あるので心配はないだろう。

後は列車で白馬に戻って民宿に預けていた車を回収して、大阪までの”ヤマ”よりシンドい車の運転をこなさねばならないのだが、この時はまだ放浪旅に出る前で「夏でも有職者」だったので、この日は車を預けた民宿で泊ったみたい。 まぁ、今のワテなら有り得ない事だわ。









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No title * by 日本一周
うーん、やっぱり後立山連峰、いいですね。
私も若いころに唐松から爺まで縦走しました。不帰の剣は自信がなくてパスでした…。
夏でしたが、梅雨明け前でほとんど悪天で大変な山行でした。

No title * by 風来梨
日本一周さん、こんばんは。

ヤマで雨に降られるとキツいですね。
私も今年の新穂高~槍ヶ岳~大キレットと縦走したのですが、午後から決まって雨でしたよ。 最後の日は朝から大雨で、11時間雨に打たれました。

かつての『奇跡の体力』があった頃は足が速く午前中に必ず着けたけど、ヘタレとなった今は、大キレットの核心部の通過の最中で雨に降られて厄介でした。

雨の中で時間がかかりすぎて、小屋の人に心配をかけてしまったようで・・。

まぁ、『奇跡の体力』のあった時は3時間チョイで渡れた大キレットも、今は5時間越えですから。 ヘタレたモノです。

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No title

うーん、やっぱり後立山連峰、いいですね。
私も若いころに唐松から爺まで縦走しました。不帰の剣は自信がなくてパスでした…。
夏でしたが、梅雨明け前でほとんど悪天で大変な山行でした。
2018-09-12 * 日本一周 [ 編集 ]

No title

日本一周さん、こんばんは。

ヤマで雨に降られるとキツいですね。
私も今年の新穂高~槍ヶ岳~大キレットと縦走したのですが、午後から決まって雨でしたよ。 最後の日は朝から大雨で、11時間雨に打たれました。

かつての『奇跡の体力』があった頃は足が速く午前中に必ず着けたけど、ヘタレとなった今は、大キレットの核心部の通過の最中で雨に降られて厄介でした。

雨の中で時間がかかりすぎて、小屋の人に心配をかけてしまったようで・・。

まぁ、『奇跡の体力』のあった時は3時間チョイで渡れた大キレットも、今は5時間越えですから。 ヘタレたモノです。
2018-09-13 * 風来梨 [ 編集 ]