2016-08-07 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第251回 大雪・十勝縦走路 〔北海道〕
花が咲き乱れる池塘を前景に
王冠のような山容を魅せるトムラウシ
トムラウシ山 トムラウシやま (大雪山国立公園)
大雪山の山の中で最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。
この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。
大雪山の山の中で最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。
この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。
雪と岩と花の楽園
トムラウシ
まずは、トムラウシ山腹にある『トムラウシ・日本庭園』である。 池塘と、花と、雪渓がおりなす自然の山水画。 大自然が、いったいどのようにしてこの景観を創造しえたのか。 また、トムラウシ山の西側には、『五色ヶ原』に優るとも劣らない“花の世界”・『黄金ヶ原』がある。 『黄金ヶ原』は、ミヤマキンバイやキンポウゲなど黄金色の花が多く咲き乱れ、その名の通り花が大地を黄金色に輝かすのである。
そして、この山は“眺める”のもいいだろう。
《化雲平》から眺めるトムラウシ山は、また格別。 すぐ間近に、トムラウシ山がどっしりと構えた姿を魅せて壮観だ。 またこの平原は、ホソバウルップソウやエゾノハクサンイチゲの大群落地としても有名で、特にホソバウルップソウが満開の時は最高。 山の緑と紫の花が美しく、この平原を飾るのである。
トムラウシ~十勝連峰縦走ルート行程図
行程表 駐車場・山小屋・トイレ情報
《1日目》 JR旭川駅よりバス(1:05)→天人峡温泉(3:20)→第一公園(2:30)→小化雲岳
(1:00)→化雲岳(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
(1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(0:25)→トムラウシ・南沼
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
(1:30)→コスマヌプリ (1:00)→双子池
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋(0:30)→美瑛岳分岐
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋(0:30)→美瑛岳分岐
(2:30)→十勝岳避難小屋
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉より車
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉より車
(0:35)→JR上富良野駅
※ 前回の『第250回 トムラウシ』からの続き
《3日目》 黄金ヶ原を経て双子池へ
・・大雪・十勝連峰縦走路を十勝連峰へ向けて歩いていこう。 この縦走路は随分と長いので2日行程となる。 今日は、スッキリとした美しい三角錐を魅せる、オプタテシケ山の麓にあるキャンプ地・《双子池》までの行程となる。 《双子池》までの歩行距離は12kmとかなりの長丁場なので、早朝出発を心掛けたい。
・・大雪・十勝連峰縦走路を十勝連峰へ向けて歩いていこう。 この縦走路は随分と長いので2日行程となる。 今日は、スッキリとした美しい三角錐を魅せる、オプタテシケ山の麓にあるキャンプ地・《双子池》までの行程となる。 《双子池》までの歩行距離は12kmとかなりの長丁場なので、早朝出発を心掛けたい。
トムラウシの朝
朝霧霞むトムラウシ山
トムラウシの夜明け
トムラウシの頂で迎える御来光
朝、晴れていたなら、オブタテシケ山がスラリと美しき三角錐を示しているのが望まれる。
そして、オプタテシケ山との間にある平原が、白い光を放っているのも目に入ってくる。
何と魅惑的な光景だろう。 早く、その光が何なのか・・確かめたい。 その思いを抱いて、《トムラウシ・南沼》のキャンプ場を出発する。
爽やかな朝
沼の畔にて
北沼の透き通った水面と
ハクサンイチゲ
《トムラウシ・南沼》の庭園状のハイマツを越えると、土砂崩れのような土崖を急下降する。
約150mほど下って、お花畑が両端を挟む小道を進んでいく。 ふと振り返ると、トムラウシ山が二段の丘を従えてそびえ立っている。 まるで、城壁に囲まれた天守閣のようだ。 ここから見ると、トムラウシ山のトロイデ型火山・円頂丘の特徴がよくわかる。 お花畑が両端を飾る小道を歩いていくと、やがて緩やかな起伏を繰り返す砂礫帯に変わっていく。
約150mほど下って、お花畑が両端を挟む小道を進んでいく。 ふと振り返ると、トムラウシ山が二段の丘を従えてそびえ立っている。 まるで、城壁に囲まれた天守閣のようだ。 ここから見ると、トムラウシ山のトロイデ型火山・円頂丘の特徴がよくわかる。 お花畑が両端を飾る小道を歩いていくと、やがて緩やかな起伏を繰り返す砂礫帯に変わっていく。
タカネナデシコ
花も、エゾノハクサンイチゲやチシマフウロの群落が途切れ、チシマギキョウ・タカネナデシコ・ミヤマリンドウなど、砂礫地に咲く花々が見られるようになる。 しかし、あの“光放つ大地”は、この緩やかな砂礫の丘に隠されて見えない。
だが、隠されると、より見たくなるのが人情だ。 こんな緩やかな小道ならカメラ片手にのんびりと歩くのだが、“光放つ大地”が頭から離れない。 それが何なのか・・、一刻も早く確かめたい。
その思いを更に強めて先を急ぐ。
トムラウシの頂上で目にした
白く光る大地が何なのか
確かめにいこう
道はハイマツのブッシュを乗り越えて、この丘の頂につながっている。 このハイマツ帯を乗り越えて、丘の頂に立とう。 すると、“白い光を放つ大地”の正体が明らかになる。 下に広がる大平原一面、エゾノハクサンイチゲの花・花・花。 言葉も失う光景がそこにあった。 あの光りは、エゾノハクサンイチゲの白い花が一つ一つ合わさったものであったのだ。
大地の果てを白く輝かせていたもの
それは大地を埋め尽くす
それは大地を埋め尽くす
エゾノハクサンイチゲであった
これは、《五色ヶ原》を凌ぐ“花の楽園”である。 あまりにも凄すぎて、写真を取るのもおごがましいような気がした。 後の言い訳になるかもしれないが、この偉大な“花の楽園”をカメラで表現する事は不可能ではないだろうか。
そして、この“楽園”のすざましさは、エゾノハクサンイチゲ以外の花がほとんど見られない事だ。
そして、この“楽園”のすざましさは、エゾノハクサンイチゲ以外の花がほとんど見られない事だ。
だからこそ、大地から光放つ事ができるのだろう。 このため息さえ出る“楽園”の中に、一筋つけられた道を歩いていく。
道は左手の崖の方向に延びていて、やがて“楽園”を離れ、崖に沿うようになる。 この崖の下はユウトムラウシ川源流のカール地形となっていて、カールの底は森や雪渓、沼や小川など、“森”のイメージをそのままの風景が広がる。 そして、オプタテシケ山の三角錐が、カール端に裾野を延ばしているのが望まれる。
道は左手の崖の方向に延びていて、やがて“楽園”を離れ、崖に沿うようになる。 この崖の下はユウトムラウシ川源流のカール地形となっていて、カールの底は森や雪渓、沼や小川など、“森”のイメージをそのままの風景が広がる。 そして、オプタテシケ山の三角錐が、カール端に裾野を延ばしているのが望まれる。
黄金ヶ原より望む
ユウトムラウシ沢のカール地形
このカール地形を半周巻くように歩いていくと、カール壁の端にある《三川台》にたどり着く。
ここはかつて、《硫黄沼》を経由して《白金温泉》へ下るコースへの分岐だった所だが、今は廃道となって“通行止”と書かれたバリケードで進入を防いでいる。 何でも、途中の美瑛川に架かる橋が崩落した・・とのことである。 ここからは、カール壁の縁を急下降していく。
原始の香り漂う
ユウトムラウシ沢源流カール
ユウトムラウシ沢源流カール
この急下降を下りきると、カール地形の底だ。 道はカール底の右側にある土手の上についていて、カール底の景色を眺めながら歩くようになる。 カール全体に広がる“森”が視野に広がってきて歩くには楽しい道であるが、所々にヒグマの糞が落ちていたり、獣の足跡が鮮明に残っていたり、すぐ目の前をキツネらしき獣が通り過ぎたり・・と、なかなかにワイルドな状況も味わえる。
やがて道は、笹が頭まで覆い隠す“笹のトンネル”地帯を通るようになる。 この間に方向を右に変えて、カール地形と離れていく。 この“笹のトンネル”を通り抜けると視界がぐっと広がり、十勝まで続く縦走路が稜線上に続いているのが見渡せる。 これから、この見渡した稜線上の起伏を忠実に登降していく事になる。
笹のトンネルを抜けると
十勝連峰の山なみが広がっていた
まずは、ツリガネ山の急登だ。 高低差は大した事はないが、“てっぺん”までの距離が短い・・、いわゆる直登なのである。 また、滑りやすい粘土質の道で、最後のひと登りは鎖がついていて、この鎖やハイマツの根をつかんでのよじ登りとなる。 この登りを喘ぎながら乗りきってもそこは頂上ではなく、いささかガッカリする。 ツリガネ山の本当の頂はコース外にある岩崖で、どうやら登頂は無理みたいである。
この頂上“もどき”を越えると、ハイマツが両脇を固める限りなく緩やかな下り坂となる。 登りのキツさと下りの単調さで、思った以上に疲れが溜まっていく。 これを下りきると、今度は無名峰の200mに及ぶ急登となる。 この急登は先程のハイマツ帯の中と違って、太陽が照りつける草地の中で・・となる。
この頂上“もどき”を越えると、ハイマツが両脇を固める限りなく緩やかな下り坂となる。 登りのキツさと下りの単調さで、思った以上に疲れが溜まっていく。 これを下りきると、今度は無名峰の200mに及ぶ急登となる。 この急登は先程のハイマツ帯の中と違って、太陽が照りつける草地の中で・・となる。
これは暑い。 しかも、ボロボロと崩れる黒土の崩壊地を踏ん張りながら登るので、汗をたっぷりと搾り取られる事となろう。 そして辛い登りでもお花畑があれば心が紛れるのだが、花はとても登れぬ土砂の崩壊地の上に咲いていて見る事も叶わない。 唯一の救いは振り向けば、先程通ったカール地形とトムラウシ山が見渡せる事だ。
汗をかきかきこの登りを乗りきると、またもやだらだらと続く潅木帯の緩やかな下りである。
どうやらこの辺りの地形は、両側の侵食差が激しく異なる非対称の山なみとなっているようだ。
そして、大雪側から歩くのはいわゆる“逆ルート”で、体力的に不利のようである。 そういえば他の山岳ガイドでは、こぞって十勝側を出発点にしているみたいである。
下りきると予想通り、またコスマヌプリへの200mの急登となる。 このコースの“逆”は、緩やかな坂を下りきる事に対する“登り返し”が、かなりキツいのである。 この登りも御多分にもれず草地の大登りで、このようなのが3発も続くと、さすがに疲れが溜まるのである。
汗をかきかきこの登りを乗りきると、またもやだらだらと続く潅木帯の緩やかな下りである。
どうやらこの辺りの地形は、両側の侵食差が激しく異なる非対称の山なみとなっているようだ。
そして、大雪側から歩くのはいわゆる“逆ルート”で、体力的に不利のようである。 そういえば他の山岳ガイドでは、こぞって十勝側を出発点にしているみたいである。
下りきると予想通り、またコスマヌプリへの200mの急登となる。 このコースの“逆”は、緩やかな坂を下りきる事に対する“登り返し”が、かなりキツいのである。 この登りも御多分にもれず草地の大登りで、このようなのが3発も続くと、さすがに疲れが溜まるのである。
コスマヌプリより眺める
トムラウシ山
そして、この山もツリガネ山と同様に頂上を通らないので、苦労した割に“実”の少ない登山道であることを実感する。 登りきったコスマヌプリの“てっぺん”は、眺めは申し分ないものの、目指す《双子池》はまだ見えず、その方向にはただっ広い草原が地平線に向ってずっと広がっているだけである。
この眺めも、心理的な疲れを増す一因となろう。 見た通り、もはや坂ともいえぬ緩やかな草原を下っていく。 心理的な疲れも溜まって、何でもない道であってもかなり足が重たい事であろう。
この眺めも、心理的な疲れを増す一因となろう。 見た通り、もはや坂ともいえぬ緩やかな草原を下っていく。 心理的な疲れも溜まって、何でもない道であってもかなり足が重たい事であろう。
そしてこの草原は、地平線に立つ大岩まで延々と続く事となる。
強い日照りの中、地平線に立つ大岩を目指して、遮るものが何もない草原を歩き続ける。
歩き続けて、ようやくにこの大岩にたどり着いたなら、あまりの暑さにきっとヘタリ込む事であろう。
ワテもヘタリ込んだのだから。
この付近で、ようやく下に《双子池》の二つの池がある草原を見渡せるようになる。 だが、“もう近い”と思っても、意に反してまだまだ遠くに離れている事がよくある。 ここもそれが当てはまり、笹や潅木帯の長い長いトンネルを下り続け、着かぬ“苛立ち”が“諦め”に変わる頃、ようやく《双子池》の湿地帯に下り着く。
この付近で、ようやく下に《双子池》の二つの池がある草原を見渡せるようになる。 だが、“もう近い”と思っても、意に反してまだまだ遠くに離れている事がよくある。 ここもそれが当てはまり、笹や潅木帯の長い長いトンネルを下り続け、着かぬ“苛立ち”が“諦め”に変わる頃、ようやく《双子池》の湿地帯に下り着く。
双子池付近の湿地帯
しかし、下り着いた所は泥炭層のぬかるみ地帯で、到底テントなど張れそうにない。 やや不安が頭を過るが、とにかく前に進んでみよう。 もはや、壁となって立ちはばかるオプタテシケ山の裾野まで登り返してみると、沢が流れ、お花畑が咲く段々畑のようなキャンプ地に出る。
ここが、《双子池キャンプ指定地》のようである。 しかし、『キャンプ指定地』とはいうものの、施設は一切なく、山奥のまた山奥で泊る雰囲気を味わえるだろう。 明日は、眼前にそびえたつオプタテシケ山に向って、600mの直登である。 明日もキツい行程なので、充分に休息を取ろう。
ユウトムラウシ源流のカールと
オプタテシケ山
《4・5日目》 オブタテシケ山を越えて、十勝岳避難小屋を経て下山
朝起きてテントを撤収すると、目の前にどっしりとオプタテシケ山がそびえている。 思わず、唾を飲み込むような緊張感がほどばしる。 これから、この“壁”のような山を登っていくのである。
朝起きてテントを撤収すると、目の前にどっしりとオプタテシケ山がそびえている。 思わず、唾を飲み込むような緊張感がほどばしる。 これから、この“壁”のような山を登っていくのである。
登り始めは道が雪渓に覆い隠されて不明瞭で、雪渓からガレ場へ乗り移る所など、どこから足を踏み出せばいいのか迷ってしまう。
“これだ”と思って登った岩の上がハイマツで行く手を阻まれていたり、一度岩の下を巻いてから登ったり・・と、判り辛い道である。 もしかしたなら、私が通った以外に“正しい道”が他にあるのかもしれない。 とにかく、ハイマツに行く手を阻まれようが、直登で岩をよじ登り何とか乗りきる。
やがて、砂礫帯のジグザグ登りとなり高度を稼ぐ。 振り返ると、下の幕営地が朝日を浴びて黄金色に輝いている。 草地の濃い緑と日の光の黄金色が調和し、得も言えぬような美しい光景だ。
しばらくジグザグ登りが続くが、やかて山腹に突き出た岩のコブの間を登るようになり、下の風景も見えなくなる。
アオノツガザクラ
そして、黒土の滑りやすい急坂を登りつめると、稜線の肩に登り着く。 この稜線の肩は頂上を意識するような地形で、しかもリボンを結んだ竿がストーンサークルの中心に突きたてられていて、まるで日高の戸蔦別岳の頂上のようである。
これを目にすると、あらぬ希望を抱いてしまう。 しかし、これは“甘い考え”で、まだまだ稜線上の起伏は続くのである。 一度、頂上を意識すると、起伏の“てっぺん”を踏む毎に頂上に着いた・・と思うようになる。 だが、頂上でない現実は、心理的に疲れを呼ぶのである。 この悪循環を3~4回繰り返して、より大きい起伏の上に登り立つと、そこが待望のオプタテシケ山 2013メートル 頂上だ。
これを目にすると、あらぬ希望を抱いてしまう。 しかし、これは“甘い考え”で、まだまだ稜線上の起伏は続くのである。 一度、頂上を意識すると、起伏の“てっぺん”を踏む毎に頂上に着いた・・と思うようになる。 だが、頂上でない現実は、心理的に疲れを呼ぶのである。 この悪循環を3~4回繰り返して、より大きい起伏の上に登り立つと、そこが待望のオプタテシケ山 2013メートル 頂上だ。
白霧の世界だった
その頂上には、トムラウシ山と同じ頂上標柱が立っていて、改めてここは踏跡稀な日高の山ではなく、登山客がやってくる十勝の山である・・と認識できる。 オブタテシケ山からの眺めは、この山が絶好の位置に立っているので、トムラウシ山や『表大雪』の眺望は欲しいままであろう。 しかし、それは晴れていたら・・のことで、残念ながら私が登った時は濃いガスに巻かれて視界ゼロであった。
頂上はガスって白霧だったので
イワイチョウの花おば
朝から標高差600m、時間にして2時間登ったので、オプタテシケ山の山頂でゆっくり休憩しよう。
頂上でゆっくり休んで落ち着いたなら、次に進んでいこう。 オプタテシケ山からは、砂礫地の駆け出したくなるような急坂を下っていく。 エゾノハクサンイチゲ・チングルマ・エゾウサキギクなどが、脇に群落を成している坂道を約250m下ると、ベベツ岳との鞍部に下り着く。 しばらく、鞍部の平坦な道を歩いて、ベベツ岳への登り返しとなる。
砂礫地には
女王・コマクサが
この登りは、高低差150mの岩ガレ地の登りである。 登り始めは急登だが、それも途中の大きなケルンまでて、これも割とあっさりと登り着くのでそんなにキツくない。 ケルンを越えると緩やかな砂礫地のお花畑となり、これを登っていくとベベツ岳の頂上と思しき広場に出る。 なお頂上は、この広場から10m先のハイマツに囲まれた一角に、シャモジ程の表示がさしてあるだけの貧相なものだった。
ともすれば、見逃して通過してしまう目立たぬ山頂である。
ここからは岩礫の連なる痩せ尾根となり、ハイマツの根が尾根上に迫り出してきて歩き辛い。
また、両サイドが切り立った崖で、天気の良くない日などは、谷底から強風が吹き上げるのである。
この痩せ尾根を半周巻くように歩いていくと、石を積み重ねたような石垣山の鞍部に出る。
また、両サイドが切り立った崖で、天気の良くない日などは、谷底から強風が吹き上げるのである。
この痩せ尾根を半周巻くように歩いていくと、石を積み重ねたような石垣山の鞍部に出る。
ホソバウルップソウ
ここまで来ると痩せ尾根とハイマツ帯からは解放されて、道幅の広い岩ガレ帯の登りとなる。
登山道は石垣山の東側を巻くように続いていく。 花がチラホラ咲く岩ガレ帯を下っていくと、バラックのような《美瑛富士避難小屋》が見えてくる。
この小屋は“使用には耐える・・”との事だが、宿泊するなら前の広場にテントを張った方が賢明だろう(最近建て替えられたと聞くが・・)。 前を望むと、石ころを積み重ねてズングリした山容の美瑛岳が、ドッカリと腰を据えている。 疲れた体でこれを見上げると、闘志が萎えて弱気になってくる。
《美瑛富士避難小屋》からは、美瑛岳の裾野の笹に覆われた道を伝っていく。 途中、雪渓を2回程渡ると、美瑛岳が壁となって立ちはばかる《美瑛岳分岐》にたどり着く。 もし、美瑛岳に登るのなら、朝から2度目の“唾を飲み込む”緊張するシーンである。
《美瑛富士避難小屋》からは、美瑛岳の裾野の笹に覆われた道を伝っていく。 途中、雪渓を2回程渡ると、美瑛岳が壁となって立ちはばかる《美瑛岳分岐》にたどり着く。 もし、美瑛岳に登るのなら、朝から2度目の“唾を飲み込む”緊張するシーンである。
十勝連峰縦走路より眺める
十勝連峰の山なみ
なお、今回は強風の為(・・というより、筆者のヤル気が萎えた為)、この先の美瑛岳・十勝岳は残念ながら断念・・という事になったが、せっかくここまで来たのだから、天気が良ければ富良野岳までの『十勝連峰完全縦走』にアタックしてみよう。 引き続き『十勝連峰完全縦走』となれば、日程的には1日増えるだろう。
完全縦走だと、《4日目》はこの先の美瑛岳・十勝岳を越えて、《上ホロメカトック山避難小屋》前でキャンプする事になる。 そして、《5日目》に富良野岳まで縦走して、《十勝岳温泉》に下山する行程である。 この場合、《4日目》10時間、《5日目》6時間半ということになる。 《4日目》の行程がかなりキツいので、《美瑛富士避難小屋》で一泊して余裕のある山行にした方がいいかもしれない。
完全縦走だと、《4日目》はこの先の美瑛岳・十勝岳を越えて、《上ホロメカトック山避難小屋》前でキャンプする事になる。 そして、《5日目》に富良野岳まで縦走して、《十勝岳温泉》に下山する行程である。 この場合、《4日目》10時間、《5日目》6時間半ということになる。 《4日目》の行程がかなりキツいので、《美瑛富士避難小屋》で一泊して余裕のある山行にした方がいいかもしれない。
美瑛富士の避難小屋は
以前は倒れかけのボロボロだったけど
※ グーグル画像より拝借
案の定倒壊して
綺麗な小屋に建て替えられたそうです
※ グーグル画像より拝借
この分岐から下山という事で、《望岳台》を目指して下っていく。 道は木の根につかまりながらの急下降や沢の徒渉、そして河原歩き、粘土層地形のトラバースなど、一筋縄ではいかないコースである。
これを登るとなれば、かなりキツイであろう。
2度目の徒渉となる《ポンピ沢》を渡ると、《雲ノ平》と呼ばれる溶岩砕土の丘を登り返す。
これを越えると、《十勝岳スキー場》のリフトが見えてくる。 このリフトの終点を更に5分程登ると、《十勝岳避難小屋》である。 この小屋は大きくて中も広いのだが、水場がなく水を得れない事、便所がない事などが難点である。
十勝岳避難小屋も
旧小屋はオシャレなデザインだった
でもトイレはなかったけど
・・十勝連峰縦走の予定で、下山口を十勝岳温泉に設定してマイカーを置いてきたので足がなく、今日はここで泊る事になるが、余力があればイッキに下ることも十分可能である。 その場合、あと50分頑張ると《望岳台》である。 だが、ここは交通機関がなく、バスの出ている《白金温泉》まで、舗装道路を約50分の道程である。 下山したなら、さっそく山のいで湯で山の疲れと汗を洗い流そう。
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