2017-11-13 (Mon)✎
『日本百景』 秋 第312回 あの秋のスイッチバック情景 〔島根県〕
あの頃は周囲360度
全てが自然情景だった
この記事を記すに当たって、題名がなかなか思い浮かばなかった。 今もこの情景は存在するが、それはあの時の心がときめいた『風景鉄道』たる情景ではないからだ。 でも、露骨に『昔の・・』やら、『もう見られない』などの慣用句を付けたくはなかったのである。 なぜなら、その情景自体は今も存在するからである。 即ち、その情景自体は存在するが、あの時のように”魅せられる”事がなくなったのである。
あの時のときめいた情景は
もう過去のモノに
そう・・それは、鉄道の地位の喪失とそれを証するかのように、この鉄道景勝地を訪れる旅客のほとんど全てがマイカーなり、レンタカーなり、観光バスなり・・と道路を利用してやってくるようになって久しいからである。
自然情景とは最も相容れない
巨大コンクリート構造物が
『観光の目玉』となっていた
※ 旅行会社のパンプレットより
このように需要が鉄道から道路に変わり、それを裏付けるように道路には観光開発が施され、自然情景とは最も相容れない巨大なコンクリート構造物が『観光名所』として出現したのである。
道路は”おろちループ”と命名されたその構造物を通り、その構造物の上には巨大な駐車場を完備した展望所が設けられ、そこは『道の駅』として観光でこの地を訪れた観光客の憩いの場となっている。
木次線の三往復区間の存続理由は
収益性のいい観光トロッコ列車だろう
※ グーグル画像より拝借
そして、観光輸送の任より外された『鉄道』は、「最後の足掻き」とばかりに観光業者とタイアップしてトロッコ型の展望列車を季節運行し、行きはトロッコ列車で帰りは観光バスのプランで細々と食いつないでいる。 でも、旅客輸送という点では完全に存在意義を失い、もはや多少なりとも利益の見込めるトロッコ列車の運行以外は存在意義が問われるような運行形態となっている。
広島~松江を結んだ急行【ちどり】
かつては木次線も
陰陽連絡の任を司っていた
それは、かつて陰陽連絡の急行列車(しかも夜行急行まであった)が運行されたこの路線も、今や通常時は日に僅か3往復、雪の積もる冬は除雪も行われず、雪が解けて消滅するまでの間は大型バンを仕立てたジャンボタクシーによって、自ら路線の存在意義が問われる要因となったあの巨大構造物”おろちループ”を通る『タクシー代行輸送』となるのである。
このように、この地の観光誘致は全て道路中心に切り替わっているのである。 もう、先程述べた「自然情景とは最も相容れない巨大なコンクリート構造物」が、トロッコ列車や観光バスを問わず『観光名所』としてガイド案内されているのである。 トロッコ列車などは、自ら路線を窮地に追いやったこのコンクリート構造物を『トロッコ列車の目玉』として、わざわざ停車して乗客に見物させているのである。
対岸の坂道を上へ下へと駆けて
スイッチバックをゆく列車を追ったのは
夢まぼろしの如く
でもそれは、ガキの頃に魅せられてシャカリキにカメラを向けた、あの・・心がときめいた『風景鉄道』情景ではないのだ。 この地を訪れる事無く長い時が経って、久々にやってきて目にした変わり様・・というか、ときめいたあの時の情景から著しくかけ離れた巨大コンクリートの構造物を見て、心底ガッカリしたのを憶えている。
この自然と相容れない
巨大コンクリート構造物を目にして
心底ガッカリしたのを憶えている
※ 旅行会社パンフレットより
あの時の情景の再現を夢見て『撮り鉄』にやってきたのに、あまりにも愕然として「撮るのを止めて帰ろうか」と思った位だ。 まぁ、この時は沿線の別の場所で紅葉が最盛期だったので、そこで撮る事にしたのであるが・・。
でも、人間とは勝手なモノで、その「心底ガッカリした」ワテ自身が車でやってきて、この構造物上に敷かれた道路を通る利便性を享受しているのである。 従って、今回は純粋にときめいたあの頃の『風景鉄道』情景のみを出して、それを語る『タイムトリップ』記事にしようと思う。
深い自然の中に見え隠れする
単行気動車を追って
周囲は彩る紅葉
:
学校サボってくるようなクソガキだったけど
豊かな自然から大切なモノを学んだと思う
もう撮れなくなったアングル
:
駅舎は派手な駅舎に建て替えられて
前に看板が立ち並び
撮影名所がまた一つ失われた
紅葉の箱庭をゆく
スイッチバックの2段目を折り返す
急行【ちどり】
スイッチバックを行き交う
列車を追いかけて
全力で坂を上下に駆けると
疲れて手ブレする事もあります
そうなったら一旦駅に戻って
※ グーグル画像を拝借
延命水を含んで気合いを入れて
※ グーグル画像を拝借
更にカックイイ
キハ58急行【ちどり】号の雄姿を見て
気合いを更に高めて再出撃!
気合いを入れ直すと
一番星が撮れました
この時はこの道があの様になるなんて
想像さえ着かなかったよなぁ
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