2016-07-31 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第250回 トムラウシ 〔北海道〕
トムラウシ山と
五色ヶ原を染めるエゾノハクサンイチゲ
トムラウシ山 トムラウシやま (大雪山国立公園)
大雪山の山の中で最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。
この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。
大雪山の山の中で最もどっしりとした山容を魅せるのが、このトムラウシ山 2141メートル である。
この山は、山頂部に円頂丘を持つトロイデ型の火山で、大雪南部の盟主として知られている。
そしてこの山は、周りに素晴らしい自然の造形を創り上げている。
真に”神遊びの庭”
トムラウシ『日本庭園』
まずは、トムラウシ山腹にある『トムラウシ・日本庭園』である。 池塘と、花と、雪渓がおりなす自然の山水画。 大自然が、いったいどのようにしてこの景観を創造しえたのか。 また、トムラウシ山の西側には、『五色ヶ原』に優るとも劣らない“花の世界”・『黄金ヶ原』がある。 『黄金ヶ原』は、ミヤマキンバイやキンポウゲなど黄金色の花が多く咲き乱れ、その名の通り花が大地を黄金色に輝かすのである。
そして、この山は“眺める”のもいいだろう。
《化雲平》から眺めるトムラウシ山は、また格別。 すぐ間近に、トムラウシ山がどっしりと構えた姿を魅せて壮観だ。 またこの平原は、ホソバウルップソウやエゾノハクサンイチゲの大群落地としても有名で、特にホソバウルップソウが満開の時は最高。 山の緑と紫の花が美しく、この平原を飾るのである。
トムラウシ~十勝連峰縦走ルート行程図
行程表 駐車場・山小屋・トイレ情報
《1日目》 JR旭川駅よりバス(1:05)→天人峡温泉(3:20)→第一公園(2:30)→小化雲岳
(1:00)→化雲岳(0:40)→ヒサゴ沼避難小屋
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
《2日目》 ヒサゴ沼避難小屋(0:35)→ヒサゴ沼分岐(0:30)→トムラウシ・日本庭園
(1:25)→北沼(0:30)→トムラウシ山(0:25)→トムラウシ・南沼
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
《3日目》 トムラウシ・南沼(2:00)→黄金ヶ原(0:30)→三川台(1:30)→ツリガネ山
(1:30)→コスマヌプリ(1:00)→双子池
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋(0:30)→美瑛岳分岐
《4日目》 双子池(2:00)→オプタテシケ山(2:00)→美瑛富士避難小屋(0:30)→美瑛岳分岐
(2:30)→十勝岳避難小屋
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉より車
《5日目》 十勝岳避難小屋(0:50)→望岳台よりタクシー利用(0:20)→十勝岳温泉より車
(0:35)→JR上富良野駅
神遊びの庭に遊びにいこう
《1日目》 天人峡温泉からヒサゴ沼へ
山に登る前にまず、マイカーを十勝岳温泉に回送しておこう。 これは、下山の後の移動を楽にする為である。 そしてその足で、鉄道とバスを乗り継いで、前日までに必ず《天人峡温泉》に入っておこう。
山に登る前にまず、マイカーを十勝岳温泉に回送しておこう。 これは、下山の後の移動を楽にする為である。 そしてその足で、鉄道とバスを乗り継いで、前日までに必ず《天人峡温泉》に入っておこう。
それは、《1日目》の行程がかなりキツい事、JR旭川駅からの始発バス到着時刻が午前10時と、登山開始が到底不可能な時刻だからである。 安全登山の為にも早発・早着を心掛け、10時登山開始などという無謀は絶対に避けて頂きたい。
神遊びの庭に咲く花々 その1
リシリシンドウ イワイチョウ
さて、《天人峡》から《ヒサゴ沼》までのコースガイドは、以前に紹介した事があるので簡単にとどめたい。 なお、このコースは、《ヒサゴ沼》までの距離が12kmと長い事、途中の宿泊地となる《トムラウシ・南沼》や《双子池》は、避難小屋などの宿泊施設がない事などから、幕営・自炊用具一式を担いでの長時間歩行となる。
くれぐれも、無理のないようにして頂きたい。 また、《天人峡温泉》から《ヒサゴ沼》までは水場がなく、水の補給は難しいので、飲料水は充分に持っていこう。 《第一公園》から《第二公園》までは湿地帯のヌタ場が続き、またハイマツの根が絡むので、距離以上に時間を食う事が予想される。
神遊びの庭に咲く花々 その2
エゾノハクサンイチゲ ミヤマリンドウ
それから、《第一公園》から小化雲岳までは強い日差しの中での急登となるので、登山途中でも体調が変調をきたした時は、無理せずに引き返すべきである。 無理をすると、脱水症状を起こして生命の危険さえ伴うのである。 体力の自信のない方は別コースとして、《旭岳温泉》よりロープウェイを使って、《姿見ノ池》~旭岳を経てヒサゴ沼へ向う方法もある。
丸い丘にデベソ
化雲岳の“デベソ岩”
このコースは日程が1日増えるが、格段に楽なコースである。 しかし、このコースも捨てたものではない。 長く辛い急登を耐え忍んだ後は、山の上で仰ぐそよ風、《化雲平》の庭園状のお花畑、“憬れの山”トムラウシ山の勇姿など、“楽園”の風景が待つ登りがいのあるコースでもあるのだ。 このコースを利用すると、早朝に《天人峡温泉》を出発したとしても、《ヒサゴ沼》到着は午後2時が3時になろう。
時間に余裕を持って登ろう。
ヒサゴ沼畔に建つヒサゴ沼避難小屋 ヒサゴ沼に
残照の筋が差した
北沼とトムラウシ山
《2日目》 ヒサゴ沼からトムラウシ山へ
《1日目》の行程がかなりハードであるので、ここは体力を回復させる為にも短い行程とした。
無理をすれば《双子池》まで進む事も可能であるが、歩行時間が10時間超と全く余裕のない山行となる。 せっかく、“憧れの山”トムラウシ山と“花の楽園”・《黄金ヶ原》にやってきたのだから、その景色を充分に味わう行程を組みたいものだ。
《1日目》の行程がかなりハードであるので、ここは体力を回復させる為にも短い行程とした。
無理をすれば《双子池》まで進む事も可能であるが、歩行時間が10時間超と全く余裕のない山行となる。 せっかく、“憧れの山”トムラウシ山と“花の楽園”・《黄金ヶ原》にやってきたのだから、その景色を充分に味わう行程を組みたいものだ。
トムラウシ山域 詳細図
さて、短い行程といえども、早発は山の鉄則である。 《ヒサゴ沼》を遅くとも7時までに出発しよう。
朝の清々しい雰囲気を味わう為にも、5時頃の出発が望ましい。 《ヒサゴ沼避難小屋》前の幕営地を出ると、《ヒサゴ沼》に沿って《大雪万年雪渓》の縁をトラバースしていく。 しかし、いつ崩れるかわからぬ雪渓の縁を歩くのは、かなりおっかないものである。 崩れ落ちると、もちろん沼に“ドボン”である。
沼の畔の雪渓が崩壊していた
傾斜も見た目より
傾斜も見た目より
かなり急でデンジャラス
この雪渓のトラバースを越えると、《ヒサゴ沼》右側の急な雪渓を登っていく。 この雪渓はかなり急で、しかも吹き降ろす風の影響でアイスバーン状になっていることもあり、滑落の危険が大いにある。
ヒサゴ沼左側の急斜面の雪渓
滑落すると、間違いなく《ヒサゴ沼》に“ドボン”である。 ここは、ピッケルを突いて慎重に登っていこう。 なお、この雪渓登りに自信のない方は、《ヒサゴ沼》左側の比較的緩やかな雪渓を登って、《化雲平》を経ての迂回ルートもある。 この場合、歩行時間は1時間余分にみておこう。
このように、のっけから緊張する場面が続くが、この雪渓の急登を乗りきると、岩がゴロゴロする岩石帯を通る。 ここは岩の一つ一つがかなり大きくて、その間を飛び越えていかねばならないので、結構疲れるのである。 ここも岩を飛び損ねると大ケガにつながるので、慎重にいこう。 岩石帯が途切れると《ヒサゴ沼分岐》である。
このように、のっけから緊張する場面が続くが、この雪渓の急登を乗りきると、岩がゴロゴロする岩石帯を通る。 ここは岩の一つ一つがかなり大きくて、その間を飛び越えていかねばならないので、結構疲れるのである。 ここも岩を飛び損ねると大ケガにつながるので、慎重にいこう。 岩石帯が途切れると《ヒサゴ沼分岐》である。
トムラウシ『日本庭園』にて
岩と花と草原と山が
天然の庭園風景を創造している
トムラウシ山を往復して、その日の内に《天人峡》へ下るのなら、ここに荷物をデポするのもいいだろう。 《ヒサゴ沼分岐》からは緊張する状況から解放されて、広い稜線上の道となる。
分岐から目の前に見える砂礫地の丘をジグザグ登りでつめると、丘いっぱいに“夢の楽園”が広がる。
ここが《トムラウシ・日本庭園》である。
『神遊びの庭』で遊んでみた
花・露岩・池塘・・
庭園を美しく飾る
ハイマツと奇岩
どこからか
ナキウサギの甲高い鳴き声が
・・ナキウサギの鳴き声がどこからか鳴り響き、お花畑が庭園を創造して整然と咲き競っている。
あちらこちらに点在する池塘が、静かに波紋を漂わせている。 そして、後にそびえるトムラウシ山。
いったい、どのようにしてこのような風景を創造しえたのか・・。
あちらこちらに点在する池塘が、静かに波紋を漂わせている。 そして、後にそびえるトムラウシ山。
いったい、どのようにしてこのような風景を創造しえたのか・・。
チングルマのコロニーが
庭園を彩り
もし、神として崇めるなら、このような風景を創造した大自然こそ“神”だとワテは思う。
庭園の風景だけでなく、周囲の風景も素晴らしい。
縞模様を映す
ヒサゴ沼と石狩連峰
筋雲を映し縞模様に光る《ヒサゴ沼》、シルエットを魅せる“遙か遠き山”・石狩連峰など、眺めは申し分ない。 チングルマ・イワイチョウ・エゾコザクラ・エゾノハクサンイチゲ・リシリリンドウ・・など、庭園のお花畑に彩られた池塘の周りをゆっくりと、“神”の創りし風景を味わいながらいこう。
天沼の池塘と雪渓と岩屑と・・
《ヒサゴ沼》からトムラウシ山までは約3時間だが、このような風景を魅せられると、もっと時間がかかりそうである。
花々に囲まれた真に『神遊びの庭』
気がつけば時が随分と経っていた
この静かなる情景の庭園を越えると、雪渓と露岩帯に突入する。 ここも大岩がゴロゴロしていて、岩をよじ登ったり飛び越えたり・・と、距離の割には結構時間を食う。 この露岩帯を岩を選びながら飛び越えていく。 一度、谷地形に下ってから、今日の行程最大の登りとなる通称『ロックガーデン』といわれる高低差200mの露岩帯の急登が始まる。
『トムラウシ・日本庭園』を越えると
天然岩のロックガーデンが現れる
岩をよじ登り、飛び越え、あるいは大岩の縁をトラバースしたりしながら登っていく。 途中、イワギキョウやミヤマリンドウなどが岩の間から顔をのぞかせているが、この登りはなかなかキツく、この場面では花を愛でる余裕は持てないだろう。 これを越えると広い砂礫地の丘となり、エゾノハクサンイチゲ・エゾツガザクラ・ミヤマリンドウ・タカネナデシコ・チングルマのお花畑が丘一面に広がる。 しかし、トムラウシ山は、この丘の陰に隠れて見えなくなる。
『ロックガーデン』で見えた山頂は・・
実を言うと、『ロックガーデン』で見えた山頂は、この丘の“てっぺん”にあたるのである。
本当の頂上は、この丘を越えて《北沼》の畔の高台まで行って、初めて見えるのである。
このトムラウシ山の頂を隠す丘を登りつめると、辺りが開けて《北沼》と待望のトムラウシ山の勇姿が望まれる。
山頂直下のオアシス・北沼
だったのですね
トムラウシ山は全体が岩石で積み重なって、どっしりとした重厚な山容を魅せている。
丘の頂からは、《北沼》に向けて緩やかに下っていく。 目の前に“憧れの山”がそびえ立ち、しかも緩やかな下り坂で思わず駆け出したくなるような状況であるが、明日からは長い行程となるので足を痛めぬようにゆっくりと下っていこう。
北沼越しに表大雪の山々を望む
そして、《北沼》の湖畔に着いたなら、トムラウシを眼前においてゆっくり休憩しよう。
沼を眺めると、畔の至る所から泉が湧き出ているのが発見できるだろう。 どうやら、この沼は天然の湧泉沼のようで、その泉の上をハクサンイチゲが咲いている幻想的なシーンが見られる。 このシーンをカメラに収める事ができれば、写真好きとしては至福の喜びである。
湧き出る泉の上に咲いていた
エゾノハクサンイチゲ
さあ、これより“憧れの山”に登頂するのだが、息を切らして登頂するのは“憧れの山”に対しての礼儀に反する・・と思うので息を整えていこう。 そして、ひと息着いたなら、“憧れの山”の頂に立とう。
露岩帯を斜めによじ登っていくと、一ヶ所鎖場を越えて約20分で“憧れの山”・トムラウシ山 2141メートル の頂に立つ。
トムラウシ発 絶景かな
トムラウシ頂上より眺める
『表大雪』の山なみ
端正な三角錐を魅せる
オプタテシケ山
“憧れの山”からの眺めは、その期待を裏切らない素晴らしい眺めで、化雲岳の“デベソ岩”や、旭岳・白雲岳など『表大雪』の山々、そして《高根ヶ原》から続く大平原、遙か遠くそびえる石狩連峰の山なみ・・と続く。 また振り返れば、十勝連峰や美しい三角錐を魅せるオプタテシケ山、そして何よりも魅せられるのが大地が白く輝きを放つ光景だ。 この事はあえて伏せておいて、明日の行程で説明しよう。
続・トムラウシ発 絶景かな
雲海をわける“天ノ橋立”
十勝連峰の山なみ
大地の果てが白く輝いていた
“憧れの山”の頂上を満喫したなら、今日の幕営地《トムラウシ・南沼》に向っていこう。
トムラウシの山頂から僅か15分程の距離だが、ガレ場の急坂で滑りやすいので注意して下りていこう。
下りきると冷たい沢が流れ、花が咲き乱れる絶好のキャンプ地・《トムラウシ・南沼》に着く。
ツマトリソウ
たぶん、昼前までに到着することと思うが、明日からの長い行程に備えて花でも撮りながらくつろぐとしよう。 長い行程の山行は、息抜きのできる日程も必要だ。
・・次回『日本百景 夏 第251回 黄金ヶ原』に続く
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No title * by 風来梨
ギャメロンさん、こんにちは。
大雪山・・、アイヌ名では「カムイミンタラ」=神遊びの庭 と言うだけあって、大自然が放り出されてます。 花々も、一つの種の花が大地を花の色に染め上げます。
こんな事を思い返していると、私も行きたくなっちゃいました。
あぁ・・、時間とかつての奇跡と言わしめた体力よ・・もう一度。
大雪山・・、アイヌ名では「カムイミンタラ」=神遊びの庭 と言うだけあって、大自然が放り出されてます。 花々も、一つの種の花が大地を花の色に染め上げます。
こんな事を思い返していると、私も行きたくなっちゃいました。
あぁ・・、時間とかつての奇跡と言わしめた体力よ・・もう一度。
No title * by roba
空気が綺麗なんですかね。
最初の写真も撮影地点から山まで何キロあるんでしょう。
自分が暮らしているのも地方ですが途中建物とかなくてもこれほど綺麗に遠くの山は見えないよな~とそれぞれの写真に見入ってしまいました。
最初の写真も撮影地点から山まで何キロあるんでしょう。
自分が暮らしているのも地方ですが途中建物とかなくてもこれほど綺麗に遠くの山は見えないよな~とそれぞれの写真に見入ってしまいました。
No title * by 風来梨
robaさん、こんばんは。
山は、とにかくダイレクトですね。
いい天気なら10㎞先もはっきり見えますが、一瞬にしてガスに巻かれて視界ゼロになることもしょっちゅうありますから。
この五色ヶ原カラ、トムラウシの頂上までは約7.5㎞で、かつてなら3時間チョイ、今なら4時間以上かかっちゃいますね。( ´△`)
山は、とにかくダイレクトですね。
いい天気なら10㎞先もはっきり見えますが、一瞬にしてガスに巻かれて視界ゼロになることもしょっちゅうありますから。
この五色ヶ原カラ、トムラウシの頂上までは約7.5㎞で、かつてなら3時間チョイ、今なら4時間以上かかっちゃいますね。( ´△`)
大雪山、大自然が素晴らしいですね
来年こそ行きたいといつも思うのですが・・
パンフを眺めては後回しになっています(^^;
いつかは厳しい環境の中で咲く花々を見てみたいです
ナイス!