風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第294回  針ノ木岳

『日本百景』 夏  第294回  針ノ木岳  〔富山県・長野県〕


均整のとれた三角錐
を魅せる針ノ木岳

  北アルプス・裏銀座縦走路 きたアルプス・うらぎんざじゅうそうろ (中部山岳国立公園)
“槍ヶ岳”。 天衝く穂先がシンボルのこの山は、登山を志す者の『バイブル』的な存在の山である。 
この“槍ヶ岳”へ、最高の景色を眺めながら伝っていくルートが、この『裏銀座縦走路』である。 
 
雪渓の登高あり、回路における電気抵抗の如く行く手を阻む荒々しい岩稜あり、そしてこの魅力的な縦走路を演出する北アの名峰群・・。 これらを全て踏破して槍・穂高の主脈へ向かうこのルートこそ、真に“雲上のプロムナード”の称号が相応しいだろう。 さあ、北アルプスの山旅の総決算として、“雲上のプロムナード”の完全踏破にチャレンジしてみよう。




北アルプス・裏銀座登山ルート 総図

    行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR信濃大町駅よりバス(0:40)→扇沢(2:00)→大沢小屋(0:30)→針ノ木大雪渓 
(2:30)→針ノ木峠・針ノ木岳へは往復1時間半
《2日目》 針ノ木峠(1:00)→蓮華岳(4:30)→七倉岳(0:20)→船窪
《3日目》 船窪(4:00)→不動岳(3:00)→烏帽子岳(0:45)→烏帽子小屋
《4日目》 烏帽子小屋(3:20)→野口五郎岳(2:30)→水晶小屋
《5日目》 水晶小屋(0:45)→水晶岳(2:30)→赤牛岳(3:15)→水晶小屋(2:40)→三俣
《6日目》 三俣(2:00)→双六小屋(5:40)→槍ヶ岳山荘・槍ヶ岳へは往復1時間
《7日目》 槍ヶ岳山荘(2:40)→南岳小屋(1:20)→大キレット・長谷川ピーク
      2:20)→北穂高岳(2:50)→白出乗越
《8日目》 白出乗越(0:50)→奥穂高岳(2:40)→天狗ノコル(1:00)→間ノ岳
     (1:30)→西穂高岳(2:10)→西穂山荘
《9日目》 西穂山荘(0:50)→西穂高口よりロープウェイ(0:15)→新穂高温泉よりバス
     (1:40)→JR高山駅


北ア・裏銀座縦走路 扇沢~針ノ木岳・蓮華岳 行程図

  《1日目》 針ノ木雪渓を登高して針ノ木岳へ
さて今回は、山好きなら誰もが“登山の総決算”として選択するであろう・・『北アルプス・裏銀座縦走路』の完全縦走にチャレンジしてみよう。 このプランを実行しようとするならば、まず考えなければいけないのが“休暇”の事であろう。 

宿泊施設の充実した北アルプスではオンシーズンならばさして危険はないが(と言っても、山をナメてもらっては困るのだが)、これだけの“欲張った”計画を立てると、予備日を含めて10日以上必要とするのである。 “まとめての休暇はちょっと”というならば分割して攻める方法もあるが(ワテもそうした“クチ”である)、できればイッキに踏破したいものである。 それでは、山好きならば誰もが憧れる“雲上のプロムナード”を歩いてみよう。


針ノ木岳の登山口となる扇沢駅

北アルプスの観光拠点である《扇沢》が、今回の登山口となる。 一般の観光客ならば、これより『立山・黒部アルペンルート』のトロリーバスやケーブル・ロープウェイを伝っていくのであるが、こちらは駅の左脇に観光客の群れを避けるが如く目立たぬ所にある登山口をくぐる。 

眼前に立ち阻む山屏風に向かって進んでいくのだが、途中まではトロリーバスの保守道路を山道と絡めながら進むので、舗装道路が多く味気ない。 やがて、トロリーバスのトンネル入口で舗装道路と別れて山道に入っていく。 雪渓を控えている山域だけあって、スラッジ状の岩がゴロゴロと出現する歩き辛い道だ。 


宿泊向けの山小屋というより
休憩茶屋として利用される大沢小屋
※ 大沢・針ノ木小屋のウェブサイトより拝借

《鳴沢》・《赤沢》と2つの沢を渡り、しばらく歩くと《大沢小屋》だ。 いよいよ、この先より『日本三大雪渓』といわれる《針ノ木雪渓》の登高が始まる。 小屋より土手を1kmほど伝うと、雪渓の下端が見えてくる。 さぁ、アイゼンを足に装着して登高開始だ。 

この《針ノ木雪渓》はそれ程急な雪渓ではないが、《白馬大雪渓》よりも急なので軽アイゼンとピッケルは必要だろう。 だが、この長い行程でアイゼンが必要となるのはここだけなので、荷物の重さ(9日分の食料と趣味!?のカメラを担ぐと・・)を考えると悩む所であるが、安全と速やかな雪渓登高の為にも是非持参して頂きたい。 


針ノ木の大雪渓を登っていく
日本三大雪渓の一つだ

雪渓の状態は8月ならば約1.5km程残り、中央部から上部にかけてがやや急だ。 これが初夏の頃となると、最上部の砕石帯が全て雪渓となってかなり急となるので、初夏に登る場合は雪渓の状況確認が必要となる。 

途中、雪渓の中の“島”の上に出て少し急な雪渓を渡ると、雪渓帯はくびれて消えていく。
後は、急な斜面をイッキ登りしていくだけだ。 標高差で500m。 傾斜はかなり急で、所々ジグザグを切って登っていく。 高山植物の養生中で、所々にムシロが被せてある。



このムシロの有る所に雷鳥のつがいの巣があった。 だが、人間のクズというか、日本の自然を壊して喜ぶチョンのヒトモドキそのままのような輩が、自らの快楽の為にこの場所にペットを連れてきて、リードを外してペット犬を走り回らせたそうだ。 それ以来、10数年の間雷鳥のツガイは姿を消し、お花畑もムシロを敷いて養生せねばならぬ位に踏み荒らされ、一時期針ノ木から雷鳥も花も姿を消したそうである。

だが、この状況に危惧を感じた山の関係者たちが、扇沢駅とアルペンルートの富山県側の玄関口の立山駅で徹底したペット犬の連れ込み禁止の監視を行い(ペット犬連れの者は駅周辺のペット預かり所にペットを預けない限り、アルペンルートの乗り物に乗車させないなど)、15年から20年かけてやっと近年に雷鳥のツガイが姿を魅せて、お花畑も少しづつ回復してきている。


針ノ木雪渓のルートは北アの人気ルート
山小屋の建つ針ノ木峠まで
登山道が完全整備されている
※ グーグル画像を拝借

高山植物養生のムシロが被せられたこの坂をつめると、《針ノ木峠》の狭い鞍部に出る。
しかし、「この狭い鞍部によくぞまぁ」という程に、《針ノ木小屋》が“目一杯”に建っている。


峠の狭い敷地の目一杯に
建てられた針ノ木小屋
※ 針ノ木小屋のウェブサイトより

小屋でテントの手続きをして(9日間の長丁場である。 全て小屋泊だと莫大な費用が必要となる)、テントの中に荷物をデポって空身で針ノ木岳を往復してこよう。


針ノ木峠の道標と
針ノ木岳への登路
※ 針ノ木小屋のウェブサイトより

所要は、往復で1時間半位だろうか。 ルートは小屋の裏手から、これまた狭い斜面に設けられたテント場をかすめて前衛峰へイッキに登っていく。 


前衛峰から望む針ノ木岳
この日は生憎ガスって眺望が今イチ

前衛峰の上に立つと、対峙している蓮華岳 2799メートル が見えてくるだろう。 
だが、まだまだ蓮華岳の方が高い。 これより砕石帯をストレートに登っていくのだが、この蓮華岳の頂が目線位に到るまで登りつめると針ノ木岳 2821メートル の頂だ。

針ノ木岳の頂上発”絶景かな”

双耳峰を突き出す
後立山南部の盟主・鹿島槍ヶ岳
背後には剱も・・


蓮華岳から続く
裏銀座縦走路を望む
※ 2枚いずれも翌日の前衛峰付近での写真です
針ノ木岳登頂の時は
ガスで真っ白けだったし

頂上からは、幾重にも雪渓筋を従えた岩の殿堂・剱岳が真正面にそびえ立つ。 右手には、鹿島槍が双耳峰をはっきりと魅せている。 もちろん、《黒部湖》の蒼い水と白いアーチダムも望める。
そして、左側の果てには槍・穂高の勇姿も・・。 


翌朝は槍穂高と富士が
かぎろい色の空に浮かぶ絶景だった

針ノ木岳の頂上は、この項目で望む展望では間違いなくトップクラスであろう。 いつまでも・・名残惜しいが、頃よく引き上げて峠に戻ろう。 《針ノ木小屋》は、雪渓上部よりポンプアップで水を汲み上げているので水は有料だ。 貴重な水である。 決して無駄遣いはせぬように。  明日は、大きなアップダウンを数度越えるキツい行程が待っている。 早めに休憩しよう。

  ・・続きの《2日目》は、次回の『第295回 蓮華ノ大下リ』にて・・。

   ※ 元ネタは、メインサイトの『北アルプス・裏銀座縦走路』です。 宜しければどうぞ。






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