2017-07-16 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第298回 黒部源流の山々 その2 〔富山県・長野県・岐阜県〕
鷲羽岳
真に”山”らしい
容姿を魅せる名峰だ
北アルプス・裏銀座縦走路 きたアルプス・うらぎんざじゅうそうろ (中部山岳国立公園)
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。
雪渓の登高あり、回路における電気抵抗の如く行く手を阻む荒々しい岩稜あり、そしてこの魅力的な縦走路を演出する北アの名峰群・・。 これらを全て踏破して槍・穂高の主脈へ向かうこのルートこそ、真に“雲上のプロムナード”の称号が相応しいだろう。 さあ、北アルプスの山旅の総決算として、“雲上のプロムナード”の完全踏破にチャレンジしてみよう。
北ア・裏銀座縦走路 水晶岳~鷲羽岳~三俣山荘 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(2:00)→大沢小屋(0:30)→針ノ木大雪渓
(2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋(3:20)→野口五郎岳(2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(2:45)→水晶岳(3:10)→三俣
《6日目》 三俣 ¥(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
(2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋(3:20)→野口五郎岳(2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(2:45)→水晶岳(3:10)→三俣
《6日目》 三俣 ¥(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
(2:20)→北穂高岳(2:50)→白出乗越
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
(1:30)→西穂高岳(2:10)→西穂山荘
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
(1:40)→JR高山駅
※ 前回の『第297回 黒部源流の山々 その1』からの続き
赤牛岳から望む水晶岳
:
取り敢えずは来た道を
あの頂まで戻ろう
赤牛岳までの“行き”は、空身の私でも2:45の時間がかかったのである。 体のデキ上がった私でこんなにかかったのであるから、一般の方は3:30は見ておいた方がいいいだろう。
赤牛岳からの帰りは
時が経つにつれて
天候が回復してきた
帰りは途中から、幸運にもガスが晴れてきて展望が欲しいままとなったので、展望や花を主体に述べていこう。 ロックガーデンまでは、お花畑が美しい。
惑わせるような紺色を魅せる
ミヤマリンドウが影なら
眩いばかりに光る黄色を魅せる
ウサギギクは陽を表すのか
既に“実”となったチングルマや、ハクサンイチゲ・タテヤマリンドウ・タカネナデシコなどが咲き競っている。 ロックガーデンの下降は、晴れていたなら爽快だ。
目指す水晶岳の背後には
白亜に光る鷲羽岳が
日の光を浴びて真っ白に輝く岩々を水晶岳へ向かってつめていく。 信州側には野口五郎岳や真砂岳、その先には今日まで歩いてきたルート上の山々が稜線上に立ち並んでいる。 特に印象的なのは、特長際立つ姿の烏帽子岳であろう。 例えると、“お菓子のトンガリコーン”がそのまま稜線上に乗っかっているのである。
これまでに越えてきた針ノ木・蓮華
:
烏帽子岳の
”トンガリコーン”が見渡せた
ロックガーデンを下りきると、広い鞍部に出て《温泉沢ノ頭》に向かって急下降を登り返す。
《温泉沢ノ頭》の標高は2904m。 赤牛岳よりも高いのである。 だが、好天ならば、登りの辛さも吹き飛ぶ展望が360°広がる。
登っていく毎に、今までロックガーデンの陰に隠されていた薬師岳がゆったりと真横に展開するのだ。
薬師岳のカール群も全て見渡せる。 薬師岳は、何度望んでも“美しい”山容だ。 空に浮かぶ雲の陰が薬師岳の山体を縞模様に変えて、より目を楽しませてくれる。
振り返ると
赤牛岳と薬師岳が望まれる
『裏銀座縦走路』の山なみも素晴らしい。 そして、振り返れば、赤牛岳がノッペリとピンク色の山体を魅せている。 赤牛岳の命名は、この位置より望んだ容姿が“赤い牛が寝そべっている”と例えられたからであろう。 また、蒼々とした《黒部湖》も印象的だ。 ここからだと、《黒部ダム》の白い堰堤も望まれる。
水晶岳へと高度を高めるごとに
雲ノ平の『緑の大陸』が見えてきた
そして、目指す水晶岳は、“かっこいい”のひとことだ。 逆光に黒光りするスラッとした岩峰が、天に向かって突き上げている。 山小屋の方いわく、この位置から望む水晶岳こそが、“極上の眺め”だそうだ。
山の展望だけではない。 花もいい。 ミヤマリンドウ・タカネナデシコ・チングルマの実・ハクサンイチゲ・キンバイソウなどが、そよ風に揺れていて心地よい。
この辺りから望む水晶岳が
いちばん”かっこいい!”
やがて、《温泉沢ノ頭》と水晶岳の鞍部のガラ場を経て、水晶岳の直下にたどり着く。 頂上までは約150m。 これより、浮石の目立つガラ場をジグザグに登っていく。 いくら早出したから・・といっても、ここに戻ってくる頃には昼前となっている事だろう。 見上げると、岩の積み重なった狭い頂上には登山者がそろぞろとたむろっている。
水晶岳の頂上は
狭い上に常時人だかりだ
最初にも述べたが、これが厄介だ。 団体の登山者がたむろすればする程に、“カンラカンラ”と落石が落ちてくるのである。 崩壊著しい斜面であるから致し方ないが、山に登る人間としてもうちょっとマナーをわきまえて頂きたいものだ。 これをつめると、水晶岳の頂上だ。
展望は文句なしに360°・・。 ここからだと、北アの全ての山が見渡せる。 水晶岳の頂からは、《黒部湖》や赤牛岳 2864メートル を越えて続くロングランコース・『読売新道』が見渡せる。
赤牛岳の背後には
黒部湖が蒼く光っていた
また振り返れば、烏帽子のように突き出た烏帽子岳 2628メートル や野口五朗岳 2924メートル といった『裏銀座』の山なみや、その後にそびえる後立山連峰の山々がまるで軍艦のように静かに雲海にその姿を浮かべている。
水晶岳発・・ 絶景かな
西鎌尾根の峰々の背後には槍が・・
雲ノ平の横には薬師岳が
衛士のように脇を固め
野口五郎岳の
白亜の山体も指呼の間に
針ノ木岳からの
壮大な山岳絵図が一望の下に
その山々の眺望にも増して目を惹くのは《雲ノ平》だろう。 その《雲ノ平》は、黒部川源流が大きく大地を刻み、草原の大陸のように見える。 その草原の大陸の中にある一軒家・雲ノ平山荘が印象的だ。
なぜ目を引くかというと、これ以外に建物が見えないからだ。 あるのは山また山、緑また緑・・なのである。
黒部五郎岳を衛士に従えて
緑の大陸・雲ノ平が広がる
いつまでも去り難い眺めであるが、荷物を水晶小屋に預けてある手前もあるので、切りよく引き上げよう。 なお、水晶岳からの下りは滑り易いザラ場なので、転倒に気を着けよう。
水晶岳から鷲羽岳への
稜線に刻まれた縦走路
・・小屋に戻って、預かってもらった荷物を回収したなら出発だ。 《岩苔乗越》で《黒部川源流》への道を分けて、鷲羽岳へ登っていく。 『裏銀座』の核心部であるので、ルートは年々整備されているようだ。
鷲羽岳へ・・
鷲羽の前衛峰・ワリモ岳 2888メートル 越えは《鎖場》なのであるが、岩の周りを刳り貫いて通路を造ったらしく、差たる危険もなく通過できる。 ワリモ岳より鞍部に下って、なだらかに登り返していくと鷲羽岳だ。
鷲羽岳の頂は
思ったより簡素なモノだった
これより通る
三俣蓮華岳や双六岳が望める
圧巻は鷲ノ池の先に対峙する
槍の北鎌尾根だろう
この頂からは、餓鬼岳・燕岳からの『表銀座』の山なみが槍ヶ岳に向かって連なっているのが望めるであろう。 鷲羽岳からは、ウンザリする程のザラ場下りだ。 もう10時間近くも歩いているので、疲れから注意力も散漫になりがちになる事と思う。 下り時のスリップや転倒・落石に注意しよう(転ぶと、派手なスライディングタックルとなる。 これは、この地で筆者が証明済み)。
鷲羽岳の大斜面を彩るお花畑
宿泊地の《三俣》は、《双六》と並んで北アきっての快適な幕営地だ。 このテントサイトは、水の心配がいらない。 テントの中で、ゆっくりと今日の山旅を回想しよう。 明日はいよいよ、北アのシンボル・槍ヶ岳を目指す。
明日からの天候不順を予期させる
空模様に下山を決意
《6日目》 天候不順の予報を受けて下山
予定ではこの日も、槍ヶ岳の往復を含めると9時間の行程となる。 それゆえに、早めの出発を心掛けたいものである。 なお、この日を境に天候が荒れる予報が出た為に、今回は小池新道から新穂高温泉へ下る事になってしまって、この区間は未踏となってしまった。
予定ではこの日も、槍ヶ岳の往復を含めると9時間の行程となる。 それゆえに、早めの出発を心掛けたいものである。 なお、この日を境に天候が荒れる予報が出た為に、今回は小池新道から新穂高温泉へ下る事になってしまって、この区間は未踏となってしまった。
最後は花で飾ろうか
双六のお花畑にて
アオノツガザクラ
ウメバチソウ
”大”の字よろしく
ミヤマダイモンジソウ
それで今年の夏に、そのリベンジとして新穂高温泉からこの未踏ルートを通って槍ヶ岳に入り、西穂高岳までの槍穂高の完全縦走を計画している。 この縦走を歩いたなら、またの機会にその様子を『日本百景・夏』の項目で書き記したいと思う次第である。
※ 元ネタは、メインサイトの『北アルプス・裏銀座縦走路』です。 宜しければどうぞ。
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No title * by 風来梨
ギャメロンさん、こんばんは。
山の情景とお花畑は、キツい登りに耐えたご褒美ですね。 これは、歳を喰ってヘタればヘタるほどに強く思うようになってきました。
なぜなら今のヘタレた自分は、登ってる最中はいつもご褒美にありつく瞬間を妄想していますから(笑)
山の情景とお花畑は、キツい登りに耐えたご褒美ですね。 これは、歳を喰ってヘタればヘタるほどに強く思うようになってきました。
なぜなら今のヘタレた自分は、登ってる最中はいつもご褒美にありつく瞬間を妄想していますから(笑)
山からの青い空に山々の眺望が素晴らしいですね
高山植物も見られてすてき!
こういう風景を望みたいけど中級以上は登れないもどかしさ(^^;
いつも絶景風景を見せてもらい楽しませて頂いています(*^-^*)
ナイス!