2011-05-20 (Fri)✎
名峰百選の山々 第22回 『35 戸隠山 、34 高妻山』
長野県・新潟県 戸隠山系(上信越高原国立公園) 戸隠山 1904m、高妻山 2353m
コース難度 ★★★★ 体力度 ★★★
ひときわ高い三角錐を示す高妻山
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 長野市街より車(0:40)→戸隠・奥社登山口駐車場(0:20)→森林植物園
(0:30)→戸隠奥社(2:00)→八方睨(0:10)→戸隠山(0:45)→九頭龍山
(0:50)→一不動避難小屋・水場は下山路方向へ下り15分
《2日目》 一不動避難小屋(1:30)→八丁タルミ(1:00)→高妻山(2:00)→一不動避難小屋
《2日目》 一不動避難小屋(1:30)→八丁タルミ(1:00)→高妻山(2:00)→一不動避難小屋
(1:30)→戸隠キャンプ場(0:45)→森林植物園(0:20)→戸隠・奥社登山口より車
(0:40)→長野市街
朝もやにけむる戸隠の岩峰群
さて今回は、戸隠山から高妻山への縦走コースを歩いてみよう。 登山をするにあたって、このコースの特色を2~3挙げておきたい。 この山域には無人小屋しかなく、食料と宿泊用具(シュラフ・カンテラなど)は全て持参せねばならないという事。 次に、《蟻ノ戸渡リ》や《八丁タルミ》・《帯岩》など、通過に困難を伴う場所が数多く存在する事である。
このことから考慮して、レベルとしては中級以上であると断言できる。 従って、スニーカー履きの初心者がいきなりアタックするのは無謀であるし、山での自炊経験のない者は、経験を経てから挑むべきであろう。
このことから考慮して、レベルとしては中級以上であると断言できる。 従って、スニーカー履きの初心者がいきなりアタックするのは無謀であるし、山での自炊経験のない者は、経験を経てから挑むべきであろう。
なぜ、このようなことを記したのかというと、近頃の山小屋では食事・寝具等全てが備わっていて、お金さえ持ては自らで担いで上がる必要がない山が多くなったからである。 それに慣れてしまうと、山小屋は何でも備わっていていつでも宿泊できるものと錯覚しがちになり、その思想で無人小屋や小屋のない山域に平気でやってくるようになってしまうからである。
そうなれば困るのは当人であるし、周りにも多大な迷惑をかけてしまうのがオチとなる。
私も、山でこのような者を多く見かける。 私ごときが警告を発するのも何だが、山に登る者全てに類が及ぶものとして肝に銘じて頂きたい。 前おきが長くなったが、登山を開始しよう。
そうなれば困るのは当人であるし、周りにも多大な迷惑をかけてしまうのがオチとなる。
私も、山でこのような者を多く見かける。 私ごときが警告を発するのも何だが、山に登る者全てに類が及ぶものとして肝に銘じて頂きたい。 前おきが長くなったが、登山を開始しよう。
戸隠山~高妻山 縦走コース 行程図
《1日目》 戸隠奥社より戸隠山稜線へ
登山のセオリー通り、朝早く出発しよう。 駐車場前の茶屋の脇にある《戸隠奥社》への参道に入る。
砂利が綺麗に敷きつめられた杉並木が取り囲む薄暗い中を歩いていくと、立派な山門が現れる。
《隋神門》である。
砂利が綺麗に敷きつめられた杉並木が取り囲む薄暗い中を歩いていくと、立派な山門が現れる。
《隋神門》である。
ここからやや傾斜を増していき、杉並木が途切れるまで伝っていくと、《戸隠奥社》が狭い山裾の高台に建っているのが見えてくるだろう。 ここには水場がある。 この先は《一不動》下の《一杯清水》まで水場はないので、補給をしていこう。 社務所の脇を通り抜けると、いよいよ『戸隠』への登高が始まる。
地蔵さんの窩・・
百間長屋
このヘツリで90°左に折れて、もうひと回り長い《百間長屋》の岩のヘツリを伝っていく。
ヘツリの中にはお地蔵さんが祀られていて、厳しい条件の中もこの“長屋”で守られているみたいだ。
《百間長屋》を通り抜けると、《西窟》と呼ばれる巨大な岩盤を仰ぎながら、この岩盤の裾をトラバース気味によじ登る。 これを這い上がると、《天狗ノ露地》という展望台に出る。
晴れていたなら、戸隠連峰の岩稜の核心部分・西岳や本院岳の姿が望める事だろう。
ここから、いよいよ鎖付きの岩登りとなる。 鎖場を3~4つこなして《胸突岩》という岩壁を登りつめると、コース最大の難所・《蟻ノ戸渡リ》である。
真にナイフリッジ
蟻ノ戸渡リ
この《蟻ノ戸渡リ》は、戸隠山から派生する尾根が僅か50cmのナイフリッジを形成していて、これが吊尾根状に50m程続いているのである。 もちろん、これを馬乗りになって通過していかねばならない。
それも、最も痩せている中間部は岩が脆くてアングルを打ち込めないようで、“鎖ナシ”なのである。
掲載写真でも判るように、両側は言うまでもなく絶壁である。 また、近年の気象被害の為、巻道も崩落して通行不可となっている・・との事である。
従って、このコースより戸隠山へ登るのなら、《蟻ノ戸渡リ》は避けて通れないようになってしまった。
過去に転落死亡事故も多発している・・との事なので、くれぐれも慎重を期して通過願いたい。
この難所を乗りきると、ひと登りで戸隠連峰随一の展望台である《八方睨》に出る。
私の登った時はガスに巻かれて視界ナシという状況であったので、「但し、晴れていれば」という言葉を付け加えたい。
従って、このコースより戸隠山へ登るのなら、《蟻ノ戸渡リ》は避けて通れないようになってしまった。
過去に転落死亡事故も多発している・・との事なので、くれぐれも慎重を期して通過願いたい。
この難所を乗りきると、ひと登りで戸隠連峰随一の展望台である《八方睨》に出る。
私の登った時はガスに巻かれて視界ナシという状況であったので、「但し、晴れていれば」という言葉を付け加えたい。
天気が良ければ
後立山連峰の独壇場だ
戸隠山 1904メートル の頂上は、これより200mほど北に進んだ所である。
戸隠山 1904メートル の頂上は、これより200mほど北に進んだ所である。
なお、《八方睨》から、戸隠連峰岩稜の核心を成す西岳へのルートが分かれている。
こちらのルートは完全なる岩稜ルートで、ともすれば剱岳・北方稜線級の難度であろう。
さて、縦走路は進路を右に取り、戸隠山の頂上を経て、潅木が茂る片側痩せ尾根を伝っていく。
潅木の切れ間より時折魅せる東側斜面は、数百mの切り立った崖で高度感満点だ。
道は概ね西側の傾斜の緩い方を巻いていくが、時折東側の断崖の縁を伝うので緊張感は持続させたい。
潅木の切れ間より時折魅せる東側斜面は、数百mの切り立った崖で高度感満点だ。
道は概ね西側の傾斜の緩い方を巻いていくが、時折東側の断崖の縁を伝うので緊張感は持続させたい。
グンナイフウロ
樹林に囲まれて展望が今イチ冴えない九頭龍山を通過して、東側に迫り出した《屏風岩》を避けるべく西側を巻いて130mほど急下降すると、今夜の宿となる《一不動》の避難小屋が狭い鞍部にちょこんと建っているのが見えてくるだろう。 小屋内は土間と床が仕切られており、宿泊する分には快適な無人小屋だ。
但し、トイレはなく、水場もこれより15分程下った《一杯清水》まで汲みにいかねばならない。
今夜は手持ちの食料と寝具で、この小屋を利用しよう。 明日は、小屋内に荷物をデポって高妻山の往復だ。
爽快な山の朝
《2日目》 高妻山を往復して下山
眼前にそびえる高妻山まで、往復4時間半。 如何に空身とはいえ、結構なオーダーである。
従って、夜明けと共に出発するのがいいだろう。 小屋を出ると北に進路を取り、五地蔵岳の山肌を斜めに切って登っていく。 登る毎に《二釈迦》・《三文殊》と、仏の言葉にちなんだ合目の祠が鎮座している。
眼前にそびえる高妻山まで、往復4時間半。 如何に空身とはいえ、結構なオーダーである。
従って、夜明けと共に出発するのがいいだろう。 小屋を出ると北に進路を取り、五地蔵岳の山肌を斜めに切って登っていく。 登る毎に《二釈迦》・《三文殊》と、仏の言葉にちなんだ合目の祠が鎮座している。
朝の光で徐々に姿を現す飯綱山
《三文殊》辺りで五地蔵岳の尾根上に出て、右側が切れ落ちた片側痩せ尾根を伝っていく。
やかで、切れ落ちた右側も樹林で覆われるようになり、その中をひと登りで五地蔵岳 1998メートル の頂上だ。 頂上は狭く簡素なものだが、これより仰ぎ見る高妻山のスラリとした“高さ”は力強さを感じ取れる絶景だ。
やかで、切れ落ちた右側も樹林で覆われるようになり、その中をひと登りで五地蔵岳 1998メートル の頂上だ。 頂上は狭く簡素なものだが、これより仰ぎ見る高妻山のスラリとした“高さ”は力強さを感じ取れる絶景だ。
妙高・火打山と続く好展望
さて、ルートは尾根上を忠実に伝うのであるが、尾根上にはコブが3つあって、いずれも頂点を通らねばならない。 つまり、アップダウンが3発あるという事だ。 それも御丁寧に、そのコブの頂上ごとに《七観音》・《八薬師》・《九勢士》とあるから、当然その祠目当ての登高となる。 人間というもの、邪心を抱くと帰って不幸を招くというが、“早く着け”と念じれば念ずる程になかなか着かないものである。
ハクサンチドリ
このアップダウンを経て《九勢士》のコブ峰に立つと、ようやく高妻山本峰に取り付く事ができる。
《八丁タルミ》で一度たわんでから、高妻山に向けての300m直登だ。 これまでに3つのアップダウンを経た後だけに、さすがにキツイ。 これを乗りきると高妻山の頂稜に這い上がり、《十阿弥陀》の御鏡と阿弥陀如来が祀られた南端峰を経て、ほんの一投足で北側最奥にある高妻山 2353メートル の頂上に着く。
《八丁タルミ》で一度たわんでから、高妻山に向けての300m直登だ。 これまでに3つのアップダウンを経た後だけに、さすがにキツイ。 これを乗りきると高妻山の頂稜に這い上がり、《十阿弥陀》の御鏡と阿弥陀如来が祀られた南端峰を経て、ほんの一投足で北側最奥にある高妻山 2353メートル の頂上に着く。
高妻山頂上より望む白馬三山
頂上は雪のような白亜の岩が積み重なっていて、その岩の上に立てば360°遮るもののない絶景が雲海の中に広がる。 白馬・五竜・鹿島槍と並ぶ後立山連峰、そしてその背後に《八ッ峰》を延ばす剱岳、最奥には北アのシンボル・槍の穂先も雲海より突き出している。 また、上信越国境の妙高山や火打山・雨飾山なども、美しいシルエットを魅せている。 しばし、この絶景に山の喜びをかみしめよう。
槍・穂高・・ 北アの盟主揃い踏み
帰りは、小屋まで往路を忠実に戻るが、帰りも3発のアップダウンの登り返しがあるので、それなりに体力と時間を要するのである。 さて、行程ガイドは、荷物を回収して《一不動》の避難小屋を出る所から再開しよう。
小屋から高妻山方向へ10mほど行くと、下山道が右手に分かれてある。 たぶん、昨日の内に《一杯清水》まで水を汲みにいく為に通っている事だと思うので、すぐに判るであろう。 道はすぐに涸れ沢状を成し、岩コロが転がる中を急下降していく。 やがて、《大洞沢》の源頭沢が合流してくる。 この合流地点には、清水が湧き出している。 これが、《一杯清水》である。
小屋から高妻山方向へ10mほど行くと、下山道が右手に分かれてある。 たぶん、昨日の内に《一杯清水》まで水を汲みにいく為に通っている事だと思うので、すぐに判るであろう。 道はすぐに涸れ沢状を成し、岩コロが転がる中を急下降していく。 やがて、《大洞沢》の源頭沢が合流してくる。 この合流地点には、清水が湧き出している。 これが、《一杯清水》である。
ミツバオウレン
ここから、時折沢床を直接歩くことを交えながら、沢の右岸を下っていく。 やがて、沢は《不動滝》となって100m超の岩盤を落とすようになる。 道は鎖を使って《不動滝》の右脇を下り、滝に沿って湾曲している《帯岩》の岩盤をトラバースして伝っていく。 この《帯岩》は取っ掛かりの足場が狭く、また常時濡れているので通過には注意が必要だ。 これを通過すると、草付きを経て再び沢筋に出る。
高妻山への難所
不動滝と帯岩
沢を飛び石伝いに渡り左岸を伝っていくと、ナメ滝を形成するスラブの岩盤が現れる。
ここには鎖が付いていて、これを使って下っていく。 足場はよく掘られていて決めやすいが、スラブゆえによく滑り、上りはともかく下りでは《帯岩》を凌ぐ難所ではないかと思うのだが・・。
これを越えると、川床の中を緩やかに下ったり渡り返したりしながら進み、やがて《戸隠牧場》最奥の草原に出る。
後は、牧場につけられた道を放牧馬などを見ながら歩いていくといい。 20分も歩けば、牧場入口に出ることができるだろう。 残りは、車を回収するべく《戸隠奥社》の登山口に向かうだけだ。
ルートは、山麓遊歩道を取っても車道を取っても大差はない。 そして、もう歩きたくなければ、200円を払ってバスに乗るという手もある。 なお、山旅後の温泉は、最近《戸隠高原》にクアハウスができたという事なので、行ってみるといいだろう。 また、《妙高》の温泉郷も案外近く、行動範囲内である。
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No title * by 風来梨
yamanbouさん、こんばんは。
ここも大概エグい難所ですが、次にUPする戸隠・西岳側のもう一つの『蟻の戸渡リ』の方がもっとエグいです。
どれほどエグいかは、次のUPをお待ち下さい。
ここも大概エグい難所ですが、次にUPする戸隠・西岳側のもう一つの『蟻の戸渡リ』の方がもっとエグいです。
どれほどエグいかは、次のUPをお待ち下さい。
元気のあるうちに挑戦したいものです。