2017-12-24 (Sun)✎
『日本百景』 冬 第315回 巻機山・初冬 〔新潟県〕
冬将軍が到来した巻機山塊
:
一晩で全く違う景色となっていた
巻機山塊の端にある割引岳から続く稜線より、木道の敷かれたなだらかな草原状の起伏を2つ程越えると《井戸尾根》への下降口である《御機屋 おはたや》である。 本峰の頂上三角点は少し先にあるが、現在はここを頂上としているみたいである。
本当の頂上に立ち寄ったなら、この《井戸尾根》を下って今日の宿泊場所である《巻機山避難小屋》へ向かおう。 道は完全に整備され、木道と木の階段が敷設されたルートを25分程下ると、これまた立派な《巻機山避難小屋》が見えてくるだろう。 天気が良ければ付近にある池塘などを見物しながらの楽しい下りだが、ワテの時は前述の通り大雨でそれどころではなかったのである。
なお、この避難小屋であるが近年に建替えられたらしく、中に人力撹拌式のバイオトイレがあるなど住環境の優れた小屋である。 水場はある・・との事なのだが、大雨で小屋から離れる事が億劫だった事もあり、すぐ下にある沢=水場を見つける事ができなかったのである。
なお、この避難小屋であるが近年に建替えられたらしく、中に人力撹拌式のバイオトイレがあるなど住環境の優れた小屋である。 水場はある・・との事なのだが、大雨で小屋から離れる事が億劫だった事もあり、すぐ下にある沢=水場を見つける事ができなかったのである。
ちなみに登り(沢ルート)でバテた筆者は沢で汲んだ水を飲み干してしまって、アテにしていた水場も見つけられず終いで、雨水をナベで集めるハメとなった。 この雨が上がる事を願いつつ、この立派な小屋で一夜を明かそう。
バイオトイレまで設置
されている近代的な小屋
巻機山避難小屋
朝目覚めると、“いい天気になれ”との願いは叶うどころか最悪の展開の小吹雪状態であった。
「一晩、雨水を溜めておこう」と外に出していた鍋は、かき氷のように雪が噴き溜まっていた。
これでは本日に予定していた巻機山上での周遊はとても無理で、このまま下山するより手はないだろう。
これでは本日に予定していた巻機山上での周遊はとても無理で、このまま下山するより手はないだろう。
夜が明けて小屋の外に出ると
そこは一面の銀世界だった
そこは一面の銀世界だった
仕方がないので、現在持ちうる装備で雪に対する備えを万全にしたなら出発しよう。 晩秋の山を目指すのであれば、このように一晩で冬山に様変わりする事もあるので、雪に対する備えや心構えなど雪に対する対策を想定する必要があろう。
一晩で50cmという積雪は
草木に冬への支度のヒマを与えず
秋の装いのまま凍える冬を迎える
雪紅葉となった
小屋より出ると、一晩で50cmという積雪で銀世界が広がっていた。 昨日小屋の前にあった木道は完全に積雪下に埋もれ、踏跡一つない白いキャンバスが広がっていた。 安全な所にいれば心ときめく眺めなのだろうが、これより山から下りる者にとっては“困惑”以外の何者でもない情景だ。 なぜなら、木道によって示されていたルートが、全て“消されて”真っ白な雪原となっていたからである。
一瞬、小吹雪が止んで
銀世界が視界に
この事により、この小吹雪の中を下山するという困難と共に、「ルートを見つけながら下っていく」という課せも背負う事になったのである。 初心者ルートの《井戸尾根ルート》といえども、目印や目標となるものを失えば厄介なモノとなるのである。 下に埋もれている木道をピッケルで刺して、“位置確認”をしながら行かねばならない。
小吹雪を呼んだ
“前線”の境目が見えた
これを怠れば、ルートを外しての遭難も有り得るのだ。 また、雪の乗った木道を踏みつければ、ハデに転ぶ事は必定である。 ルートを外せば大変な事となるし、何度も転ぶとケガや気力の萎え、そして濡れる事による疲れを引き起こすのである。
ぶ厚い雲がとけて
上越国境の山なみが
上越国境の山なみが
これは心身に負担をかける下りとなったものである。 しかし、進み下らねば活路は見出せないので、とにかく出来うる限りの確実さを確保しながら下っていこう。 標高1500m位まで下りきると、雪も解けだしてこの最悪の状況から抜け出す事ができるだろう。 この小吹雪の中の過酷な下りで前巻機〔ニセ巻機〕 1861メートル の山頂標柱と『九合目』と標された道標を見た時は、大げさなようだが“大いに救われた”と感じたものである。
この「ニセ巻機山」の道標を
目にして救われた
この前巻機からは斜面に広く取られた丸太の段を下っていくらしく、丸太の段を埋め尽くした雪原も段々状を刻んでいた。 この下りでは所々に丸太に打ち込んだ鉄杭が露出していたのでルートは把握できたものの、この雪に埋もれた丸太や鉄杭に引っ掛かっての転倒が新たな恐怖となり得るのである。
丸太はともかく、鉄杭なら大ケガ必定であるからだ。
上越国境より南の空は
秋晴れのようだ
この下りをおっかなびっくり下る事で、“自然の力は人間のちっぽけな構造物をいとも簡単に凌駕するのだ・・”と思い知られたものである。 この広い斜面の坂を下りきると、ようやく下の視界が開けてくる。 そして、下るにつれて足元の雪が薄くシャリシャリになってくる。
遠くに見える山は
苗場山であろうか
ここまでくれば解けた雪で濡れて気持ち悪い感触とはなるものの、“ひとまず安全な所まで下りきった”とホッとすることだろう。 ホッとして心に余裕が出てくれば、やはりこの銀世界を楽しみたくなるものだ。 ここはカメラを取り出して、またとない冬山に様変わりした情景を収めていこう。
谷川連峰も薄っすらと
雪化粧を始めて
さて、下りの道であるが、雪は下る毎に解けだして、《六合目の展望台》を過ぎる頃には雪解けの流水で道が冠水するようになってくる。 雪でスリップしたりすると、途端に濁った雪解け水でビショビショに濡れてしまう。
如実に前線の雲が
境界線を示して
もう道のロストの心配は完全になくなるが、手袋といい上着といい靴といい、完全に濡れネズミとなってしまう。 また、この巻機山の地質である粘土質の水はけの悪い土質にも悩まされる事だろう。
踏ん張るとヌルリと滑り、尻モチでも着こうモノなら途端に泥坊主と化するのである。 そして、水の吸収の悪い粘土質はルンゼ状に掘られた登山道に雪解け水をそっくりそのまま流し、登山道の全てを“泥水の沢”に変えているのである。
谷川連峰の山なみと
ナナカマドの実
迫力をもって
初冬の山なみが押し寄せる
雪が解けたら解けたでこのような新たな困難が待ち受けているので、思うように下山ははかどらないのである。 《六合目の展望台》より《五合目の焼松》まで小一時間はかかったであろうか。
また、頂上稜線で撮れなかった悔いを取り戻すべく立ち止まる毎にカメラを取り出したりしてたので、大いに時間を食ったのである。 従って、今回の自らの所要タイムは全くアテにならないものとなってしまったのである。
前景に雪を乗せた枝を配してみた
下りついた《五合目の焼松》では、今まで遮られていた左手の展望が望めるようになる。
ここでは雪をまとった巻機山の本峰と、巻機山を源とする《米子沢》がゴルジュと連瀑を刻んだ雄大な秋風景を拝む事ができた。
もうじき頂の冬が
麓に駆け下りる事だろう
麓に駆け下りる事だろう
《五合目の焼松》からは完全に雪も消え、またこれよりルートが直角に折れることもあって、雪解け水の“にわか沢”より解放される。 後は、所々水溜りとなったぬかるみを避けつつ下っていく。
所要時間で1時間って所であろうか。
合目道標に示される標記が『二合五尺』となると、程なく登山口より飛び出し簡易舗装の道を歩くようになる。 少し歩くと登り時に使った《ヌクビ沢》ルートの登り口と合わさって、《桜坂駐車場》の登山口に下りつく。
下りついて見上げる山は、天気も回復してまたとない紅葉真っ盛りの情景であった。 しかし、小吹雪の中を下りてきたワテには、この紅葉をカメラを収める気にはならなかったのである。 今度来た時に秋の山と紅葉を撮れればそれでいい・・と思ったからである。 この宿題を成せる日が来るのを、ワテ自身心待ちにしている次第である。
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No title * by 風来梨
たけしさん、こんにちは。
ぢ・つ・わ・・、ヘタリが顕著になってきた7~8年前、いつものように何も訓練せずに沢筋の難コースを登って、案の定ヘタッて、テントを担いできたものの大雨という事もあって、立派過ぎる無人小屋で泊ったのですが、大雨が大雪に変わって一夜にして積雪50cmとなってしまったようです。
要するに、過去の『奇跡の体力』という幻想だけの勢いで、備え無しに行って筋書き通りオチャメ(自爆)った訳ですね。
でも、オチャメには慣れているのか、何とか降りれましたよ。
ぢ・つ・わ・・、ヘタリが顕著になってきた7~8年前、いつものように何も訓練せずに沢筋の難コースを登って、案の定ヘタッて、テントを担いできたものの大雨という事もあって、立派過ぎる無人小屋で泊ったのですが、大雨が大雪に変わって一夜にして積雪50cmとなってしまったようです。
要するに、過去の『奇跡の体力』という幻想だけの勢いで、備え無しに行って筋書き通りオチャメ(自爆)った訳ですね。
でも、オチャメには慣れているのか、何とか降りれましたよ。
後回ししているうちに機会を失い、TVやガイドブックを眺めるばかりになりました。
初冬の難しい時期での山行記録、貴重なものです。
ありがとうございます。