2017-12-03 (Sun)✎
『日本百景』 秋 第313回 只見川橋梁 〔福島県〕
周囲を彩る紅葉と相俟っての
絶景を魅せる只見川第一橋梁
只見川橋梁 ただみがわきょうりょう
風景明媚な車窓を魅せるローカル路線の多くが廃止淘汰された今、純粋に車窓風景を楽しめる数少ない路線となった只見線・・。 その魅惑の車窓は、会越国境の山々を源として会津盆地を蛇行しながら流れる只見川沿いをゆく風景だろう。
秋もいいが冬も捨て難い
只見川第三橋梁付近にて
穏やかに流れる只見川は四季折々の美しい自然風景を魅せて、これを目にすると四季のある美味し国・日本に生まれた事を心から良かったと思う事であろう。 その四季折々の風景を魅せる只見川には八つの美しいデザインの橋梁が架けられて、只見線列車がその橋梁を渡る度に四季折々の風景を車窓に映し出す。
その只見線も’11年夏の豪雨災害によって、8つの橋梁の内の第五橋梁から第八橋梁までが豪雨によって増水した只見川の濁流にのまれて崩落や完全流失する大きな被害を蒙ったのである。
その災害の傷跡は、豪雨災害から6年経った現在でも復旧の目途も立たず、未だに崩落・流出した4つの橋のあった会津川口〜只見が不通となっている。
不通区間では路床から草が生えるなど
自然回帰も始まっていた
会津塩沢駅にて
そして、復旧には多大の費用が掛かる事や、不通区間が赤字路線の只見線の中でも最大の閑散区間である事から、「このまま不通区間を復旧せずに部分廃線も・・」という流れが予想されたのである。
そうなると、「部分廃線からの更なる経営不振で、いずれは只見線全線が廃止に・・」という危惧も浮かび上がってきたのである。
だが、全線廃止を危惧する声と共に、観光資源としての『只見線』の維持を求める動きが福島県や現地の町村自治体を動かし、最近になって県や地元自治体が復旧費用の大半を持つ事と、復旧後の不通区間の運行でJRに赤字が計上されないように、運行経費を自治体の立ち上げた第三セクターが持つ『上下分離式経営』とする事で、ようやく復旧工事に取り掛かる合意がなされたようである。
しかし、災害の被害は凄しく、流された橋の復旧と路盤の補強工事に4~5年の期間がかかるとの事である。
これほどの紅葉風景なのに
撮り鉄で訪れたのは初めてだったりする
第一只見川橋梁
会津桧原~会津西方に架かる全長174mの橋梁で、只見川に架かる只見線の鉄道橋の中で、唯一のトラス構造のアーチ橋(上路式2ヒンジスパンドレルブレーストバランストアーチ形式)であり、三島町特産の桐の花と同じ薄紫色に塗装されている。 また、只見川を一跨ぎする本橋梁が水鏡となって川面に写る姿や、只見川の水面から川霧が立ち本橋梁を包む幻想的な景観が素晴らしい。
もう夢中になって
何枚も撮ってしまったよ
秋にもなると山峡は
16時前には日が陰り始める
列車は陰ったけど周囲の紅葉は
斜陽が当たってクライマックスに
2012年より観光客や撮影者の為に、駒啼瀬トンネル脇よりトンネル上の鉄塔付近までを三島町が「只見川ビューポイント遊歩道」として遊歩道整備をしている。 また、道の駅には遊歩道の案内板が設置されている。
比較的目立たない第二只見川橋梁
※ 夏に撮ったモノです
第二只見川橋梁
会津西方~会津宮下に架かる全長190.27mの橋梁で、上路式2径間連続ワーレントラス + 上路式プレートガーダー3連の形式となっている。
只見川には会津宮下~会津桧原の区間では鉄道橋以外の橋が架けられていないので、第二只見川橋梁の最寄駅の会津西方より、第一只見川橋梁側の隣駅・会津桧原へ直接向かう事はできない。
従って、会津西方より会津坂下方向へ向かうには、会津宮下(三島町市街)に出る必要がある。
第三只見川橋梁
会津宮下~早戸に架かる全長180.40mの橋梁である。 上路式プレートガーダー1連 + 上路式3径間連続ワーレントラスの形式で、只見川橋梁の中では第一只見川橋梁と人気を二分する橋梁である。
以前は見晴らしが良く
容易に撮影できる所だったのに
以前(・・といっても25年位前)は徒歩で橋を一望できる地点まで行けたが、国道252号線の道路拡張によって完全に車道化されて、徒歩でのアプローチはかなり危険かつ困難となった。
国道252号の道路拡張で
見晴らしがかなり悪くなってしまったな
現在のこの橋を一望できる地点は、宮下バイパスに連なる国道252号線のスノーシェード内に設けられたテラス状の一角のみで、車が高速に行き交うスノーシェード内を通らねばならない。
このテラスでの車の駐車は2台が限界。
トラス桁の橋梁は横から撮ると
今イチと思ったので
第四只見川橋梁
会津水沼~会津中川に架かる全長199.11mの橋梁で、鉄筋コンクリート桁、プレートガーダー桁、トラス桁の混成形式となっている。
2011年7月の新潟・福島豪雨では只見川の増水・氾濫により本橋梁が冠水したが、下路式トラス橋のためか流失する事態は免れている。 だが、流木などの衝突により本橋梁のトラス桁および敷設されたレールが歪み、宮下方の鉄筋コンクリート桁の手前辺りが路盤崩落の被害を出した。
同年9月末より会津宮下~会津川口の2011年内の運転再開に向けて、本橋梁および周辺の路盤の復旧作業を行い、同年11月末に復旧完了となった経緯を経て、同年12月3日より会津宮下~会津川口が運転再開となっている。
川岸際のガーターが流された第五只見川橋梁
水位が橋梁高さよりも上だったようだ
※ ウィキペディア画像を拝借
第五只見川橋梁
会津川口〜本名に架かる全長193.28mの橋梁である。 下路式曲弦ワーレントラス1連 + 上路式プレートガーダー4連の形式の橋梁であった。 元々は田子倉ダムの建設の為に電源開発株式会社の専用鉄道が敷設された時に架けられた橋梁である。
自然の前には人間の構造物など無力だ
※ グーグル画像を拝借
2011年7月の新潟・福島豪雨では、只見川の増水・氾濫によって川口方プレートガーダー桁1連が流失した。 なお、この付近の只見川は川幅がやや広く、かつ下路式トラス橋のためかトラス桁部分は冠水、流失する事態を免れている。
下の桁が流されて
宙づりになったレール
※ グーグル画像を拝借
橋梁流失の原因となった本名ダムと
第六只見川橋梁跡
第六只見川橋梁
本名~会津越川に架かる全長193.28mの橋梁である。 鉄筋コンクリート桁、プレートガーダー桁、トラス桁の混成形式の橋梁であった。 この橋梁も第五只見川橋梁と同じく、田子倉ダムの建設の為に電源開発株式会社の専用鉄道が敷設された時に架けられた橋梁である。
2011年7月の新潟・福島豪雨では、只見川の増水・氾濫によってトラス桁および前後のプレートガーダー桁2連が流失した。 なお、川口方の鉄筋コンクリート桁およびプレートガーダー桁2連部分は流失されずに残っている。
本名ダムの緊急放水による
橋の崩落・流失が主要因との事
:
大きな被害(ダム決壊)を防ぐ為に
鉄道橋は犠牲にする
解っちゃいるけどやるせない
※ 福島県環境衛生部のウェブサイトより
流出の直接の原因は、ダム決壊を防ぐための本名ダムからの放流によって只見川の濁流が上路式トラス桁および橋脚を直撃し押し流した為である。 また、支承でもあったトラス桁を失った前後のプレートガーダー桁も落ちて流されている。
こんな穏やかな流れの川が
牙をむくのだ
※ ウィキペディア画像を拝借
第七只見川橋梁
会津横田~会津大塩に架かる全長166.44mの橋梁である。 上路式プレートガーダー5連 + 上路式ワーレントラス1連の形式の橋梁であった。 この橋梁も第五只見川橋梁などとと同じく、田子倉ダムの建設の為に電源開発株式会社の専用鉄道が敷設された時に架けられた橋梁である。
2011年7月の新潟・福島豪雨では、只見川の増水・氾濫によってトラス桁および5連目のプレートガーダー桁が流失した。 なお、トラス桁の橋脚および、川口方のプレートガーダー桁4連部分は流失されずに残っている。
また、只見川の上流側に隣接する四季彩橋(町道)は、ポニー中路アーチ橋の為か流失する事態は免れている。 だが、当橋梁より只見川の下流側にあった国道252号の二本木橋は、上路式アーチ橋の為に流失している。
流出は免れたものの
路盤が洗い流された第八只見川橋梁
※ ウィキペディア画像を拝借
第八只見川橋梁
会津塩沢~会津蒲生駅の只見川(滝ダム湖)の河岸に架かる全長371.10mの橋梁である。
鉄筋コンクリート桁、プレートガーダー桁、トラス桁の混成形式の橋梁であった。
この橋梁も第五只見川橋梁などとと同じく、田子倉ダムの建設の為に電源開発株式会社の専用鉄道が敷設された時に架けられた橋梁である。
橋に引っ掛かった流木の残骸が
氾濫の凄さを物語る
※ グーグル画像を拝借
2011年7月の新潟・福島豪雨では只見川の増水・氾濫によって冠水したものの、河岸沿いであった事と下路式トラス橋のためか流失する事態は免れた。 しかし、川口方鉄筋コンクリート桁辺りの路盤が一部崩落した。 安全対策を施工するには4年以上の工期が見込まれている。
- 関連記事
スポンサーサイト