2016-10-16 (Sun)✎
路線の思い出 第176回 黒部渓谷鉄道・欅平駅 〔富山県〕
渓谷をゆく”山の鉄道”だが
運営は山の民の心を持たない都会の企業・関電だ
《路線データ》
営業区間と営業キロ 運行本数(’16)
宇奈月~欅平 20.1km 宇奈月~欅平 18往復(土・休日1往復増)
欅平駅(けやきだいらえき)は、富山県黒部市にある黒部峡谷鉄道の駅で同路線の終着駅である。
標高599m。 一般旅客の営業はここが終点であるが、「関西電力黒部専用鉄道」として軌道は先へ続いている。
トンネルを500mほど進んでスイッチバックした所にはこの駅の構内扱いの通称「欅平下部駅(竪坑下部駅)」がある。 高低差約200mの竪坑エレベーター(貨車や客車も1両輸送可能)により、上部軌道の欅平上部駅と結び「上部軌道」の小型トロッコを介して黒部川第四発電所に至る。
この関西電力黒部専用鉄道は原則として関電社員等関係者以外は乗車できないが、関西電力が主催し富山県が協賛する「黒部ルート見学会」に応募し、当選すれば乗車できる。
黒部川は電源開発の川だ
欅平にある黒部川第三発電所
※ ウィキペディア画像を拝借
駅ホームは非常に長く、2本の列車が同時に停車できる。 同時にホームに停車したそれぞれの列車が同時に機関車の付け替えをできる配線となっている。 駅舎はホームの北端にあり、階段を上がったところに改札口がある。 駅舎の1階には出札口や売店があり、2階にはレストランがある。
屋上は展望台となっているが、近くの奥鐘橋の方が展望は良い。 トイレは駅舎を外に出た所とホームの途中に設置されている。
黒部国境鉄道は登山を趣味とする者が利用する場合は、大概が黒部渓谷の探勝を終えた帰路に欅平からの乗車となるが、黒部渓谷の観光や宇奈月温泉とセットのツアー旅行などの場合、その全てが宇奈月からの往復となる。
そしてその客層は、姿や格好を見ずとも乗車する車両を見るだけで判別できるのだ。
まぁ、足元を見るだけでも、履いてる靴で容易に判別できるのであるが。
それは、運行されるトロッコ客車が、露骨に料金による『格差』がつけられているのである。
それは乗った後に、『高級客車』に乗って手を振る観光客に殺意(笑)を抱くほどの『格差』がある為だ。
乗車した後にこの客車から手を振る観光客に
殺意さえ抱く『最高級車両』のリラックス車両
※ グーグル画像より拝借
そしてその『格差』は、黒部渓谷側から乗るカテゴリーに属する登山を趣味とするワテなどは、大抵『最低クラス』の吹きっさらしの車両に乗車となる。 それはワテが金にコスい事もあるが、囲いのある『高級車両』以上は欅平からの黒部渓谷ツアー観光客に完全に押さえられて空席がないからだ。
囲いつきの『特別車両』
死ぬ思いをしたくなければ
このクラス以上の車両に
乗車する事をオススメします
※ 関電・黒部渓谷鉄道ウェブより
でも、それならばいい方で、紅葉のシーズン時ならばツアー客が普通車両まで侵食し、欅平からの空席が根こそぎ食われる心配もあるのである。 となると黒部渓谷鉄道の乗車規約では『立席不可』なので、登山者は割を食って乗車する事ができずに、欅平から帰る事が不能となって一日”沈殿”ってオチに追い込まれる事さえあるのだ。
黒部渓谷の探勝道は、黒部ダム建設の為に敷設された旧《日電歩道》を転用した道で、完全に整備されてはいるが黒部ダムより延長16.6kmと長く、また渓谷沿いの岩盤をヘツったヘツリ道で、常時渓谷との高低差が200mある「転落したら確実に死亡モノ」の中級者以上向けの探勝路である。
十字峡
黒部渓谷の代表的景観だ
折尾沢の無名滝
また、距離が長い事と、黒部ダム側の扇沢からの始発便も観光路線故に遅く、余程の健脚が脇目も振らずに歩かない限り、どう足掻いても1泊2日以上の日程が必要となるのである。 それで、欅平で足止めを喰らうとなると、公衆電話で『欠勤願』をするハメとなるのだ。 何故『公衆電話』かというと、こんな山奥の深くで携帯電話の電波は届かないしィ。
まぁ、そんなヨタ話は置いといて、乗車定員制で立席不可の黒部渓谷鉄道ならば、シーズン中にこの黒部渓谷探勝に訪れると、探勝路の最終下降地点の《欅平上部》から欅平までの急坂は、「数席空いてるだけ」の一般車両座席を争ってのタイムレースとなるのである。
この《欅平上部》より
残り座席取り合いのタイムレースとなる
今までは黒部渓谷を探勝した時の全てで「残り数席」の一席をゲットできていたが、今のワテなら「取りこぼし」て”沈殿”に追い込まれてしまうかもしんないね。 下りるの、以前に増して遅くなったし・・。
吹きっさらしの『一般車両』
登山者御用達の車両ですが
凍える程に寒いです
※ 関電・黒部渓谷鉄道ウェブより
・・で、必死の思いで《欅平上部》からの標高差250mを駆け下りて、汗ダクダクとなった身なりで、暑いからと上着を脱いで吹きっさらしの『普通車両』に乗り込むと、『高級車両』に乗って手を振りかけるツアー観光客に殺意(笑)を抱くハメとなるのである。
吹きっさらしの『一般車両』は
トンネルに入る度に凍えて死ぬ思いをするよ
※ グーグル画像より拝借
なぜに『高級車両』の手を振るツアー観光客に殺意(笑)を抱くか・・というと、トンネルに入ると尋常でない位に寒いのである。 気温は恐らく2℃から3℃位になり、そして低速とは言え走行する吹きっさらし車両での体感温度は恐らく『氷点下』を下回っているだろう。 そして先程の《欅平上部》からの坂道下りでダッシュをかけた時にかいた汗がしっかりと気化熱作用を発揮し、下手すると凍え死ぬ事が脳裏に浮かぶ程の寒さに晒される訳である。
寒い!サーピス悪い!
いわく付きの黒部渓谷鉄道
その寒さに鬼の形相でジャンバーを取り出しても寒さは収まる事はなく、ジャンバーに着いた汗の湿り気で『冷や汗と縦震え』の症状が起こる傍から見ても”ヤハい”状況となる。 なぜに”ヤハい”かというと、『冷や汗と縦震え』はここで眠くなれば『サヨナラ』という『疲労凍死』に向かうべくの症状なのである。
となると・・手を振るツアー観光客に殺意(笑)を抱く気持ちが解るだろう。 あの暖かい所からのほほんと手を振る奴らに、寒さに凍え死にかけた貧民の抱く思いが・・。 そして、この格差を仕向けた関西電力の高飛車運営にも怒りの矛先が向けられる。 「関電もやってくれるぜ・・全く!」
そして、登山者の荷物もワテのようなテント付の大荷物なら『荷物車両』行きとなるが、その扱いの荒い事・・。 宇奈月に着いて『荷物車両』から取り出す時に、ワテのザックを放り投げてやがる。
こんなの目にしては「二度と乗りたくない」と思えるのだが、黒部探勝するならこれに乗るしか帰る方法はないのだ。 まぁ、日程に余裕があれば剱沢を登って室堂に抜ける・・って手もあるが・・ね。
乗る度に「もう二度と乗りたくない」
と思うが乗ってしまうんだよね~
まぁ、好きな登山の事なら、不愉快な扱いを受けても忘れる事や許容する事ができるので、恐らくまたいつかの秋の日に、この車両で凍え死ぬ思いをしてるんだろうね。
※ 欅平から上部の『黒部渓谷』探勝に興味のある方は、コチラをどうぞ。
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