2017-08-19 (Sat)✎
『日本百景』 晩夏 第302回 大無間山 〔静岡県〕
昔は『奇跡の体力』を持っていた
今は体力的に無理な山
大無間山
大無間山 だいむげんやま
南アルプス最奥の秘峰・大無間山。 その名称が魅惑的な響きの山・大無間山・・。 山名が示すが如く“無間”の情景を想像させる知られざる山。 それが、この奥深き山・大無間山である。 その秘めたる魅力のベールをめぐるには、猛烈な登高と水の無補給登山を強いられるのである。 もちろん、登山者が利用すべく建てられたものは皆無で、幕営用品一式を担いでの登山である。
その困難さゆえに訪れる登山者は稀で、静かな奥深き山旅が約束されるだろう。 そして、これらの困難を克服して登りつめた頂からは、南アルプスの盟主たる山なみの雄大な姿を独り占めできるのだ。
南アルプス最奥の秘峰・大無間山。 その名称が魅惑的な響きの山・大無間山・・。 山名が示すが如く“無間”の情景を想像させる知られざる山。 それが、この奥深き山・大無間山である。 その秘めたる魅力のベールをめぐるには、猛烈な登高と水の無補給登山を強いられるのである。 もちろん、登山者が利用すべく建てられたものは皆無で、幕営用品一式を担いでの登山である。
その困難さゆえに訪れる登山者は稀で、静かな奥深き山旅が約束されるだろう。 そして、これらの困難を克服して登りつめた頂からは、南アルプスの盟主たる山なみの雄大な姿を独り占めできるのだ。
それは、困難を克服した自信もあいまって、いっそう味わい深いものとなろう。 施設の整った山域では体験できない自分の力で切り開く山旅・・。 是非、一度体感して頂きたい。
田代~大無間山 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 静岡市街より車(2:00)→田代・大無間山登山口(3:00)→小無間小屋
《2日目》 小無間小屋(2:30)→小無間山(0:40)→中無間山(1:05)→大無間山
(0:50)→中無間山(0:40)→小無間山(2:20)→小無間小屋
(2:00)→田代・大無間山登山口より車(2:00)→静岡市街
《2日目》 小無間小屋(2:30)→小無間山(0:40)→中無間山(1:05)→大無間山
(0:50)→中無間山(0:40)→小無間山(2:20)→小無間小屋
(2:00)→田代・大無間山登山口より車(2:00)→静岡市街
登頂が厳しい〔名峰次選〕の峰の中でも
5本の指に入る難度の峰だ
それだけに登頂の喜びもひとしお
《1日目》 登山口より小無間小屋へ
さて今回は、神秘のベールに包まれた大無間山への長大なルートにアタックしてみよう。 この山はルートも長大ならば、登山口へのアプローチも遙か遠いのである。 従って、前日のアプローチは必然となろう。
また、このルートは全区間に渡って水の入手が困難であるので、全ての装備を担いだ上での登山となる。 この山域をアタックするにあたっては、通常より鍛錬された体力が必要であると思われる。
それでは、神秘のベールに包まれた秘峰への登高を開始しよう。
まず、このルートを登るにあたっては、樹林帯を通るので展望はほとんど期待できず、先程も述べたように水の補給もできないので、一心不乱の登高を強いられる。 ルートは延々と続くジグザグの登りで、朝日が樹林に当たって輝く以外に見張るものが何もないのである。 言わば、“行”のような登山となるのである。
まず、このルートを登るにあたっては、樹林帯を通るので展望はほとんど期待できず、先程も述べたように水の補給もできないので、一心不乱の登高を強いられる。 ルートは延々と続くジグザグの登りで、朝日が樹林に当たって輝く以外に見張るものが何もないのである。 言わば、“行”のような登山となるのである。
小無間小屋前の展望
約3:30・・。 ほぼ傾斜が変わることのない樹林帯の坂を登りつめると丘状の土手に上がり、ビールのラックケースで椅子代わりとした飯場跡のような広場に出る。 その先に今夜の宿、《小無間小屋》が建っている。 まぁ、相部屋になる事はほとんどない・・と思うが、シュラフを7~8組は広げられるスペースがあり、風雨は完璧に遮断できる。
小無間小屋
水は溜め置き水があるが
ボウフラが涌いて使用不能
※ グーグル画像を拝借
だが、その他の設備に関しては、水も含めて一切ない。 土間があるだけだ。 ドラム缶に天水が溜めてあるようだが、水は腐って使い物にはならない。 相当の健脚ならば往復12時間で山頂の往復もできるが、それは“限られた”猛者のみである。 登りも“行”なら、宿泊もこれまた“修行”と思って1日を耐えよう。
小無間小屋の内部
※ グーグル画像を拝借
コース通じての展望は
頂上手前の1区間のみ
《2日目》 大無間山頂上を踏んで下山
さて、今日は、遙かなる秘峰・大無間山への往復だ。 重い荷物は、小屋にデポって身軽ななりで出発しよう。 今日は空身とはいえ、山頂の往復だけで8時間近くかかるルートだ。 この山域は、それ相当の覚悟がいる登山を゜強いられるのである。
またこの先、下山後の自動販売機!?まで水の補給ができない。 だからといって、水を持ち上げるにも限界がある。 1㍑=1㎏という現実は避けがたいのである。 行動水と生活水の消費は、しっかりと計算しておく事である。 まえおきが長くなったが、頂上を目指して登っていこう。
小屋を出ると、すぐに猛烈な急下降となる。 立歩行で歩ける限界の急斜面を下ると、《鋸歯》の『P3』といわれる尖峰のたもとに下り着く。 ここからは、“お約束”通りの厳しいアップダウンだ。
さて、今日は、遙かなる秘峰・大無間山への往復だ。 重い荷物は、小屋にデポって身軽ななりで出発しよう。 今日は空身とはいえ、山頂の往復だけで8時間近くかかるルートだ。 この山域は、それ相当の覚悟がいる登山を゜強いられるのである。
またこの先、下山後の自動販売機!?まで水の補給ができない。 だからといって、水を持ち上げるにも限界がある。 1㍑=1㎏という現実は避けがたいのである。 行動水と生活水の消費は、しっかりと計算しておく事である。 まえおきが長くなったが、頂上を目指して登っていこう。
小屋を出ると、すぐに猛烈な急下降となる。 立歩行で歩ける限界の急斜面を下ると、《鋸歯》の『P3』といわれる尖峰のたもとに下り着く。 ここからは、“お約束”通りの厳しいアップダウンだ。
《P3》の登りは、崩れやすい砕石のガレ場のイッキ登りだ。 約150mほど登りつめると、今度は『P2』との鞍部に向かって軽く下り返して、《鋸歯》では一番楽な『P2』を乗り越える。
そして、『P1』。 《鋸歯》では、最も足場の悪い尖峰だ。
鋸歯P1峰からの眺望
苔むした岩がボコボコと現れてきて、足の踏み場に苦労する。 乗り越えたら乗り越えたで、右手が大崩壊となっている《外山薙》へ向かって下り、半分崩壊したその縁を伝って小無間山へ登っていく。
ここは“行き”の登りより、“帰り”の下りの方が要注意である。 樹林帯の中を猛烈に下っていると、いきなりにガレた崖の縁にでるのだから。
現在は両側が崩壊して
ナイフリッジとなっている
外山薙の大崩壊
ガレた縁を伝うように登っていくと樹林帯に突入し、猛烈な急登で直線的に250m稼ぐ。
薙から樹林帯に突入する所で振り返ると、《鋸歯》の全容が望めるだろう。 シラビソで覆われた尖峰が3つスライドしてそびえている。 もし、重い荷物を持つ縦走装備なら、ゲンナリする眺めである。
また、《外山薙》も小無間山からイッキに下まで崩れ落ち、そそる眺めを魅せてくれる。
大崩壊前でもこんなに崩れていた
:
現在は反対側も崩壊して
ナイフリッジに
さて、この直登を乗りきると、ようやく小無間山 2150メートル の頂上だ。 頂上は樹林に囲まれた展望は全くなく、三角点の一番近くに立っているシラビソの木にB4大の山頂標(もちろん、板キレである)があるだけである。 ただ、平坦な丘状を成しているので、幕営ビバーク地としてはいいかもしれない。
小無間山頂上
鬱蒼とした森の中にある
ここからは、今までとはうって変わって上下の少なく延々と長い“ダラダラ道”となる。
小無間より緩やかに下ると、左側がガレて崩壊した縁を伝うようになる。 《唐松薙》の大崩壊だ。
青空が広がっているなら、この薙越しに目指す大無間山が望まれるのだが、ここは下からガスが吹き上げる事が多く(下の沢から上がってくる)、望めるのは稀との事である。
青空が広がっているなら、この薙越しに目指す大無間山が望まれるのだが、ここは下からガスが吹き上げる事が多く(下の沢から上がってくる)、望めるのは稀との事である。
中無間山の頂上
看板がなければ
どこだか判らぬ森の中
やがて、《唐松薙》を離れ、シラビソの密林帯の小道を真っすぐに抜けていく。 「登り返したか」と思う程に上がっていくと、中無間山 2108メートル の頂上だ。 頂上は《唐松薙》の縁にあるらしく、ロープを張って直進を阻んでいる。 ここで90°左手に折れて、樹林帯の中の広い小道を行くようになる。
ルートはいつしか二重山陵となり、これを緩やかに下るとヌタ場の広がる薄暗い森に出る。
森の中にはやたら
看板が掲げてあった
なぜなら
こんな猛烈な倒木帯が
道を完全に覆い隠して
看板と赤いリボンが
命綱となるルートだからだ
帰りはやや道が判り辛いが、概ね最も乾いた・・、つまり踏跡のあるルートをトレースしていけば問題はない。 ヌタ場を境にやや傾斜を増した登りをつめると遭難碑(何でも、《寸又峡》よりの縦走中で道に迷い疲労凍死したらしい)があり、それを見やると二重山陵の《畑薙》側稜線の上に出る。
そりゃあ道をロストして彷徨って
疲労凍死する奴もでるわなぁ
ここは、この山行の行程中で、唯一展望の利く所だ。 赤石山脈の深南部の峰々が一列に並んでいる姿が望めるだろう。 光岳・池口岳は元より黒法師岳など、里では望む事のできない峰々が展開するのだ。
ルート唯一の展望橋にて
山伏や青薙山など
深南の山が望まれる
だがすぐにガスが湧いてきて
展望が消えたよ
ただ、ここも潅木の枝が伸びてきているので、いつまでも好展望地とは成り得ないかもしれない。
この展望地を過ぎて、やや傾斜を増した登りを10分もつめると、《寸又峡》から《三隅池》を経る縦走ルートと合流して大無間山 2329メートル 頂上に着く。
展望も無ければ花もない
でも一度は登ってみたい
難度極まる山・大無間山
頂上は二段に分かれた細長い丘で、周りはシラビソが密生して展望は全くない。 以前は測量やぐらを使った展望台があったそうだが、今はその柱となっていた数本の丸太がビニールシートで覆い包まれているのみである。
展望がないのに
一等三角点がある
ここもまた小無間山と同じく、B4大の板キレに『大無間山』とあるのみである。 このように何もない頂上だが、“ここまでやってきたんだ”という心の高鳴りはあるだろう。 今回の山行は、真にこれを求めてのものなのだと思う。 頂上の切り株に腰掛けてひとときの間、この満足感に心を浸そう。
難度極まる山に立つ
ちょっと自分が誇らしかったよ
さて、帰りであるが、正午過ぎには下山に取りかかろう。 下山も、《田代》の集落まで5時間半はかかるのである。 しかも、難路である《鋸歯》の通過もあるので、体力的・時間的、そして残りの持ち水の量全てを計算していかねばならない。 ちなみに、冒頭で述べた日帰り往復だと、全行程14時間の所を空身で12時間で歩ける体力が必要となる。 頂上到着は11:30までの必着が条件となろう。
山頂にはもう一つの道がある
未知の世界
三方窪から大樽沢への道に
少しだけ入ってみた
それでも、“いざ”というときの為に、水は3㍑は持っていこう(ちなみに、ワテは日帰りで臨んだ)。
頂上からの長い長い下りの後の自動販売機の清涼飲料は、これまた格別の美味となるだろう。
そして、登山口のすぐ前にある《田代温泉》の風呂もいい。 野趣溢れる岩風呂だ。
ゆっくりと、山の疲れを癒す事ができるだろう。
長い下りの末に大井川が見えた時
嬉しさで心が震えたよ
なお、コース途中の鋸歯P1峰~小無限山の崩壊が激しく、両側崩壊でナイフリッジ状になっているとの事。 従って、相当なトラバース技術が必要である。
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