2018-09-08 (Sat)✎
『日本百景』 晩夏 第345回 宝剣岳岩稜 〔長野県〕
宝剣岳岩稜と
中央アルプス主稜線
中央アルプス ちゅうおうアルプス (中央アルプス県立自然公園)
中央アルプスは南北アルプスの間に連なる“木曽山脈”の総称で、高さも南北アルプスのそれにひけをとらない。 最高峰は木曽駒ヶ岳 2956メートル で、そのすぐ横に剣先の如く鋭く尖った頂を魅せる宝剣岳 2931メートル が並ぶ。 また、この中央アルプスの山々は氷食が著しく、鋭く尖った峰を持つ山が多いのが特徴である。
・・中央アルプスの魅力は、何といっても氷河による浸食でできた数多くの“カール”地形と、そこに群生するお花畑であろう。 濃ヶ池・千畳敷・極楽平のカールが、夏になると高山植物の花々に飾られた天然の“うつわ”となり、悠然と構える峰々に囲まれた『神の園』となる。
中央アルプスは南北アルプスの間に連なる“木曽山脈”の総称で、高さも南北アルプスのそれにひけをとらない。 最高峰は木曽駒ヶ岳 2956メートル で、そのすぐ横に剣先の如く鋭く尖った頂を魅せる宝剣岳 2931メートル が並ぶ。 また、この中央アルプスの山々は氷食が著しく、鋭く尖った峰を持つ山が多いのが特徴である。
・・中央アルプスの魅力は、何といっても氷河による浸食でできた数多くの“カール”地形と、そこに群生するお花畑であろう。 濃ヶ池・千畳敷・極楽平のカールが、夏になると高山植物の花々に飾られた天然の“うつわ”となり、悠然と構える峰々に囲まれた『神の園』となる。
中央アルプス縦走ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR駒ヶ根駅よりバス(0:50)→しらび平よりロープウェイ(0:10)→千畳敷
(0:40)→浄土乗越・木曽駒ヶ岳までは往復1時間40分
(0:20)→宝剣岳(1:00)→極楽平・三ノ沢岳まで往復3時間
(2:20)→桧尾岳(0:10)→桧尾避難小屋
《2日目》 桧尾避難小屋(1:30)→熊沢岳(2:00)→木曽殿越(1:30)→空木岳
(0:20)→宝剣岳(1:00)→極楽平・三ノ沢岳まで往復3時間
(2:20)→桧尾岳(0:10)→桧尾避難小屋
《2日目》 桧尾避難小屋(1:30)→熊沢岳(2:00)→木曽殿越(1:30)→空木岳
(1:30)→摺鉢窪避難小屋・摺鉢窪避難小屋分岐より南駒ヶ岳まで上り40分・下り30分
(0:20)→摺鉢窪避難小屋
《3日目》 摺鉢窪避難小屋(0:25)→摺鉢窪避難小屋分岐(1:20)→空木岳
《3日目》 摺鉢窪避難小屋(0:25)→摺鉢窪避難小屋分岐(1:20)→空木岳
(2:20)→小地獄・大地獄(1:20)→池山小屋(1:30)→駒ヶ根高原登山口
(0:20)→菅ノ台バス停よりバス(0:15)→JR駒ヶ根駅
《1日目》 千畳敷カールより宝剣岳・三ノ沢岳を経て桧尾岳へ
「山に登る時は、一番楽で“おいしい”コースを目指す」という『日本百景』における格言!?通り、ロープウェイ・リフトは積極的に利用する事にしている。 もちろん、この中央アルプスも例外ではない。
さて、夏シーズンならば、ロープウェイの始発時間が朝6時と早まるので、駒ヶ根駅のバスもこれに合わせて乗車しよう。
千畳敷より
宝剣岳を見上げる
・・《千畳敷》のロープウェイ駅を出ると、ロープで仕切ってある登山道をカール壁に向かって歩いていく。 やかて、金網で包まれた岩道をジグザグを切って登っていく。 このように道の付き方からみても冬とは全く違うが、何よりも違うのが登山者一人一人の“いでたち”が表す山に対する“心構え”ではなかろうか。
さて、ジグザグ登りを約40分、おそらく疲れを感じる前に《浄土乗越》に登り着く。 時間に余裕があれば、木曽駒ヶ岳への往復もいいだろう。 ただ、木曽駒ヶ岳は往復するだけではあまりにももったいなく、《濃ヶ池》や伊那前岳といった素晴らしい景色の場所へいってみたくなるだろう。
これらの景勝に“寄り道”すると、桧尾岳への到着時間が遅れたり、最悪たどり着けなくなるので時間の計算が必要だ。 しかし、木曽駒ヶ岳周辺で遊んで、中央アルプスを縦走する方法はないという事もない。
さて、ジグザグ登りを約40分、おそらく疲れを感じる前に《浄土乗越》に登り着く。 時間に余裕があれば、木曽駒ヶ岳への往復もいいだろう。 ただ、木曽駒ヶ岳は往復するだけではあまりにももったいなく、《濃ヶ池》や伊那前岳といった素晴らしい景色の場所へいってみたくなるだろう。
これらの景勝に“寄り道”すると、桧尾岳への到着時間が遅れたり、最悪たどり着けなくなるので時間の計算が必要だ。 しかし、木曽駒ヶ岳周辺で遊んで、中央アルプスを縦走する方法はないという事もない。
日程を1日増やして、初日を木曽駒ヶ岳の往復や周囲の山々への往復に充てて、その日の宿泊地を『宝剣山荘』にすれば可能となるのである。 但し、山荘に宿泊するので費用がかさむという難点も出てくるのだが。
中アの盟主・木曽駒ヶ岳
:
厳冬期しか登った事がないから・・と
中アの盟主・木曽駒ヶ岳を端折るなんて
ヘンテコなガイドだな・・コリャ
宝剣岳の登り口は小屋の裏手の左側にあり、やや判り辛いかも知れない。 宝剣岳のそびえる方向へ進むと、途中で進路を変えて木曽駒ヶ岳への道と合流してしまうので要注意だ。 宝剣岳への道は前項目でも述べた通り、深く切れ落ちた《宝剣沢》を挟み込むように巻きながら登っていく。
やがて、《伊那谷》側を大きな岩峰が仕切り出す。 トラバース気味に《木曽谷》側に出て、宝剣岳の鋭い剣先を形取る荒々しい岩盤がスッパリと切れ落ちる《宝剣沢》を横目に見ながら、鎖片手にトラバースしていく。 ここは冬季になると“恐怖のトラバース”となる難所で、冬ほどではないにしろ、やっぱり“冷や汗モノ”の難所である。 これを乗りきると、宝剣岳の山頂である。
宝剣岳の岩塔にて
美しい尾根筋を広げる
木曽駒ヶ岳
中ア南部の名峰・空木岳
宝剣岳の頂上は眺めは抜群であるが、鋭い岩峰の穂先ということで山頂は至って狭い。 宝剣岳までは人が次々とやってくるので、あまりゆっくりとはしてられない。 さて、頂上からは、“恐怖のトラバース”より格段に切れ落ちたギザギザの稜線を伝っていく事となる。 ここからは夏だからこそ行ける道で、冬に行くのは“自殺行為”である愚行である事を留意したい。
岩の剱・宝剣岳を後にして
頂上からは、浮石まみれの崖っぷちを巻くように下っていく。 途中に岩と岩が積み重なった“門”をくぐったり、岩をヘツッたり、時には一枚岩の懸垂下降をしたり・・と、かなりハードだ。 特に恐怖を感じるのは、《木曽谷》側に向かって鎖片手に一枚岩を下っていく所だ。 足をホールドする鉄杭は打ち込まれているものの、上から音を立てて落ちてくる落石と、引き込まれそうな位深い《木曽谷》の“奈落の底”が視界に入るのには悩まされる。
宝剣岳は全般的に脆い浮石が多いので
通過には注意が必要だ
この下りを乗りきると、ひと息つける鞍部に出る。 ここからは、深い《木曽谷》を挟んでそびえる三ノ沢岳 2846メートル や、木曽中岳の後にひょっこりと顔を出す木曽駒ヶ岳、宝剣岳の頂上から連なる鋭い岩峰など、カメラを取り出したくなるような景色が広がる。 この鞍部からは宝剣岳の支峰に向かっての一枚岩の垂直登りがあり、鎖やホールドをつかんでこれを登りつめると、稜線の鋭い尖先を伊那側へ跨いで稜線の上部をトラバースしながら渡っていく。
難所に挑む者には緊張を削がれる
“場違い”な眺めの千畳敷カール
背後には《千畳敷カール》が広がり、人々が次々とロープウェイのゴンドラに運ばれてやってくるのが見える。 これから登る者、カールを散策する者が、“アリ”のようにうごめいている。 だが、下から稜線の岩にへばりついているワテを見ると、どう見えるのだろうか。 岩にへばりつく“虫”なのであろうか。
懸垂下降や上昇のある
厳しい岩峰越えだ
とにかく《伊那谷》側は、緊張する難所には“場違い”な眺めである事は確かである。 しばらく伊那側をトラバースすると、また稜線の尖峰を跨いで、再び《木曽谷》の底に向かって懸垂下降で下っていく。
ここも鎖が付き、足を置くボルトも打ち込まれてはいるが、谷に向かって下りていく緊迫感は相変わらず大きい。
このような感じの登降を3~4回繰り返すと、『遭難ノ碑』という石碑の立つ三ノ沢岳への分岐へとたどり着く。 ここでようやく難所から解放されて、白砂の広く眩い稜線を緩やかに下っていく。
このまま10分ばかり歩いていくと、多くの人で賑わっている広場に出る。 《極楽平》である。
このような感じの登降を3~4回繰り返すと、『遭難ノ碑』という石碑の立つ三ノ沢岳への分岐へとたどり着く。 ここでようやく難所から解放されて、白砂の広く眩い稜線を緩やかに下っていく。
このまま10分ばかり歩いていくと、多くの人で賑わっている広場に出る。 《極楽平》である。
《千畳敷カール》からここまでは初心者コースが設定され、それこそスニーカーなどの軽装で次々と人がやってくる。 軽装でくるのは謹んで頂きたいのは本音だが、最低限その軽装ではここまてで、その格好で宝剣岳には挑まないで・・と願うのみである。
均整の取れた三角錐を示す
『中アのいぶし銀』・三ノ沢岳
それでは、『中アのいぶし銀』の一つ・三ノ沢岳に登ってみよう。 三ノ沢岳が真正面にそびえ立っていて、登高意欲をそそられる。 これよりその三ノ沢岳を往復するのだが、三ノ沢岳へと続く尾根は宝剣岳寄りにあるので、荷物はここにデポッて空身でいこう。
《極楽平》より宝剣岳側に10分程戻ると宝剣岳の遭難碑があり、三ノ沢岳へのルートはここより延びている。 宝剣岳の岩峰が逆光に黒光りして、更に迫力を増している。 稜線より離れ、左手を急下降していく。 砂礫の斜面で、所々露岩が突き出した雰囲気の良い情景の中を下っていく。
《極楽平》より宝剣岳側に10分程戻ると宝剣岳の遭難碑があり、三ノ沢岳へのルートはここより延びている。 宝剣岳の岩峰が逆光に黒光りして、更に迫力を増している。 稜線より離れ、左手を急下降していく。 砂礫の斜面で、所々露岩が突き出した雰囲気の良い情景の中を下っていく。
三ノ沢岳へ
そうこうしている内に250mも下る事になる。 やがて、《三ノ沢カール》の縁まで下り、カールバンドの細い尾根上で最低点を踏む。 ここは、カール壁特有のギザギサの尾根筋で難所という程ではないが、通過にはそれなりに苦労する。 最低点を通過すると、2段の急登で三ノ沢岳の頂までイッキに駆け上がっていく。
ウサギギク
三ノ沢岳 2847メートル の頂上は、大きな露岩が積み重なった不安定な所だ。 だが、その不安定な露岩の上に立つと、対峙する宝剣岳が黒光りした荒々しい峰を魅せている。 これより進む空木岳も雲間から望まれる。 また北アルプスの山々が、剱・立山・後立山・槍・穂高がズラッと並んでいる。
そして、御岳山も孤立高峰としてそびえ立っている。
三ノ沢岳より望む
宝剣岳と木曽中岳
岩の上で素晴らしい風景と爽やかな涼風を堪能したなら、往路を戻る。 稜線に戻って《極楽平》にデポってある荷物を回収したなら、縦走路を空木岳へ向かって進んでいこう。
極楽平を越えると
なだらかな歩きよい道となる
《極楽平》から少し離れると途端に人気がなくなり、再び静かな稜線歩きを取り戻す事ができる。
白亜の広い稜線を緩やかに登っていくと、『島田娘』の雪形を示す岩峰の頂点に立つ。
頂点といっても小高い丘の上に立ったような感覚で、気づかずに通り過ぎるかもしれない。
後は、広々とした白亜の稜線を濁沢大峰 2724メートル 、桧尾岳 2727メートル とアップダウンを繰り返す。 右手に深い緑の窪みを示す《三ノ沢カール》が見渡せる。
白亜の広い稜線を緩やかに登っていくと、『島田娘』の雪形を示す岩峰の頂点に立つ。
頂点といっても小高い丘の上に立ったような感覚で、気づかずに通り過ぎるかもしれない。
後は、広々とした白亜の稜線を濁沢大峰 2724メートル 、桧尾岳 2727メートル とアップダウンを繰り返す。 右手に深い緑の窪みを示す《三ノ沢カール》が見渡せる。
カール地形を示す三ノ沢岳
この《三ノ沢カール》の存在は、三ノ沢岳をより魅力的にしている。 なお、稜線縦走の途中、濁沢大峰付近では大きな花崗岩の一枚岩の登降とトラバースがあり、鎖・アングル付の難所となっているので注意しよう。
また、三ノ沢岳に立ち寄って桧尾岳に登り着く頃は午後も大きく周っているだろうから、「午後からのひと雨」にも注意が必要だ。 山の稜線の午後はよく夕立のような強い雨が降るので、雨に降られながら鎖場を通過する想定も必要だろう。
夕立直後の空木岳を望む
桧尾岳に着いて空木岳の勇姿を眺めたなら、今日の宿泊地・《桧尾岳避難小屋》に向かおう。
桧尾岳の頂上から下ること10分だ。
避難小屋の周囲は
トウヤクリンドウのお花畑だった
小屋はまだ新しくきれいなのだが、水場は細くお世辞にもいい水場とは言い難い事、トイレがない事などが難点である。 なお、旧小屋の石垣が残るキャンプ指定地での幕営も可能である。 明日は稜線を伝って、名峰・空木岳の頂に立とう。
※ 続きは、次回の『第346回 中アのいぶし銀の名峰へ』にて
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No title * by 風来梨
ギャメロンさん、こんばんは。
私も『奇跡の体力』を失って久しく、筋肉と信じていたのがメタボだと判明した事もあってヘタレにヘタレて、下山なんか人の倍の時間がかかっちゃいますが、いつも『オチャメ』覚悟でムリヤリ山に行ってます。 それで。大概は中なり小なり(さすがに“大なり”はないですが・・)『オチャメ』ります。
いつも山の記事を書いていて、「どうしたらこんなに変わるんだ」という程に思いますよ。 そして、あの頃の自分が凄く感じますね。
』
私も『奇跡の体力』を失って久しく、筋肉と信じていたのがメタボだと判明した事もあってヘタレにヘタレて、下山なんか人の倍の時間がかかっちゃいますが、いつも『オチャメ』覚悟でムリヤリ山に行ってます。 それで。大概は中なり小なり(さすがに“大なり”はないですが・・)『オチャメ』ります。
いつも山の記事を書いていて、「どうしたらこんなに変わるんだ」という程に思いますよ。 そして、あの頃の自分が凄く感じますね。
』
いつも素敵な山の写真を見せて頂きありがとうございます
最近は登山する事もないので身体もなまりぎみで(^^;
上級は登れないのでこうして眺めては登った気になっています
ナイス!