風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第296回  烏帽子岳

『日本百景』 夏  第296回  烏帽子岳  〔富山県・長野県〕


四十八池と烏帽子岳

  北アルプス・裏銀座縦走路 きたアルプス・うらぎんざじゅうそうろ (中部山岳国立公園)
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。 
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。 
 
雪渓の登高あり、回路における電気抵抗の如く行く手を阻む荒々しい岩稜あり、そしてこの魅力的な縦走路を演出する北アの名峰群・・。 これらを全て踏破して槍・穂高の主脈へ向かうこのルートこそ、真に“雲上のプロムナード”の称号が相応しいだろう。 さあ、北アルプスの山旅の総決算として、“雲上のプロムナード”の完全踏破にチャレンジしてみよう。




北ア・裏銀座縦走路 船窪~烏帽子岳 行程図

    行程表               駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(2:00)→大沢小屋(0:30)→針ノ木大雪渓 
     (2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋(3:20)→野口五郎岳(2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(3:15)→水晶小屋(2:40)→三俣
《6日目》 三俣(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
     (2:20)→北穂高岳(2:50)→白出乗越
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
     (1:30)→西穂高岳(2:10)→西穂山荘
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
     (1:40)→JR高山駅

     ※ 前回の『第295回 蓮華ノ大下リ』からの続き


今日の行程はキツい
朝の光が山を染める頃には
出発しなければ

  《3日目》 不動岳・烏帽子岳を越えて裏銀座の入口へ
朝、不動岳が朝日で赤く染まる頃、出発準備をしよう。 今日の行程はキツいし長い。
できるだけ早い時間の出発が望まれる。 テント場を出ると、《不動谷》を囲うように崩壊地の縁を伝う。 右側はそれ程でもないが、左が常にボロボロと崩れている進行中の崩壊斜面と、両端がかなり迫った痩せ尾根上を下っていく。


歩きながら
山が染まるのを目にして

痩せ尾根上も崩壊斜面と同じ土質で、崩れやすく滑りやすい。 下りでもあるので、スリップなどには十分注意が必要だ。 


船窪乗越を通過する時点で
ようやく日の出時・・ってのが理想だろう

崩壊が著しい所は、越中側の潅木帯を巻きながら下っていく。 下りきった所が《船窪乗越》だ。 
標高は2100m位であろうか。 左右に対峙する不動岳と針ノ木岳が、ひときわ高く望まれる。 
いずれも直線距離で3km足らずと、「稜線はかなりジグザグとうねっているのだろう」と想像できる。 

乗越で、《針ノ木谷》や《黒部湖》へのルートを分けて直進する。 ここからの道が、かなりの悪路である。 これより船窪岳までの標高差360mを2回のアップダウン付で登っていくのだが、取付は崩壊斜面のヘリに針金で縛られただけのハシゴが固定されているだけだ。


高瀬ダム湖が望める

ハシゴを昇る毎に崩壊は顕著となっていき、ついにはハシゴも架設できぬ程の崩壊斜面となって、ロープ一本でよじ登るハメとなる。 重い荷物を担いでだと、ザラついた崩壊斜面は余計にズリズリと滑る。
もう、足の踏ん張りは利かず、腕力だけでだけで登っているようなものである。 

この斜面を上がりきったなら、たぶん額は汗でグッショリと濡れて腕はパンパンに張って重くなっている事だろう。 崩壊斜面を這い上がると、せっかく登ったものを全て吐き出す程に急下降する。 
そして、再び潅木帯の猛烈な急登となるのだ。 山慣れモードに突入したワテでさえ、“これはキツい”と思った位である。

腕だけでなく、ふくら脛もパンパンに突っ張らせての急登の末に、ようやく船窪岳 2459メートル の頂上に登り着く。 だが、潅木に囲まれていて見通しはなく、苦労が全く報われない頂上である。 
せいぜい、切り株にヘタリ込む位であろうか。


崩壊筋を幾重にも魅せる
不動岳の登りは困難を極める

船窪岳を過ぎると、再び急下降となる。 しかも、《不動谷》の大崩壊の縁に沿ってである。 
マジマジと大崩壊跡を目にしながらの歩行で足も竦む。 所々、崩壊が通路を浸食して、応急的に丸木の桟道で渡している所もある。 やがて、越中側の樹林帯の中に分け入り、足場の悪いヘツリ状の崖を斜めに急下降する。

樹林に囲まれた薄暗い所ゆえに、足元は常に濡れていてスリップしやすいのである。 大きな一枚岩をトラバースする所は足場がつま先程しかなく、鎖が設置してあるがルート上で最も通行が困難な所であろう。 

ヘツリ状の足場を上下しながらも、標高点で2299mまで下る。 この辺りで再び崩壊縁に出てその際を伝うのだが、《不動谷》を挟んで《船窪小屋》が真正面に見えて、ちょうど《不動谷》の周りを半周した事になる。 これよりは、崩壊縁と一定の間隔を取りながら樹林帯の中を斜上していく。 
コブを1つ乗り越えると、見上げる位置にある不動岳までは長い登りとなる。 樹林帯からハイマツのトンネルとなり、やがて露岩を鎖を頼りによじ登るようになると頂上は近い。 

不動岳 2601メートル の頂上は露岩が立ちならぶ展望の利く細長い所で、《不動谷》の大崩壊を挟んで指呼の間に《船窪小屋》が望まれる。 ルートとしては《船窪小屋》から楕円状に半周した訳であるが、小屋からここまで4時間超・・。 ルート上の猛烈なアップダウンが一望できて感慨深い。
また、頂上付近はコマクサの群落地で、久しぶりに心地よく一服できるであろう。 


不動岳の背後に
目指す裏銀座の山なみが続く

さて、これより稜線上に“道路のコーン”のようなトンガリを乗せる烏帽子岳へと向かっていこう。 
不動岳の頂上より向きを右に変えて、今度は反対方向に半円を描くように進んでいく。
不動岳の越中側を急下降してルンゼ状の滑りやすい所を更に下ると、《南沢》源流の窪地に出る。 
これより南沢岳の尾根筋に乗り移り、木立の中のコブを越えると4つ目の乗越である《南沢乗越》に出る。 


見た目は穏やかそうな南沢乗越
だが信州側は崖っぷちだ

乗越より先、越中側は広いのだが信州側は《不動谷》と同じような大崩壊崖となっていて、道はその際を伝っていくので、ハイマツなどに足を取られると肝を冷やす。 また、土質が進行中の崩壊崖である白砂で、ズリズリと滑りやすい・・というのも気になる。


恐竜の背びれの如く
の切り立った稜線を伝う

これをつめると、樹林帯に入って2~3回のつづら折りの急登となる。 樹林層が潅木からハイマツに変わり、やがて露岩のある庭園状のコブに出る。 これが、南沢岳 2625メートル の頂上だ。

頂上は白砂の敷きつめられた広く見通しの良いもので、遙か遠かった烏帽子岳の“コーン”が指呼の間に大きく“乗っかって”いる。 南沢岳の広い頂上を端まで縦断して端に“ササクレ”のように立っている大岩まで伝うと、その岩の左側より急下降となる。 だが、今まで違って、足下には《烏帽子田圃》の山上庭園が広がっていて気分の良い下りだ。 


このデンジャラス区間で
唯一のお花畑が広がる烏帽子田圃

下りきると、《烏帽子田圃》の池塘群が点在する庭園の中を縦断する。 
この池塘群は《烏帽子四十八池》と呼ばれている。 中でも、烏帽子岳の袂にある最も大きな池塘は、烏帽子岳の姿を水面に投影して絶好の被写体となっている。


四十八池に投影する
烏帽子岳

この池をめぐって、烏帽子岳の左端に向かって斜めに迫り上がっていくと、烏帽子岳への分岐点に着く。 烏帽子岳へは、これより15分位の岩登りだ。 分岐に荷物をデポって往復してこよう。 


分岐から見上げる烏帽子岳は
真に凛々しい

なお、最後の岩塔の取付より一枚岩のトラバースがあるが、これは足下の悪い鎖付きであるので注意しよう。 


烏帽子岳の岩塔の間から
今日通ってきた難路を望む

烏帽子岳 2628メートル の頂上は岩塔が立ちならんだ間の隙間で、《アリバイ写真》を撮るにも岩にへばりつかねばならない。 この事からかどうかは判らないが、三角点などない頂上である。


岩塔に頂上標柱が
突き刺さっているだけの
烏帽子岳頂上

本物志向の方ならこの岩塔の上までよじ登る事ができるが、当然足下は危険となるので念の為。
烏帽子岳の往復を終えたなら、本日の行程はほぼ終了だ。 


烏帽子岳より望む優雅な容姿の薬師岳

後は、ニセ烏帽子 2605メートル の丘のような高みを越えて《ブナ立尾根》との鞍部に出ると、今日の宿泊地点である《烏帽子小屋》のキャンプ場だ。 このキャンプ場は水場がなく、水は小屋での購入となるので念の為。

キャンプサイトは近くの《ヒョウタン池》の手前にあるが、傾斜があり“快適性”には少し欠ける。
さぁ、明日からは、いよいよ《裏銀座縦走路》だ。 明日の為に早く休んで、今日の疲れを取り除いておこう。

    ・・続きの《4日目》は、次回の『第297回 黒部源流の山々 その1』にて・・。

    ※ 元ネタは、メインサイトの『北アルプス・裏銀座縦走路』です。 宜しければどうぞ。






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No title * by 鳳山
2000mを超える壮大な山々ですね。ただただ壮観です。

ナイス

No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。

北アルプスの一般登山コースは、人気があるだけあって完全にコース整備されているのですが、ここだけは危険な所が多く、コースもかなりキツいです。

このコースを歩くと、山の雄大さが身にしみて感じますね。

No title * by たけし
市販のガイドブックよりリアルで、読み進むうちに主人公になった気がします。

山の険しさが臨場感を持って拝見できました。

No title * by 風来梨
たけしさん、こんばんは。

このコースは、北アルプスでは珍しいキツいルートですね。
このルートを歩いたのは、「奇跡の体力」の最盛期を少し過ぎた頃で何とか踏破できましたけど、今は悲しい結果も有り得ますね。

「奇跡の体力」を持ってしても厳しいルートだったので、書く文章にも臨場感が出たのかな?

コメント






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No title

2000mを超える壮大な山々ですね。ただただ壮観です。

ナイス
2017-07-03 * 鳳山 [ 編集 ]

No title

鳳山さん、こんばんは。

北アルプスの一般登山コースは、人気があるだけあって完全にコース整備されているのですが、ここだけは危険な所が多く、コースもかなりキツいです。

このコースを歩くと、山の雄大さが身にしみて感じますね。
2017-07-04 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

市販のガイドブックよりリアルで、読み進むうちに主人公になった気がします。

山の険しさが臨場感を持って拝見できました。
2017-07-08 * たけし [ 編集 ]

No title

たけしさん、こんばんは。

このコースは、北アルプスでは珍しいキツいルートですね。
このルートを歩いたのは、「奇跡の体力」の最盛期を少し過ぎた頃で何とか踏破できましたけど、今は悲しい結果も有り得ますね。

「奇跡の体力」を持ってしても厳しいルートだったので、書く文章にも臨場感が出たのかな?
2017-07-08 * 風来梨 [ 編集 ]