2017-07-30 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第299回 日高・幌尻岳 〔北海道〕
日高山脈 ひだかさんみゃく (日高山脈襟裳国定公園)
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
北海道の山も、近年ではかなりオープンとなってきた。 しかし、この日高山系だけは原始の姿を多くとどめていて、登山道はおろか未だ踏跡さえない山もあり、素人登山を決して受け付けない厳しさがある。
だが、原始の山とは、大いに征服欲をかきたてるものだ。 大自然相手に数多くの困難の末、山頂にたどり着いた者のみが大自然そのままの景観を欲しいままにできるのである。
・・さて、日高の山のプロフィールであるが、大きく3つに分けられる。 最高峰の幌尻岳 2052メートル ・戸蔦別岳 1959メートル を含む北日高、カムイエクウチカウシ山 1979メートル や、標高がそのまま山名となった1839 (イッパーサンキュウ) 峰 1842メートル を含む中部日高、またペテガリ岳 1736メートル より南部にある南日高と呼ばれる山々に分けられる。
・・さて、日高の山のプロフィールであるが、大きく3つに分けられる。 最高峰の幌尻岳 2052メートル ・戸蔦別岳 1959メートル を含む北日高、カムイエクウチカウシ山 1979メートル や、標高がそのまま山名となった1839 (イッパーサンキュウ) 峰 1842メートル を含む中部日高、またペテガリ岳 1736メートル より南部にある南日高と呼ばれる山々に分けられる。
そして、この山系の見どころとしては、七ッ沼・コイボク・八ノ沢など、この山系の特徴である《カール地形》が挙げられる。 花ならば、戸蔦別岳からペテガリ岳までのカール地形に群落を成している。
しかし、これらの山々や“花の楽園”であるカールの底へたどり着くには、川を渡渉し、沢をつめ、時には滝を遡上しなければならない。
コース難度も全てが上級向きで、山小屋も北日高の幌尻山荘を除くと山中には全くなく、装備・体力・経験の全てが要求される。 初心者ならば、さしてキツくないアポイ岳 811メートル への“花の登山”から始めるといいだろう。
北日高・幌尻岳周遊ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム
《1日目》 平取町・振内より車(1:10)→林道・振内ゲート(1:20)→北電・額平川取水ダム
(2:40)→幌尻山荘
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘(3:50)→林道・振内ゲートより車
《2日目》 幌尻山荘(1:30)→命の水(2:30)→幌尻岳(1:30)→七ッ沼カール底
《3日目》 七ッ沼カール底(1:20)→戸蔦別岳(3:00)→幌尻山荘(3:50)→林道・振内ゲートより車
(1:10)→平取町・振内
幌尻岳より望む中部日高の山なみ
《1日目》 平取町・振内から幌尻山荘へ
難関コースばかりの日高山脈・・。 さて、どこから行くのがいいか。 さしあたって、登山者の最も多い北日高から攻略するのがベターであろう。 この北日高・幌尻岳コースは途中に幌尻山荘があり、上手に利用すればテント装備なしで幌尻岳に立てる。 では、日高の主脈に登ってみよう。
平取町・振内より、砂利道の林道を延々32km進んでいく。 途中、『幌尻山荘へ19km』という看板がある分岐を、その指示通りに進んでいく。 ここからは道脇にキロポストがあり、《5.0》地点にある林道ゲートまで車で行ける。 さぁ、ここからは“歩き”だ。
難関コースばかりの日高山脈・・。 さて、どこから行くのがいいか。 さしあたって、登山者の最も多い北日高から攻略するのがベターであろう。 この北日高・幌尻岳コースは途中に幌尻山荘があり、上手に利用すればテント装備なしで幌尻岳に立てる。 では、日高の主脈に登ってみよう。
平取町・振内より、砂利道の林道を延々32km進んでいく。 途中、『幌尻山荘へ19km』という看板がある分岐を、その指示通りに進んでいく。 ここからは道脇にキロポストがあり、《5.0》地点にある林道ゲートまで車で行ける。 さぁ、ここからは“歩き”だ。
※ 現在は林道の一般車通行禁止で、とよぬか山荘(一般車駐車場)から
林道ゲートまでシャトルバス運行されている
チシマフウロ
・・日高の山は、大抵が林道歩きから始まる。 この北日高も例外ではなく、《10.0》地点の取水ダムまで5kmの林道歩きだ。 テント装備一式・約20㎏担いでの辛いアプローチだ。
見るべきものもなく、ただ黙々と歩き続けると、やがて《北電・額平川取水ダム》に着き、ここで林道は尽きる。
ダム堤を越えて、額平川の河原に沿って着いてある踏跡をたどっていく。 途中、増水時に高巻く“バンド”が垂れ下がっていたり、両岸が函状に迫ってきたりして、沢に入っているのが実感できる。
ハシゴや岩がせり出す“へつり”の鎖場などをピッケル片手に越えていく。
取水ダムより、歩くこと約1時間で《四ノ沢》の河原に出る。 《四ノ沢》が、勢いよく本流に合流している。 ここから靴を徒渉用に履き替えて、“気合を入れて”川を渡っていく。
取水ダムより、歩くこと約1時間で《四ノ沢》の河原に出る。 《四ノ沢》が、勢いよく本流に合流している。 ここから靴を徒渉用に履き替えて、“気合を入れて”川を渡っていく。
沢への第一歩は、すごく冷たくて背筋がピンとなる事だろう。
秘滝・心洗ノ滝
この“儀式”を終えると、前方にけたたましい瀑音が聞えてくる。 《心洗ノ滝》である。
誰が名付けたのか、岩に赤ペンキで書いてある。 もし、この風流な“名付け親”がいなければ、日高の沢に無数とある“無名滝”として、人知れず瀑布を掛けているのであろうか。
風流な響きの《心洗ノ滝》を過ぎると、両岸がぐっと迫り函状となる。 一枚岩の崖が迫り出し、高巻くことはできない。 約200mほど、ずっと沢の中を遡っていく。 この函状の所は、“増水”が最も危険だ。 増水すると、途端に逃げ場を失うからである。 従って、沢に入る時に一番大切なのは『技術』ではなく、天候を見分ける的確な『判断力』である。 この函状の難所を越えると、視界がパッと開けてくる。
誰が名付けたのか、岩に赤ペンキで書いてある。 もし、この風流な“名付け親”がいなければ、日高の沢に無数とある“無名滝”として、人知れず瀑布を掛けているのであろうか。
風流な響きの《心洗ノ滝》を過ぎると、両岸がぐっと迫り函状となる。 一枚岩の崖が迫り出し、高巻くことはできない。 約200mほど、ずっと沢の中を遡っていく。 この函状の所は、“増水”が最も危険だ。 増水すると、途端に逃げ場を失うからである。 従って、沢に入る時に一番大切なのは『技術』ではなく、天候を見分ける的確な『判断力』である。 この函状の難所を越えると、視界がパッと開けてくる。
戸蔦別岳が正面に現れる
ここからは、戸蔦別岳を見ながらの楽しい遡行となる。 土手を高巻いたり、暑くなったなら沢を流れる“ミネラルウオーター”で喉を潤したりしながら、幌尻山荘のある《五ノ沢出合》まで着実に沢をつめていく。
立派な建付の幌尻山荘
・・沢に入ってから2時間40分・徒渉すること17~18回で、“こんな沢中によくもまぁ・・”と思うほどに立派な幌尻山荘に着く。 今日はここ泊ろう。
”花の器”・カール群を抱く日高の盟主へ・・
《2日目》 幌尻岳を経て七ッ沼カール底へ
テントを担いで暑い中、長時間歩くのは避けた方がいいので、朝の涼しい内に稜線まで登ってしまおう。 従って、早朝5時に幌尻山荘を出発する。 山荘の前から、いきなりつづら折りの急登だ。
この急登を汗をかきかき登っていくと、やがてダケカンバ林に朝日が輝く平坦な尾根の端に出る。
つづら折りの樹林帯の登りがキツかった分、朝日の輝きに心が躍る。
テントを担いで暑い中、長時間歩くのは避けた方がいいので、朝の涼しい内に稜線まで登ってしまおう。 従って、早朝5時に幌尻山荘を出発する。 山荘の前から、いきなりつづら折りの急登だ。
この急登を汗をかきかき登っていくと、やがてダケカンバ林に朝日が輝く平坦な尾根の端に出る。
つづら折りの樹林帯の登りがキツかった分、朝日の輝きに心が躍る。
命ノ水付近のお花畑は
ミヤマクワガタなどの小さな花が咲いていた
また、ここは小さなお花畑で、エゾカンゾウ・オトギリソウなどの花が朝日に映えて美しい。
お花畑が両端を飾る尾根筋を歩いていくと、《命の水》の立て札が現れる。
この立て札のある踏跡を下っていくと、清水が岩の間から流れ落ちている。
これが、銘水《命の水》だ。 幌尻岳・北カールの湧水だけあって、冷たくて美味しい。
だが、この踏み跡は、脆い岩場で崩れやすいので気をつけていこう。
水筒に《命の水》を汲んで、再び登山開始。 《命の水》からはうって変わって、ハイマツの根にしがみついての急登となる。 テント装備一式の大きいザックがハイマツに引っ掛かり、行く手を阻む。
だが、この踏み跡は、脆い岩場で崩れやすいので気をつけていこう。
水筒に《命の水》を汲んで、再び登山開始。 《命の水》からはうって変わって、ハイマツの根にしがみついての急登となる。 テント装備一式の大きいザックがハイマツに引っ掛かり、行く手を阻む。
また足元も、縦横無尽に絡み合ったハイマツの根によっておぼつかない。
戸蔦別岳より望む北カールの端
高低差150m位の大自然からの試練に耐えると、いよいよお待ちかねの《北カール》の端に登り立つ。
カールの端に立つと視界がパッと開けて、眼前に幌尻岳が《北カール》を抱きそびえ立っている。
”花の器”・北カールに咲く花々
エゾツガザクラ
ヒタカビランジか?
チングルマが”ワッ”とばかりに
咲き乱れる花の楽園
カールを彩る鮮やかな緑と、残雪の眩いばかりの白とのコントラストが美しい。
また、辺り一面を咲き競うお花畑の群落に目を奪われる事だろう。
花の楽園に酔う
淡い紫が魅惑的な
ミヤマリンドウ
カールを白く染め上げる
エゾノハクサンイチゲ
淡いピンクのマーガレット・・
ミヤマアズマギク
チシマフウロを陽の光にかざしてみた
正に楽園・・。 これだけの景観を魅せられると、誰しもカール地形の虜となろう。
この素晴らしき眺めを楽しみながら、《北カール》の縁を幌尻岳に向って登っていく。
この素晴らしき眺めを楽しみながら、《北カール》の縁を幌尻岳に向って登っていく。
カールの斜面を染めるお花畑
北カールを前景に北日高の
山なみが見えてくると頂上も近い
カールの端から、馬蹄形に半周まわり込むように登れば、日高山脈の盟主・幌尻岳 2052メートル に着く。 頂上からの眺めは雄大だ。
日高山脈の最高峰・幌尻岳の頂へ
ピラミットの如くの端正な三角錐を魅せる戸蔦別岳
左から十勝幌尻岳・札内岳・・
中央右にはカムエクや1839峰など
憧れの山々が一望できる
エサオマントッタベツ岳など
未知の山々も欲しいままに
ピラミットのように端正な三角錐を形どる戸蔦別岳と、東西南北に展開する日高の山なみ。
登ってきた《北カール》や、《東カール》の縁の広がりも素晴らしい。
ただ、《七ッ沼カール》は、戸蔦別岳からの稜線に隠れて見る事はできない。
ただ、《七ッ沼カール》は、戸蔦別岳からの稜線に隠れて見る事はできない。
日高No.3の高峰でありながら無名峰の1967峰や
ピパイロキンバイ発祥の峰・ピパイロ岳などの
北日高の山々も望める
・・最近の『日本百名山』ブームで、幌尻岳の頂上のみ踏んで往路を引き返す人が多いが、せっかく苦労してここまで来たのに、一番“美味しい”所を見ないで帰るとは、何ともったいない事だろう。
山頂の雄大な眺めを心ゆくまで楽しんだなら、まだ見ぬ“楽園”《七ッ沼カール》へ行こう。
・・続きは次回の『第300回 七ツ沼カール』にて・・
※ 元ネタは、メインサイトの『幌尻岳・七ッ沼カール』です。 宜しければどうぞ。
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No title * by 風来梨
kingboyさん、こんばんは。
神の存在など信じていないけど、もし「神」が有るとすれば、この素晴らしい情景を創造した大自然こそが「神」だと思いますね。
神の存在など信じていないけど、もし「神」が有るとすれば、この素晴らしい情景を創造した大自然こそが「神」だと思いますね。
ナイス❗