2018-05-13 (Sun)✎
『日本百景』 春 第332回 春国岱・春風景 〔北海道〕
雪が解けた春国岱は
砂州と水が大地にアートを描く
春国岱 しゅんくにたい (野付風蓮道立自然公園)
海跡湖である《風蓮湖》とオホーツク海を隔てる砂州は、原始林が生い茂る自然の宝庫となっている。
海跡湖である《風蓮湖》とオホーツク海を隔てる砂州は、原始林が生い茂る自然の宝庫となっている。
ここは、有史以来ほとんど人の手が入る事がなく、原始林とそこを棲とする野生動物、そして渡り鳥の飛来地となっている。
海水と淡水が混じる《風蓮湖》は野鳥の餌が豊富で、渡り鳥達の絶好の羽休めの場となっている。
確認されただけで、高山性の野鳥からオオワシ・オジロワシなどの猛禽類、カモメなどの海鳥、タンチョウやシマフクロウなど数百の種にも及ぶ様々な鳥達が飛来する。
確認されただけで、高山性の野鳥からオオワシ・オジロワシなどの猛禽類、カモメなどの海鳥、タンチョウやシマフクロウなど数百の種にも及ぶ様々な鳥達が飛来する。
野鳥が群れて飛び交う
北欧のような情景が広がる
また、砂州の盛り上がった中央部の砂丘上には針葉樹の森が形成され、海側より砂浜・草原・森林・塩性湿原・干潟と連続的な地形を示している。 それ故に、それぞれの地形にあった動植物達が共存する一大ワンダーランドとなっているのだ。
そう、エゾシカが群れを成して湖水を渡る様や鳥達が一斉に羽ばたき飛び立つその情景は、北欧のフィヨルドの情景を思い起こさせる。 また、アカエゾマツの原生林と海水により立ち枯れしたエゾワラなど、この地でしか目にできない情景が広がるのである。 また、夏はハマナスが砂州の至る所に咲き競い、その群落の長さは3kmにも及ぶという。 その他、エゾフウロやコケモモ・ワタスゲなどが咲き競う。
また、この《春国岱》の近くに《温根沼》という海跡湖もある。 ここは朝日の名所で、サンライズで染まった空を渡り鳥が飛び交う感動的な情景が見られる。
また、この《春国岱》の近くに《温根沼》という海跡湖もある。 ここは朝日の名所で、サンライズで染まった空を渡り鳥が飛び交う感動的な情景が見られる。
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 根室市街より車(レンタカー)利用(0:20)→春国岱ネイチャーセンター〔駐車場〕
・春国岱ネイチャーセンター〔駐車場〕より春国岱入口まで徒歩10分
・春国岱入口よりアカエゾマツ原生林まで約1km・徒歩20分
・春国岱入口よりアカエゾマツ原生林まで約1km・徒歩20分
・風蓮湖エゾワラ帯まで約1km・徒歩20分
・展望休憩舎まで約3km・徒歩50分
※ 全体の周回に要する時間は約4時間
春国岱入口(0:10)→春国岱ネイチャーセンターより車利用(0:20)→根室市街
春国岱入口(0:10)→春国岱ネイチャーセンターより車利用(0:20)→根室市街
《2日目》 根室市街より車利用(0:20)→温根沼湖畔で朝日と野鳥撮影
(0:10)→春国岱ネイチャーセンター
午前中~レンタカー返却可能時間まで春国岱周遊、行程は《1日目》と同じ
春国岱ネイチャーセンター(0:20)→根室市街
春国岱ネイチャーセンター(0:20)→根室市街
自然のフィールドに集う
彼らに魅せられて再び春の春国岱へ・・
《1日目》 春国岱ネイチャー・ウォッチング
ラムサール条約登録湿地に指定されているこの春国岱は、野鳥と自然の宝庫だ。 この地に立って鳥達が一斉に羽ばたく様や干潟を渡るエゾシカの群れ、オジロワシやオオワシの優雅な姿を目にすると、きっと虜になる事だろう。 その情景は日本離れした北欧のフィヨルドのような情景で、異世界のワンダーランドに誘われた心持ちとなろう。
そこは日本離れした
北欧のフィヨルドのような情景を魅せる場所
だが、都会に住む者にとっては、ヘタすれば飛行機で向かう外国の街よりも遠いのである。
それは、我が国の北東の果て・・だからである。 そう、北海道の道都・札幌からでも移動に半日かかるのである。 従って、この地を訪れるなら、時間や費用などの旅計画を周到に決めねばならないだろう。
魅せられる相手は
自然界の楽園の主である野鳥たちだ
そして、魅せられる相手はこの地の主である野生動物や野鳥である。 故に、カメラで追い求めてもなかなかに捉まらないだろう。 なぜなら、自然界のフィールドで最も能力の劣るのは我々人間なのだから。
大空を飛び交うのはオジロワシか?
それゆえに万を持して訪れたとしても、『せっかく訪れたのに写真はまるでダメだった』ってオチは多分にあるのだ。 それを踏まえて、何度でも訪れたくなる所がこの《春国岱》なのである。
前置きが長くなったが、今回はその春の情景に魅せられにいこう。
北欧のような情景が広がる北の果てへは
訪れる事自体が一大ミッションだ
日本の北東の果て・根室までマイカーで行くのは不可能ではないが、現実的ではないだろう。
だが、北海道をめぐるなら、車は必要不可欠だ。 となると、選択肢は否応なく『レンタカー』って事になるだろう。 理想としては根室で借りるのが最もいいが、根室の駅レンタカーの営業時間は16時閉店と使えたものではないのである。 また、車の台数もかなり少ないので、かなり前から予約を入れないと、まず利用は適わないだろう。
従って、根室がダメなら釧路で借りる事にしよう。 釧路なら規模も大きく、時間も19時位までは営業しているので手軽にレンタカーを利用できる。 釧路からなら《春国岱》まで120km位で、その間に信号などはほとんどないので2時間半で着く事ができるだろう。 でも、快適だから・・と飛ばし過ぎないように。 調子に乗って飛ばし続けると赤切符を切られますよ。
だが、北海道をめぐるなら、車は必要不可欠だ。 となると、選択肢は否応なく『レンタカー』って事になるだろう。 理想としては根室で借りるのが最もいいが、根室の駅レンタカーの営業時間は16時閉店と使えたものではないのである。 また、車の台数もかなり少ないので、かなり前から予約を入れないと、まず利用は適わないだろう。
従って、根室がダメなら釧路で借りる事にしよう。 釧路なら規模も大きく、時間も19時位までは営業しているので手軽にレンタカーを利用できる。 釧路からなら《春国岱》まで120km位で、その間に信号などはほとんどないので2時間半で着く事ができるだろう。 でも、快適だから・・と飛ばし過ぎないように。 調子に乗って飛ばし続けると赤切符を切られますよ。
春国岱 園内案内図
※ 春国岱ネイチャーセンター配布の地図より作成
さて、《春国岱》のネイチャーセンターには駐車場があり、ここで車を止める。 トイレはここ以外にはないので、用はここで済ましておこう。 ネイチャーセンターより徒歩10分ほど、風蓮湖の湖口に架かる橋を渡って《春国岱》の入口に向かう。 この橋を渡った先にも駐車エリアがあるが、砂州の上の湿地状態となっている所で、あまり駐車したい・・とは思えないかもしれない。
この駐車エリア前の湖の畔に『春国岱』と看板が立てかけられ、その脇より湖の淀みを跨ぐように木道が続いている。 ここが入口だ。 遊歩道の木道をゆくと、鳥たちが思い思いに楽園を謳歌している。
楽園を謳歌する野鳥たち
木道は近年頻発する気象災害で損壊し、所々が落ちて穴が開いたりしているので通るのは注意が必要だ。 この自然界のフィールドでは、鳥たちが思い思いに羽ばたいているのに比べ、人間は橋の損壊一つで「この先進む事ができるのか?」と不安に駆られる。 これが先程に述べた「自然界のフィールドで最も劣るのは人間だ」という事を、如実に示している事なのだと思う。
近年多発する気象災害で
木道はズタズタに壊されていた
やがて、春国岱の湿地帯を横切る橋を渡って奥のエリアに入ると、木道はズタズタに破壊されていて通行不能となる。 最もこの春国岱を訪れる訪問者の大半は、この春国岱を横切る橋の袂か橋の上に上った位で引き返してしまうのだが・・。
大地の躍動が織りなす芸術
さて、奥の湿地帯が探索不能という事で橋の袂まで戻って、以降は海岸沿いを探索する事にしよう。
春国岱を横切る橋より先は、野鳥のエリアからエゾシカの住処となる浅く水の退いた砂州となっていく。 この砂州は芸術的な紋様を魅せてくれて、カメラを向けながら歩いている事だろう。
奥行きを魅せる
縦位置の方がいいかな?
また、餌の豊富な河口側に飛来する野鳥が、時折集団で上空を飛来している。 これも狙い目だ。
このようにカメラ片手に立ち止まり、次々と現れるシャッターチャンスになかなか先に進む事ができないであろう。
餌の時間となると
野鳥たちが群れを成して上空を飛び交う
大空を飛び交う野鳥の群れ
群れを成さずに
孤高に振る舞っていたタンチョウもいた
海岸沿いの道はこの砂州の保全工事か何かでトラックが通った道の跡で、広く平らな砂利道であるが自然回帰の力は凄ましく、海から波によって運ばれた砂がもはや車を通す事が困難な位に吹き溜まってきている。
観光客が立ち寄らないまで奥に入ると
エゾシカの生息エリアとなる
必ず小鹿は親鹿に追随して渡る
その吹き溜まった砂州が湿地帯を隔てる丘となってくると、エゾシカの住処が近づいてくる。
エゾシカは沢の澱む湿地帯の浅瀬を渡って、食い扶持を求めて海へと向かうのが日課となっているようで、群れを作ってこの『トラック道』跡を横断する。
群れを成して近寄ってくると
身の危険を感じるよ
人間1人(ワテ)のすぐそばをエゾシカが群れを成して横切る様は、多少の恐怖さえ覚えるのである。
元は『トラック道』という人間が専有した道も、ほんの2~3年で彼ら野生動物の手元に戻ったのである。
自然回帰が凄ましい『トラック道』の跡と
この地の『主』のエゾシカたち
そう・・、自然の回復力は『トラック道』という人工的な作為を取り除き、再びこのエリアの主である彼ら野生動物の手元に戻してくれたのである。 自然に『思考』があるとするなら、自らを壊しにくる人間の作為を元通りに均して、自らと共に生きる野生動物たちに返していっているのだ。
野鳥たちが河口の餌場から
住処に戻り始めると日暮れも近い
一羽が住処へ向けて飛び立つと
堰を切ったように次々と飛び立ち始める
陽が暮れるまで
思う存分このワンダーランドを堪能しよう
そんな自然の創造力を間近で見られるのも、春国岱でも観光客がほとんど立ち寄らない『エリアの奥』だからこそ・・なのである。 ここでは普段では決して魅る事のない大地の躍動を目にする事ができるのである。 今日は思う存分、大地の躍動を堪能しよう。
朝の光で叙情的な眺めとなった温根沼
《2日目》 温根沼で御来光と春国岱ネイチャー・ウォッチング
行程表では根室市街に戻っているが、温根沼で朝の情景を堪能したいのなら、日の出前に行動ができるように、すぐ近くにある『道の駅・根室』で車内泊する方がいいだろう。 まぁ、根室市街まで戻って宿などを取ってしまうと、温根沼での御来光シーンを魅る事はは限りなく不可能になるだろうし。
朝日が昇ると湖面に映る
光の色が黄金色となってくる
その『道の駅・根室』は温根沼まで3km程で、温根沼から春国岱入口まで1km足らずなのだから、レンタカーを返して昼の列車で道央方面に戻るとしても、充分に余裕がある行程となるのである。
それでは、『道の駅』で車中箔するなど”満を持して”望む温根沼での御来光シーンを堪能しよう。
春の御来光は
サンライズの位置が今イチ・・
御来光シーンを心ゆくまで堪能したなら、再び春国岱に渡って朝の情景を楽しんだ後にレンタカーを返すべく釧路方向へ帰路に着く事にしよう。
朝の春国岱にて・・
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No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。
『岱』という文字を見ただけでそう感じますよね。 私は高原とかのワラビが獲れそうな所をイメージしますね。 駅でもニセコアンヌプリの裾野にかっ『蕨岱』という駅が有りましたし。 利用者がおらずに廃駅になっちゃいましたが。
春国岱はグーグルで調べても『岱』がついた意味が解りませんでしたけど、恐らく砂洲が盛り上がって海とを隔てる丘山ができた事に由来するのでは?と思います。
『岱』という文字を見ただけでそう感じますよね。 私は高原とかのワラビが獲れそうな所をイメージしますね。 駅でもニセコアンヌプリの裾野にかっ『蕨岱』という駅が有りましたし。 利用者がおらずに廃駅になっちゃいましたが。
春国岱はグーグルで調べても『岱』がついた意味が解りませんでしたけど、恐らく砂洲が盛り上がって海とを隔てる丘山ができた事に由来するのでは?と思います。
No title * by 鳳山
野鳥と野生動物の宝庫ですね。北海道、死ぬまでに一度は行ってみたいです。
ナイス
ナイス
No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
この春国岱は、本当に大自然の姿を魅せてくれます。 鳥が一斉に飛び立ったり、エゾシカの川渡り、獣の巣に生まれたての胎児を見かける事もあります。
遠い日本の東の果て根室なので、訪れるだけでもひと苦労ですが、行けばハマる事受け合いです。
この春国岱は、本当に大自然の姿を魅せてくれます。 鳥が一斉に飛び立ったり、エゾシカの川渡り、獣の巣に生まれたての胎児を見かける事もあります。
遠い日本の東の果て根室なので、訪れるだけでもひと苦労ですが、行けばハマる事受け合いです。
さすが北海道の大自然、雄大さに松山千春の歌がダブッてきました。