風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

TOP >  よも”ヤマ”話 >  ’91夏・山旅放浪 >  よも”ヤマ”話  第30話  大雪・旭岳

よも”ヤマ”話  第30話  大雪・旭岳

よも”ヤマ”話  第30話  大雪・旭岳 〔北海道〕 ’91・ 7
大雪・旭岳  2290m 【名峰百選 6峰目】  


「北海道の屋根」・旭岳とコマクサ
高根ヶ原より
※ 今回とは別の山行で撮ったモノです(だって飾る写真ないモン)

   表大雪 おもてたいせつ (大雪山国立公園)
主峰・大雪旭岳 2290メートル を中心として、間宮岳 2185メートル ・中岳 2113メートル ・北鎮岳 2244メートル 、《御鉢平》を挟んで北海岳 2149メートル までが、『表大雪』と呼ばれている。 その名の通り、人気・知名度・登山の難易度の全てが『表』なのである。 

しかし、この手軽さは、登山経験の浅い人やトレッキング派にとっては大変有り難いものなのだ。 
何せ、楽に北海道の屋根に立ち、雄大な大雪の展望をはじめ、壮大なお花畑や様々な模様の《雪形》など、心に残る景色を手軽に満喫できるのである。 また、秋の紅葉も、山全体が彩り鮮やかに移り変わり壮観だ。




表大雪・旭岳一周ルート 行程図

   行程表                  駐車場・トイレ・山小屋情報
JR旭川駅よりバス(1:30)→旭岳温泉よりロープウェイ(0:20)→姿見ノ池(1:45)→旭岳
(1:20)→中岳分岐(0:50)→裾合平(1:00)→姿見ノ池よりロープウェイ
(0:20)→旭岳温泉よりバス(1:30)→JR旭川駅

裏大雪の白雲岳を登った後、連チャンで山に登るのはキツいと感じたワテは中休み(プーの放浪旅で中休みねぇ)を取る事にしたのである。 この時はまだ『奇跡の体力』のレベルには達しておらず、白馬天狗原の失敗山行から始まって、アポイ岳・暑寒別・礼文8時間・利尻・雨竜沼湿原・裏大雪と8連発かましてきたので、そろそろ中休みが欲しい所だったからある。


七色の花の帯が広がる
富良野ラベンダー畑

また鉄道目的以外の北海道の旅は初めてなので、取り敢えずこの中休みは観光名所を訪ねる事にした。 『北海道の観光地』と言っても、今のコアな自然景勝など山以外には知識に無く、富良野のラベンダー畑や美馬牛にある写真家・前田真三のギャラリー『拓真館』などをめぐる事にしたのである。


今なら富良野のラベンダー畑なんて
行かねえだろうね

この時に立ち寄った富良野のラベンダー畑や美馬牛の『拓真館』などは、案の定”最初で最後の”北海道の人気観光地めぐりになったよ。 でも、何故に柄でもないこんな所に立ち寄ったか・・というと、層雲峡YHで知り合った女の子とドライブを兼ねて・・もあったのである。


観光地で人を入れずに撮るのは苦労するよ
彼女に人を画面に入れるのを嫌がる偏屈者と
悟られないようにするのが最大の苦労だったりして

前日に彼女の希望通りに上記の如くハチロクで富良野めぐりをしてから、こっちのフィールドである山へのお誘いをする。 彼女は始めは山に登る考えなど毛頭にもなく不安がっていたが、この日に宿泊した旭岳温泉のYHのミーティングで大雪山の高山植物に興味を惹いたみたいで、急遽山に登る事になったのである。


山の花でも可憐なエゾコザクラ
YHのミーティングで
これに魅せられたみたい

また、同宿した一人旅の兄さんも、今日まで登ってきた暑寒別や利尻の花の話をすると興味を惹いたようで、明日の旭岳登山に同行する事となったのである。

・・で、翌日は「朝駆け」の山のセオリー通り、旭岳ロープウェイの始発の6時発の便に間に合う様に5時過ぎにYHを出てロープウェイの乗車待ちをする。 この日の天気はポツポツ雨の降るあまり宜しくない天気で普段より乗客は少な目・・との事だが、それでも5時からでも始発のゴンドラには乗れず、臨時便の15分後発(シーズン中は15分間隔のフル回転)の便になったよ。

麓の旭岳温泉でポツ降りの雨と言う事で、標高1600mの姿見ノ池では視界100m以下の濃いガスとなっていた。 今日は残念ながら、山の雄大な風景はお預けのようである。 従って、旭岳までの標高700mの登りは、真っ白なガスの中で3人黙々と登る事となる。

まぁ、旭岳の登りは地獄谷からの噴火ガスの為か植生は全くないガラ場で、景色がなければ全くの単調なモノとなる。 唯一の特徴は、ガラ場にデンと乗っかる『金庫岩』で、この岩のある所で進行方向を直角に変える・・って事くらいである。 そして、予想通りに北海道最高峰・2290mの旭岳頂上からの眺望も、「残念でした」となったのである。


ガスで眺望皆無の旭岳頂上にて
もう四半世紀以上も前だから
顔隠さなくてもいいと思ったが

だが、最高峰・旭岳をめぐる表大雪のルートの醍醐味はこれから始まるのだ。 地獄谷の噴火ガスの影響を受けない旭岳の裏側は、豊富な雪渓を抱くお花畑が広がるのだ。 また、下りであるので、余裕を持って花を愛でる事ができるのである。 そのお花畑の中でも特に目を惹いたのが、ガスの白い霧の中で露に濡れた赤い斑点が光るエゾツガザクラの大群落である。


チングルマ


エゾツガザクラ
白い霧の中に露に光る
赤い斑点が散りばめられて

一応、同行する二人よりも花の事に詳しかったワテは、花の名前を解説しながら歩いていく。
その他にもチングルマのコロニーや、ジムカデ、キジムシロ、イワブクロなどが山肌を彩っていたよ。


旭岳の裏側にコロニー状を成す
チングルマの群落


白い小さい宝石もあった
ジムカデ


キジムシロ


キバナシャクナゲ
シャクナゲというより白いツツジですね

花に魅せられながら行くと、やがて砂礫地の登り返しを経てどこが頂上かが判り辛い間宮岳2185mに出る。 この峰は御鉢平の外輪山を形成する山で、ここが今回の旭岳一周コースの折り返し地点となる。


エゾツガザクラとアオノツガザクラの
紅白の競演に魅せられて

ここよりは《御鉢平》を囲む外輪山の上を行くので、旭岳の登りの噴火ガスよりも更にキツい《御鉢平》の硫黄ガスが漂ってくる。 途中には「ヒクマも倒れる有毒温泉・立入禁止」の看板も立っているくらいのキツい硫黄臭だ。 これを30分程歩くと、黒岳からのルートとの合流点・《中岳分岐》に着く。
ここまで来ると、ようやくキツい硫黄臭から解放される。

《中岳分岐》からは、ガレ場の急斜面を肩で切るように下っていく。 《御鉢平》の有毒ガスによる影響がなくなったこの辺りから、再びイワブクロなどのお花畑が現れだす。 この急斜面を下りきって沢に出ると《中岳温泉》だ。 


花が現れると
《御鉢平》の有毒ガス帯を抜け出た証だ

でも、この《中岳温泉》は温泉と言っても「脱衣施設なし」、「風呂と登山道の仕切りなし」で、しかも飛び上がる程の熱湯でイッキに浸かる事は難しく、これに入るにはそれ相当の根性が必要なのである。
当然、誰も入浴しておらず、せいぜい足をつけて『中岳温泉』と書かれた道標を持って記念撮影をする位であるので、ワテらもこの温泉に訪れた者の”お約束”の『アリバイ写真』を撮る。


入れば全身やけど
(スッポンポンになって)入らねば風をひく
ここの利用法は足湯・手湯だ

この《中岳温泉》より更に下っていくと、シナノキンバイが眩い黄色を放つこのコースのクライマックス・《裾合平》に出る。 旭岳の横脇にあるこの広大なお花畑は、旭岳の陰に隠れて訪れる人も少ない別天地である。 


岩間が眩く光っていた
シナノキンバイの大群落


チングルマも勢いよく咲いていた


イソツツジの小さな花


眩いばかりのシナノキンバイの群落

まずは、シナノキンバイの大地を黄色に染め上げるショーの後、息を着かせぬまでのチングルマの大群落、そしてハクサンイチゲの小道をたどると、エゾコザクラのピンクのじゅうたんが野のあちらこちらに広がるのだ。 そして、旭岳の裾野の雪渓模様も僅かながらに望む事ができて、図らずしもこのルートのクライマックスとなったのである。

クライマックスへ

大地を白く染めるチングルマの大群落


少し霧が晴れて
雪渓を乗せた旭岳の裾野が見えてきた


ある一角ではエゾコザクラが
可憐に風にそよいでいた

最後にして山の雄大さを味わう事ができて、彼女を山に誘って良かったと思うよ。
でも、度々立ち止まって写真を撮っていた『にわかガイド』を務めるワテが遅れて、兄さんの乗る旭川行きのバスに接続するロープウェイに間に合わなくなる所だったよ。 まぁ、遅れてもハチロクで送ってあげるつもりだったし。


大地を白く染める花々に魅せられて
更に山が好きになったよ


富良野のラベンダー畑とは違った
自然の花の織りなす帯模様

ちなみに、山の花に感動した兄さんはバスで旭川へ戻るのを止めて、3人ともに旭岳温泉のYHi連泊となったとさ。 ・・で、明日は山に夢中になって「(予定を変更して)利尻に登りたい」と言う兄さんを旭川に出るのに都合の良い富良野線の西神楽駅へ、女の子を美馬牛YHへ送り届けてから次の山に向かう。































関連記事
スポンサーサイト



コメント






管理者にだけ表示を許可