風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第47話  白峰三山 その2

よも”ヤマ”話  第47話  白峰三山 その2  〔山梨県・長野県・静岡県〕 ’92・8
中白峰 3055m、間ノ岳 3189m 【名峰百選 14峰目】、北岳 3192m (昨日に続き登頂)


花飾りとなったハクサンイチゲの花

   白峰三山 しらねさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスの北部には、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・農鳥岳 3026メートル 
と、ひときわ高い峰が連なっている。 この3つの峰は、『白峰三山』と呼ばれている。

・・北岳は、“知る人ぞ知る”日本第二の高峰で、間ノ岳も日本第四位につけている。 現在は、南アルプス林道の開通によってアプローチが容易となり登山者も増えてきたが、ひと昔前はこの山に登ろうとするなら前に立ちはばかる鳳凰三山を乗り越えるしか手がなく、限られた熟練クライマーのみが登頂を許される山であった。

・・景観では北岳が特に素晴らしく、雲海から上の眺めや周りの山々全てを“肩越し”に眺める爽快感、東面に落ち込む北岳バットレスの大岩壁とその斜面を飾る花々がおりなす“アルペン”風景、そしてこの山を染める高山植物の大群落など、高山的魅力はつきない。




白峰三山回遊ルート 行程図

    行程表                駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 甲府市街より車(1:45)→広河原(2:30)→大樺沢二俣(2:00)→八本歯ノコル
     (0:45)→吊尾根分岐(0:15)→北岳(0:50)→北岳山荘
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(1:20)→北岳山荘(1:10)→北岳
     (0:45)→北岳・肩ノ小屋
《3日目》 北岳・肩ノ小屋(0:25)→小太郎尾根分岐(1:45)→大樺沢二俣
     (1:15)→広河原より車(1:45)→甲府市街

     ※ 前回の『第46回 白峰三山 その1』からの続きです。

この山行に出たのはこの年の盆休みの手前で「シーズン本番」って訳ではなかったのだけれど、それでも学校の夏休みの最中で、山荘もかなり混んでいたよ。 書き記していた記録によれば、この日は「畳1畳に3人」のスペースでかなりのすし詰め状態だったよ。 まぁ、こういう窮屈で寝苦しい体験が、後のテント山行スタイルへの転換のキッカケとなったんだろうね。

でも、若い頃だったから、良く寝れたようであった。 寝るのも体力がいる・・っていうか、若い時の方が良く眠れるし・・ね。 歳食うと寝着きも悪いし、睡眠時間も少なくなるし・・ね。
・・で、御来光を望むべく、4時頃に起床する。 まぁ、こういった山荘では、3時頃よりゴソゴソと出発準備し始める同宿登山者がいるので、よほど神経が図太くなければ目覚ましなんぞ要らないのである。

さて、御来光だが、これは掲載写真に委ねようと思う。 なぜなら、素晴らしい情景にはどんな言葉も「言葉足らず」になる事は解り切っている事だから。


この日の夜明けは
雲が下に立ち込める意味深な朝景だった


白峰南嶺の無名峰の脇から御来光が・・


立ち込める雲が御来光の輝きを
更に際立たせてくれた


かぎろい色に染まる空と富士
最高の場所で富士を望む贅沢

御来光の織りなすショーを眺めると、山荘を出発する。 朝飯は「早く発つ」という事で、おにぎり弁当にしてもらっている。 南アルプスの山荘はこの点で機転が利くね。 北アの山荘だったら、朝食の順番札を握っての順番待ちの最中で、下手したら御来光の時間に被ったりするから。
当然、朝食が後番だと、出発時間も遅くなるし。

山荘の建つ窪地より縦走路のある土手上に上ると、左手には富士が凛とそびえたっている。 前方には今回2つ目の3000m峰・中白峰 3055mが前面を”堰き止めて”おり、その背後にひと際高い間ノ岳が頂をもたげている。 先ずは、前面を”堰き止める”中白峰への登りだ。


陽の光が眩い黄色から
白のバックライトに変わるのを
目にしながら中白峰に登っていく

この登りは、陽が昇って真っ白のバックライト化した空のスクリーンに浮かぶ富士を望みながら、砂礫のつづら折りを登っていく。


空のバックライトを背に浴びる
富士を横目に見ながら登っていく

標高差150m程の登りだが、素晴らしい情景にあっという間に登りきってしまう。
登りきった所は前後に長い穏やかな丸みを帯びた中白峰の頂上では、左手に空のバックライトを浴びた富士、右手には空の艦隊が如く雲海の波間に並走して浮かぶ中央アルプスの山々が望まれる。


光り輝く雲海に浮かぶ
中央アルプスがおりなす空の艦隊
中白峰の頂にて

中白峰を越えると縦走路は緩やかなたわみとなり、その器状の中はヨツバシオガマ・オヤマノエンドウ・イワツメクサ・エーデルワイス・ハクサンイチゲと色とりどりの花々が咲き乱れている。

白峰三山稜線上のお花畑にて

ヨツバシオガマ
ハクサンチドリとの見分け方は
下の十字に開く『四葉』だと
最初に花の見分け方を覚えた花だ


オヤマノエンドウ
時折差す日差しに色鮮やかに輝いて


「エーデルワイス」と呼称される
高貴な花・ウスユキソウ


登山道の傍らにある岩の陰には
小さな白い宝石のイワツメクサが


様々な花飾りを魅せる
ハクサンイチゲ

中白峰から間ノ岳まで1時間半程であるが、花を見ながらだとあっという間に時が過ぎて、山荘からの登り始めはあれだけ巨大に見えた間ノ岳が、「えっ!?もう着いたの?」という位にあっさりと登り着く。

我が国第四の高峰・間ノ岳にて

間ノ岳で望む富士


強く吹き付ける風に
花びらを煽られていたハクサンイチゲの花


鳳凰三山と秩父の山なみ


間ノ岳で撮った
今回の富士の”キメ写真”
でも間ノ岳でのアリバイ写真撮るの忘れた!

3189m・・、我が国第四の標高を示す間ノ岳の頂上では、空が曇りがちで稜線に沿っての前後の方向の視界がガスに覆われて見えなかったせいもあるが、まだ山の景色を写真に撮る事に目覚めたばかりで、頂上情景はほとんどといっていい程に撮れなかったよ。


20ウン年後の間ノ岳にて・・
〔名峰次選〕ファイナル峰を登り終えた
これより20ウン年後は
北岳山荘まで9時間かかる程にヘタれたけれど
ファインダーを見る目は上ったかな?
『撮り鉄』など写真のウデと気力は
ヘタれに比例して落ちているけど

山の写真に関しては、ヘタってくる体力とは裏腹にこんなのが撮れるほどに周囲が見えてたりするのである。 でも、写真のウデが歳と共に成長している訳ではなく、熱意・気力・ネバリとも若い頃からは『退化』といっていいほどに格段に落ちている矛盾に満ちたワテの姿に、またどこかの山で枕にした雨合羽袋を涙で濡らすのだろうね。


グンナイフウロ


ミヤマオダマキ
帰りは行きに撮らなかった
花を優先して撮る

さて、今回は日程の関係上、農鳥岳はお預けでこの間ノ岳を後に来た道を引き返す。
帰りは花を撮りながらゆくと、またもやあっという間に北岳山荘上の稜線土手上に戻り着く。
でも、時刻は10時前後と、朝に北岳山荘を発ってから4時間経過していたよ。


前日と逆方向からの展望
北岳山荘とスラリとそびえ立つ北岳

これより、急激に高度を上げていく北岳の斜面へと撮り着く。 花はチシマギキョウやタカネナデシコなどの砂礫地に咲く赤や蒼の色濃い花が満開となる。 周囲よりひと際高い北岳の風が吹き抜ける南西斜面は、季節の移り変わりが早くなるのだろうか? まだ盆前だというのに、もう晩夏から秋の様相を呈していたよ。

北岳を飾るひと足早い”秋口”の花

イワベンケイとチシマギキョウ
北岳南西斜面の砂礫地には
色とりどりの秋口の花が咲いていた


バラのようにぼんぼりを広げる
タカネナデシコ


その鮮やかな紅色に
”もう一丁!”


淡く色着く秋口の花
チシマギキョウ


斜面を吹き抜ける強風に
花びらを千切られたハクサンイチゲ


北岳頂上直下から
間ノ岳の”戦艦大和の艦橋”を望む
未知なるカールの《細沢カール》と
今回見合わせた農鳥岳も望めた

振り返ると戦艦大和の艦橋の如く巨大な山体をもたげた間ノ岳が、未踏のカール地形《細沢カール》を従えて鎮座している。 そして、この時は若かった。 山荘から北岳の頂上までの標高350mを、テント一式を持たない空身同然とはいえ1時間を切って登りきったのだから。 まぁ、この後に完全発動していく『奇跡の体力』は、山行をこなす毎に『新たなる伝説』を打ち立てていくのであるが。 でも、その『伝説』の半数が”オチャメ”な事なのだけど。

さて、昨日に引き続いて立った我が国第二の高峰・3192mの北岳だが、この時はガスって視界はゼロだった。 なので、ちょっと休憩しただけで先に進む。 目指すは北岳の北面を下った《北岳ノ肩》に建つ今夜の宿・北岳肩ノ小屋である。


肩ノ小屋と白亜の山頂を
魅せる甲斐駒ケ岳
北岳からの北面の下りは
結構な高度感がある

頂上を越えた北岳の北面は切り立った岩の突起が突き出る岩場で、この下りは少し厄介だ。
それは『鎖場』となる程には嶮しくなく、さりとて時折は「鎖があればなぁ」と思えるような下りもあったりするからである。 まぁ、これは、ヘタった20ウン年後のヘタリきった身の上にも拘らずテント一式で下った時に思った事なのであるが。

大きな岩屑が積み重なって踏み出しの大きな岩場につけられた登山道を直下降気味に下って、公営の北岳山荘より小ぶりの民間の山小屋・北岳肩ノ小屋に降り着く。


肩ノ小屋前のテラスより
甲斐の国の守護神・甲斐駒ケ岳を望む


湧き立つガスと鳳凰三山
夕暮れに近づくとガスが湧きたってきた

この《北岳ノ肩》の夕景や『金と銀の揃い踏み』、そして北岳バットレスのお花畑などは次回の下山編『第48話 白峰三山 その3』にて語るとしよう。































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No title * by たけし
美しい山岳写真の数々、ありがとうございます。
22枚目の北岳山荘から北岳の写真、頂いてもよろしいですか?

No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。

嬉しいお申し出を頂き、有難うございます。 どうぞお使いになって下さい。

次回の第48話の「白峰三山 その3」でも『金と銀』のキメ写真(私レベルですけど)があるので、乞うご期待←華麗に裏切る写真のデキだったりして

No title * by 鳳山
遠くから見る富士山、綺麗ですね。

ナイス

No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。

富士が最も美しく望める場所は、南アルプスの白峰三山と南アルプス南部の千枚岳なんですよね。

富士との距離といい、高さといい、富士の方向に障害物がなく、雲海がよく発生するなど、セッティングが絶妙なんですね。 夜明けの富士は、山の民にとって格別な眺めですね。

コメント






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No title

美しい山岳写真の数々、ありがとうございます。
22枚目の北岳山荘から北岳の写真、頂いてもよろしいですか?
2018-07-15 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんばんは。

嬉しいお申し出を頂き、有難うございます。 どうぞお使いになって下さい。

次回の第48話の「白峰三山 その3」でも『金と銀』のキメ写真(私レベルですけど)があるので、乞うご期待←華麗に裏切る写真のデキだったりして
2018-07-15 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

遠くから見る富士山、綺麗ですね。

ナイス
2018-07-15 * 鳳山 [ 編集 ]

No title

鳳山さん、こんばんは。

富士が最も美しく望める場所は、南アルプスの白峰三山と南アルプス南部の千枚岳なんですよね。

富士との距離といい、高さといい、富士の方向に障害物がなく、雲海がよく発生するなど、セッティングが絶妙なんですね。 夜明けの富士は、山の民にとって格別な眺めですね。
2018-07-15 * 風来梨 [ 編集 ]