2018-03-18 (Sun)✎
『日本百景』 春 第324回 三嶺 〔徳島県〕
盟主・剣山に優るとも劣らずの
魅惑的な峰・三嶺
この項目では、平家落人伝説の地・名頃より、盟主・剣山と並んで魅惑的な三嶺に登ってみよう。
盟主の剣山でもこの山でも当てはまる事だが、一般交通機関を利用してのアプローチがかなり困難な事が挙げられる。
それは最も近い町の三好市・池田(旧 阿波池田町)でも60km近く離れている事と、そのアプローチ道路もその貧弱さ故に『439 ヨサク 酷道』と陰口を叩かれる国道439号線なのである。
この国道も最近までにかなり整備されたものの、道程の約半分が道幅3mの狭隘道路である。
そして、登山口の名頃集落であるが、登山口前に駐車場とトイレはあるのだが過疎化の為か店屋の一軒もなく、オマケに自動販売機も見当たらなかったので前夜のアプローチは心情的に辛いかもしれない。
そして、登山口の名頃集落であるが、登山口前に駐車場とトイレはあるのだが過疎化の為か店屋の一軒もなく、オマケに自動販売機も見当たらなかったので前夜のアプローチは心情的に辛いかもしれない。
三嶺山頂までの所要時間は標準でも4時間を切るので、ここは無理にアプローチしてこの寂しい里で一夜を過ごす事もないだろう。 最も近くの店屋のある所で三好市東祖谷(旧 東祖谷村)の中心集落か、はたまた東祖谷への入口である大歩危あたりで仮眠して翌朝早くに名頃に向かうのも一つの手だろう。
三嶺・名頃ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR阿波池田駅より車(0:30)→名頃(0:40)→三嶺林道合流点(1:20)→ダケモミの丘
(1:10)→水場(0:30)→三嶺避難小屋、三嶺避難小屋より三嶺頂上へは片道10分
《2日目》 三嶺避難小屋より三嶺頂上往復・所要20分(1:10)→ダケモミの丘
《2日目》 三嶺避難小屋より三嶺頂上往復・所要20分(1:10)→ダケモミの丘
(1:00)→三嶺林道合流点(0:30)→名頃より車(1:30)→JR阿波池田駅
それでは、剣山に負けず劣らずの魅力を秘める三嶺に登ってみよう。 名頃は平家落人の里として、また案山子の里としても名が知れている。 その為か至る所に以前に流行った『キャベツ畑人形』のような縫いぐるみが鎮座している。 当然、三嶺の登山口にも登山者を見送るべくの縫いぐるみが数体鎮座している。
名頃登山口
さすがに『キャベツ畑人形』は
不気味で撮る気にはなれなかった
さすがに『キャベツ畑人形』は
不気味で撮る気にはなれなかった
登山道は駐車場裏手の土手に切られていて、これを伝っていくとあっという間に名頃ダムの発電施設の上部に出る。 登山道にこの発電施設への資材運搬のリフトの残骸が残っていてこれをくぐるのだが、荷物が大きいとリフト残骸のワイヤーにつっかえて邪魔だ。 発電施設の上部から丘状となった土手上に上がると、足場が枯草に覆われた樹林帯に潜り込む。 この樹林帯の中は結構な急登で、私の見立てでは最も傾斜がキツイような気がする。
途中で三嶺林道と合流する
3つ位の急な段でこの登りを乗り越えると、三嶺林道と合流する。 付近は視界が開け、矢筈山や黒笠山などの玄人好みの山々が見渡せる。 林道を50mほど奥に入ると対岸の土手に登る階段が設けられ、その階段の前に《三嶺登山口》との表示が掲げられている。 この階段を上ると始めは急な登りっぽいが、すぐに急登は収まって高低差の少ない歩き良い樹林帯の中の道となる。
これを約1時間位歩いていく。
周囲はリョウブの樹が目立つようである。 このリョウブは地方によっては『サルスベリ』と同一種として扱われている花木との事で、夏になると周囲は白や赤の樅花で彩られる事であろう。
周囲はリョウブの樹が目立つようである。 このリョウブは地方によっては『サルスベリ』と同一種として扱われている花木との事で、夏になると周囲は白や赤の樅花で彩られる事であろう。
だが今は、枯葉も落ちた裸木が乱立している。
付近の木々がリョウブより樅の木に変わっていくと徐々に傾斜が急となり、やがて道標など一切ない1517mの独標の上に出る。 樹生する樅の木にはニホンジカの食害を防ぐ為に一本一本に樹体にネットが巻かれ、また登山道もシカの侵入を防ぐべく防護ネットが張られている。
最近は樹林帯の山々でこのような森林保護を受けているのを見かけるが、それほどまでにニホンジカの食害は凄ましいのだろう。 そして元来生息していたカモシカはその余波を受けて淘汰されてきているという。
最近は樹林帯の山々でこのような森林保護を受けているのを見かけるが、それほどまでにニホンジカの食害は凄ましいのだろう。 そして元来生息していたカモシカはその余波を受けて淘汰されてきているという。
野生動植物を根絶やしにしかねない
自然界へのペットの連れ込み
そして傍若無人なる公共へのペットの連れ込み
コレって日本を疎んじる反日チョン思考に通じてるよね
そのカモシカの生息の阻害要因として、山での破廉恥極まる行為である『犬連れ登山』も関わっている・・という事実もあるのだ。 それは記すると長くなるのでリンクにとどめる事にするが、これらの不埒者が連れてきた犬の糞や尿によって餌となる草の芽などの植生が被害を受け、飢えたカモシカが撒かれた犬の餌を食って腹を下して死ぬケースが見受けられるとの事である。
ダケモミの丘を越えると
鞍部の平坦地に出る
:
休憩するには足場がヌタ場で
雰囲気的にも侘しい所だ
さて、この事となると憤慨して熱くなるのでこの辺て止めるとして、ルートはダケモミの丘を越えると下り基調となってシラベや樅、ツガの木々が乱立する窪地状の鞍部に出る。 ここは傾斜的には平坦地で休憩を入れたい所だが、足場はヌタ場でグチョグチョなので休憩場所としては不向きであろう。
休憩を入れるなら、この先の植生がササ原に変わった辺りの方が賢明だろう。
休憩を入れるなら、この先の植生がササ原に変わった辺りの方が賢明だろう。
傾斜がキツくなっていくと
尾根上で右へ直角に進路を変える
尾根上で右へ直角に進路を変える
このヌタ場の鞍部を越えるとササ原となり、徐々に傾斜がキツくなっていく。 2~3回つづらを折って登りつめると道標の立つ尾根上に出て、ここから方向を90°右に切って登りつめていく。
すると程なく樹林帯を抜けて、三嶺の頂上丘を形成する大岩盤が眼前に迫ってくる。
この大岩盤にタワんで連なる尾根を更に詰めていくとササ原を抜けて大岩盤下のガレ地の急登となっていく。
水場への降り口
水場へはロープ片手に
懸垂下降で崖を降りていかねばならない
懸垂下降で崖を降りていかねばならない
このササ原とガレ地の境目に水場への降り口があり、ガレ地を30m程下っていくと涸れ沢の伏流水のような源流沢がある。 だがこの水場のガレ沢下りはかなり嶮しく、ロープを使っての懸垂状の下降もあるので注意が必要だ。 しかし、頂上台地に建つ避難小屋には水はなく、小屋に泊まるならここで水を補給する事が必須条件となる。
水場は頂上岩盤からの
流れの細い伏流水だった
流れの細い伏流水だった
水を補給したら、いよいよこの大岩盤から続くガレ地の急登となる。 ルートは、このガレ地を詰めて大岩盤の基下に掘られたヘツリを伝って上に抜けていく。
目指す三嶺の
頂上丘岩盤が見えてきた
嶺の大岩盤へ向けて急登
でも整備されて登りよい
見上げると真にそそる眺めだが登ってみるとそれほどでもなく、また大岩盤の基下のヘツリは丸太の段がかましてあって登りよい。 感覚としたなら、最初の発電施設から林道までの急登の方がよっほど身体に応えたのであるが・・。
ササの草原を
突っ切って登っていく
ガスに撒かれても神秘的な眺めだ
私が訪れた時は2日間に渡って天気が悪かった事もあり、展望としてはこの辺りの大岩盤とササ原の風景が最も魅せられる風景であった。 カメラ片手にこれらを撮りながら登りつめると、いつの間にか見上げていた大岩盤上に広がる頂上丘の縁に登り着く。
大岩盤の縁まで登りつめると
凍った水面の山上池がお出迎え
登り着いた頂上丘にはまだ氷結した白い氷の山上池があり、その前に道標が立ち、『左 300mで頂上、右 避難小屋』と標してある。 右手の避難小屋への距離は記してなかったが、避難小屋はすぐ上の高台の窪地に隠れて見えないだけで距離にして50mほどであった。
山上池の前が分岐となっていて
左に10分で頂上だ
右に数十歩で
新しく建て替えられた
今宵の宿(避難小屋)に到着
取り敢えず小屋に荷物を置き、頂上を踏んでこよう。 頂上は盛り上がりを1つ越えた先にあり、この辺りだけは残った雪が通路をヌタ状にしていた。 たどり着いた頂上は、折からの悪天で何も見えない白霧の世界だった。 取り敢えず『お約束』のアリバイ写真を撮って、暫くする事もなく呆然と佇んで時間を費やして頂上を後にする。
拙の冴えないアリバイ写真
唯一の頂上からの写真
この後すぐに白霧の世界に・・
避難小屋は2階建ての土間が区切られた新しい美築の小屋で、居住性は快適だ。 但し、何故かトイレは100m近く離れた頂上丘の縁にあり、かなり不便だ。 そして水場も先に記述した如く危険な下降を伴う水場で、しかも20~30分も下方にあって、これまた不便である。 訪れた時はまだ春先で、外はいつしか霙から雪に変わっていた。
草原に・・残雪に・・山上池に・・
三嶺山頂丘は真に山上庭園の眺めだった
三嶺山頂丘は真に山上庭園の眺めだった
:
この厚い山上池の氷の下で
山の主が光が射し込む
『夜明けを』待っているのかな?
朝起きると、まだ雪がチラチラ舞っていた。 この様子では、頂上での朝の情景は望み薄であろう。
まぁ、登った感覚としてそんなにキツくもなかった(ダラダラと登ったからなのだが)ので「晴天の日にいずれまた・・」という事で、そのまま下山の支度に取り掛るとしよう。
深い山なみに魅せられて
下りも往路を行くが、ルート全般的に足や膝に負担のかかる大きく掘れた段差が少なく、降り易いルートだ。 最盛期には上りより下りの方が時間がかかる事もザラであった下山歩行技術が崩壊して進展しない筆者を持ってしても、2時間半で下る事ができたのだから。
帰り際に頂稜大岩盤を1ショット
ただ雨に濡れながらの下山であった事を除けば、快適な下山行であった。 後は、カメラ片手に頂上丘の大岩盤やイッキに下ろしていくササ原の大斜面などをカメラに収めつつ下っていこう。
今度は天気の良い時に
訪ねたいと思う
下山したなら車で隣の集落の菅生 すげおい まで下ると、観光モノレールさえ運行される程に観光地化されたクアハウスの《癒しの里温泉郷》がある。 食事も取れるので、山の後の『ひと風呂』にいいだろう。
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