2017-07-09 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第297回 黒部源流の山々 その1 〔富山県・長野県〕
北アルプス・裏銀座縦走路 きたアルプス・うらぎんざじゅうそうろ (中部山岳国立公園)
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。
雪渓の登高あり、回路における電気抵抗の如く行く手を阻む荒々しい岩稜あり、そしてこの魅力的な縦走路を演出する北アの名峰群・・。 これらを全て踏破して槍・穂高の主脈へ向かうこのルートこそ、真に“雲上のプロムナード”の称号が相応しいだろう。 さあ、北アルプスの山旅の総決算として、“雲上のプロムナード”の完全踏破にチャレンジしてみよう。
北ア・裏銀座縦走路 烏帽子岳~水晶岳~赤石岳 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
真正面にそびえ立つ山・三ッ岳に向かってキツくもなく、さりとて緩くもない単調な登りが1時間程続く。 やがて、尾根筋が右手に曲がり、そこを急登でつめると三ッ岳 2845メートル 頂上だ。
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(2:00)→大沢小屋(0:30)→針ノ木大雪渓
(2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋 (3:20)→野口五郎岳 (2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(3:15)→水晶小屋(2:40)→三俣
《6日目》 三俣(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
(2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋 (3:20)→野口五郎岳 (2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(3:15)→水晶小屋(2:40)→三俣
《6日目》 三俣(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
(2:20)→北穂高岳(2:50)→白出乗越
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
(1:30)→西穂高岳(2:10)→西穂山荘
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
(1:40)→JR高山駅
※ 前回の『第296回 烏帽子岳』からの続き
目指す峰の
水晶岳と赤牛岳が並び立ち
《4日目》 裏銀座縦走路を伝って野口五郎岳・水晶小屋へ
テントサイトより眺めると、真正面にひときわ大きな山がそびえ立っている。 これを登る事から、“今日”が始まる。 ただ、今までと違う所は、登っていく人が今までとは段違いに多い事だろう。
テントサイトより眺めると、真正面にひときわ大きな山がそびえ立っている。 これを登る事から、“今日”が始まる。 ただ、今までと違う所は、登っていく人が今までとは段違いに多い事だろう。
それは、《ブナ立尾根》から登ってきた登山者のほぼ全てが、こちら側を向いているからであろう。
真正面にそびえ立つ山・三ッ岳に向かってキツくもなく、さりとて緩くもない単調な登りが1時間程続く。 やがて、尾根筋が右手に曲がり、そこを急登でつめると三ッ岳 2845メートル 頂上だ。
頂上といっても、“肩”のような北峰の頂であるが。 なお、最高点は左手にある岩の積み重なりで、縦走路からも外れていて立ち寄る人もいないようである。
朝は天気が良かったのに
すぐさま黒雲が空を覆い始めた
三ッ岳の頂上より左手に進路を取り、最高点の信州側を伝っていく。 この付近は露岩とお花畑の美しい所だ。 傾斜の少ない二重山陵で花を撮るのも良し、少し進んで《黒部》側に出て野口五郎岳や槍ヶ岳などの山岳風景を撮るのも良し・・である。 花は、アオノツガザクラを中心とした白い花が多いみたいだ。
今日の行程は6時間位と短いので、ゆっくりと山を楽しもう。
三ッ岳の肩は
アオノツガザクラの群落地だ
二重山陵の中を伝っていくと遠かった野口五郎岳の山体が眼前に広がり、いつの間にかそれに登っているようになるだろう。 やかて、船窪状の窪みに下ると、そこに《野口五郎小屋》が船窪に隠れるように建っている。
白亜のザラ場を
野口五郎岳へ
小屋でひと息着いたなら、野口五郎岳の頂上へ。 小屋前からの坂を10分程登ると、野口五郎岳 2924メートル の頂上だ。
野口五郎岳の頂上は
ガスで真っ白けだった
この山域で2番目に高い(鷲羽岳より10cm高い)頂からは、晴れていれば『槍・穂高』が真横に並んで望めるだろう。 そして、振り返ると水晶や明日に目指す赤牛岳・《雲ノ平》・薬師岳・・と、雲の上の楽園が展開する事7だろう。 だが、ここはガスのよく発生する所でもある。 残念ながらワテの時は、ガスで白夢の世界であった。
時折日が差して
山の展望が拝めた
野口五郎岳よりは南西に進路を取り、ザラ場をジグザグにイッキに下っていく。 200mは下るであろうか。 下りきると真砂岳の信州側山腹に取り付き、トラバース状に真砂岳の山腹を伝っていく。
縦走路は真砂岳の頂上は通らず、その下100m位の所を行く。 この辺りが、ほぼ全ての山頂を乗り越える南アルプスの縦走路とは違う所であろう。
野口五郎岳からは
ザラ場を急下降していく
真砂岳の山体を完全に横切ると、湯俣温泉への《竹村新道》を分ける。 この辺りから稜線は痩せて細くなり、稜線上の突起の岩峰を数ヶ所乗り越える。 稜線は少し広くなるが、すぐにガラ場の急下降となる。 下りきった窓状の所が、《東沢乗越》だ。
目指す水晶岳と赤牛岳が
深い東沢谷を挟んで対峙する
ここには地蔵尊が安置されていて、テント跡も数ヶ所ある(水さえあれば、ワテのようなテント担ぎだと“良からぬ事”を考えてしまう場所である)。 これより水晶岳へ向かって登っていくのだが、これが結構な悪場だ。
崩壊の激しい痩せた岩稜を直登していくのだが、高度感がある上に足場がザレていて滑りやすい。
しかも、岩峰をアップダウンで乗り越えるので、不安定な岩崖の急下降も存在する。 そして最後は、お花畑ではあるが岩崖のヘツリを伝っていく。 このヘツリは、右利きだと“逆手”になるので伝いにくい。
水晶小屋の建つ稜線の肩へは
お花畑の中の急登だ
これを越えると、あとはお花畑の急斜面をつめるだけだ。 見上げる頭上には、《水晶小屋》が狭い肩に“所狭し”と建っている。 今日は、ここで宿泊するとしよう。 なお、この場所は幕営禁止であるので、明日の赤牛岳の往復を考えるなら小屋に泊るしか手がないのである。 まぁ、厳密にいえば“手”はあるのだが・・。 それは、水晶岳と赤牛岳の間の《温泉沢ノ頭》にテントサイトで幕営するのだが、当然水はない。 そして、この時は雨天であったので、断念したのである。
収容力が小さくいつも満杯で
水もペットボトルで割高
でも天気が悪けりゃ
泊る所はこの小屋しかない
※ 水晶小屋のウェブサイトより拝借
だが、この小屋は“地獄の小屋”として有名だ。 それは定員20名に対して常時50人近くの宿泊者がいる事である。 猛烈な窮々詰めである。 たぶん、ロクに睡眠が取れないであろう。 明日の長時間行程を考えると、やや心配な点である。 少しでも睡眠を取るように心掛けよう。
ロックガーデンを
よじ登って赤牛岳へ
《5日目》 赤牛岳を往復して三俣へ
さて今日は、最もアプローチに時間のかかる名峰・赤牛岳に登ってみよう。 コースタイムは片道3:30とかなりかかるので、小屋の早発は絶対条件となる。 小屋に荷物を預かってもらって、さぁ出発だ。
さて今日は、最もアプローチに時間のかかる名峰・赤牛岳に登ってみよう。 コースタイムは片道3:30とかなりかかるので、小屋の早発は絶対条件となる。 小屋に荷物を預かってもらって、さぁ出発だ。
小屋泊のほとんどの人は水晶岳の往復組であるので、ゆったりと構えている。 赤牛岳は一般の登山者には少し遠すぎるようで、訪れる人は僅かのようだ。
小屋より北の方向へ向かっていくと、水晶岳の岩稜が前方に立ちはばかってくる。 これをよじ登り気味につめていくと、水晶岳 2986メートル の頂上だ。 ワテの登った時は帰りに天気が良くなったので、“頂上レポート”は帰りの時にしたいと思う。 水晶岳までは一般の登山者が数多く行き通いするので、道は踏み固められて安定しているが、水晶岳より先は通行する登山者も激減するゆえに脆弱な滑りやすいザラ場となる。
水晶岳~赤牛岳は
長いザラ場の稜線を伝っていく
傾斜も急で、落石を常に想定して歩かねばならないようだ(頂上で登山者が騒げば騒ぐ程、落石は増える。 困ったものである)。 このガレにガレた急傾斜を150m程下ると、今度は《温泉沢ノ頭》に向けて同じようなガラ場を登り返していく。 《温泉沢ノ頭》は、水晶岳と異なり広い穏やかな丘という感じだ。 この辺りでは幕営も可能であろう。
白亜の花崗岩に囲まれたお花畑
チングルマの実が満開だった
最近、この頂より『高天原』の《温泉沢》へのルートが整備されたようで、北アで標準化された道標から左手に、枕木で固定されたルートが延びている。 赤牛岳へのルートは、右手の崖を斜めに急下降する。
この急下降は浮石の多いガレ帯であるので、足下には気をつけよう。 下りきると、赤牛岳との広い鞍部に出る。 この辺りは、砂礫帯のお花畑となっている。
花崗岩のロックガーデンを
よじ登っていく
この鞍部より、白い岩石の積み重なりをよじ登っていく。 ちょっとしたロックガーデンだ。
この区間は同じような風景が展開するので、ガスに巻かれた時にルートが判り辛くなるかもしれない。
岩にあるペンキ印を見落とさずにいこう。
このロックガーデンを越えると、砂礫帯の土手に続く平坦な道を伝うようになる。 これがまた、結構長い。 途中に『Welcome』と記された岩を跨ぐが、この辺りが赤牛岳まであと1時間位であろう。 やがて、庭園状の広い丘に出る。 ここも同じような眺めが続く所なので、ガスに巻かれた時などは“リングワンダリング”の危険がある。 ここからは、ザラついた赤牛岳の左山腹を斜めに突き上げるように登っていく。
このロックガーデンを越えると、砂礫帯の土手に続く平坦な道を伝うようになる。 これがまた、結構長い。 途中に『Welcome』と記された岩を跨ぐが、この辺りが赤牛岳まであと1時間位であろう。 やがて、庭園状の広い丘に出る。 ここも同じような眺めが続く所なので、ガスに巻かれた時などは“リングワンダリング”の危険がある。 ここからは、ザラついた赤牛岳の左山腹を斜めに突き上げるように登っていく。
霧露に濡れたチングルマの実
約30分程登りつめれば右側より尾根上に出て、すぐに赤牛岳 2864メートル の頂上に着く。
ワテの訪れた時は濃いガスに覆われていて何も見えなかったが、縦走路から離れた山からの展望はきっと素晴らしいものであろう。
赤牛岳の頂上も
残念ながら眺望ナシ
なので・・登りの途中まで見えていた
対峙する薬師岳おば・・
なお、この先は北アルプスきっての長大コース『読売新道』が、《黒部湖》の渡し場まで続いている。
延々と続く樹林帯の下降だそうである。 もし、日程に余裕があれば、チャレンジするのもいいだろう。 さて今回は、主目的が北アルプスの完全縦走にあるので、ここで引き返そう。
延々と続く樹林帯の下降だそうである。 もし、日程に余裕があれば、チャレンジするのもいいだろう。 さて今回は、主目的が北アルプスの完全縦走にあるので、ここで引き返そう。
・・続きは、次回の『第298回 黒部源流の山々 その2』にて・・。
※ 元ネタは、メインサイトの『北アルプス・裏銀座縦走路』です。 宜しければどうぞ。
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No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。
「雨で周囲はテント不可」という事と、翌日赤牛岳に行くための理由で水晶小屋に泊まったのですが、混んでましたね。
もう寝れずに、玄関の下足場のスノコのの上で寝ました。 ここ涼しくて、割とよく寝れましたね。 込んだ記憶のあるのは、ここと訪れた最初に泊まった黒部渓谷の阿曽原小屋ですね。 定員50で250人が泊まって三角座りですごし、その記憶から次はテントにしましたけど・・ね。
「雨で周囲はテント不可」という事と、翌日赤牛岳に行くための理由で水晶小屋に泊まったのですが、混んでましたね。
もう寝れずに、玄関の下足場のスノコのの上で寝ました。 ここ涼しくて、割とよく寝れましたね。 込んだ記憶のあるのは、ここと訪れた最初に泊まった黒部渓谷の阿曽原小屋ですね。 定員50で250人が泊まって三角座りですごし、その記憶から次はテントにしましたけど・・ね。
テント泊がメインの風来梨さんには〝修行状態”でしょうね。