風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  『日本百景』  >  『日本百景』 冬 >  第317回  クッチャロ湖・冬 (湖面凍結期)

第317回  クッチャロ湖・冬 (湖面凍結期)

『日本百景』 冬  第317回  クッチャロ湖・冬(湖面凍結期) 〔北海道〕


クッチャロ湖上を優雅に舞うコハクチョウ

   クッチャロ湖 くっちゃろこ (北オホーツク道立自然公園)
クッチャロ湖は宗谷・頓別原野にある、北西側の小沼と南東の湖の本体を成す大沼からなる汽水(海跡)湖である。 宗谷丘陵内陸部から流れ出る仁達内川の形成した河谷(川の流れで浸食されてできた谷)が、砂州によってオホーツク海と隔てられて形成された湖である。 


クッチャロ湖・概念図

湖の形成にこういった理由がある為、河口部の近くに位置する大沼はオホーツク海から流入する海水の影響を受けて塩分濃度が高くなり、元来川だった上流側の小沼は塩分濃度の薄い淡水に近い水質となっている。

この事で、淡水に近い小沼には淡水を好む野鳥が飛来する。 一方、海水の流入で塩分濃度が高い大沼では海から小エビ類などが流入し、また塩分濃度が適度な為に海藻類も繁殖するなど餌が豊富で、渡り鳥達の絶好の越冬中継点となっている。

中でも、湖の別称が『白鳥の湖』と言われる程にコハクチョウが飛来し、優雅な姿を魅せてくれる。
また、オナガガモ・ヒドリガモといったカモ類も多数飛来し、その数は2万羽以上に達するとの事である。

このように渡り鳥の楽園の景観を魅せるクッチャロ湖は、1989年に重要湿地の保存に関する国際条約の《ラムサール条約》に『水鳥の生息地として国際的に重要な湿地』として、我が国では3番目の登録指定を受けたのである。

冬から春先の季節・・、越冬の為に湖の畔に飛来する数万羽といわれる水鳥、優雅に飛来するコハクチョウ・・、そして猛禽類で国の天然記念物に指定されているオジロワシやオオワシなど野鳥の楽園となる。 中でも、猛禽類のオジロワシの接近で、数千羽の水鳥が一斉に羽ばたく様は圧巻である。




クッチャロ湖と浜頓別市街地図

    行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
稚内市街よりバス(鬼志別バスターミナル乗り換え便含めて1日4便) 所要2:40
又は JR音威子府駅よりバス(1日4便) 所要1:30で浜頓別バスターミナル
浜頓別バスターミナルより徒歩30分程で湖畔に建つクッチャロ湖・水鳥観察館前に着く
マイカー・レンタカー利用
稚内市街より国道238号を浜頓別・枝幸方面へ約90km・所要2時間20分でクッチャロ湖・水鳥観察館前の駐車場



クッチャロ湖標柱と
氷結する湖面でたたずむハクチョウ

  クッチャロ湖・湖面凍結期
ラムサール条約登録湿地に指定されているこの《クッチャロ湖》は、野鳥と自然の宝庫だ。
白鳥が群れを成して優雅に空を舞う姿や、湖面への着水や湖面から飛び立つ姿を心ゆくまで堪能できる。


冬の空を舞う
その優雅な姿は

また、オジロワシやオオワシの接近で鳥達が一斉に羽ばたく様や、そのオジロワシやオオワシの優雅な姿を目にすると、きっと虜になる事だろう。


きっと魅る者を虜にさせるだろう

だが、都会に住む者にとっては、ヘタすれば飛行機で向かう外国の街よりも遠いのである。
それは、我が国の北の果て・・だからである。 そう、北海道の道都・札幌からでも移動に半日かかるのである。 従って、この地を訪れるなら、時間や費用などの旅計画を周到に決めねばならないだろう。


湖水に憩うハクチョウたち

そして、魅せられる相手はこの地の主である野生動物や野鳥である。 故に、カメラで追い求めてもなかなかに捉まらないだろう。 なぜなら、自然界のフィールドで最も能力の劣るのは我々人間なのだから。


相手は野生動物である渡り鳥

それゆえに万を持して訪れたとしても、『せっかく訪れたのに写真はまるでダメだった』ってオチは多分にあるのだ。 それを踏まえて、何度でも訪れたくなる所がこの《クッチャロ湖》なのである。
前置きが長くなったが、この最果ての『白鳥の湖』を心ゆくまで堪能しよう。


自然のフィールドで最も劣る人間が
追っかけてもなかなか捉えられない

日本の北の果てにあるこの地までマイカーで行くのは不可能ではないが、現実的ではないだろう。
だが、北海道をめぐるなら、車は必要不可欠だ。 となると、選択肢は否応なく『レンタカー』って事になるだろう。

理想としては稚内で借りるのが最もいいが稚内駅に駅レンタカーはなく、稚内市内のレンタカー会社をネットで検索する以外にないだろう。 それに昨今の経営損失が問題となっているJR北海道では宗谷本線の運行本数が大削減され、正直言うと鉄道利用で稚内まで行くのはかなり厳しくなってきている。

要するに、鉄道とバス利用では、稚内での停泊・・即ち日程の1日追加が確実となるのである。
ただでさえ休みの日が限られている観光目的では、この日程増は真に”痛い”のである。
従って、ここは札幌などの北海道の中心部でレンタカーを借りて、旅の計画に併せて北海道の各地を寄り道しながら、この《クッチャロ湖》に向かうのが、この地を探勝するに当たって現実的だろうと思う。

それでも札幌からの長い距離を運転しなければならないので、レンタカー又は鉄道利用のいずれにせよ、かなりキツい移動となるのではあるが。 それでは、稚内までの移動手段の事は訪れる者の各自に任せるとして、このガイドは稚内を出発点にしよう。

旧天北線ルートをゆく

凍てつく原野の道を日輪が照らしていた

稚内からはR238号線で宗谷岬を周ってゆく海岸線沿いのルートと、旧国鉄天北線の行き交った内陸部の宗谷丘陵をゆくルートがある。


雪の原野に沈みゆく太陽が日輪に

旧天北線の車窓から魅た夕日と
重ね合わせていた


 『光の輪』という夢まぼろし
どこまでも果てしなく広がる荒涼とした原野
その無人の荒野に貨客を大量輸送する目的で
建設される鉄道路線があった事は
正しく”夢まぼろし”と捉えていいのかもしれない

距離や道の整備状況は国道であるR238号をゆく海岸線沿いの道が段違いに良い(特に道の除雪状態や路面の凍結状態など冬は差が顕著だ)が、旅の雰囲気や味わいは断然内陸部をゆく旧天北線が行きかった道道ルートがいいだろう。


旧天北線周りの道は
冬季は完全アイスバーンとなる

距離的にはどちらをとってもほぼ同じであるが、道の状態の優劣で内陸部経由の方が多少時間がかかるだろう。 なお、この項目の『クッチャロ湖・湖面凍結期』では、内陸部のルートを旧天北線の遺構を訪ねながら行く事にしよう。


沼川駅跡に立つ1本の樹


限界集落となってしまった樺岡駅跡


雪に埋もれたモニュメントに
斜光が当たって


駅跡を示したとは思えぬ
モニュメントのあった所は
宗谷炭鉱の炭鉱町の駅だった

宗谷岬をめぐる海岸沿い、内陸宗谷丘陵ルートのどちらを取っても、猿払村の中心街である鬼志別で合流する。 鬼志別からは《ポロ沼》や《猿骨沼》などの猿払原野に点在する湖沼群や、《カムイト沼》や《モケウニ沼》などの神秘性に富んだ海跡湖などに立ち寄るのもいいかもしれない。


完全氷結したポロ沼
天北線の線路跡は道道1089号『猿払鬼志別線』となり
この道の途中にポロ沼やキモマ沼がある

なお、ポン沼や猿骨沼は、内陸寄りにある猿払村の集落とを結ぶ道道に沿って位置するので厳冬期でも探勝は可能だが、猿払の集落から離れている《カムイト沼》と《モケウニ沼》は厳冬期は道が除雪されず通行止となるようである。

さて、途中の景勝地に立ち寄りながらゆくと、稚内から3時間半くらいで《クッチャロ湖》のある浜頓別町の中心街に着く。 浜頓別のバスターミナルは旧国鉄天北線の浜頓別駅跡で、周囲は広大な町役場及びバス利用者用の駐車場となっている。

町役場とバスターミナルのある街の中心から《クッチャロ湖》への案内表示に従って約1km位内陸に進むと、湖を囲んで樹立するアカエゾ松が行く手を阻む突き当りとなって、これをジグザクに交わしていくと浜頓別温泉のクアハウスを越えて程なく湖畔に出る。


クッチャロ湖は
渡り鳥達の憩いの場だ

冬季の《クッチャロ湖》はネイチャーセンター裏の一部を除き、完全に氷結している。
その水面となっている湖面の一部に、ハクチョウやカモが群れを成して寝そべっている。
湖畔にあるネイチャーセンターには《クッチャロ湖》に関する様々な資料が展示されているので、野鳥たちが優雅に舞うその時までの開いた時間に立ち寄ってみよう。


クッチャロ湖畔に着いて空を見上げると
ハクチョウたちが優雅な姿を魅せてくれるだろう

そのネイチャーセンターでは湖畔でハクチョウの餌付けをしていて、その”餌撒き”時が先程に述べた「野鳥たちが優雅に舞うその時」なのである。


ハクチョウのつがいが仲睦ましく

ネイチャーセンターの職員が餌を満載した雪降ろしのボードを湖面まで引きずって、それを水面となった”一部”の湖面の周囲に撒くと、寝そべっていた野鳥たちが起き上がってノソノソとやってくる。

そして、その時間は定まっているのか、遠くから白鳥の群れが次々と飛来してくるのだ。
コレを狙うと、ハクチョウの優雅な飛来シーンをフイルムに収める事ができるだろう。
だが、この飛来シーンよりも更に圧巻で興奮するシーンがあるのだ。 


陽が暮れ始めた頃


ひと際大きな翼を広げた鳥がやってくる


そう・・野鳥の楽園に
彼らを狙うオオワシが飛来すると

それはオジロワシやオオワシ等の猛禽類が飛び交ってきたなら、これらに捕えられる事を恐れたカモの群れが一斉に羽ばたくのだ。 その数は1000羽以上・・。 空がカモの黒い身体の斑点で埋まる程の凄しい光景を魅せられるのだ。


捕食を恐れた彼らが一斉に飛び立つその瞬間
大空は羽ばたく鳥たちの黒い斑点で被われるのだ

そう・・、野鳥における自然の摂理が眼前で大迫力で展開するのである。
それでは、大迫力のシーンを含めて、《クッチャロ湖》の野鳥がおりなす優雅な舞をごろうじろ。


優雅な舞に魅せられて


餌場にやってくるハクチョウたちが
大空を優雅に舞って降りてくる


着地態勢に入った時が狙い時だ

   ※ 詳細はメインサイトの『クッチャロ湖 <1>湖面氷結期』を御覧下さい。




関連記事
スポンサーサイト



コメント






管理者にだけ表示を許可