2018-06-24 (Sun)✎
路線の思い出 第267回 日中線・熱塩駅跡 〔福島県〕
線路が撤去されて芝生となった憩いの場に立ち
今の山の思いとかつての路線の在りし時を偲ぶ
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度(’79) / 営業係数(’83)
喜多方~熱塩 11.6km 167 / 1606
廃止年月日 転換処置 廃止時運行本数
’84/ 4/ 1 会津乗合自動車バス 3往復
熱塩駅(あつしおえき)は、福島県耶麻郡熱塩加納村(現在は喜多方市熱塩加納町)にあった国鉄日中線の駅である。 日中線の廃線に伴い、1984年に廃止された。 駅舎は日中線記念館として保存されている。
日中線は全ての列車(といっても僅か3本)が
DL牽引の客車列車だった
※ 鉄道ジャーナル`83年4月号より
単式ホーム1面1線の駅であったが、廃止まで全列車が機関車が客車を牽引する形で運行された為に、機回し線を1線有した。 また、貨物扱い時代の名残として、喜多方側に側線1本を有した。
末期は無人駅であった為に、ポイント操作は機関車を誘導するために添乗していた職員が兼務していた。
駅舎が欧風で人気があったが無人駅化以降は駅舎が荒廃して、路線廃止を控えた現役時代末期には、さながら幽霊屋敷の様相を呈していた。 荒廃していた駅舎は廃止から3年後の1987年に整備されて、「日中線記念館」として日中線に関する資料等を展示している。 また構内の線路は撤去されたが、当時日中線で使用されたラッセル車両や客車が保存・展示されている。
保存・展示されている客車の中は
鉄道旅の魅力が凝縮されていた
現役操業時の駅舎の中央部分は、見た目通りに二階建てであった。 しかし、建物内部には階段がなく、外付けの専用の出入口へ別途はしごを使用して直接出入りしていた。 このような出入り形態から、物置などのような使われ方をしていたようである。
お色直しを受けて再びモダンな
洋風トンガリ屋根の駅舎となった
熱塩駅跡の日中線記念館
日中線記念館として整備された際に、この二階の出入り扉は埋められて現在は天井の高い一階建てとなっている。 扉の位置は駅正面からすぐ左上に見える塗りつぶされたような位置ではなく、反対側にあった。 かつて使われたはしごは駐輪場の屋根裏に残されている。
喜多方寄りには、転車台の設備が遺構として現存している。 転車台は複数人による人力での可動式で、下部は水槽状になっていて、浮力を利用して転車に必要な力が軽減されるように設計されていた。
この転車台は開業当初は使用されていたが、すでに開戦されていた日中戦争のために職員や村民も兵役に駆り出されて人員不足となって使用不可能に陥り、以後は廃線まで再度使用される事はなかった。
橋桁および転車台に繋がっていた機回し線は撤去され、機回し線は本線に隣接するように敷設し直された。
役目を終えた後は水槽部分を利用して、時節によって池や花壇として使われている。
なお、この旧日中線・熱塩駅の駅舎は、『日中線記念館』として整備された後の2009年に経済産業省の「近代化産業遺産群 続33(東北開発)」の一つとして近代化産業遺産に認定されている。
熱塩駅と日中線は現役時代は乗るには乗ったが、現役当時の写真は一枚も撮っていない。
それは、当時のワテはまだ高校に上るか上がらないかの小僧で、当然に車の免許などなかったのである。 そして当時の日中線は1日3往復・・、車でもなければ『撮り鉄』は不可能な状況だったのである。
こんなのが撮りたかったけど
当時の『乗り鉄&撮り鉄』では撮影不可能だった
※ ウィキペディア画像を拝借
まぁ、駅で乗ってきた列車を撮るなら可能であるが、訪れた当時は廃止を直前に控えた頃で、『葬式鉄』と呼ばれる連中(ワテもその一人であるが・・)が殺到して、どのようなアングルを取ろうにもデカデカと『黒点』(邪魔な人影)が入って撮る気が失せたので、拗ねて一枚も撮らずに「乗っただけ」に終わってしまったのである。
あの時撮れなかった
『アリバイ写真』が今は撮り放題
駅名標バックの『アリバイ写真』も、次々と他の連中が駅名標前を占領して折り返し時間までに順番が回ってこなかったのである。 もちろん「駅舎も然り」で、車で追っかけてきた三脚部隊が列車到着前から駅舎の正面を占領していて、コイツらの背後からでないと撮れなかったのである。 まぁ、コイツらの前に出て撮ったら、それこそ喧嘩モノであったしィ。
だからが、この日中線の写真が一枚も撮れなかった事については、それほどの後悔の念は抱かなかったのである。 なぜなら日中線の写真は上記の如くで、「撮る気が失せた」というより「撮りようがなかった」からである。 例えるなら、「訪ねてはみたものの、目的の被写体の前にめざといイベント記念碑が建てられて、雰囲気が台無しになっていた」というように、目的のモノが「撮る気が失せるシチュエーション」に変わっていたからである。
こういうのが撮りたくて訪れたのに
:
この前に人だかりや三脚部隊があれば
撮る気は失せてしまうのである
※ 写真集『廃止ローカル線40線』より
でも、廃止になってからは、『日中線記念館』となったこの熱塩駅跡には度々訪れるようになったのである。 それは、この熱塩駅の所在した周辺には会津と米沢を結ぶ国道121号線が行き交っており、この道が会津や只見・飯豊の山々から蔵王や朝日連峰、そして秋田の山や滝に向かう為の主要道となったからである。
只見の山・守門岳より
次に登る会津・出羽の山なみを望み
:
この眺めの通りに放浪していくと
日中線のあった所は重要通過点となる
それは日中線があった頃はこの国道121号線は峠道をゆく未舗装道で、会津~米沢の往来は西吾妻の有料道路『西吾妻スカイバレー』経由しかなかったのである。 最も、この会津~米沢の往来を目論んで建設されたのが、旧『野岩羽線』構想の一部を担うこの日中線だったのであるが。
だが、日中線が廃止となってから程なく、国道121号線のバイパスが高速道路並みの高規格道路で開通したのである。 これによって会津~米沢の往来が格段に便利となったが、会津若松の駅や市街地をカットしている文字通りの『バイパス道』なので、山をハシゴする放浪旅の身では洗濯や風呂・食事などの生活行動をこなさねばならないのに、これらのある場所を確認している会津若松の駅前をカットするのである。
この道中で風呂などの生活行動をこなす・・となると、従来ならバイパス道を下りて会津若松の駅前(市街地)に出るのであるが、市街地への道はダダ混みな上に着いたら車をタイムパーキングに止める無駄な出費を強いられるのである。 しかし、日中線のあった郊外に出ると、コインランドリーはあるわ、熱塩温泉がクアハウスとなってリニューアルしてるわ、ホカ弁屋はあるわ、車は止め放題だわ・・と、放浪旅の身の上ではパラダイスな状況が広がるのである。
この事でこの地域における放浪パターンは、只見の山々より『只見線ロード』を伝ってスーパーと銭湯の位置も把握している(←把握する程に放浪・徘徊してたのかよ、このタワケは・・)会津若松に出る事から、会津若松の市街地に寄らずに直接国道121号に乗って『道の駅・会津の里』へ向かうものになっていた。 もちろんそれは、会津若松の駅前や市街地で、車をタイムパーキングに止める出費をケチる為である。
ここで車寝するのもいいし、ここから『日中線ロード』の県道333号線に入ると熱塩駅跡の『日中線記念館』に至るのである。 その道すがらにはコインランドリーもあるし、ホカ弁屋もあるのだ。
熱塩駅跡の『日中線記念館』には
入場券を模った温泉の入浴引換券が置いてあった
そして、『道の駅・会津の里』の次のバイパスICで降りると、そのICの袂にリニューアルされてクアハウスとなった熱塩温泉『夢の森温泉』があるなど、この日中線跡地付近は放浪旅の欲しいモノ全てが揃っているのである。
日中線の遺構は
この熱塩駅跡の『記念館』以外は
全てなくなったけど・・ね
まぁ、その為に日中線跡は、『日中線記念館』となった熱塩駅を除いて全てが撤去されて、道路用地などに収用されてしまって跡形もなくなってしまったけど・・ね。
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No title * by 風来梨
オータさん、こんにちは。
国道121号の付け替えられた道は、もう高規格道路そのままですね。
インターチェンジ化されているし。 恐らく、国道13号の奥羽国道を行くより、断然快適に南下する事ができますね。
バイパスICのすぐ近くに熱塩温泉のクアハウスがありますから、機会があればどうぞ。 本格的な温泉旅館は、旧道となった熱塩駅前を通る県道の奥に健在ですよ。 こちらも機会があれば温泉ハシゴにどうぞ。
それと、日中線・熱塩の記事、これより早速堪能させて頂こうかと・・。
国道121号の付け替えられた道は、もう高規格道路そのままですね。
インターチェンジ化されているし。 恐らく、国道13号の奥羽国道を行くより、断然快適に南下する事ができますね。
バイパスICのすぐ近くに熱塩温泉のクアハウスがありますから、機会があればどうぞ。 本格的な温泉旅館は、旧道となった熱塩駅前を通る県道の奥に健在ですよ。 こちらも機会があれば温泉ハシゴにどうぞ。
それと、日中線・熱塩の記事、これより早速堪能させて頂こうかと・・。
自分の古い記事にありますが、廃止間際の大混雑の 日中線を撮りにいきましたし、今は R121の 高規格化の恩恵に 預かっているからです。
東京~青森を 下道のみで車で走りとおすルートの選択で 決定版となったのは、この 会津から米沢へ アッという間に抜けられる便利な国道でした。
いつも 夜中に通るので、熱塩とか 日中温泉の 看板を見ながら、寄って見たいと思いつつ いまだ 再訪を果たせていません。悪しからず…