風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第49話  杓子岳

よも”ヤマ”話  第49話  杓子岳 〔長野県・富山県〕 ’92・8
白馬岳 2932m (二度目の登頂)、白馬丸山 2768m、杓子岳 2812m【名峰百選 15峰目】


白馬岳の頂上へ・・ もうすぐだ!

   後立山連峰 うしろたてやまれんぽう (中部山岳国立公園)
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。

大雪渓と広大なお花畑を擁する盟主・白馬岳 2932メートル 、高山のいで湯とお花畑が自慢の白馬鑓ヶ岳 2903メートル 、山々の姿を映す八方沼と広大なお花畑をかかえる唐松岳 2699メートル 、武田氏の御陵菱を雪形に持つ五竜岳 2814メートル 、2つのピークが吊尾根で結ばれていて他の山から眺めてもひときわ目立つ後立山連峰のもう一つの盟主・鹿島槍ヶ岳 2890メートル など、今すぐにでも飛んでいきたい名峰がそろっている。 

登山コースはどのルートを取っても素晴らしいものばかりだが、特に白馬岳から栂池へ下っていくコースは、山上の楽園を散歩する気分を満喫できる最高のコースである。 その他にも、唐松岳の北側にノコギリ刃のような岩峰を連ねる《不帰ノ嶮》を通るコースや、鹿島槍ヶ岳の北にある《八峰キレット》など、バリエーションコースも豊富である。




後立山連峰(白馬岳~五竜岳)縦走路 行程図

    行程表                 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR白馬駅よりバス(0:30)→猿倉(0:55)→白馬尻(1:40)→葱平
     (2:00)→白馬山荘(0:15)→白馬岳(0:25)→白馬岳キャンプ場
《2日目》 白馬岳キャンプ場より白馬岳往復・所要約1時間(0:45)→杓子岳
     (1:00)→白馬鑓ヶ岳(0:40)→天狗平(1:40)→不帰ノ嶮(2:50)→唐松岳
     (0:15)→唐松岳頂上山荘
《3日目》 唐松岳頂上山荘(0:50)
→大黒岳(1:10)→五竜山荘・五竜岳へは往復約1時間40分
     (1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト
     (0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅



不帰ノ嶮
『南北ダブル』の“北”はコチラに行きます

  《山行前夜》 南ア・白峰三山の域から北ア・後立山の域へ
この’92年という年は、正月の北八ヶ岳の厳冬期体験を皮切りに、南八ヶ岳の積雪期、白山連発と前回の白峰三山の2峰縦走と立て続けに山行をこなして、かなり身体が出来上がってきていたのである。
それらはこのタワケにとって大いなる自信につながったようで、前回の白峰三山に引き続いて、北アの白馬大雪渓~不帰ノ嶮~五竜岳の縦走と『南北ダブル』を敢行したのである。

でも、体力を裏付けにした自信ってスゴいよね。 1週間の盆休みに『南北ダブル』で連発なんて・・。
今なら、こんな構想は挙がる事すらないっていうか、即座に「無理!」の一言で一蹴しているだろうし・・ね。 こんな事を記していると、今夜も枕を涙で濡らす事になるから、話を先に進めるとしようか。


『南北ダブル』の“南”は
名景・『金と銀』に魅せられますた

南ア・白峰三山の北岳・間ノ岳の2峰の縦走山行を終えて、国道20号と147・148号の《白馬街道》を伝って白馬帯雪渓ルートの登山基点・白馬村へ・・。 幸い、安房峠などシーズンに大渋滞を引き起こす道を通らずに済んだので、つづがなく白馬村へ入る事ができた。

着いた白馬では、早速この日に泊る民宿を物色する。 この時は『よも“ヤマ”話』の第46話にて前回の山行・白峰三山へのプロローグで記した様に、まだ「10ヶ月働いて2ヶ月放浪」に出る『放浪期』に突入する前で夏も健全な生活を送っていた『有職者』だったので、盆休み1週間の全日程で宿に泊るという『金を湯水の如く使う』旅をしていたのである。

まぁ、今だったら間違いなく、猿倉の登山者用駐車場に車を止めて中で車寝&山行中はテントを担いで全日程で幕営と、宿泊費を極限までにケチっているだろうけど・・。 それに、この頃は山への交通事情にも疎く、登山者駐車場なんて知りもしなかったっていうか、この時は猿倉に登山者駐車場があったのかな?

話は反れたが、シーズンという事で、駅から徒歩にして10分ほど遠のく(さすがに駅前は満室ばかりだった)と民宿は容易に見つかり、「明日からの2泊3日の山行の間は車を預かってもらう」条件を宿主に快諾してもらって、この民宿に泊まる事を決める。 寝る前に、前回の白峰三山の《大樺沢雪渓》で汲んで来た『南アルプス天然水』を冷凍庫に入れて凍らせて、明日の準備は万端だ。




今回の主役は白馬三山・杓子岳だ

  《1日目》 二度目の白馬岳へ
翌朝は6時過ぎに民宿を出て(登山者相手の民宿なので、早朝出発も承諾済み)、6時半頃の猿倉行きのバスに乗って出発だ。 猿倉から白馬尻、そして白馬大雪渓を経て、白馬山荘前まで所要時間『4時間切り』で登りきる。 山荘箔の空身とはいえどもこの実績を見ると、『奇跡の体力』の最盛期一歩手前まで来てますね。


我が体力も
真夏の最盛期を迎えていた

まぁ、“二度目”という事で大雪渓のルート状況はほぼ把握していたし、自前でレンタルの4本爪アイゼンより性能のいい6本爪アイゼンを持ってきていたし、その上に『奇跡の体力』の最盛期一歩手前まで来ていた事を踏まえると、『4時間切り』は当然に有り得る数値だろうね。 まぁ、今はムリだけど。


体力最盛期に「針が振りきってしまう」と
他の事(写真撮り)がおざなりになっちまう

前述のようにイッキに登りきってしまったので、白馬岳までの登りの道中は何ら出来事もなく、午前中に白馬山荘前に着いてしまったよ。 タッタカ歩き過ぎたので、大雪渓の写真を撮るのさえ忘れてしまったよ。 なので、この頃から15年先の「ヘタリ初めて坂を転げ落ちる最中」に再訪した時に撮った雪渓写真でつなげる事にしようか。


シャカシャカ歩き過ぎて
雪渓獲るの忘れてたよ


コレ・・40を越えてからのヘタレが
顕著になってきた頃に撮ったモノだけど


ヘタれた方が滞在時間が長い分
“撮る”景色を見る時間も長くなるしィ
当然撮影に充てる時間も多くなる

・・さて、白馬大雪渓の登りに何ら出来事もなかったので、この第49話はこの白馬山荘に着いてからが実質の“始まり”となるのである。 山荘で宿泊手続を終えて、荷物はデポせずにそのまま(山荘泊の空身で、ザックの中は合羽とカメラ一式と通常ポリタンと凍らせた例のポリタンのみだから、デポするモノがない)白馬岳の頂へ・・。

白馬岳の頂に着いて、早速周囲の登山者に『アリバイ写真』を撮ってもらうようお願いする。
でも、今は『アリバイ写真』のお願いがし辛い・・っていうか、できないんだよね~。
だから、いつも小石をカメラの下に置いてアングルを上向きに合わせて、置きピン・セルフタイマーで撮ってるよ。


『奇跡の体力』が
最盛期に近づきつつあったワテ
なんとなく凛々しいわ

なぜなら、ワテが使用してるのは『フイルムカメラ』で、写真に興味のない登山者にとっては『フイルムカメラ』など触った事もないだろうし、スマホをいじくる学生世代なら下手すると『フイルムカメラ』など見た事がないのもいるだろうし・・ね。 こういった“全く知らない”連中に『アリバイ写真』を頼むとなると、撮り方からレクチャーしなきゃならんし・・ね。

さて、『アリバイ写真』を撮り終えると、持ってきたバリバリに凍らせて持ってきた例のポリタンの出番だ。 溶けにくいようにタオルでグルグル巻きに覆っていたので、宿の冷凍庫から取り出して6時間近く経っても、目論見通りにまだ半分以上が凍ったままだ。 そう・・、このポリタンは『どデカ版チューペット』となっていたのである。 もちろん、凍らす前にポカリの粉末を入れていたので“味付き”だ。


『南アルプス天然水』仕立ての
“どデカチューペット”を吸いにながら
北アのシンボル『槍の穂先』を望む

この『どデカ版チューペット』のポリタンから溶け出た水を飲み干し、盛夏の夏山での爽快感に浸ってこの言葉を叫ぶ。 「北アルプスの頂で飲む『南アルプスの天然水 by 大樺沢雪渓』とはこれ如何に!」・・と。 前の山行で大樺沢雪渓から水を汲んできたのは、山頂でこの言葉を叫びたかったからである。

なお、白馬の夕景であるが、午後3時頃から雲が空を覆って夕日が見れそうになかったのと、前述のように『4時間切り』で午前中に登り着くなど「早く着き過ぎて」しまって、夕食の番が4時半(いくらなんでも4時半はムゴいと思いません?)のトップに充てられて出る気が失せたので、撮ってません。
白馬の夕景の写真は、コチラコチラを御覧下さいね。←クリックすると筆者が喜びます。


夕景色の写真
1枚だけ撮ってたみたい

山荘は夕食のトップ番を4時半にせねばならぬ位に混んでいたので、当然就寝スペースも「畳1枚に3名つめて・・」との事だったよ。 若いから寝れたけど、今じゃ寝れないかもね。 この食事の順番と「畳1畳に○人」に嫌気がさしたのもテント山行にスタイルを変えた原因なんだよね。




縦走路から外れて誰もいない杓子岳より
縦走路上にあり登山者が連なる白馬鑓ヶ岳を望む

  《2日目》 不帰ノ嶮を越えて唐松岳へ
山荘では朝3時を過ぎると、宿泊支度のゴソゴソ音が鳴り響くので、否応でも目が覚める。
まぁ、テントでも山でも4時過ぎには目覚ましに頼る事なく目が覚めるから、条件的には「山荘の方がやや早い」だけなのだが、テントの方が就寝時間が早く、また同宿者のイビキなど安眠を阻害される事もないので、この点でもテント山行の方が有利だろうね。


白馬岳は山のない信州側から
御来光が昇るので朝景は平凡で今イチだ


それでも何かアクセントをつけようと
雲海の帯を川に見立てた構図を採る

「早く目が覚めたのはコレ幸い」と、朝飯の前に白馬の頂上まで行って夜明けの情景を堪能する。
でも、白馬岳は『断然』といっていいほどに、朝景より夕景なんだよね~。
頂上から戻ると、ちょうど朝飯のトップ番の時間だった。

昨日の「早く着き過ぎて夕飯が4時半のトップに充てられた弊害」の裏返しで、朝飯は好都合の5時半のトップに充てられていたので、6時過ぎには出発する事ができた。 遅く着いたりして朝飯が後番に回されたりすると、朝の出発が7時を周ったりするから、これも結構切実だ。

まぁ、朝飯の代わりにおにぎり2ケの『おにぎり弁当』にチェンジして早発ちする事も可能だが・・。
でも、1000円の朝食料金と同じで『おしんこ付のおにぎり2ケ』では損した気になるのは、今も昔もワテがコスい小市民だからだろうか。


白馬・丸山付近のお花畑
こういう斜面に広がるお花畑もいいかも


イブキトラノオ・・ 見っけた!
高山植物では割と希少種ですネ

白馬山荘からは、信州・越中を隔てる『国境稜線』を南下していく。 村営山荘で白馬大雪渓からの登路を併せて、丘のようでどこが頂上か定かでない白馬・丸山 2768m というピークを越えて最低鞍部に向かって緩やかに下っていく。


山肌の下部に水平についているのが
縦走路のトラバース道

最低鞍部から少し歩くと、非対称山陵の典型的な山容を示す杓子岳の越中側片尾根の斜面に入り、これをほぼ水平にトラバースするように道はつけられている。 杓子岳を越えて白馬鑓ヶ岳との鞍部まで進むと、この水平道がハッキリと見渡せる。 さて、この片尾根の水平トラバース道の途中に山頂部に向かって踏跡が数本ついているので、これを伝って杓子岳 2812メートル の頂上に立つ。 

頂上から信州側を見下ろすと《天狗菱岩稜》が垂直に《白馬大雪渓》の谷に落としており、今歩いてきた越中側と左右非対称を成しているのが実感できるだろう。 杓子岳の頂上は縦走路から外れているので人気はほとんどなく、山頂を示す物も山名が記された木切れが一つと寂しいものであった。


今は頂上標柱が立っているらしいけど
この時は手彫りで『杓子岳』と刻まれた木切れのみだった

だが、ワテはこの杓子岳に登りたかった。 それは、白馬大雪渓の登高途中に見上げたこの峰の《天狗菱岩稜》に魅せられて、この頃より編纂し始めた【名峰百選】の候補としてこの峰・杓子岳を挙げていたからである。 そして、この【名峰百選】編纂のキッカケとなった『深田久弥の百名山』にも疑問を感じていた時期でもあったからだ。

そして、山の魅力を問うと疑問符が付きそうなのに常時人が集っている『深田久弥の百名山』の山と、人の気配がほとんどなかった杓子岳の頂上風景を比べると、人の多くは山の本当の魅力ではなく「有名書物による選定」を有難がるのだな・・と端的に感じたモノである。


この《天狗菱》に魅せられて
杓子岳を選んだワテ
だが山の魅力より世に広まった『名』を取る
本末転倒がそれぞれの頂上情景だった
 
杓子岳山頂でのひとときを過したなら、元に戻って越中側片尾根水平道を歩いていく。
ほぼ水平に杓子岳の山塊を巻くと、《杓子沢ノコル》といわれる白馬鑓ヶ岳との鞍部に出る。 
信州側には、杓子沢が杓子岳の《天狗菱》の基部を削るように深い筋をつけている。 


杓子岳の頂に咲いていた
華やかな紅い花・タカネシャクナゲ

なお、編集の都合(日程通りにすると、掲載写真の枚数に差がついちゃうしィ・・)で中途半端ではあるが、以降は次回の『第50話 不帰ノ嶮』にて・・。






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