2017-01-15 (Sun)✎
よも”ヤマ”話 第9話 御在所岳 その1 〔三重県・滋賀県〕 ’85・3
一般の人が『御在所岳』をイメージするとしたなら、「ロープウェイで行けるお手軽な山」というのが大半であろう。 更に質問に「御在所岳のマニアックな所は?」というのを加えると、ほぼ全てが「《藤内壁》などのロッククライミング」を挙げるだろう。 そう、登山の観点で言えば、「ロープウェイを使ってお手軽ハイキング」の認識を持たれている山だ。
だが、そんな御在所岳でも、サバイバル要素を大いに含んだ登山ルートがあるのだ。
それはロープウェイが通じて観光地化された三重県側ではなく、裏側の滋賀県側の源流沢を遡行していくルートだ。
これは来年受験を控えてW・V部を引退する前の現役最後の定期山行で登ったのだが、正直言うと高校生の部活のレベルを完全に超える難度のルートである。 それは腰までつかる沢の渡渉や、渡し籠跡のロープを掴んでの渡渉、滝そばの濡れた岩場の登降、イバラが茂るトゲトゲブッシュの突破など、かなり『エキスパート』なルート内容だったのである。
それに加えて、山行をした時期が残雪も所々に残る3月下旬。 恐らく、今の学校なら絶対に許可が下りないコース選定なのである。 それを比良連山縦走山行で”やる気のない”事が白日の下にさらされた部顧問の先公は受験対策を理由に早々に引率を拒否し、兵隊だけでこの山行が催されたのである。
今回の山行の行程図
行程表
《1日目》 JR近江八幡駅より鉄道(0:15)→八日市駅よりタクシー利用(0:35)→紅葉尾
《1日目》 JR近江八幡駅より鉄道(0:15)→八日市駅よりタクシー利用(0:35)→紅葉尾
(2:00)→神崎川徒渉点(2:10)→ヒロ沢出合
《2日目》 ヒロ沢出合(1:40)→鈴鹿国境稜線・ハト峰峠(1:00)→水晶岳(2:30)→国見岳
《2日目》 ヒロ沢出合(1:40)→鈴鹿国境稜線・ハト峰峠(1:00)→水晶岳(2:30)→国見岳
(1:00)→御在所岳(0:20)→御在所キャンプ場
《3日目》 御在所キャンプ場(2:00)→御在所岳登山口(0:45)→湯の山温泉駅より鉄道
《3日目》 御在所キャンプ場(2:00)→御在所岳登山口(0:45)→湯の山温泉駅より鉄道
(0:25)→四日市駅
近江八幡から近江ガチャコンならぬ近江鉄道に乗って八日市駅へ出て、駅で客待ちしていたタクシー2台に8人(今回は沢渡渉があるので、女子部員は参加せず)が分乗する。
エトランゼであるワテ達がタクシーの運ちゃんに上手く行先はを伝えきれない事が想定されたので、昭文社の山岳地図を出して神崎川の登山口を指さして「ココに行って下さい」と申し出る。
幸いタクシーの運ちゃんは、ザックを背負ったワテらを見て理解したようでスムーズに登山口へ向かう事ができた。
さて、タクシーで行き着いた登山口は、永源寺ダムのさらに奥の杠葉尾(ゆずりお)という茅葺屋根の民家のある山里で、普通のハイキングならここら辺で弁当を広げて、食い終わったなら帰路に着くようなロケーションの所だった。
ここから清流の神崎川の蛇行する流れに沿って関西電力の監視道を歩いていく。 砂防ダムの突堤を数回超えると、沢の右手の尾根を登っていくようになる。 一度尾根のピークを踏んで、また急下降していく。 どうやら下の沢は函状を成しているようで、これを大きく高巻いているみたいである。
この尾根のピークから下りきると、自由に動く2本のロープが垂れ下がっている沢に出る。
このロープは朽ちた滑車に連なっていて、この状況からはかつては籠渡しでこの沢を渡っていたのが推察できる。 だが現在は何もなく、このロープを伝いながら沢の浅瀬や岩を飛んでいかねばならないのである。 深さは膝より少し上位で、沢を渡るだけならばロープは要らない・・と思われるだろうが、渡った対岸の土手がかなり高くて、これを這い上がるにはこのロープが必要となるのだ。
こんな感じの所だった
※ グーグル画像より拝借
だが、沢の途中でロープを放してしまったなら、手の届かぬ頭上にロープが張りつめてしまって二度とつかめないようになる。 こうなると、元に戻って“渡りなおし”となるのだ。 従って、このロープを掴むのが、この地点の渡渉の必須条件となるのである。 もちろんこのような訳で、この沢は言うまでもなく“定員1名”である。 まぁ、今はそんな滑車やロープはとっくに撤去されて、対岸の土手も容易に登れるように段を切っているであろうが・・。
これを越えると、今度は猛烈なトゲイバラが行く手を遮るようになる。 イバラのトゲによって手足は元より体全体が痛々しい“ミミズ腫れ”となったよ。 もしかしたら、沢の密林に潜む吸血鬼・ヤマヒルに食われたのかもしれないし。 だがここは、我慢して乗り越えるしか手がないのである。
これを小1時間耐え凌ぐと、イバラのジャングルから飛び出して湿地帯を歩くようになる。
やがて見通しが良くなり、大きな川べりに出てくる。 川を前にして左右を見渡しても、道や踏跡は見当たらない。
これを小1時間耐え凌ぐと、イバラのジャングルから飛び出して湿地帯を歩くようになる。
やがて見通しが良くなり、大きな川べりに出てくる。 川を前にして左右を見渡しても、道や踏跡は見当たらない。
浅く見えても結構深い
腰まで浸かる深みもあったよ
※ ウィキペディア画像を拝借
どうやら、この川を渡るみたいだ。 川幅30m位か。 悠然と流れ、よどみさえあるこの大河を渡らねばならない。 そして、この中央部の深みは胸下までありそうだ。 水の少ない渇水期でも腰下まであるのだ。 これでは、リュックを背負ったままでは渡れそうにないのである。
仕方なしにリュックを肩に乗せて、“俵担ぎ”の要領で渡っていく。 もちろん、転倒は御法度だ。
そうなれぱ食料からテントから携帯コンロから、全てが水浸しとなって使えなくなってしまうからである。 難所の中では、ここがクライマックスとなろう。 これを越えると再び深いジャングルの中にもぐり込み、下はぬかるみ、上は猛烈なイバラのブッシュ漕ぎ・・という難関にぶつかる。
そうなれぱ食料からテントから携帯コンロから、全てが水浸しとなって使えなくなってしまうからである。 難所の中では、ここがクライマックスとなろう。 これを越えると再び深いジャングルの中にもぐり込み、下はぬかるみ、上は猛烈なイバラのブッシュ漕ぎ・・という難関にぶつかる。
天狗滝の通過は
高巻き道が完備だった
※ グーグル画像より拝借
進んでいくと今度は足場がぬかるみから落葉に埋もれたように変わり、これがトレースまでも埋めてルートを判り辛くさせている。 一度緩やかに下ると、イバラのブッシュからクマザサのヤブ漕ぎとなり、これを緩やかに登りつめると、進路を妨害し続けたあの《ヒロ沢》が優しい小沢となって流れている。
どうやらここは、《ヒロ沢》の源頭らしい。
ここは決してキャンプ指定地でもなければ幕営適地でもない。 しかし、進んでいった所で、ここよりもキャンプ適地にめぐりあえる保証もない。 それに本音では、疲れてもう歩きたくなくなっていたのである。 幸い沢の源頭という事で、水だけは豊富にあるこの地で今日はテントを設営した。
ここは決してキャンプ指定地でもなければ幕営適地でもない。 しかし、進んでいった所で、ここよりもキャンプ適地にめぐりあえる保証もない。 それに本音では、疲れてもう歩きたくなくなっていたのである。 幸い沢の源頭という事で、水だけは豊富にあるこの地で今日はテントを設営した。
明日は稜線に上がって、鈴鹿山地の盟主・御在所岳を目指すが、ワテを含めたワンゲロのこの連中は、このコースが沢登りのルートだと理解してルート選定したのか甚だ疑問である。 もしかしたら勢いだけで、”ちょっとハードなルート”を適当に選んでしまったのかな? ・・恐らく、その線が濃いだろう。
※ 稜線上では更に『オチャメ』満開! その内容は次回の『その2』にて
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