2018-07-07 (Sat)✎
よも”ヤマ”話 第46話 白峰三山 その1 〔山梨県・長野県・静岡県〕 ’92・8
北岳 3192m 【名峰百選 13峰目】
北岳バットレスと鱗雲
白峰三山 しらねさんざん (南アルプス国立公園)
南アルプスの北部には、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・農鳥岳 3026メートル と、ひときわ高い峰が連なっている。 この3つの峰は、『白峰三山』と呼ばれている。
・・北岳は、“知る人ぞ知る”日本第二の高峰で、間ノ岳も日本第四位につけている。 現在は、南アルプス林道の開通によってアプローチが容易となり登山者も増えてきたが、ひと昔前はこの山に登ろうとするなら前に立ちはばかる鳳凰三山を乗り越えるしか手がなく、限られた熟練クライマーのみが登頂を許される山であった。
・・景観では北岳が特に素晴らしく、雲海から上の眺めや周りの山々全てを“肩越し”に眺める爽快感、東面に落ち込む北岳バットレスの大岩壁とその斜面を飾る花々がおりなす“アルペン”風景、そしてこの山を染める高山植物の大群落など、高山的魅力はつきない。
南アルプスの北部には、北岳 3192メートル ・間ノ岳 3189メートル ・農鳥岳 3026メートル と、ひときわ高い峰が連なっている。 この3つの峰は、『白峰三山』と呼ばれている。
・・北岳は、“知る人ぞ知る”日本第二の高峰で、間ノ岳も日本第四位につけている。 現在は、南アルプス林道の開通によってアプローチが容易となり登山者も増えてきたが、ひと昔前はこの山に登ろうとするなら前に立ちはばかる鳳凰三山を乗り越えるしか手がなく、限られた熟練クライマーのみが登頂を許される山であった。
・・景観では北岳が特に素晴らしく、雲海から上の眺めや周りの山々全てを“肩越し”に眺める爽快感、東面に落ち込む北岳バットレスの大岩壁とその斜面を飾る花々がおりなす“アルペン”風景、そしてこの山を染める高山植物の大群落など、高山的魅力はつきない。
白峰三山回遊ルート 行程図
《1日目》 甲府市街より車(1:45)→広河原(2:30)→大樺沢二俣(2:00)→八本歯ノコル
(0:45)→吊尾根分岐(0:15)→北岳(0:50)→北岳山荘
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(1:20)→北岳山荘(1:10)→北岳
《2日目》 北岳山荘(1:35)→間ノ岳(1:20)→北岳山荘(1:10)→北岳
(0:45)→北岳・肩ノ小屋
《3日目》 北岳・肩ノ小屋(0:25)→小太郎尾根分岐(1:45)→大樺沢二俣
(1:15)→広河原より車(1:45)→甲府市街
我がメモリアル〔名峰次選〕の
制覇も南アルプスだった
:
目指した時は遅かったが
今や我が登山史の中心となっている南アルプス
高校のワンゲロ時代から山を始めてから9年の月日が経ち、ようやく初めての南アルプスにこぎつける事ができたよ。 正直言うと、かなり遅いペースであるが、この南アルプスで山の魅力に引き込まれて、この後は気がつけばヤマとその情景の虜となり、ヤマに登ってそれらの情景を撮るべく、夏になれば仕事を辞めて放浪を繰り返す『ロクデナシ』の道を邁進していったのである。
この先々月から白山を連チャンで登ってある程度体力的に出来上がってきていたので、今回は10日間で「南と北をイッキに攻めよう」と計画したのである。 だが、まだテントを担ぐ『ロクデナシ道免許皆伝』もとい、『奇跡の体力・完全発動』には至っておらず、この時はまだ恒例の「夏になると仕事を辞めての放浪」ではなく有職者だったので、全て山荘泊まりのゴージャスな山行計画だったよ。
なぜなら、南北アルプスそれぞれ2泊3日の行程を組み、そのアプローチ日も麓の山荘や民宿に泊まったのだから、宿泊費だけで5~6万は使ったよ。 先程に述べたように「仕事に就いてる身」だった事もあるが、金の使い方は今よりも数倍度胸があるよ。 今なら、迷わず『車寝』や『駅寝』、下手すりゃ駐車した車の傍にテントを立てて・・、面倒臭くなればそのままテントマットを敷いただけの『路上寝』もアリ・・なのだから。
南アルプス林道・広河原ゲート
以前はこれより先が一般車通行禁止だったが
今は広河原時代が一般車の進入禁止となっている
※ 南アルプス市のウェブサイトより
さて、南ア・白峰三山への登山の基点となる広河原であるが、今は南アルプス林道内は一般車の通行禁止となっていて芦安・奈良田・戸台の駐車場からバスに乗らねばならないが、約四半世紀前のこの時は広河原までは一般車の通行も可能だったのである。 そして、南は広河原~戸台が一般車通行禁止でバス乗り継ぎになる事から北に比べて登山者の数は少なく、広河原にマイカーを駐車できる余裕もあったようだ。
広河原山荘
ワテの山荘評価ではトップクラスだ
※ 南アルプスガイドのウェブサイトより
・・で、アプローチ日は広河原の駐車場より徒歩7~8分の広河原山荘に泊る。 でも、南アルプスの山荘のいい所は朝が早く、5時発ちが可能なのだ。 5時発ちを希望したなら、朝飯はおにぎり弁当を持たせてくれるのである。 北アは食事は順番制なので、下手に朝飯を頼んでしまうと出発は7時過ぎとなっちまう事もあるので、登山をする者から見た山荘の対応は雲泥の差があるな。
まぁ、北岳は頂上までのコースタイムが6時間と長いので、できるだけ早く登り始めないと日が暮れてしまうからねぇ。 第一、この「コースタイム6時間」ってのも、『奇跡の体力』が発動した若いワテが山荘泊りの空身でクリアできるレベルで、一般の登山者なら7~8時間かかるだろうし。
・・ちなみに、『奇跡の体力』がマックスの時のワテは、テント担いで5時間半で行ったしィ。
でも、ヘタレた昨今では《八本歯ノコル》まで6時間半かかって、その日の北岳登頂は諦めて山荘にショートカットしてしまったけどね。 この時はテントの中で、枕代わりの雨合羽を涙で濡らしたよ。
そういう訳で、登山オーダーのキツい南アでは、早く発つのはお約束となっているようである。
・・で、ワテも5時半には出発する。 山荘左脇の登山口から登り始め、いっとき視界を遮る樹林帯を越えて沢筋に出ると、朝の光でかぎろい色に染まる《八本歯ノコル》が頭上にそびえ立っている。
そう・・、あの高みまで登らねばならないのだ。
朝日でかぎろい色に染まる
八本歯ノコル
沢の大岩がゴロゴロと転がる河原を越えると、沢岸の土手に上って再び樹林帯の中を行くようになり、これより2時間近く(今のヘタレだ状況なら+30分)樹林帯の中を行くので展望はなく、ひたすら登るだけとなる。 まぁ、ここでイッキにつめるパワーがあったこの時なら、まだ朝の雰囲気が残る午前8時前には大樺沢雪渓が望める《大樺沢二俣》に着く事ができたよ。
この《大樺沢二俣》は、北岳バットレスの大展望ルート《右俣コース》との分岐点だ。
また、500mの直登ルート《草スベリ》の取付き点である白峰御池小屋への道とも分岐となっている。
予定では、北岳バットレスの絶好の展望ルートである《右俣コース》は、下りに通る事にしよう。
もちろん、写真もその時まで”取っておく”事にしよう。
北岳バットレスの脇に
白い筋を突き上げる大樺沢雪渓
:
温暖化とそれに伴う異常気象で
近年は雪渓はかなり縮小している
《大樺沢二俣》で小休憩を取って、いよいよ大樺沢雪渓に踏み入る。 たが、8月に入った事で雪渓の縮小は著しく、雪渓に踏み入ってほんの20分位でクレバスによって雪渓上は歩行不可となって、右岸(登りだと左側)の草付に這い上がる。
何でも地球の温暖化や集中豪雨などの異常気象が続いて、その影響でこの大樺沢雪渓も著しく削られて、今は雪渓に一切踏み入れずに右岸の上に登山道が設けられているようである。 まぁ、登山者が踏み入れると、雪渓のダメージも更に大きくなるからねぇ。
右岸に這い上がって雪渓の上端まで登りつめると、雪渓の元となる大樺沢の源流部が見えてくる。
ここの日差しは雪渓が消える位に強く、流れる水もさほど冷たくは感じなかったよ。 雪渓の下を潜った《大樺沢二俣》では冷たい水だったのに。
北岳バットレスが
空に突き上げる圧巻たる眺め
ギンギンに照り付ける沢上部を沢の流れを縫うように登りつめていくと、やがて八本歯ノコルから続く山稜の樹林帯に入り、その中は桟道やハシゴが連続している。 左手には樹林の隙間から迫り立つ北岳バットレスが望めて、ロッククライムの猛者たちが岩にへばりつき登攀に挑んでいるのが望めた。
やがて、頭上が青空となる最後のハシゴをのぼりつめると、稜線の上・・《八本歯ノコル》の上に出る。
ここまで4時間半切り・・、空身とはいえ今では『ミラクル』な到達タイムである。 あぁ、若さってスバラシイ。 思い出す度に、枕代わりの雨合羽を涙で濡らすのだろうな。
八本歯ノコルからは
長大ハシゴでバットレス南面をイッキに登る
《八本歯ノコル》からはバットレス南面の大岩盤を長大ハシゴでイッキに登り、バットレス岩稜の最上部に出る。 ここは岩稜帯の大お花畑となっていて、北岳山荘への短絡道となるルートはチシマギキョウ・ハクサンイチゲ・ミヤマオダマキ・イワツメクサ・ヤマトリカブトなど、盛夏の白い花から晩夏に差しかかる淡い紫色の花が咲き乱れていた。
短絡道に咲く花々
チシマギキョウ
淡い紫が夏の終わりを告げていた
岩峰の花飾り
ハクサンイチゲ
大きな花弁で常に下に向いていて
案外撮るのが難しいミヤマオダマキ
路傍に咲く小さな白い宝石
イワツメクサ
下界では云わずと知れた毒の花
ヤマトリカブト
北岳山頂で撮ったのは
このアリバイ写真と
真に『奇跡の体力』の発動だったよ。
鳳凰三山のオベリスクと
上から望む大樺沢雪渓のみ
なお、この時は花を撮る事しか頭になくて頂上風景はほとんど撮らなかったので、山岳写真はほとんど撮ってません。 何というか、まだまだ周囲が見えていない浅はかな・・、良く言えば「思い立ったことだけ一直線」な奴だったよ・・、ワテは。 最初の北岳は呼称通りに「きただけ」だったよ。
北岳から間ノ岳へ続く白峰三山の稜線
:
コレを撮った事が
山岳風景に目覚めるキッカケに
でも、山岳風景写真に目覚めるまではそう長い時間はかからなかったよ・・っていうか、今日の下りで撮った北岳山荘と白峰三山の稜線の写真と、翌日の『夜明けの富士』で一発で目覚めたよ。
その『夜明けの富士』は、次回の『第47話 白峰三山 その2』にて。
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