2017-10-19 (Thu)✎
『日本百景』 秋 第309回 剱沢雪渓 〔富山県〕
秋の山の情景で最も魅せられたのが、この剱沢の秋風景だ。 最初のこの時以来、もう虜となって今回が3度目となる。 でも、体力的には最初の時から「坂道を転げ落ちる」という例えの通り、「ヘタレ」具合に磨きをかけていく事になった。
最初の時はまだ微かに『奇跡の体力』の欠片が残っていたようで、山行を終えて黒部のトロリーバス駅に着いたのは午後2時ごろとまずまずだった。 だが、この『奇跡の体力』はこの頃をもって完全にピリオドを打ってしまったようだ。
そして次に訪れたのが約40日の間ブーとなってしまって、このブーの期間を利用して〔名峰次選〕を完踏すべく放浪山旅をしていた時で、連チャンで山に行っていたので少し体力が復活してはいたが根気はズタズタで、スノーブリッジが崩壊して剱沢を素足で渡渉するハメとなり、それに慄いて撤退したテイタラクであった。
そして、今回はナンとか社会復帰して(考えようによっちゃあ、こんなスチャラカ野郎が社会復帰できたのも『奇跡』だね)訪れたのだが、『奇跡の体力』を失ってからはトラブルと『遭難フラグ』の立ちまくりであった。 中には『死亡フラグ』に昇格しそうなのもあったよ。 でも、コレ切り抜けたのは、『ゴキブリなみ』に足掻いたからなのかも。 では、その一例おば。←こんなの書かんでもいいのに、書きたくてしょうがない小市民の筆者(タワケ)・・
コースタイム6時間半を10時間かかって78歳のお爺ちゃんに助けられたり、同じ山で2度も道を間違って「3度目の正直」のやっとの事で踏破できたり、沢で転倒して肋骨が2本へし折れたり、へし折れた骨がくっついて間もなくで、テントをやめて山荘泊まりで山行を実行したなら山荘が営業終了で、秋の3000mで「ゴザ敷いてゴロ寝」のハメに遭ったり 〔名峰次選〕のファイナルでもトンデモナイ道間違いで『遭難フラグ』を立てたりと、散々なデキだった。
言うなればこのタワケ・・、『奇跡の体力』を持ってして「人並みの登山習熟レベル」だったのかもしれないね。 あらら・・、話が脱線したが、『奇跡の体力』を完全に失ってからの『剱の谷の紅葉狩り 超ヘタレバージョン』を語っていこうか。 なお、掲載写真は、記述文との整合性に欠けますが悪しからず。
剱の谷へ紅葉狩り
(超ヘタレバージョン) 行程図
:
行程自体は初回とルートが同じで
あるので初回掲載の地図を流用
行程記録 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 富山地鉄・立山駅よりケーブルカーと高原バス利用(1:10)→室堂(2:10)→別山乗越
(1:10)→剱沢(3:20)→真砂沢小屋前
《2日目》 真砂沢小屋前(1:40)→ハシゴ谷乗越(1:40)→内蔵助平(3:20)→内蔵助谷出合
(1:40)→黒部第四ダムよりトロリーバス利用(0:15)→扇沢よりバス
《2日目》 真砂沢小屋前(1:40)→ハシゴ谷乗越(1:40)→内蔵助平(3:20)→内蔵助谷出合
(1:40)→黒部第四ダムよりトロリーバス利用(0:15)→扇沢よりバス
(0:35)→JR・信濃大町駅
さて、その室堂へのアプローチであるが、予定では登山口(室堂)と下山先(黒部ダム)が違ってマイカーは不利となるので公共交通機関利用となるが、急行【きたぐに】が廃止されてからは・・、”高くて余計に時間がかかる”乗り換えを要するシンカンセンとなってからは、JRは使い物にならなくなってしまった。
こんな長大な雪渓を下るのには
半端なく時間を要するのだ
登山をする上では、夜行で移動して早朝に富山に着くのが『理想』なのである。 そして、奇跡的に社会復帰した身分では休みが限られるので、この『理想』が『絶対条件』となるのである。
そこで時刻表(もちろん古い奴)をめくって”いい手”を発見する。 それは、名古屋から富山まで夜行バスがあるようなのだ。 でも、大阪~富山に夜行バスがなくて、何で距離の短い名古屋からがあるんだろ?
まぁ、距離が短い・・という事で、朝の4:45に着く理想的な夜行バスだったのだけれど。
富山で始発の富山ガチャコン・・、もとい富山地鉄に乗り換え立山へ。 そこからケーブルと高原バスで登山口の室堂へ向かうが、室堂に着くのが8:30とかなり遅くなるのである。 地図に記されてあるコースタイムでは、今日の幕営予定地の真砂沢出合まで4:30との事なのだが、『奇跡の体力』を失った現在では、この倍の9時間を覚悟しなければならないのである。 だから・・気持ちとしては、少しでも早く登山を開始したいのであるが。
室堂付近で望む奥大日岳
これを目にしてルンルン気分に
↑
着いた時にはヘロヘロとなるのに
幸い、三条の小屋・山荘が全てしまったシーズンオフなので、筆者(タワケ)のヘタリまくった醜態を見られる事はないのだが、それでも9時間を更にオーバーしかねない事態が。 それは、これまでの2回の経験ではなかった冠雪である。
見た目は大した事なさそうだけれど
かなり滑るし滑って転ぶと
岩が剥き出しだからダメージデカいよ
室堂から剱御前までの登りをコースタイムの2:30を20分アンダーで登りつめてきたが、この冠雪の下りでかなり時間を取られたよ。 気が萎えるので時計を見ないようにしていたので正確なタイムは判らないが、コースタイム下り40分の剱沢まで1時間以上かかったと思われるのである。
これならどうだ!
アイゼン無しにコレを下るのは無理だわ
そして剱沢の下りであるが、雪渓は後退してガラ場やクレバスだらけで通る事が困難となり、高巻きを繰り返すのだが、コレをコースタイムの1:20って『奇跡の体力』ホルダーの頃でもムリっぽいぞ! 全く!
雪渓の始点は
こんなに崩壊していた
雪渓がしっかりするまで
高巻きを繰り返す
剱の岩峰を見ながら
雪渓を下っていく
谷より見上げる
剱の岩峰群
通称『ゴキブリの頭』の
剱本峰も望める
雪渓の最大傾斜は
もちろん『伝家の宝刀・クマ下り』で
↑
こんな事してるから時間喰うのよ
三ノ窓ノ頭が見えだすと
真砂沢出合も近い
高巻きと雪渓下りで時間を喰って
気がつけば日が影りだしていたよ
そして、アイゼンの着脱(雪渓上を歩く時は必要だし、高巻きでは邪魔で外さないと足を挫く)に時間も要し、結局着いたのは15時過ぎと7時間近くかかっちまったよ。 その内の剱御前から真砂沢出合までの下りに5時間近くかかったようである。
真砂沢小屋は既に
営業を終えて”冬眠中”だった
着いた真砂沢小屋は既に営業を終えて閉鎖されており、建物は越冬の為に完全に板で塞がれていた。
まぁ、テントを張るにいい板があるのは前回で知っているので、この上にテントを張る。
それでは、真砂沢周辺の午後の情景と紅葉をば・・、ごろうじろ。
剱の岩峰が
急速に影に覆われて
真砂沢に着いた時点で
下の紅葉は影っていた
程なく山体全てに
陽の光が当たらなくなった
着いたのが陽が傾いた15時過ぎだったので、秋という事もあって着いてアッと言う間に日が暮れて暗くなったよ。 そして翌朝は、スカイブルーの改正だった。 ここに来る回を重ねる毎にヘタレていっているが、お天道様はこんなヘタレに御加護を与えたまうようである。 それでは、ワテが魅せられた素晴らしき秋情景をごろうじろ。
早朝・・ 朝日に輝く
剱の岩峰が朝日に照らされて
かぎろい色に
剱沢雪渓と剱本峰の朝の絶景
後立山の山々は
逆光に黒光り
虜となった剱の秋情景
山肌を美しく彩って
今年はピークが
少し早かったみたい
池ノ平や仙人池の山屏風も
秋色に彩られて
白の斑点が全てを覆い尽くすと
山は深い眠りの時を迎える
それはすぐそこまでやってきている
そして、前回に引き返しとなった懸念の剱沢に掛かるスノーブリッジだが、今年は健在だったようである。 でも、渡っている途中で「♪ロンドン橋落ちた」となったら、確実に濃い『死亡フラグ』が立つのである。
今回はしっかり”架っていた”
剱沢のスノーブリッジ
スノーブリッジを渡り終えて
剱の岩峰を1ショット
これをアイゼンを着けて渡り終え、対岸の土手上に続く《ハシゴ谷》乗越への登路へよじ登っていく。
この土手からある程度登って展望のいい所に出ると・・、そこには言葉に出来ないほどに素晴らしい秋山の情景が広がっていた。
対岸の土手を登っていくと
視界を遮っていた樹々が途切れて絶景が
八ッ峰・Ⅰ峰と最奥のⅧ峰の揃い踏み
クマザサの影がまるで喋々のように
空の雲と相俟って素晴らしい絵となった
岩塔の間から八ッ峰の頭が
双耳の角を突き出して
八ッ峰の頭から
高低差1500mにも及ぶガレ筋が連なって
もう、多くは語るまい。 それではこの情景に魅せられて、巻き上げレバーに力が入り、最後のフイルムコマが破れるほどに興奮したタワケの拙い写真をごろうじろ。
画角を引くと八ッ峰の全てが望めた
そして谷を刻む剱沢雪渓が
八ッ峰の頭からの1500mに及ぶ
ガレ筋をクローズアップしてみた
八ッ峰の頭を見上げる
アザラシのようなⅦ峰
剱沢雪渓を捉えたベストショット
力が入り過ぎて次の最終コマが破断したよ
気を取り直して限度いっぱいまで引っ張る
まぁ・・限度は210mmだけれど
なお、掲載写真が多いので、この続きは次回の『第310回 大タテガビン』にて・・。
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