2018-03-28 (Wed)✎
日本の滝を訪ねて 第154回 権現滝 〔島根県〕
権現滝 ごんげんたき 落差 最大の滝で虹滝の20m 島根県江津市松川町
権現滝は、江の川右岸支流・長良谷川にある7つの滝(小滝・虹滝・龍神滝・すべり滝・姫滝・女滝・男滝)の総称である。 高低差約100mの間を連瀑を成して滝を掛けているが、滝へのルートはかなり荒れており、安易に滝見とはいかない渓谷内にある。
権現滝への詳細図
滝へのアプローチ
江津市街より江ノ川に沿って国道261号線を旧桜江町との境まで進むと、旧桜江町の看板の手前に権現滝の案内板があり、そこから車1台の幅の小径を600m程入ると荒地同様の駐車スペースがある。
行程表
駐車場から最も下の小滝まで600m程だが、道はかなり荒れている。 また、「滝まで100m」との案内標柱の立つあずま屋の先からは、朽ちたロープを片手の沢遡行が必要となる。 駐車場より最上部の滝までは約1km程であるが、ロープ片手の急峻な崖上りや連続したハシゴの昇降など、往復で2時間半から3時間の時間を要する。
スベリ滝とはんど淵
淵より下へ落ちる
龍神滝への連瀑が見られる
権現滝は長良の境にあって、もともと岩壁の上に権現様の祠があった事から権現滝と名が付けられた・・と伝えられている。 権現滝は峡谷絶壁に七段に渡っての連瀑を成して流れ落ち、滝飛沫を嶮しく切り立った崖に飛び散らしている。 その姿を目にしたならば、この滝へと向かう困難さも相俟って、印象深く記憶に残る滝でなのである。
それは『第151回の龍頭ノ滝』でもそうだが、平成25年の山陰豪雨災害で遊歩道がズタズタに崩されたのだろうか、この権現滝へのルートもかなり荒れているのである。 説明では地元の勇志が滝への道を整備しているとの事だが、到底素人の行楽客を受け入れるルートではないのである。
ルートの最良のレベルで
コレだもの
その事はこのルートを実際に歩いた体験から詳しく述べる事にするが、もう廃道に近い山道をゆく沢登りに近い行程となるのである。 それは、そこに掛けられているロープを見れば、文字通り「言葉は要らない」だろう。 それでは、このワイルドな様相を呈する権現滝の連瀑めぐりをしてみよう。
アプローチは事前におおよその権現滝の位置を把握していれば、さほど難解ではない。 なぜなら、滝は「江津市に編入された旧桜江町のすぐ手前」と解りやすい位置に所在するからである。 また、朽ちてきているが古風な木の滝案内板もあり、滝までのアプローチに至っては前回の『岩瀧寺ノ滝』より解りやすいのである。
その案内板が指し示す農作業に使うような小径に入っていくと、約600m程で荒地同然の行き止まりとなった駐車場に着く。 まぁ、車が5~6台駐車できるが、訪れる滝見の者の車で埋まる事はないだろうね。
この昔話はまだしも・・
この駐車場には権現滝のイラストマップと権現滝にまつわる昔話を掲げた案内板が設置されているが、このイラストマップが”クセモノ”なのである。 特に左下のいい加減極まるルート図は、滝の挿絵と相俟って見る者に「安易に滝へ行けるもの」との誤解を与えかねないのである。 まぁ、この駐車場の状況を見れば、この絵図が「胡散臭いモノ」と想像がつくのであるが。
さて、滝へは、鹿や猪などの農地への侵入を防ぐべく設けられた鉄網の扉ゲートの紐を解いて中に入る。 なお、入った後は、元通り紐で結び直して閉めておくのがマナーである。
シカやイノシシ除けであろうか
鉄網のゲートがあった
ゲートより先は、豪雨災害で周辺の土砂が流れ出た痕なのか、ほとんど道を形成していない沢の砂防通路を歩いていく。 この間で地元の有志による「遊歩道の整備」の痕跡は、朽ちてほとんど読めなくなった『滝までアト350m』の標柱のみであった。 このようなルートの状況が、筆者の「お恥かしき」を招いている。
この「お恥かしき」というのは、ぢ・つ・わ・・今回のこの滝への訪問は『2度目』なのである。
つまり今回の訪問は、最初の訪問時に道を間違えて、沢中を彷徨いタイムオーバーで断念となった時の『リベンジ』なのである。 その『リベンジ』である今回も、正しいルートを見つけるのに手間取って、この紛らわしい朽ちた標柱を2~3回行ったり戻ったりしちまったよ。 ちなみに前回は、この標柱に気づかずに真っ直ぐ入ってしまって自爆したのであるが。
よく見ないと折れた木が
あるだけに見える
『ブービートラップ』と化した朽ちた道標
この朽ちた紛らわしい標柱(一見すると木が折れているだけに見える)に従って大きく左折して坂を登っていくが、この坂への道も間違えて直進した『自爆道』とさほど変わらない、いやちょっとマシなだけの荒れた道であった。 恐らくであるが、山陰豪雨災害の際に土石流が発生したのであろう。
この坂を200m位上っていくと、地元の勇志の遊歩道整備が事実だった証のあずま屋が現れる。
それはこんな荒れた道で、このあずま屋が唯一使える建築物だから・・である。 実際にこの荒れた道を歩くと、このあずま屋を目にするまで「地元の勇志が遊歩道を整備した」という事がウソのように思えてくるのであるが。
このあずま屋を目にして
「本当に遊歩道整備した事あるんだ!」と思ったよ
:
でもその背後に倒木が
横たわっているのが
見えますでしょうか?
このあずま屋の脇に辛うじて読めるまでに朽ちた『滝までアト100m』標柱があるが、その先はどう見ても行き止まっているのである。 それもそのハズ・・、あずま屋の背後すぐで、倒木により道が塞がれているからである。 この倒木をかい潜っても、苔が蒸した岩が転がる沢以外に進路が見当たらないのである。
意識して判りやすく撮ったモノだけど
コレが黒光りした沢の上に乗ると
岩を蒸した苔そのものだよ
だが、その岩に張り付いた苔をよく見ると、コレ・・設置された『補助ロープ』であるという驚愕の事実が判明する事になる。 それは見事に苔蒸して、岩に張り付けば岩の苔に、地べたに転がれば獣の糞同然の物体となっていたからである。 真に大自然の驚異である。
そして地べたに添えると
真に獣の糞・・
それに、この補助ロープも沢を遡行する実態に見合わない所に張られていて、ロープを手繰るよりは岩を跨いで直に沢を遡る方が渡り易い所もあったし。 やがて、最初の滝・小滝と権現滝最大の落差20mの虹滝が現れる。 ここは滝前が沢の中洲となって三脚も立てられそうなので、小滝と虹滝をセットで流して撮ってみる。
権現滝の主瀑となる
小滝と虹滝のコラボ
:
これが今回の滝見の一番星
小滝と虹滝の静けさを堪能したなら、先に進もう。 この先へは滝前の中洲に張られてある苔蒸したロープで中洲を渡り、右岸(進行方向左手)の土手に取り付く。 ここからこの苔蒸しロープを片手に土手を急登していくのである。 まぁ、このような荒れたルートを想定していなかったならば、恐らくこの小滝と虹滝で引き上げてしまう事だろうね。
ルートは小滝・虹滝前の中洲を渡る
張ってある苔蒸したロープが目印
この土手の登り始めは塩ビ製の踏み段があるが、次第に土砂崖の這い上がりとなり、ついにはロープも途切れて土砂崖のヘツリを伝うようになる。 だがこのデンジャラスゾーンの距離はごく短いので、さっさと通過する事にしよう。
最初は塩ビの踏み段があるが
最後は崩れかけのヘツリ越えとなる
:
ロープを忠実に辿るとヘツリは回避
できるが途中から倒木だらけの土砂崖となる
※ 下りで通ったので本当です
この崩れ落ちそうなヘツりを越えると、鉄の桟橋が見えてくる。 この桟橋を渡ると長いハシゴ階段があり、その袂に龍神滝が奈落の底に落水を滑り落としている。 これはハシゴを設置したワイヤーを片手に身を乗り出して撮る。(決してマネをしないように) また、龍神滝の落ち口の前に小さな釜淵があり、スベリ滝が淵に白布を掛けている。
ハシゴのワイヤーをつかんで
前のめりになって
龍神滝の落ち口を撮る
:
それは真に奈落の底へ
滝を掛けているかのよう
龍神滝の上は小さな釜淵と
スベリ滝がある連瀑を魅せる
このハシゴ階段で進む向きが変わり、鋭角に左に折れて滝の右岸(左側)の断崖を登っていく。
これから先はこのハシゴ階段を登りきって沢を形成する断崖の頂上付近まで上がっていく。
スベリ滝の先は断崖の頂上まで
延々と急なハシゴ階段が続く
この間に姫滝・女滝・男滝とあるが、滝は見えるものの前の雑木が邪魔をしていいアングルを得にくいのと、春の直前の時期という事で午後も周って周囲が薄暗くなり始めたので、光量が不足して撮れず終いになったのである。 これらの滝は、また今度の『3度目の正直』(下手するとこの時の様に『フォーエバー』となるかも)で『再リベンジ』したいと思う。
女滝らしき滝は
雑木の間から撮ったけど
ハシゴ階段で断崖の頂上付近まで登ったが、イラストマップにあった『神木・椎ノ大木』は判別できず、当初は「1時間ちょっとで行って帰ってこれる」とタガを括ったこの滝めぐりも、「2回で都合6時間(初回の失敗時も今回も3時間かかっちまった)もかけて未だに未完」という、ナンチャッテ山ノボラーな筆者(タワケ)による滝めぐりならではのオチで今に至っている。
それで三江線廃止の訪問の時に、この滝を訪れて『未完』の状況を払拭しようと、「撮らぬタヌキの何とやら」で手ぐすねを引いているワテである。
下りで撮ったスベリ滝
なお下りであるが、上記の写真説明文で記した通りにロープを忠実に手繰ってゆくと、倒木だらけの土手をズル滑りしながらの下りとなる。 これは「恐らく」であるが、行きに通ったヘツリ道は転落の危険があるので、下りはこれを回避すべくロープを設置したのだと思われるが如何に?
・・でも、キツさでいうと、倒木をかいくぐりズル滑りする土砂崖下りの方がキツいんだよね。
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No title * by たけし
秘境駅といい、ケモノ道にしか見えないところを極める根性は凄いです。
xザックの中にはツェルトが常備品なのでしょうね。
xザックの中にはツェルトが常備品なのでしょうね。
No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。
日本は世界に類を見ない水の美味し国ですね。 日本全国に様々な滝が潜んでいます。 その何百分の1でも伝える事ができたなら、嬉しいなと思いますね。
日本は世界に類を見ない水の美味し国ですね。 日本全国に様々な滝が潜んでいます。 その何百分の1でも伝える事ができたなら、嬉しいなと思いますね。
No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。
この滝へのルートは、マジ凄かったです。 それは、岩に貼り付ければ「岩の苔」、地べたの枯れ草の上に置くと「獣の糞」の補助ロープが全てを物語っています。
テント担いで行くこと多いです。 否定はしません。 テントは、第二のマイハウスですから。
この滝へのルートは、マジ凄かったです。 それは、岩に貼り付ければ「岩の苔」、地べたの枯れ草の上に置くと「獣の糞」の補助ロープが全てを物語っています。
テント担いで行くこと多いです。 否定はしません。 テントは、第二のマイハウスですから。
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