2017-08-08 (Tue)✎
『日本百景』 夏 第301回 戸蔦別岳 〔北海道〕
幌尻・北カールより望む
美しい三角錐を魅せる戸蔦別岳
日高山脈 ひだかさんみゃく (日高山脈襟裳国定公園)
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
だが、原始の山とは、大いに征服欲をかきたてるものだ。 大自然相手に数多くの困難の末、山頂にたどり着いた者のみが大自然そのままの景観を欲しいままにできるのである。
・・さて、日高の山のプロフィールであるが、大きく3つに分けられる。 最高峰の幌尻岳 2052メートル ・戸蔦別岳 1959メートル を含む北日高、カムイエクウチカウシ山 1979メートル や、標高がそのまま山名となった1839 (イッパーサンキュウ) 峰 1842メートル を含む中部日高、またペテガリ岳 1736メートル より南部にある南日高と呼ばれる山々に分けられる。
・・さて、日高の山のプロフィールであるが、大きく3つに分けられる。 最高峰の幌尻岳 2052メートル ・戸蔦別岳 1959メートル を含む北日高、カムイエクウチカウシ山 1979メートル や、標高がそのまま山名となった1839 (イッパーサンキュウ) 峰 1842メートル を含む中部日高、またペテガリ岳 1736メートル より南部にある南日高と呼ばれる山々に分けられる。
そして、この山系の見どころとしては、七ッ沼・コイボク・八ノ沢など、この山系の特徴である《カール地形》が挙げられる。 花ならば、戸蔦別岳からペテガリ岳までのカール地形に群落を成している。
しかし、これらの山々や“花の楽園”であるカールの底へたどり着くには、川を渡渉し、沢をつめ、時には滝を遡上しなければならない。
コース難度も全てが上級向きで、山小屋も北日高の幌尻山荘を除くと山中には全くなく、装備・体力・経験の全てが要求される。 初心者ならば、さしてキツくないアポイ岳 811メートル への“花の登山”から始めるといいだろう。
北日高・幌尻岳周遊ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム
(2:40)→幌尻山荘
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘
(3:50)→林道・振内ゲートより車(1:10)→平取町・振内
※ 前回の『第300回 七ッ沼カール』からの続き
朝の光に照らされる戸蔦別岳
《3日目》 戸蔦別岳を踏んで下山
“楽園”の朝は叙情的だ。 カール壁がオレンジ色に染まり、山が沼に影を落とす。
たが、ゆっくりはしてられない。 今日は、イッキに下山せねばならないのだ。
“楽園”の朝は叙情的だ。 カール壁がオレンジ色に染まり、山が沼に影を落とす。
たが、ゆっくりはしてられない。 今日は、イッキに下山せねばならないのだ。
歩行時間も8時間を超えるのだ。
北の朝は早い・・ 夏至近くともなると
6時前には完全に日が高い位置にある
・・朝日がおりなすカール壁の素晴らしき景観を堪能したなら、早めに出発しよう。 アオノツガザクラが満開のお花畑を横切って、戸蔦別岳側の踏跡をよじ登っていく。 戸蔦別岳側の踏跡は幌尻岳側よりマシなものの、これとてかなりの急傾斜である。 また、落石も多いので気をつけよう。 約30分の急登でカール壁の上に出て、カール壁上を通るルートと合流する。
背後に日高の未知の山を望みながら
花満開のカール壁を登っていく
このルートを使えば、約10時間で一周して幌尻山荘へ戻れる。 だが、カール壁はハイマツ帯で、猛烈なブッシュ漕ぎとなる事を覚悟しておこう。 カール壁の上から《七ッ沼カール》を見下ろすと、沼が小さく見えて、かなり登ってきた事が実感できる。
可憐に咲くハクサンイチゲが
キツイ登りの疲れを癒してくれる
カール壁のお花畑を愛でながら、戸蔦別岳に登っていこう。 約300mの急登に疲れを感じたなら、後ろ振り返ってみよう。 背後にそびえ立つ幌尻岳の勇姿と蒼く輝く《七ッ沼カール》の風景が、疲れを振り払ってくれる事だろう。
幌尻岳と七ッ沼カールの絶景
キツイ登りの疲れは
振り向く事で一瞬に払拭される事だろう・・
カール底より約1時間半で、“花の峰”戸蔦別岳 1959メートル に着く。 戸蔦別岳の頂上は赤いリボンのくくられた竿が差してあるだけの侘しいものであるが、展望は雄大そのものである。
中部日高の盟主・カムイエクウチカウシ山 1979メートル を中心に、国境稜線の山なみを一望できる。
戸蔦別岳 発 ”絶景かな”
幌尻岳とカールを隔てて
七ッ沼と北カールの2つのカールが見渡せる
前方には日高第三の標高ながら
標高がそのままの無名峰・1967峰が
尖峰を突き上げている
カムエクや1839峰など
憧れの山々が・・
振り返ると、《七ッ沼カール》・《北カール》を抱いた幌尻岳がそびえ立っている。
また、二つのカールを隔てるカール壁も、恐竜の背びれの如くギザギザに尖り立っている。
恐らく、この時間に日高の主脈に立っているのは私だけであろう。
恐らく、この時間に日高の主脈に立っているのは私だけであろう。
登山道さえない未知で奥深い日高の山並み
私だけの“楽園”・・。 その高揚感は、口では言い表せない。 この感覚がある限り、私はずっと山を続けていける・・と思う。 さて、山の思い出を胸に下山しよう。 戸蔦別岳からは、赤土混じりのガレ場を北戸蔦別岳に向ってトラバース気味に下っていく。
ポロシリ(大きな山)との名の通り
デカい山容を魅せる幌尻岳
途中、塩基性赤土に咲く珍種の花のお花畑もあり、周りの展望も日高の山なみや《北カール》と幌尻岳など素晴らしいものばかりで、立ち去るのが惜しくなる。
山荘への下降点である1881峰や
北戸蔦別岳へと続く北日高国境稜線の踏跡
北日高国境稜線は
1967m無名峰を越えて
ピパイロ岳や伏美岳の起伏をも越えて
帯広の方へ続いている
しばらく、赤土混じりの岩ガレを歩くと、『幌尻山荘・降り口』の立て札があり、ここから砂礫地の山肌を急降下していく。 これよりは、高低差900mを約2kmで下りきる猛烈な下り坂だ。
しかも、途中にハイマツ帯のブッシュ漕ぎや切り立った崖を巻いたりするなど、一筋縄ではいかない。
くれぐれも勢いに任せて駆け出したりせぬように・・。
1881峰の山荘下降点より望む幌尻岳
足が笑い出してガクガクになる苦痛をこらえて、ひたすらに下っていく。
遙か下にあった沢からの瀬音が、徐々に大きくなってくることだけが心の拠り所だ。
やがて、ハイマツ帯からダケカンバ林に突入し、下っているのが実感できる。
下り始めて見えなくなる前に
幌尻岳と北カールの絶景を目に刻んでおこう
しかし、相変わらずの急坂は変わらない。 そして、まだ《六ノ沢》は遠い。 つま先の痛さをこらえつつ、延々と下り続けるしかないのだ。 そして、その痛みにあきらめがついた頃、ようやく樹林帯を抜けて笹林に出る。 この笹林の果てに、《六ノ沢》が瀬音を響かせている。
《六ノ沢》に着いたなら、辛い下りで腫れ上がった足を冷やしながら日高の山の思い出に浸っていることだろうと思う。 後は、数回の徒渉を経て幌尻山荘の建つ《五ノ沢出合》へ。 幌尻山荘からは、往路を忠実に戻ろう。 《五ノ沢》からの渡渉は、往路で通った事もあり気分的には楽だか、油断は禁物。
落ち着いていこう。
絶景よ・・ またいつか・・
その時まで『so long ”またね・・”』
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No title * by 風来梨
鳳山さん、こんにちは。
お返事が遅れてスミマセン。 盆休みで外出していたもので・・。
北海道の山もかなりオープンになってきて、現状で原始の香り漂う山域は、大雪山系の奥深くか、この日高、そして知床岬までの山稜部と数える程になってきていますね。
これらはいずれも、限られた体力猛者以外には踏破はムリですね。
えっ・・ワタシ? 昔の『奇跡の体力』があった頃にはちょっと踏ん張ったんですけどねぇ・・。(溜息)
お返事が遅れてスミマセン。 盆休みで外出していたもので・・。
北海道の山もかなりオープンになってきて、現状で原始の香り漂う山域は、大雪山系の奥深くか、この日高、そして知床岬までの山稜部と数える程になってきていますね。
これらはいずれも、限られた体力猛者以外には踏破はムリですね。
えっ・・ワタシ? 昔の『奇跡の体力』があった頃にはちょっと踏ん張ったんですけどねぇ・・。(溜息)
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