2018-07-01 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第338回 鹿島槍ヶ岳・初夏 〔長野県・富山県〕
五竜岳の背後に姿を魅せる鹿島槍ヶ岳
後立山連峰 うしろたてやまれんぽう (中部山岳国立公園)
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。
秀峰・白馬岳を盟主とした後立山連峰は個性的で優れた山容を持つ名峰が多く、人気・魅力とも北アルプスではトップクラスである。
爽快な雪渓登り
白馬大雪渓
大雪渓と広大なお花畑を擁する盟主・白馬岳 2932メートル 、高山のいで湯とお花畑が自慢の白馬鑓ヶ岳 2903メートル 、山々の姿を映す八方沼と広大なお花畑をかかえる唐松岳 2699メートル 、武田氏の御陵菱を雪形に持つ五竜岳 2814メートル 、2つのピークが吊尾根で結ばれていて他の山から眺めてもひときわ目立つ後立山連峰のもう一つの盟主・鹿島槍ヶ岳 2890メートル など、今すぐにでも飛んでいきたい名峰がそろっている。
後立山のお花畑
白馬鑓ヶ岳・大出原(おいでっぱら)にて・・
登山コースはどのルートを取っても素晴らしいものばかりだが、特に白馬岳から栂池へ下っていくコースは、山上の楽園を散歩する気分を満喫できる最高のコースである。 その他にも、唐松岳の北側にノコギリ刃のような岩峰を連ねる《不帰ノ嶮》を通るコースや、鹿島槍ヶ岳の北にある《八峰キレット》など、バリエーションコースも豊富である。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(0:10)→扇沢出合(3:20)→種池山荘
(0:50)→爺ヶ岳・南峰(1:00)→冷池山荘
《2日目》 冷池山荘(2:00)→鹿島槍ヶ岳・南峰(0:35)→鹿島槍ヶ岳・北峰
(0:50)→爺ヶ岳・南峰(1:00)→冷池山荘
《2日目》 冷池山荘(2:00)→鹿島槍ヶ岳・南峰(0:35)→鹿島槍ヶ岳・北峰
(1:50)→八峰キレット(0:50)→口ノ沢ノコル(3:00)→五竜岳(0:50)→五竜山荘
《3日目》 五竜山荘(1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト
(0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅
《3日目》 五竜山荘(1:20)→大遠見山(1:30)→小遠見山(1:00)→地蔵ノ頭よりリフト
(0:05)→アルプス平駅よりテレキャビン(0:10)→山麓駅(0:25)→JR神城駅
柏原新道より針ノ木岳を望む
《1日目》 扇沢から種池・冷池へ
以前はシーズン中になれば急行【アルプス】号などの臨時列車が運行されて、JR信濃大町駅に5時に到着していたので、この列車を利用して信濃大町駅に早朝に着けば、駅で接続するバスで早朝6時に《扇沢》に着く事ができた。 このように、以前は前夜に都会の居住地を出発しての朝早登山が可能だったのである。
以前はシーズン中になれば急行【アルプス】号などの臨時列車が運行されて、JR信濃大町駅に5時に到着していたので、この列車を利用して信濃大町駅に早朝に着けば、駅で接続するバスで早朝6時に《扇沢》に着く事ができた。 このように、以前は前夜に都会の居住地を出発しての朝早登山が可能だったのである。
だが、夜行列車が廃止となり、夜行バスはあるもののツアー系のバスばかりで、ツアーパックに参加しないとこういったバスに乗れないようになってしまったようである。 そして、ツアー系という事で、《扇沢》で接続する関電トンネルトロリーバス(今は電気バス)の始発(7時頃)に合わせた運行で、早朝とは言い難い時間の到着となってしまっているようだ。
要するに、前夜居住地出発の早朝登山は難しくなっているようである。 まぁ、登山者の大半がマイカーでやってくるし、鉄道なんぞは今や夜行列車の運行から手を退いていっているので、土日休日を利用しての登山はますます困難な事になるみたいである。 マイカーは運転と下山後の回収が面倒だし、夜行バスも狭くてよく寝れないし・・ね。
さて、話は脱線したが元に戻すとしよう。 扇沢駅からは車道を少し戻り、トラス橋を渡り終えたたもとにある《扇沢出合》から『柏原新道』に入っていく。 この『柏原新道』は、《種池山荘》の経営者・柏原正泰氏が切り開いたことから、その功績を称えて名づけられた道だ。 以前の沢通しの道に比べると格段に楽に、そして安全に“名峰”・鹿島槍ヶ岳に立つ事ができる。
それでは、このルートを使って稜線上へ、そして“名峰”・鹿島槍ヶ岳の“二ッ耳”を極めてみよう。
登山口に入って尾根の末端を覆う樹林帯をジグザグに登っていくと、やがて中腹のトラバースに移る。
針ノ木岳から鹿島槍ヶ岳までの
後立山南部の峰々のスカイライン
これより左手が開けて、蓮華岳・針ノ木岳から岩小屋沢岳にかけての立て屏風のような主稜線や、『日本三大雪渓』の1つ・《針ノ木雪渓》が白竜の如く主稜線に突き上げているのが見渡せる。 また下を俯瞰すると《扇沢》のトロリーバス駅が点景となっていて、かなり標高を稼いでいるのが実感できるだろう。
大きなターンを数回こなすと南稜の支稜線の上に出て、シラビソやダケカンバが目立つ石畳みの道に出る。 ここは、登山道開設工事の時の石畳みの名残で、そのまま《石畳》と呼ばれている。
ここを通り過ぎると森林限界が近づいたのか、頭上を中心に展望が広がって明るい雰囲気となってくる。 残雪眩しい主稜線を仰ぎながら歩いていくと、道は南稜を離れて西方へ大きく周り込んでいく。
この南稜からの乗り換えの途中で、《扇沢》の右俣源頭を渡る。 普段は涸れ沢のトラバースだが、早い時期などは雪渓を渡る事になる。 やがて、迫り出した支尾根のヒダを巻き気味に登っていくと道は右に折れて草付きの斜面となり、頭上には《種池山荘》が現れる。 後は《種池山荘》に向かって、ほぼ一直線に仕切られた砂利盛りの道を登っていけばいい。
大きなターンを数回こなすと南稜の支稜線の上に出て、シラビソやダケカンバが目立つ石畳みの道に出る。 ここは、登山道開設工事の時の石畳みの名残で、そのまま《石畳》と呼ばれている。
ここを通り過ぎると森林限界が近づいたのか、頭上を中心に展望が広がって明るい雰囲気となってくる。 残雪眩しい主稜線を仰ぎながら歩いていくと、道は南稜を離れて西方へ大きく周り込んでいく。
この南稜からの乗り換えの途中で、《扇沢》の右俣源頭を渡る。 普段は涸れ沢のトラバースだが、早い時期などは雪渓を渡る事になる。 やがて、迫り出した支尾根のヒダを巻き気味に登っていくと道は右に折れて草付きの斜面となり、頭上には《種池山荘》が現れる。 後は《種池山荘》に向かって、ほぼ一直線に仕切られた砂利盛りの道を登っていけばいい。
照りつける太陽と白い砂利石からの照り返しのせいか、このルートで最もキツいと思われるこの坂を乗りきると、高山植物花咲く《種池平》に飛び出す。 もちろん、《種池山荘》は目の前に建っている。
《種池山荘》で休憩の後、東へ進路を取ってピラミタルな山容の爺ヶ岳に向かって登っていく。
ザラザラの砂礫地を“三歩進んで一歩めり込む”といった感じで登っていくと、頂上にケルンの積まれた爺ヶ岳・南峰の頂上だ。 はっきりした標高は示されていないが、すぐ隣の爺ヶ岳・本峰 2670メートル より高いとの事である。
ザラザラの砂礫地を“三歩進んで一歩めり込む”といった感じで登っていくと、頂上にケルンの積まれた爺ヶ岳・南峰の頂上だ。 はっきりした標高は示されていないが、すぐ隣の爺ヶ岳・本峰 2670メートル より高いとの事である。
爺ヶ岳の頂上から
残雪の剱・立山を望む
この頂からの眺めは、何といっても残雪眩しい剱岳・《八ッ峰》の眺めだろう。 また、真下に俯瞰できる《黒部渓谷》の深く切れ込んだV字谷も目を引く事だろう。 これから目指す鹿島槍ヶ岳も緑豊かで優雅な稜線の弧を描き、“二ッ耳”の独特の山姿とあいまって素晴らしい情景を魅せてくれる。 今日は、稜線が盛り上がる“付け根”の部分に乗っかかっている《冷池山荘》までの行程だ。 素晴らしい景色を満喫したなら、先に進もう。
雄大な“二ッ耳”を魅せる鹿島槍ヶ岳
南峰から下って三角点のある本峰、そして北峰と稜線通しに進むルートと、これらの峰を全て巻いていくコースとある。 稜線通しのコースは、下の巻道を行くより15分程時間がかかるだろう。 下の巻道はほとんど起伏がなく、楽に歩いていける。 但し、樹林帯なのであまりいい展望とはいえないが・・。
どちらを取るかはお好み次第だ。
越中側につけられた巻道は、左へ大きくカーブしながらほぼ水平に進む。 歩いていくと、それとなしに北峰を越えて、下りにかかって樹林帯を抜ける。 足元には信濃側が切れ落ちた《冷乗越》が見えて、これを通り過ぎると頭上に《冷池山荘》が見えてくる。
越中側につけられた巻道は、左へ大きくカーブしながらほぼ水平に進む。 歩いていくと、それとなしに北峰を越えて、下りにかかって樹林帯を抜ける。 足元には信濃側が切れ落ちた《冷乗越》が見えて、これを通り過ぎると頭上に《冷池山荘》が見えてくる。
夕日に染まる爺ヶ岳
この小屋のキャンプサイトは《冷池》のすぐそばだ。 今日はこの場所で、鹿島槍と剱岳・《八ッ峰》の贅沢な夕景を見ながら1日を終えよう。
茜色の空が魅せるもの・・
徐々に空が茜色に染まりゆく
茜色の空につつまれる剱・八ッ峰
茜色の空と剱・八ッ峰のシルエット
一瞬の間に霧が晴れて絶景を魅せてくれた
茜色のクライマックスの時
そびえ立つ“二つ耳”へ登っていこう
《2日目》 鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを越えて五竜岳へ
今日は、鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを越えて五竜岳へと向かう。 鹿島槍ヶ岳から五竜岳の間には天然の要害・《八峰キレット》があり、距離の割りには随分と所要時間がかかる。 従って早発は、この日の必須条件となる。 それでは出発しよう。 山荘の前から続く縦走路を北上し、お花畑の広がる主稜線上の小高い台地に出る。 できれば、この辺りで御来光を迎えたい所である。
今日は、鹿島槍ヶ岳から八峰キレットを越えて五竜岳へと向かう。 鹿島槍ヶ岳から五竜岳の間には天然の要害・《八峰キレット》があり、距離の割りには随分と所要時間がかかる。 従って早発は、この日の必須条件となる。 それでは出発しよう。 山荘の前から続く縦走路を北上し、お花畑の広がる主稜線上の小高い台地に出る。 できれば、この辺りで御来光を迎えたい所である。
朝の光が霧に乱反射して
眩い花がさらに眩く・・
この台地より信州側の草地を横絡みしながら登っていくと潅木帯にぶつかり、これも絡みながら乗り越えると、いつの間にか道は越中側に移ってハイマツの中をジグザグに登っていく。 これを乗りきると、布引山 2683メートル 山頂だ。 この山は信州側が大きく切れ落ちているので、道は越中側のハイマツ帯の中につけられている。 ハイマツの中を漕いでいくと二重山陵となった窪地を抜けて、鹿島槍・南峰に向かっての直登へと続いていく。
この登りは結構キツく、ペース配分を考慮せねば、この先の長い行程を乗りきるのが困難となるだろう。 越中側につけられた直登路を喘ぎながら登っていくと、山頂に積んである大きなケルンの剣先が見えてくる。 ケルンがだんだん大きくなってきて、やがて南峰の頂上台地の左端に飛び出る。
鹿島槍ヶ岳の頂からは
絹のような雲海に浮かぶ山なみが望めた
鹿島槍ヶ岳・南峰 2890メートル からの眺めは正に雄大で、残雪眩しい剱・立山連峰、そして恐竜の背びれのような稜線の突き出しを魅せる《八峰キレット》と五竜岳岩峰群・・と、素晴らしい山岳風景が目白押しだ。
※ 続きは次回『第339回 八峰キレット』にて・・
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No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
鹿島槍ヶ岳の北東斜面(大町市側)のカクネ雪渓ですね。 最近氷河と判明した、我が国では最新の氷河との事です。
有名なのが剱岳の小窓・三ノ窓雪渓と、立山の内蔵助雪渓で、これらはちょっとだけ上を歩いたことがあります。
それは、またの機会に記事にしたいな・・と。
鹿島槍ヶ岳の北東斜面(大町市側)のカクネ雪渓ですね。 最近氷河と判明した、我が国では最新の氷河との事です。
有名なのが剱岳の小窓・三ノ窓雪渓と、立山の内蔵助雪渓で、これらはちょっとだけ上を歩いたことがあります。
それは、またの機会に記事にしたいな・・と。
No title * by 旅の途中
鹿島槍ケ岳ですか・・・。登頂したことはありませんが、白馬岳に登った時に、頂上から見ました。今から35年以上前の話ですが、あれから年月が経過し体力も足腰も弱くなりました。
No title * by 風来梨
旅の途中さん、こんばんぱ。
>今から35年以上前の話ですが、あれから年月が経過し体力も足腰も弱くなりました
そうですね。 私もこの記事の掲載時は『奇跡の体力』という程にブリバリの体力を保持してましたが、全ての筋肉が化学変化を起こして消失してしまいました。(悲) もう、ヘタレにヘタリましたね。
でも、まだ山で悪足掻きしては、オチャメを繰り返しています。
この週末休みも厳しい山(奥穂高~西穂縦走)に行って、時間内に戻れなくなって、西穂独標で何もナシビバークするハメに・・。
かつてあった体力の盲信だけで行くので、必ずオチャメります。、
>今から35年以上前の話ですが、あれから年月が経過し体力も足腰も弱くなりました
そうですね。 私もこの記事の掲載時は『奇跡の体力』という程にブリバリの体力を保持してましたが、全ての筋肉が化学変化を起こして消失してしまいました。(悲) もう、ヘタレにヘタリましたね。
でも、まだ山で悪足掻きしては、オチャメを繰り返しています。
この週末休みも厳しい山(奥穂高~西穂縦走)に行って、時間内に戻れなくなって、西穂独標で何もナシビバークするハメに・・。
かつてあった体力の盲信だけで行くので、必ずオチャメります。、
ナイス