風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第310回  大タテガビン

『日本百景』 秋  第310回  大タテガビン  〔富山県〕


美しき紅葉の衣をまとう
大タテガビン

  大タテガビン おおたてがびん (中部山岳国立公園)
大タテガビンとは、黒部別山は2353mの最高点と北峰 2284m・南峰 2300m・丸山 2048mと、2000m以上の頂を並べるが、その黒部渓谷に面した東面は激しい侵食を受けて高低差1000mに及ぶ大岩盤となっている。

この黒部渓谷のV字谷を形成する大岩盤は命知らずのクライマーの登攀(とはん)のゲレンデで、到底一般登山者の領域ではない。 もちろん今回のこの記事も、この大岩盤が紅葉の衣をまとう秋に、ハシゴ谷乗越から内蔵助平を経て黒部ダムに至るルートでの秋の紅葉景観目当ての記事となっている。




剱の谷へ紅葉狩り
(超ヘタレバージョン) 行程図
行程自体は初回とルートが同じで
あるので初回掲載の地図を流用

   行程記録
《1日目》 富山地鉄・立山駅よりケーブルカーと高原バス利用(1:10)→室堂(2:10)→別山乗越 
     (1:10)→剱沢(3:20)→真砂沢小屋前
2日目》 真砂沢小屋前(1:40)→ハシゴ谷乗越(1:40)→内蔵助平(3:20)→内蔵助谷出合
     (1:40)→黒部第四ダムよりトロリーバス利用(0:15)→扇沢よりバス
     (0:35)→JR・信濃大町駅
   ※ 前回の『第309回 剱沢雪渓』からの続き

さて、今回も最初のこの時と同じく黒部ダムへ下っていくが、出発が出遅れたのと《ハシゴ谷乗越》に登る最中に剱の八ッ峰と剱沢雪渓の絶景を目にして足を止めてしまったのが響いて、かなり時間を食ってしまったのである。


ハシゴ谷乗越までの登高途中にあった
剱・八ッ峰のスイートスポット

それに加えて、通るルートのハシゴ谷越えのルートはあまり人が通らず荒廃が進み、かなり時間を食う難コースに変わりつつあるのである。 それは黒部渓谷に近づく程に崩壊が激しく、最後はハシゴやアングル・鎖を擁する難路と化しているのである。


ハシゴ谷乗越の名称の
由来となった丸太のハシゴ

また、登り始めの《ハシゴ谷乗越》まででも、乗越の名称の由来となった『ハシゴ』のほとんどが朽ち果てて、到底一般ルートとは呼べないルートとなってきている。


だがそのハシゴの半数は
このように朽ちて落ちていた

こういう難路の登りは《ハシゴ谷乗越》までの登りはコースタイムより10分アンダーだったなど”何とでもなる”のだが、この乗越からの下りが厄介となる。

それは歳を追うごとに膝や足首がヘタれて踏ん張る力を失い、『奇跡の体力』保持時でも遅かった下りが、更に磨きをかけて遅くなってきているからである。 『奇跡の体力』のホルダーだった頃は登りがやたら早く、下りを完全にリカバリーしてまだ余る位だったしィ。


目を凝らすと池ノ平山の鞍部に
池ノ平小屋があるのが見える

さて、そういう状況を理解していても、周囲の彩る紅葉を目にするとカメラを出して立ち止まざるを得ないのが、ワテの写真から山に入った”性”であろう。


剱・八ッ峰を望む最終スポット
先を急ぐ為にこれをパスするのは
写真撮りとしてはムリですね

《ハシゴ谷乗越》の直前の剱の八ッ峰を望める最終のスポットでその雄姿を収め、池ノ平や裏面に大タテガビンの大岩盤を形成する黒部別山の紅葉を撮りまくる。


黒部別山の紅葉
この山への登路は
荒廃して廃道化してるらしい


紅葉に染まる黒部別山の背後には
頂に白雪を冠した後立山の山々が


この絶景に
身近の紅葉を加えてみる

先程にも記したように、《ハシゴ谷乗越》までは地図上のコースタイムより10分アンダー(但し、途中で立ち止まっての撮影の時間ロスは含まない)で登った事もあって、10時前に《ハシゴ谷乗越》に着く。
だが、これからの下りで、かなりモタつくのである。


行きに冠雪していた立山別山が
白銀の頂を魅せていた

《ハシゴ谷乗越》から下に指呼の間のように見える《内蔵助平》への下りは、ヘタレて踏ん張りの利かぬ膝や足首の事もあって猛烈に時間を食い、乗越からの下りで1時間、《内蔵助平》をめぐる涸れ沢を突っ切るのに1時間の2時間かかってしまった。


ハシゴ谷乗越から指呼の間に見える
内蔵助平だが着くまでに2時間かかったよ


内蔵助平までのルートは
ハシゴ谷からの涸れ沢で
岩がゴロゴロして歩き辛い


内蔵助沢の下降の途中でも
秋の絶景に足が止まる


クマザサの緑と山肌の紅葉を
マッチングしてみた

結局《内蔵助平》に着いたのは、正午を周る”デットライン”ギリギリとなってしまったのである。
まぁ、《内蔵助平》に着いたその時点ではこんな切羽詰まった状況ではなく、のほほんとしていたのだが・・。


涸れ沢の終点は『トマレ』『×』と
目敏く書かれている
なぜならこの先は
滝となって落ちているから


内蔵助平からは
この沢への崩落が激しいヘツリ道となる

だが、これからの内蔵助沢に沿っての下りは、内蔵助沢の崩壊が進んでヘツリ状になっている。
そしてこのヘツリ道が、今回の記事の題名となった《大タテガビン》の紅葉の十二単衣をまとう艶姿のスイートスポットとなるのだ。 それはもう固唾を飲む程の艶やかさで、フイルムが瞬く間に消費されていくだろう。 それでは、その絢爛絵巻の艶姿をごろうじろ。

大タテガビンの絢爛絵巻

紅葉の十二単をまとう艶やかさ


今回は黄葉と緑の
美しいコントラストを魅せていた


位置を少し変えて望むと
黄葉が更に鮮やかに


内蔵助沢の流れと白亜の岩の
『白』を取り入れてみた


大タテガビンの
3つの尖峰揃い踏み


前回で味を占めた
葉の影絵を取り入れてみた


無造作なようで奇跡的な色彩の波が
岩のキャンパスを彩る

もう、一歩歩く度に素晴らしい情景が角度を変えて魅せて、切羽詰まった時間がどんどん経過していく。 でも、時計を見ると我に帰れるだろう。 それは、さすがに「ヤバイかな」と思う位に時間が経過して、《大タテガビン》の大岩盤に斜陽の影が入り始める時間帯なのだ。

気がつけばタイムオーバーとなる程に

影絵遊びに興じていると


左手より陽の陰りが
大タテガビンの十二単を覆い始めた


この影に気づいて前方の山々を望むと
山に斜陽が掛かっていた


徐々に影が十二単を黒く埋めていく


恐らくこれが艶やかな十二単の
最後のショットとなろう


前方の山々の斜陽は更に強くなり


影が大岩盤の半分以上を
覆うようになってきた


そして・・ほぼ全てを
影が覆うようになった
こうなると日が
暮れるのも時間の問題だ

その「ヤバイかな」と思う時間とは、黒部ダムからの関電トロリーバスの最終便の時刻の事である。
この関電トロリーバスの最終便に乗り遅れると、この日は帰る事ができなくなり、ダムには宿泊施設もないので完全に”詰み”となってビバーク必至となるからである。


斜陽を浴びて輝く
黒部谷に対峙する山々
これが完全に陰るまでに
黒部ダムに行き着かねば・・

それではこれからの”タイムレース”は、写真の掲載枚数の事もあって次回の記事『路線の思い出 第233回 関電トンネルトロリーバス 黒部ダム駅』で語る事にしよう。































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No title * by たけし
下の廊下、上の廊下も恐怖のため断念した私。
それ以上の難所を攻める風来梨さんは真の山男なんですね-!
しかも、写真を撮る余裕は何処からくるんでしょうか!

No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。

上の廊下の踏破を企画されたたけしさんも凄いレベルですよ。 下の廊下は歩きましたが、上の廊下は「奇跡の体力」保持時でも無理っス。

それと、このハシゴ谷乗越のルートは、アルペンルートが開通する以前の、信州側からの劔岳へのメインルートだったみたいです。 アルペンルートが開通したら、途端に歩くものもほとんどいなくなって、「好き者」ルートになったみたいですね。

コメント






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No title

下の廊下、上の廊下も恐怖のため断念した私。
それ以上の難所を攻める風来梨さんは真の山男なんですね-!
しかも、写真を撮る余裕は何処からくるんでしょうか!
2017-10-24 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんばんは。

上の廊下の踏破を企画されたたけしさんも凄いレベルですよ。 下の廊下は歩きましたが、上の廊下は「奇跡の体力」保持時でも無理っス。

それと、このハシゴ谷乗越のルートは、アルペンルートが開通する以前の、信州側からの劔岳へのメインルートだったみたいです。 アルペンルートが開通したら、途端に歩くものもほとんどいなくなって、「好き者」ルートになったみたいですね。
2017-10-26 * 風来梨 [ 編集 ]