風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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よも”ヤマ”話  第20話  香肌峡・風折滝

よも”ヤマ”話  第20話  香肌峡・風折滝  〔三重県〕 ’90・11


幽谷に風になびく
風折れを魅せる優雅な滝があった

  奥香肌峡 おくかはだきょう (室生赤目青山国定公園)
関西の景勝地の中でも、極めて知名度の低いこの奥香肌峡。 たいがいの人は、『日本百景』のこの項目で取り上げる事で、初めて耳にする景勝地であろうと思う。 しかし、その景観は、今までこの地を知らなかったことを悔しく思う程に美しい滝を備えた渓谷美を魅せている。 

特に宮ノ谷峡の瀑布群は、そのたどり着くまでの嶮しさも伴って、“感動”せずにはいられない素晴らしい景観を魅せてくれる。 この渓谷の景観の中心は、《風折滝》と《高滝》という落差70m以上を誇る2つの美しい滝であろう。


落差80mの神秘の滝
風折滝

・・《風折滝》は、落水が風になびく様から名づけられたものだが、紅葉をまとって風になびくその姿は繊細で優雅で、何か触れ難いものを感じるのである。 《高滝》は息も着かせぬ水量をイッキに落とすダイナミックな滝で、柔剛がよく調和している。


ダイナミックな直瀑を魅せる
落差70mの高滝

また、垂直落差が我が国第八位といわれる212mの《布引滝》をめぐるルートや、完全な沢登りスタイルで挑む《ヌタハラ谷》や《奥ノ平》といった名渓の数々。 この奥香肌峡は、訪れる度に新たなる情景、素晴らしい情景、感動的な情景を魅せてくれる。 そうなのだ。 この渓谷には、底知れぬ魅力の可能性が秘められているのである。



この渓谷の滝の虜となったワテは、前回は行けなかった風折滝にさっそくリベンジに訪れたのだった。
だが、その装備は前回と変わらずズック靴で、多少足を保護するという意識があったのか、捨てる目的の穴の開いた靴下を2重履きして・・であった。


こういう所の探勝にズック靴を履いてくる
この二人の『写真床』も問題大アリだわ

同行した風来茄子マルゥテツ二世殿下も、この時はまだ写真床界を席巻するお力をお持ちではなく、ワテの家臣としてワテのカメラを貸し与えての御同行であった。 でも、この時にカメラを貸し与えた事が、殿下が写真の御存力を如何なく発揮されて、後に殿下を写真床界の偉大な支配者に至らしめる事は知る由もなかった。 ・・で、下剋上が起こって殿下の軍門に下って生涯の臣下を誓わざるを得なかったワテは、先を見通す力がなかったのでございますな・・。

まぁ、ヨタ話は置いといて、この時は他に呼んではならないもう一人の御仁が同行していた。
それは、若き日の殿下をして『コンバット兄ちゃん』と言わしめた我が仕事の先輩氏であった。


こういう所とは無縁な御仁が
今回同行したのである

この時のワテは運良く宅建資格試験をパスしたので、それを使うべく不動産屋に務めていたのだが、不動産屋っていうのは安定しない「水曜休みの”水商売”」やら”破落戸(ごろつき)が生業とする周旋屋”と言われ、どちらかというとやくざ屋さんのイメージを帯びていたのであった。


流れるのを嫌う水商売な893な連中が
水の流れが織りなす景勝地に
やってくるとはこれ如何に

それゆえに入ってくる社員もロクな経歴の持ち主はおらず、大学中退のワテなんかまだエリート中のエリートで、元鳶のヤンキーやら、元暴走族やら、元『893』屋さん、そして現役の『893』屋さんなどが渦巻いていた。

たぶん・・だが、今も従業員が安定せず、2~3ヶ月先には店の従業員の顔ぶれが違っていたり、1年前に消えた顔ぶれが復活していたりするようである。 まぁ、人材派遣業の派遣元と同じく”This isピンハネ業”なのであるから。

・・で、この殿下をして『コンバット兄ちゃん』と言わしめたワテの先輩も、生まれ素性が高知の片田舎というだけで不明で、自衛隊から『893』そのままの大阪市内中央部の不動産屋を転々としてきた御仁であった。

で・・、この兄ちゃんは無類の銃刀類好きで、エァーボンベをかついでサバイバルゲームに使うマシンガンを所持し、たぶん所持がバレたら警察にしょっ引かれる程の鋭利なアーミーナイフを携帯していたしィ。


こういう所にアーミーナイフ
持って来ちゃいけないでしょ

そんな御仁が何で付いてきたかというと、新しく買ったサバゲーのマシンガンをぶっ放したいらしく、渓谷内で純粋に滝を愉しむワテ達を狙撃する為だったのである。 普通なら断るべきなのだが、半『893』屋さんの不動産屋では無礙に断る事も適わず、この御仁の変な方向への趣味の発散に付き合わされる事となってしまったのである。

でも、自衛隊上がりでムキムキの体力マンだったこの兄ちゃんは、登山道は元より川瀬を飛び越え、イバラを突破し、遊歩道のある左岸(川奥に向かって進む場合は右側となる)より対岸に渡って岩を乗り越えたり・・と、自衛隊の演習訓練のようなルートを突破して、なおかつ正規ルート(といっても、所々で桟橋は崩落し、河原をいくような所であったが)を進むワテ達より先回りして前方から狙撃してくる始末である。


コンバット兄ちゃんは片手にマシンガンを持ち
エァーボンベを背負ってこういう沢を
野生動物の様に飛び渡っていった

しかし・・この兄ちゃん・・、片手にサバゲーのマシンガンを持ち、背中に消火器大の大きさのエァーボンベを2連装担いでいたのに、バケモンだったわ・・実際。 唯一この兄ちゃんがワテ達に役立った事と言えば、沢遡行や渓流登りのルートファインディングが的確だったので、水越谷から先の風折滝までの沢漕ぎルートでは、その後を付いていけば入渓するには”ふざけ過ぎ”な格好のズック靴でも難なく遡行する事ができたのである。


「毒にも薬になる」とはこの事で
このコンバット兄ちゃんのお陰で
ズック靴でもこんな沢遡行ができたよ

そして、最後の滝瀬の直昇りの所でも、兄ちゃんの思いやりなのか枝に結んだ細引きのヒモを垂らしてくれていたので、それを手にすればズック靴でも登れたのである。


ズック靴では滑って上れないこの滝瀬も
コンバット兄ちゃんの温情で突破

この滝瀬を這い上がると、秋色に染められた幽谷にその名の通りに風に落水がなびく”風折れ”を魅せる風折滝が姿を現したのである。 その優雅な姿はリベンジの本願成就と相俟って、神秘的な姿として目に焼き付いている。 我がベスト5の滝の一つに、『百名滝』でもないこの滝を入れているのだから。 


この紅葉を纏う神秘の滝は
我が滝の”ベスト5”に入った

ちなみにそのベスト5は、知床の女滝インクラノ滝茶釜ノ滝九州の祇園滝とこの風折滝であるが、全て半分命懸けの遡行ルートを通らねば魅る事のできない滝なのであるから。 まぁ祇園滝は、正規ルート(階段の通路)を見落としてオチャメったからなのであるが。

半分この兄ちゃんの手助けがあって、沢遡行のイロハも知らないワテと殿下が念願の風折滝にズック靴というナメたいでたちで踏破する事が適ったのである。


今まで魅せられた滝の中で
最も美しい放物線を魅せる滝

その兄ちゃんは、滝までの道すがらでエァ―マシンガンを打ち過ぎたのか、思ったほどボンベのエァーが持たなかったのか不発となり、滝を囲む岩肌の登攀(フリークライミングの事)に興じていた。 
それもエァーボンベをしょって、マシンガンを背に括りつけて・・である。 つくづく体力キチガイだと思うよ。

まぁ、行くまでには役に立ったが、着いてからは狙撃されるだけ・・を想定していたので、これはこれでラッキーと、滝写真撮影に興じる。 それでは、その時の写真をごろうじろ。


風がそよぐ前はストレートに


右手から風が吹くと
白布が左になびき


左から風が吹くと
右に白布が折れる


真に風に折れる神秘の滝
風折滝


滝前は神秘の滝をベールに秘めるべく
岩で難く護られていた


滝下の妙に魅せられて


神秘ノ滝の撮影に興じていると
そろそろに山が暮れ始めてきた


名残惜しいが
そろそろ引き返すとしよう

帰りは、このコンバット兄ちゃんは独自のサバイバルルートを進んで、写真を撮りながらゆくワテ達より早く戻り着いて、車に積んであったもう一丁の単発のピストルを手に待ち伏せをしていたようで、戻り着いた途端に正面からハチの巣にされたよ。


帰りに高滝にも立ち寄ったのが
蜂ノ巣にされる原因だったか

その後・・、この兄ちゃんと共に不動産屋の新しい経営者と喧嘩して新しく不動産屋を開業したものの、ワテは安定しない収入と休暇に嫌気が差して派遣屋経由の『10ヶ月働いては2ヶ月山旅放浪』に・・、この兄ちゃんは胡散臭い中国人相手の不動産屋から元の御職業(89383)に戻ったようである。














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No title * by 柚子の大馬鹿
昔物語・おもろーーい!!

小説書けるよ!!
素晴らしい文筆お持ちなのに、勿体無ーーい!!

No title * by 風来梨
柚子の大馬鹿さん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

内容は自分でも面白いかな・・って思うんですけど、この先の『オチャメ』の数々が放送コードや出版コードに引っ掛かる恐れがあるので自重しています。(笑)

No title * by リカさん
いい滝ですね。インクラの滝は私も好きです。

No title * by 風来梨
リカさんさん、こんばんは。

インクラノ滝もそうですが、たどり着くのが困難な滝は、たどり着いた時の感動や思い入れも大きくなりますね。

コメント






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No title

昔物語・おもろーーい!!

小説書けるよ!!
素晴らしい文筆お持ちなのに、勿体無ーーい!!
2017-04-23 * 柚子の大馬鹿 [ 編集 ]

No title

柚子の大馬鹿さん、こんにちは。
見て頂いて有難うございます。

内容は自分でも面白いかな・・って思うんですけど、この先の『オチャメ』の数々が放送コードや出版コードに引っ掛かる恐れがあるので自重しています。(笑)
2017-04-23 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

いい滝ですね。インクラの滝は私も好きです。
2017-04-23 * リカさん [ 編集 ]

No title

リカさんさん、こんばんは。

インクラノ滝もそうですが、たどり着くのが困難な滝は、たどり着いた時の感動や思い入れも大きくなりますね。
2017-04-24 * 風来梨 [ 編集 ]