2017-09-17 (Sun)✎
『日本百景』 秋 第305回 市房山 〔熊本県・宮崎県〕
あいにくの雨天で
侘しさ漂う市房山頂上
五家荘・市房山 ごかのしょう・いちふさやま (九州中央山地国定公園)
平家落人の里・『五家荘』と、九州では高峰の一つに数えられる市房山 1721メートル 。 いずれも、『九州中央山地国定公園』として指定されている。 まず、『五家荘』の見どころは、何といっても《栴檀轟ノ滝》であろう。 秋の彩りによく映える名瀑で、『名瀑百選』の一つでもある。
平家落人の里・『五家荘』と、九州では高峰の一つに数えられる市房山 1721メートル 。 いずれも、『九州中央山地国定公園』として指定されている。 まず、『五家荘』の見どころは、何といっても《栴檀轟ノ滝》であろう。 秋の彩りによく映える名瀑で、『名瀑百選』の一つでもある。
一方、市房山は、これといった特徴はないのだが、九州でも有数の高峰からの眺めと、紅葉に染まる山の魅力は捨てがたい。
市房山・湯山ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
湯前駅よりバス(0:30)→湯山温泉(0:50)→市房山登山口(1:00)→市房神社・山門
(2:00)→市房山(2:40)→市房山登山口(0:50)→湯山温泉よりバス(0:30)→湯前駅
霧で裾野をかすめる秘峰・市房山
五家荘・二本杉峠にて
今回は、九州で最も奥深い名峰・市房山に登ってみよう。 この市房山は秘峰というに相応しく、肥後・日向の国境にある平家の落人となった山里の護り神としてそびえる峰である。
この山に登るにあたっての頭痛の種は、九州随一に奥深い秘峰と言う事で、アプローチを含めての地図・資料の不足であろう。 それはこの山域が『百名山』(この『百名山』という書物は、全くといっていい程に山の本質と登山の魅力を語っていないと思うのだが)から外れ、既存の登山ガイドや山岳地図ではほとんど取り上げられる事がないからである。
しかし、この山域は、『百名山』によくある“山岳宗教”を隠れ蓑に偽りの戴冠を得た魅力の乏しい山とは、比べ物にならない奥深い魅力を抱いているのである。 多少の不便さや資料不足は、秘めたる魅力の裏返しである。 探究心を胸いっぱいに秘め、この山の奥深い魅力に触れにいこう。
この山に登るにあたっての頭痛の種は、九州随一に奥深い秘峰と言う事で、アプローチを含めての地図・資料の不足であろう。 それはこの山域が『百名山』(この『百名山』という書物は、全くといっていい程に山の本質と登山の魅力を語っていないと思うのだが)から外れ、既存の登山ガイドや山岳地図ではほとんど取り上げられる事がないからである。
しかし、この山域は、『百名山』によくある“山岳宗教”を隠れ蓑に偽りの戴冠を得た魅力の乏しい山とは、比べ物にならない奥深い魅力を抱いているのである。 多少の不便さや資料不足は、秘めたる魅力の裏返しである。 探究心を胸いっぱいに秘め、この山の奥深い魅力に触れにいこう。
県境の山里・湯山村落の
最奥が登山口だ
・・湯前駅から登山口に最も近い『市房山登山口』行のバスは、1日8便通っている。 何故、こんなまわりくどい言い方をしたのかというと、この『市房山登山口』バス停がとんだ“騙り”だからである。
このバス停は、湯山温泉より僅か300mほど奥にあるバスの転回場であって、実際の登山口へはこれより4km近く歩いていかねばならないのである。
マイカーでのアプローチならば即時解決する事なのであるが、徒歩だとこれは大いなる時間のロスとなる。 従って、前日までに本当の登山口へアプローチする必要があるのだ。 もっとも、これは登山をするなら、“鉄則”となる事なのだが。 なお、本当の登山口の前には村営のキャンプ場とログハウスがあるので、宿泊にあたっての心配は無用だ。
マイカーでのアプローチならば即時解決する事なのであるが、徒歩だとこれは大いなる時間のロスとなる。 従って、前日までに本当の登山口へアプローチする必要があるのだ。 もっとも、これは登山をするなら、“鉄則”となる事なのだが。 なお、本当の登山口の前には村営のキャンプ場とログハウスがあるので、宿泊にあたっての心配は無用だ。
・・さて、翌朝は、山の“鉄則”通りにキャンプ場を日の出には出発しよう。 舗装道をしばらく歩くと登山口の鳥居が現れて、これより山道となる。 登山口からは、樹齢1000年を越える杉の大木が林立する鬱蒼とした道の中を行く。 道は杉の根が絡まって歩き辛い所はあるものの、概ね整備された一本道なので心配はない。 ひと汗かいた頃、《御岳奥宮》の立派な鳥居をくぐる。
ここが“一合目”との事である。
鳥居をくぐると、より鬱蒼とした中を登っていく。 直径3mはあろうかという老齢杉を見ながらゆくと、《球磨川》の源流の沢に差しかかる。 この沢を渡ると、杉木立の中を縫うように岩段道を登っていく。
登山道全体の雰囲気は、“縄文杉”で有名な《屋久島》の宮之浦岳への道のようである。
鳥居をくぐると、より鬱蒼とした中を登っていく。 直径3mはあろうかという老齢杉を見ながらゆくと、《球磨川》の源流の沢に差しかかる。 この沢を渡ると、杉木立の中を縫うように岩段道を登っていく。
登山道全体の雰囲気は、“縄文杉”で有名な《屋久島》の宮之浦岳への道のようである。
しかし、“縄文杉”は天然記念物に指定され、大木の周りを覆い隠すように柵が張り巡らされて興ざめな所があるが、こちらは樹齢1000年の大木が何の工作なしに野放図に林立して“原始”の偉大な力を存分に魅せてくれるのである。
この杉木立が両側に整然と林立するようになると、《市房神社》はもうすぐだ。 足場も岩が整然と敷きつめられ、神社山門への参拝道となった石段を登っていく。 この石段を登りつめると、立派な神殿の建つ《市房神社(御岳奥宮)》だ。 案内板によると建立は平安時代初期(西暦800年頃)との事で、遙か昔より信奉の深い山であることを示している。
この杉木立が両側に整然と林立するようになると、《市房神社》はもうすぐだ。 足場も岩が整然と敷きつめられ、神社山門への参拝道となった石段を登っていく。 この石段を登りつめると、立派な神殿の建つ《市房神社(御岳奥宮)》だ。 案内板によると建立は平安時代初期(西暦800年頃)との事で、遙か昔より信奉の深い山であることを示している。
しっかりとした造りの
市房神社
本堂は無人で広く、神殿への通路は遮断されている。 登山者の立場として見ると“バチあたり”かもしれないが、荒天時には避難小屋として立派に使えそうである。 球磨川の源流の沢は《市房神社》の所まで沿っているので、水はここで補給するといい。
名も知らぬ赤い花が
登山道の傍にひっそりと
神社から山頂へは、本堂の脇に延びる急斜面の坂を登っていく。 今までと比べて傾斜もかなりキツくなり、これからが登山の本番であることを思わせる登りだ。 道は岩段の激しい登高となり、全身から汗が噴き出る事だろう。 神社の建つ四合目からは道標の間隔も大きく開き、“合目”間の標高差もかなり大きくなる。 時折、丸太を組んだハシゴでの直登を交えながら登っていくと、大岩の積み重なった六合目である。
強い雨に花びら一つだけ
残して散ったのか
私が登った日は荒天で視界はなかったが、山頂を除くと唯一展望の利きそうな所である。 六合目を過ぎると、ツガやミズナラの林立した《馬ノ背》と呼ばれる急坂を登っていく。 ここからは足場が今までの岩段からガラリと変わって、林立する木立の根を踏みしめての登りとなる。 掘れて根が露出したルンゼ状の道は崩れやすく、また足が絡まり歩き辛い。
小さな花びらいっぱいに
雨露を浴びて
このような嶮しい登りが八合目まで続く。 八合目で傾斜はやや緩やかになり、稜線上に出た事を感じさせる。 だが、相変わらず周囲が深い樹林に覆われて状況は読み辛い。 幾分傾斜が緩くなって丸太の設置された階段状の坂を登っていくが、神社からの激しい登高の疲れが一番噴き出るのがこの辺りであろう。 “傾斜は緩くなれども、足は思うように前に出ず”といった案配で登っていく事となろう。
周りの樹木が落葉樹林からダケカンバなどの潅木帯に変わるまで登りつめると、“頂上まであと五分”の標識が現れる。 登山道全体が樹木に覆われて変化に乏しかったゆえに、この標識でようやく“頂上近き”を思う事ができるだろう。 標識からひと頑張りで、市房山 1721メートル の頂上だ。 頂上には小さな鳥居が掲げられ、整然とした雰囲気を漂わせている。
【名峰百選】の山を
一つ極めた証に1ショット
もし、晴れていたなら、九州の全ての山を余す事なく見渡せる絶景であったであろう。 その眺めは、九州で最も奥深き位置にそびえる山だからこそ望める景色である。 それを望めなかったのは、至って残念であった。
霧の中で一瞬だけ望めた
稜線通しの山景
また、いつの日にか、この山だけが抱く絶景を見にくる事を決意して往路を下るとしよう。
下山後には4kmの舗装道歩きという“試練”があるが、“九州の名湯”と名高い《湯山温泉》が控えているので心強い。
里に下ると
彼岸花が満開だった
彼岸花の蜜を目当てに
黒い蝶がやってきた
赤い花と黒い蝶のおりなす
コントラスト
なお最後に、この山域の概況を少々。 この市房山は登山口からの獲得標高差が1200mと、九州では最も大きい山である。 また、コース整備はされているものの、全体に渡って直登の傾向にあり、かなりの体力を要するのである。 従って、安易な登山は禁物。 それなりの基礎体力を踏まえて挑むべき山域なのである。
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