2011-05-01 (Sun)✎
オホーツク縦貫鉄道の夢 第12回 根北線で知床へ・・
野付半島や尾岱沼などの景勝地をめぐったなら、再び根室標津に戻る。 これより根北線に乗って、知床めぐりをしてみよう。 さて、いよいよ“架空旅行”の本領発揮ができる区間を旅する事となる。
それは、今回の根北線区間のほとんどが未成線区間だからである。 こうなれば、もう空想や妄想!?で頭を一杯にする他に、旅の継続が成し得ないからである。 ちなみに、この根北線区間についての歴史を少し記しておこう。
北海道遺産となった
根北線・通らずの橋
昭和32年に、ようやく斜里~越川 間12.8kmが先行開業した。
だが、北海道でも有数の過疎・ゴーストタウン地帯を通る事もあり、戦争が終わり路線建設の目的である対ソビエト(ロシア)戦略が無に帰した事などから、運ぶべき乗客・貨物輸送もなく開業数年で貨物輸送は廃止、1日2往復の超閑散路線となる。
その後も輸送業績は振るわず、昭和43年度より営業係数のワースト1に名を連ね、ついに“掛け声倒れ”で有名な『赤字ローカル線83線の自動車輸送への切り替え勧告』の一環として昭和45年11月末で廃止された路線である。
橋のそばにあった
根北線の在りし時を記す石碑
先行開業した区間が赤字ワースト1に名を連ねて廃止されるような事では根室管内への延伸など叶う訳もなく、過去に資材不足の折に建設された『竹筋』コンクリートの陸橋の残骸が「ここに鉄道建設の夢があったんだなぁ」と、かつてを偲ばせるだけである。
ちなみに、この未成線区間にある『竹筋』コンクリートの陸橋は、“通らずの橋”として文化庁より文化遺跡指定を受けているとの事である。 無くなった今に重宝とされるモノの儚さ、いと哀れ・・の感が拭えない。
根室標津から虫類までの根北線予想沿線図
いる訳も無い乗換客の接続待ちをして、標津線列車到着の10分後発車する。 もし、いたとしても乗り“鉄”位だろうけど。
『鮭の遡上』で有名な標津川までは標津“本線”と平行して、川を渡ると“本線”と離れて真っ直ぐに進路を取る。 オホーツクにぼんやりと浮かぶ国後島を見ながら、ほぼ直進に進んでいく。
流氷が浮かぶ朝ならば、絶好の撮影ポイントとなったであろう・・と思う所だ。
もし、この地に鉄道があったなら
このような情景が見られたかもしれない
ポツポツと国道沿いに点在する民家が少し増えたかな・・と思しき所に、板敷きホームが一枚だけの北海道特有の駅が見える。 《伊茶仁仮乗降場》だ。 路線計画ではこの付近に駅の建設予定はないが、タダでさえ“ジリ貧”が予想される線では、集落ごとに駅を設けないと更に“ジリ貧”となるだろうから、勝手に仮乗降場を設けた。 でも利用客は、ほとんどいないだろうけど。
ここは、羅臼に向かう国道335号線と、根北峠を経て網走へ向かう国道244号線とが分岐する交通の要衝だ。 この国道244号線は、根北線の先行開業区間の廃止の条件として整備された道路である。
ここは、羅臼に向かう国道335号線と、根北峠を経て網走へ向かう国道244号線とが分岐する交通の要衝だ。 この国道244号線は、根北線の先行開業区間の廃止の条件として整備された道路である。
虫類駅から知床・羅臼口駅までの
根北線予想沿線図
物置のような待合室が板敷きに乗っかる《伊茶仁仮乗降場》に義務の如く停車した気動車は、国道336号線に沿って更に北へ直進する。 これは、沿線人口がゴースト地帯の《根北峠》へ直接向かうよりは、少しでも沿岸沿いの集落で利用客を拾おう・・との意図であろうと思う。
国道336号線は、北海道を訪れる旅人にダントツの人気がある『知床』へ向かう道路だ。
この先には《相泊》や《セセキ温泉》などの海を望みながらの浜の露天風呂や、ライダーの聖地・《知床峠》、羅臼岳や冒険屋の憧れやまぬ地・《知床岬》などが控えている。 シーズンならば、車やバイクなどがビュンビュンとかっ飛ばしていくのを目にする事だろう。
沿線には、それら観光客目当ての海産物販売のドライブインが数多く点在する。
ドライブインの多くは、遠めから少しでも目立つように鮭やホタテなどのデカいモニュメントを掲げた派手な建物が多く、ともすればモーテル街の建物のようであまり雰囲気的には宜しくない。
中には、西洋の古城のように複数の塔を突き出して、屋根を金色に塗りくっているのもあった。
間もなく《虫類》。 ここも海沿いの集落が点在するだけの小さな波戸場だ。
間もなく《虫類》。 ここも海沿いの集落が点在するだけの小さな波戸場だ。
国道はこの小さな集落の周りを迂回するように通っているので、途端に“海辺の小さな波戸場”の沈んだ雰囲気へと変わる。 ローカル線のイメージそのままの沿線風景だ。
《虫類》駅はやはり正規の駅という事で、無人駅ながらも簡易な駅舎がある(・・というか、あって欲しい)。 差し詰め、名寄本線や渚滑線にあったカプセル駅が妥当だろう。
まぁ、これらの駅舎も路線廃止と共にその役目を終えて、個人の居宅や物置などになっているのだが・・。
虫類駅はこんな感じの駅舎がいいかな
旧興浜北線・斜内駅舎
簡易な造りのカプセル駅とはいえども、かつての無人駅には優しさがあった。
しっかりと戸締りできる構造と、中央の土間に必ず設置されていた煙突式のストーブ、中には石炭をくべる暖炉の所もあった。 どんなに閑散路線であろうとも、お客さんが寒い思いをしないような配慮があった。
しっかりと戸締りできる構造と、中央の土間に必ず設置されていた煙突式のストーブ、中には石炭をくべる暖炉の所もあった。 どんなに閑散路線であろうとも、お客さんが寒い思いをしないような配慮があった。
《虫類》を出ると、相変わらずドライブインだけが目立つ国道に沿って進んでいく。
やがて《浜古多糠》という小集落が見えてくる。 沿線人口的にはどこも大差ないのだが、ある思惑を持ってこの《浜古多糠駅》を未成線区間の最大の駅としたい。
観光地・知床を控えた“沿線最大の駅”は
やはりコレ位の駅舎でなくっちゃ・・
旧名寄本線・中興部駅舎
やはりコレ位の駅舎でなくっちゃ・・
旧名寄本線・中興部駅舎
その思惑とは、「北海道で最も人気のある観光地・知床の玄関口である」という事だ。
そして駅名も、集落名の《浜古多糠》ではなく、《知床・羅臼口》としたいな・・と。
そして、委託の切符販売でもあれば“なお良し”である。 当然、羅臼行の路線バスに全て接続のダイヤとしよう。 標津~羅臼の路線バスも4往復なのでちょうどいい。 この駅は、『最後の楽園・知床』へ夢を馳せる旅人の拠点としたい。
それでは、ちょっと“寄り道”して、知床や羅臼に立ち寄ってみよう。 もちろん、今までの如くタイムスケジュールは完全無視で・・である。 これは、架空旅行でのみ成し得る“特権”である(都合のいい“特権”だな)。
この《知床・羅臼口駅》からバスに乗り(実際は自動車で)約45分で、知床半島の裏玄関口である《羅臼町》に着く。 《羅臼町》は、知床半島最大の港町である。 また、火山である羅臼岳の麓に位置するので、内湯の《羅臼温泉》を始め、浜の露天風呂である《セセキ温泉》や《相泊温泉》が湧くちょっとした“湯の里”でもある。
それでは、ちょっと“寄り道”して、知床や羅臼に立ち寄ってみよう。 もちろん、今までの如くタイムスケジュールは完全無視で・・である。 これは、架空旅行でのみ成し得る“特権”である(都合のいい“特権”だな)。
この《知床・羅臼口駅》からバスに乗り(実際は自動車で)約45分で、知床半島の裏玄関口である《羅臼町》に着く。 《羅臼町》は、知床半島最大の港町である。 また、火山である羅臼岳の麓に位置するので、内湯の《羅臼温泉》を始め、浜の露天風呂である《セセキ温泉》や《相泊温泉》が湧くちょっとした“湯の里”でもある。
また、ライダーや車乗りの聖地である《知床峠》への拠点ともなる。 そして、実話を元に作家・武田泰淳が小説化した“人肉喰い”の悲話が伝えられる《光苔洞窟》も見所の一つだろう。
私自身のこの実話小説に対する感想だが、小説化した話より実際にこのタブーを犯した人間のドキュメントの方が心に響くものがあった。
このミステリアスな光が
実話伝説のイメージと重なったのだろうか
光苔洞窟にて
夕暮れに染まる知床の海
この“事件”は、岬近くで遭難した漁船で生き残った船長と船員が岬の海辺に流れ着き、吹雪く海辺の番屋を伝って羅臼の港へ帰還した時に起こった事なのだが、船長氏は寒さと飢えに耐えかねて、力尽きた船員の“人肉を喰う”というタブーを犯してしまった。
生きて羅臼へ帰りついた安堵も束の間、“人肉喰らい”のタブーが明るみにでて裁判沙汰となった・・との事である。 判決は“死体損壊”という罪に・・。 だが、罪状云々なのではない。 罪よりもはるかに重い“人としてのタブーを犯した”という『十字架』を一生背負い続けて天寿をまっとうされたこの船長氏の苦悩を思う時、その御霊に合掌を禁じえない。
そして、冒険心旺盛な旅人の聖地・知床岬への“夢の出発点”となる所でもある。
鉄道趣味からは完全に外れるが、次回より3回に渡って“知床岬を自らの足で踏む”という壮大なプロジェクトに冒険心と憧れと夢を馳せたいと思う。 半端な心では成し得ない、壮大な“夢”の追記をごろうじろ。
詳細はメインサイトより、
架空旅行『オホーツク縦貫鉄道の夢・根北線編』を御覧下さい。
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No title * by 風来梨
オータ様、こんばんは。
この根北線は、ほとんど未成線なので、空想と妄想と自身の想いなどを具現かしようかな・・と。
でも、本当に知床へ向かう路線があれば楽しいでしょうね。
この根北線は、ほとんど未成線なので、空想と妄想と自身の想いなどを具現かしようかな・・と。
でも、本当に知床へ向かう路線があれば楽しいでしょうね。
根北線で知床ですか! 果たせなかった幻の旅行ですね。
時刻表に斜里と根室標津を結ぶバスが掲載されていて「平田宅」というバス停の時刻が出ていました。個人の家の前がバス停とはスゴいと子供心に思ったものです。