風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第289回  タウシュベツ・春

『日本百景』 春  第289回  タウシュベツ・春  〔北海道〕


古代ローマの神殿を思わせる
神秘な姿を魅せるタウシュベツ橋梁

糠平湖の水位によってその姿を魅せたり隠したりする“まぼろしの橋”タウシュベツ橋梁は、’87年3月末で廃線となった旧国鉄士幌線の橋であるが、このタウシュベツ橋梁自体は糠平ダムが建設されて湖の東岸が水没するに当たり、線路が付替えられる前の『旧線』で使用された橋である。


完成から僅か16年で「まぼろしの橋」
となる数奇な運命の橋だった

従って鉄道橋としての供用が終了したのは、ダムの建設が始まって線路の付替えが完了した’55年(昭和30年)である。 だが、新線への切替えによって線路は撤去されたものの橋の堤体は解体されずに放置された為に、ダム湖の完成によって満水時にはダム湖の湖底に沈む事となったのである。


完全に水没・氷結した
真冬のタウシュベツ橋梁


湖の渇水期は
湖底のひび割れした地面と
橋と同じく運命を共にした
樹々の姿も現れる

糠平湖は発電目的のダム湖で季節により水位が大きく変化するので、冬の終わりから春の雪解け時までは橋梁の建つ付近の湖底が露出する位に水位が下がり、湖底に水没している橋が現れる事から『まぼろしの橋』と呼ばれている。


幾度に渡って
水没と氷結を繰り返した為に
提体のコンクリートは
著しく劣化している

また、現在までの半世紀以上に渡って氷結する湖水に水没と露出を繰り返した為、凍害によるコンクリートの堤体の劣化が激しく、湖の渇水期に現れるその姿は古代ローマの石造りの遺跡を思わせる姿となっていた。 古代の神話を伝えるようなその姿が話題を呼び、周辺の景色とも調和した情景遺産として『北海道遺産』に選定されている。


古代の神話を伝えるようなその姿は
真に地球遺産だ

このタウシュベツ橋梁の他、糠平湖の完成によって付け替えられた新線のコンクリートアーチ橋もまとめて『旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群』として北海道遺産登録されているが、このタウシュベツ橋梁は他の橋にはない強いオーラを放っているのをひしひしと感じるのである。


雪面に映る影も優雅だった

それは、偏にこの橋が厳しい自然条件に晒されている事からだろうと思う。
もう、他の橋では比較にならない強いインパクト=オーラを放っているのだ。


その優雅さに魅せられて再び
天気は良く影は浮き出たが
雪面は消えていた

だが、その厳しい自然の力に、この橋も徐々に崩壊をきたし始めている。 自然の力は永い時をかけて、全てのモノを元の状態に戻していくのだ。 それはどんな堅牢な建物であろうと、永い時をかけて元の状態に均してしまうのだ。

現にタウシュベツ橋梁も第6径と第7径のアーチ部分に亀裂が入り、特に第6径のアーチは径の根元部まて亀裂が入り込み、崩壊はもはや時間の問題となっている。 それは氷結する湖水に水没する事は元より、安く早く優美な形のアーチ橋を建築を可能にさせた「現場打ち鉄筋コンクリート枠に付近で容易に採取できる割石を詰め込んで固める」工法を採用した為である。


完成の早さ・建設費用・提体の美しさ・・の引き換えに
橋の寿命が短くなる工法で建設された橋だった

これは完成までの早さや建設費用といった短期的な目的には完全に添うものの、外部のコンクリート枠が崩れたら中の詰め石が容易に崩れ出すなど、長期的な保存や橋の保全に対しての欠点も抱えていた。


橋の袂には崩れ落ちた
中の詰石が転がっていた

路線が廃止になって久しく、橋としての使命は終わってしまったので長期的な保存や橋の保全という事に対応する必要はなくなったが、情景遺産としての橋の保全の有り方が問われる事となってきたのである。
それに対して貴重な情景遺産として補修を熱望する声と、橋の抱く”定め”に従って敢えて保存措置を取らず、あるがままに任せて朽ち行く姿を遺跡として見届けようとする考え方とある。


橋の抱く”定め”に従って
あるがままの姿で・・
さりとて「地球遺産として
後世に伝えたい」という思いも

そして、現実としての橋の保全費用の捻出は、所有する地元の町の財政面から極めて厳しい状況となっていて、そのまま手付かずで見守られている状態となっている。 また北海道遺産登録も、この最もオーラを放つタウシュベツ橋梁は、その立地の悪さから保存措置の対象外とされている・・というチグハグな対応ともなっている。


立地条件の悪さから
『北海道遺産』による保存処置の対象外に

それでは、あと数年内には確実に崩壊するであろう、『まぼろしの橋』を訪ねてみよう。
このタウシュベツ橋梁は、国道273号線上に案内標識もある。 そして、その案内標識通りに湖に向かって遊歩道と展望台が設けられ、容易に遠望する事ができる。


国道脇に設けられた展望台からも
その姿を望む事はできるが

だが、このオーラ放つ橋は間近で目にしてこそ、そのオーラをより感じ取る事ができるのである。
従って、湖の対岸にある橋まで歩いていこう。 橋へ向かう糠平湖の東岸林道は観光客の運転する車による脱輪事故や接触事故が相次いだ為にゲートが設けられて施錠され、車の通行は管理者の町か森林管理署(旧営林署)の許可が必要となっている。

この事でNPO団体やユースホステルなどの宿が橋の見学者を募って、ツアーとして開催しているようである。 だから一定の時刻に、ツアー参加客を乗せた大型のバンが必ず通る様だ。 だが、この橋の本当のオーラを味わうには、やはり歩いていかねばならないと思う。


歩いていく事 それは・・
このオーラ放つ神秘な情景への敬意だと思った

タウシュベツ橋梁までは、林道の入口となる《丸山橋》より約4kmほど。 アップダウンはそれ程になく、50分~1時間で橋に着く事ができるだろう。 それでは、崩壊し終焉の時が近づくタウシュベツが放つ最後のオーラを、心ゆくまで体感しよう。


神話のような橋の袂から
カムイミンタラ(神遊びの庭)の山々を魅る


大地は生きている
今日も雪解けの清水が
せせらいでいた


この橋に魅せられて
それは他の橋にはない
強烈なオーラだった


まだ見た事のない
ローマ神殿の城門を思い浮かべてみた


ただならぬ雰囲気の雲が覆ってきて
更に神秘的な情景に





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No title * by boo
日本の橋だったんですね~😁
てっきり古代ローマの水道橋だと思っちゃいました~😆✨

No title * by 風来梨
booさん、こんばんは。

湖水に沈んだり現れたりする間に、コンクリートを古代ローマの史跡のような雰囲気に変えましたね。 橋の節々から厳しい条件を耐え抜いたオーラが漂っています。

No title * by なべ
こんばんは。神秘的な光景ですね。人工物も捨てられれば土に帰る・・的な事なのでしょうか。

No title * by 風来梨
なべさん、こんばんは。

タウシュベツには、他の橋にないオーラを放ってましたね。 人工物の鉄道橋ではあるけれど、厳しい自然環境によって魂が注入されたように感じました。

人工物の鉄道橋を魂が宿る神秘的な姿にした大自然の力に、改めて敬意を感じましたね。

コメント






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No title

日本の橋だったんですね~😁
てっきり古代ローマの水道橋だと思っちゃいました~😆✨
2017-05-21 * boo [ 編集 ]

No title

booさん、こんばんは。

湖水に沈んだり現れたりする間に、コンクリートを古代ローマの史跡のような雰囲気に変えましたね。 橋の節々から厳しい条件を耐え抜いたオーラが漂っています。
2017-05-21 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

こんばんは。神秘的な光景ですね。人工物も捨てられれば土に帰る・・的な事なのでしょうか。
2017-05-22 * なべ [ 編集 ]

No title

なべさん、こんばんは。

タウシュベツには、他の橋にないオーラを放ってましたね。 人工物の鉄道橋ではあるけれど、厳しい自然環境によって魂が注入されたように感じました。

人工物の鉄道橋を魂が宿る神秘的な姿にした大自然の力に、改めて敬意を感じましたね。
2017-05-22 * 風来梨 [ 編集 ]