2016-07-17 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第248回 剱岳・北方稜線 〔富山県〕
残照に輝く裏剱の尖峰群
剱岳・北方稜線 つるぎたけ・ほっぽうりょうせん (中部山岳国立公園)
“雪と岩の殿堂”・剱岳は、アルピニストの憧れの山だ。 まず、最初にこの山を訪れる時、全ての登山者は《室堂》からの一般ルートから挑むであろう。 ただ、それだけでも、十分“剱”を楽しむ事ができる。
“雪と岩の殿堂”・剱岳は、アルピニストの憧れの山だ。 まず、最初にこの山を訪れる時、全ての登山者は《室堂》からの一般ルートから挑むであろう。 ただ、それだけでも、十分“剱”を楽しむ事ができる。
だが、何回か剱に挑むと、もっと違う魅力に触れたくなってくるだろう。 そうして、バリエーションルートに挑むようになる。 この剱岳がアルピニストに尊ばれる所以は、色々なバリエーションルートを抱いている所ではないだろうか。 花を求める初心者向けもいいし、長大な雪渓をつめるのもいい。
欧州的な展望を求めるのもいいだろう。 そして、“雪と岩の殿堂”と呼ばれるこの山の真の魅力に迫るのもいいだろう。
本編の『剱岳』では、『花の初心者向けルート』・『池ノ平・仙人池ルート』・『長次郎雪渓ルート』の3つのルートを歩いてきた。 そして、剱の“総集編”として、剱岳の真の魅力である“雪と岩の殿堂”に挑むルートが、この《北方稜線ルート》である。 さぁ、“雪と岩の殿堂”と呼ばれる岩峰の真の魅力に迫ってみよう。
本編の『剱岳』では、『花の初心者向けルート』・『池ノ平・仙人池ルート』・『長次郎雪渓ルート』の3つのルートを歩いてきた。 そして、剱の“総集編”として、剱岳の真の魅力である“雪と岩の殿堂”に挑むルートが、この《北方稜線ルート》である。 さぁ、“雪と岩の殿堂”と呼ばれる岩峰の真の魅力に迫ってみよう。
剱岳・北方稜線ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR富山駅より鉄道利用(1:05)→立山駅よりケーブルとバス(1:00)→室堂
(0:20)→雷鳥平(1:50)→剱御前小屋(0:40)→剱沢キャンプ場
《2日目》 剱沢キャンプ場(0:30)→剱沢雪渓取付(0:50)→真砂沢ロッジ(1:30)→近藤岩・二股
(2:20)→仙人池(0:40)→池ノ平
《3日目》 池ノ平(0:50)→小窓雪渓(0:50)→小窓(1:40)→小窓ノ王(1:00)→三ノ窓
《2日目》 剱沢キャンプ場(0:30)→剱沢雪渓取付(0:50)→真砂沢ロッジ(1:30)→近藤岩・二股
(2:20)→仙人池(0:40)→池ノ平
《3日目》 池ノ平(0:50)→小窓雪渓(0:50)→小窓(1:40)→小窓ノ王(1:00)→三ノ窓
(1:10)→池ノ谷乗越(1:30)→長次郎ノ頭(0:40)→剱岳本峰(2:30)→剱山荘
(0:30)→剱沢キャンプ場
《4日目》 剱沢キャンプ場(0:50)→剱御前小屋(1:30)→雷鳥平
《4日目》 剱沢キャンプ場(0:50)→剱御前小屋(1:30)→雷鳥平
(0:30)→室堂よりバスとケーブル(1:00)→立山駅より鉄道利用(1:05)→JR富山駅
別山乗越より望む剱岳
これよりあの峰の"裏"を攻めるのだ
《1日目》 室堂より剱沢へ
さて、今回は表題で銘打った通り、“雪と岩の殿堂”の核心部を歩いてみよう。 この『北方稜線』の縦走は、剱岳の抱く真の魅力をたっぷり満喫できるルートであるが、一般登山者を寄せつけないバリエーションルートでもあるのだ。 その事を理解した上で、“よく調べて”、“道具を完璧に揃えて”、“準備万端で”挑んで頂きたい。
なお、初めての時は、『山岳ガイド』を使うのも一つの手かもしれない。 なぜなら、道標一つなく、鎖一つないルートだ。 頼りは、岩にペイントされた丸印のペンキだけである。 1歩道を外せば、それこそ行きづまるのである。 一般ルートならば、そこまで追いつめられる事はないだろう。 例え、道を間違えたとしても、引き返せば済むのがほとんどだ。
さて、今回は表題で銘打った通り、“雪と岩の殿堂”の核心部を歩いてみよう。 この『北方稜線』の縦走は、剱岳の抱く真の魅力をたっぷり満喫できるルートであるが、一般登山者を寄せつけないバリエーションルートでもあるのだ。 その事を理解した上で、“よく調べて”、“道具を完璧に揃えて”、“準備万端で”挑んで頂きたい。
なお、初めての時は、『山岳ガイド』を使うのも一つの手かもしれない。 なぜなら、道標一つなく、鎖一つないルートだ。 頼りは、岩にペイントされた丸印のペンキだけである。 1歩道を外せば、それこそ行きづまるのである。 一般ルートならば、そこまで追いつめられる事はないだろう。 例え、道を間違えたとしても、引き返せば済むのがほとんどだ。
間違って登ってしまったら
"降りれない"って事も
あり得る領域にいくのだ
だが、『北方稜線』の岩稜上では間違って登りつめてしまうと、“下りれない”、“戻れない”といった世界なのだ。 その時、初めて歩く人間が対応できるのか? 間違いなく、“否”である。 最近、《池ノ平小屋》で『北方稜線ツアー』が企画されている。 費用はかさむが、確実に“雪と岩の殿堂”を楽しむ為には一考の価値はある。
・・なお、『北方稜線』を伝う《3日目》行程以外は、『日本百景』本編・《中部山岳編》の『剱岳』の項目で述べているので簡単にとどめおく事にしたい。 今日は少しでも費用を浮かすべく、《剱沢》のキャンプ場で幕営する事にしよう。
今日は余裕がある行程だが
「日の出と共に出発」を心掛けたい
《2日目》 剱沢雪渓を通って『北方稜線』の窓口・池ノ平へ
剱の朝景を堪能したなら、テントが飛ばされぬよう置き石で固めて出発だ。 『北方稜線』の縦走は、剱本峰から《池ノ平》へ向かうより、《池ノ平》から剱本峰へ向かう方が上り基調で容易となる。 逆ルートだと稜線上の難所が全て《下り》となり、より危険度が増すのである。
剱の朝景を堪能したなら、テントが飛ばされぬよう置き石で固めて出発だ。 『北方稜線』の縦走は、剱本峰から《池ノ平》へ向かうより、《池ノ平》から剱本峰へ向かう方が上り基調で容易となる。 逆ルートだと稜線上の難所が全て《下り》となり、より危険度が増すのである。
それを踏まえて、本日の行程である《池ノ平》までの回送が必要となるのだ。 もちろん、明日の“勝負”に向けて不要なものは、全てテントにデポってくるのは当然の事である。
必要なものは、アイゼン(10本以上の前爪付が必要)・ピッケル(先の尖ったものが必要)・雨着・防寒着(着替え)・水筒・手袋・カンテラ(電池)・カメラとレンズ(まぁ、せっかく行くのである)、そしてカラビナ付のハーネスだ。 テント用品や食料・寝具は、かさ張るだけなので“デポ”の対象となろう。
必要なものは、アイゼン(10本以上の前爪付が必要)・ピッケル(先の尖ったものが必要)・雨着・防寒着(着替え)・水筒・手袋・カンテラ(電池)・カメラとレンズ(まぁ、せっかく行くのである)、そしてカラビナ付のハーネスだ。 テント用品や食料・寝具は、かさ張るだけなので“デポ”の対象となろう。
剱岳雪渓を下る
さて、剱沢の下降であるが、アイゼンワークを確かめる為にも、練習がてら装着して歩いていこう。
ピッケルもまた“しかり”である。 本日は比較的短い行程なので、時間の余裕はたっぷりとある。
《剱沢雪渓》途中の《長次郎谷出合》で、急傾斜の雪渓歩きの訓練をするのもいいだろう。
真砂沢出合で
剱沢の大雪渓を仰ぎ見る
後は、《真砂沢》から水流豊かな剱沢の流れに沿いながら、ヘツリ気味に岩場をトラバースして《近藤岩》へ。 そして、『仙人新道』を急登でつめて《仙人池》・《池ノ平》へ。
三ノ窓雪渓
いつかは登高したい
『仙人新道』を登る途中では、長大な《三ノ窓雪渓》が《三ノ窓》へ一直線に突き上げ、そして《小窓雪渓》が眼下で左から周り込むように突き上げているのが望めるだろう。 《小窓ノ王》や《チンネ》・《ジャンダルム》などが、突き上げる雪渓の上に敢然とそびえ立っているのを目にすると、「明日、あの岩峰を歩くのだ」と否応なしに心が高ぶってくる事だろう。
チンネの尖峰
明日はアレを伝っていくのだ
・・朝、早くに《剱沢》を出ると、のんびりと歩いたとしても昼過ぎには《池ノ平小屋》に着くであろう。 小屋に着いたなら、明日に備えてゆったりと1日を過ごそう。 今、最も気になる事は、明日の天候であろう。 天候が悪ければ、断念を余儀なくされるルートであるから尚更だ。
夕日に染まる小窓ノ王岩峰
朝日が美しく岩峰を染め上げる
《3日目》 北方稜線を縦走して剱本峰へ
朝、剱の《八ッ峰》の頂が朝日で赤く染まる頃、出発しよう。 小屋の裏手から続く細いルートを伝う。
ルートは細いながらも安定して歩きやすい。 30分も歩けば、《小窓雪渓》と剱の岩峰が前方にはばかってくる。 朝の柔らかい光が《クレオパトラニードル》や《チンネ》を美しく輝かせて爽快だ。
朝、剱の《八ッ峰》の頂が朝日で赤く染まる頃、出発しよう。 小屋の裏手から続く細いルートを伝う。
ルートは細いながらも安定して歩きやすい。 30分も歩けば、《小窓雪渓》と剱の岩峰が前方にはばかってくる。 朝の柔らかい光が《クレオパトラニードル》や《チンネ》を美しく輝かせて爽快だ。
八ッ峰の尖峰が
朝日が照らされる頃には出発だ
道は、やがて池ノ平山の山腹を周り込むようになり、ヘツリ状の溝道となって山懐に突入していく。
途中、崖が崩れたような所もあって、やや緊張する事だろう。 総じて、《黒部渓谷》のヘツリ道を歩いているような感覚だ。 それもそのはず、この道は《黒部渓谷》の『日電歩道』と同じ頃に剱の《小窓雪渓》近くにあった採鉱場へ伝う“採鉱道”の跡であるとの事なのだ。
これほどまでの晴天
幸運以外の何物でもない
やがて、《小窓雪渓》直上の岩場のテラスに出る。 前方の雪渓のポケット(雪渓の壁際のクレバス)はそれ程でもなく(時期や年毎で違うかもしれないが)、大跨ぎ1発で雪渓の上に下り立つ事ができる。
小窓雪渓源頭部にて
微かに《小窓ノ滝》も見える
さて、アイゼンを装着して雪渓の登高開始だ。 斜め下方に《小窓ノ滝》(《三ノ窓尾根》の岩峰から滔々と雪渓に飛沫を上げている。 さながら、《知床》の《カシュニの滝》のような神秘性を抱いている)が朝日に飛沫を輝かせている。 傾斜のある雪渓を歩いていたので残念ながら写真は撮れなかったのだが、あの神秘的な滝飛沫は残像として心の奥深くに残っている。
《小窓雪渓》を150m程つめて、《小窓》の上に立つ。 雪渓の上部はやや傾斜が増すので、ピッケルワークが必要となってくる。 《小窓》の上に立つと、《小窓ノ頭》に向かって岩峰を直接よじ登るように上がっていく。 振り返ると、池ノ平山 2555メートル と鹿島槍ヶ岳が逆光に霞んで望まれる。
そして前方には、《小窓ノ王》の大岩壁が茫洋とそびえ立っていて迫力満点だ。
そそり立つ小窓ノ王
《小窓ノ頭》の登りは、見た目程にはキツくはない。 それは、1歩1歩が歩幅に合っていて登りやすいからではなかろうか・・と思う。 これを登りつめると、《小窓ノ頭》の源頭の雪渓端に出る。
この雪渓を登っていくのだが、この雪渓は源頭直下のもので傾斜が半端ではない。 斜度は40°はあるだろうか。 滑り落ちると、《小窓》の支谷までいってしまうだろう。
ここで“ピッケルワーク”が必要となってくるのである。 普段は握るだけで使う事のないピッケルの“刃”の部分を雪に掻き込んで、1歩づつ伝っていく。 渡り終えると、ハイマツのブッシュを漕いでもう1回小さな雪渓を渡る。 目の前には、《小窓ノ王》が巨大な岩盤をそそり立たせている。
小窓ノ王の頂点に
光をかざしてみる
《小窓ノ王》へ行くには、越えなくてはならない試練である。 この雪渓は短いものの、斜度は前の雪渓を凌ぐので通過には緊張させられる。 これを渡り終えると、《小窓ノ王》の基部を巻くように伝い登りしていく。
小窓ノ王の巨大岩盤を
巻くように伝っていく
基部を登りつめると、《小窓ノ王》の肩に出る。 ここで、ようやく《池ノ谷》側が望めるようになる。
その眺めは、迫力満点だ。 剱の本峰からは、到底望めない岩の芸術がそこにあった。 地獄から突き上げるか・・のような《池ノ谷》の雪渓。 何でも、この『いけのたん』という名称は、“行けぬ谷”が訛ってこのように呼ばれるようになったという。 この逸話が十分うなずける眺めである。
もはや“尾根”とはいえぬ
角度で落ち込む剱尾根
そして、《池ノ谷》が突き上げるのは、《剱尾根》というササクレ立った岩盤だ。 聞く所によると、《池ノ谷》からこの尾根(到底、“尾根”と呼べる代物ではない。 ほとんど垂直に突き上げる大岩盤である)にかけては、未だに“未踏”との事である。
改めて見ると
前人未踏なのも頷ける
また、進行方向に目をやると、大きく落ち込んだ《三ノ窓》と、《剱尾根》から《三ノ窓》に直下降する一筋の溝が望めるだろう。 これを良く見ると、ガリガリにガレている。 これが、《池ノ谷ガリー》である。 これは、もはや“ルート”というより、“土砂崩れ”である。 これを登っていくのだ。 今まで見た事もない絶景に興奮冷めやらぬまま、今眺めた景色を登降していくのである。
さて、《小窓ノ王》の肩でひと息着いたなら、縦走を再開しよう。 ルートは、《小窓ノ王》の《池ノ谷》側の基部を巻くように道が彫られている。
振り返ると針ノ木岳との間に
深い谷の暗闇が
この下りはちょっと厄介だ。 これはボロボロと崩れ落ちる岩ガレのヘツリ道で、スリップすれば先程の《池ノ谷》が口を開けて待ち受けているのである。 距離は僅かなのだが、歩きにくい上に緊張感も重なって時間がかかる。 これを下りきると、《三ノ窓》だ。
三ノ窓雪渓の源頭部より
果てしなく切れ落ちる
眼下を見下ろす
《三ノ窓》の《池ノ谷》側には、テントサイトが幾つかある。 《池ノ平小屋》に飾ってある素晴らしい写真は、ここをキャンプサイトとして撮影したものである。 私も、いつの日にかこれを実行したい・・と思う。 山岳写真を志す者としては、当然描く“憧れ”と“野望”である。
テントサイトから剱沢側に上がると、《三ノ窓雪渓》が一直線に突き上げているのが望めるであろう。
《三ノ窓雪渓》の雪で興奮した頬を冷やしたなら、難所《池ノ谷ガリー》にチャレンジしよう。
テントサイトから剱沢側に上がると、《三ノ窓雪渓》が一直線に突き上げているのが望めるであろう。
《三ノ窓雪渓》の雪で興奮した頬を冷やしたなら、難所《池ノ谷ガリー》にチャレンジしよう。
池ノ谷ガリー
これを登っていくのだ
《三ノ窓》のコルを渡り終えると、すぐに先程見たガレ場に差しかかる。 見た目通り、いや・・それ以上に崩れている“ガリガリ”のガレ場だ。 一歩踏み出す毎にボロボロと崩れる様は、まるで砂の山を登っているようなものである。 それが、標高差200mに渡って続くのである。
踏み出す度にズリズリと滑る
難儀なガレ場だ
《池ノ平ガリー》の難儀な所は、踏み出す毎にズリズリと滑る事だけではない。 踏跡がほとんど残っていない事にもあるのだ。 風が吹き抜けるだけの事でさえボロボロと崩れるこのガレ場は、常に崩れ続けて前人の通った踏跡を消してしまうのだ。 これを登るには、まずは“ルート探し”から始めなければならない。 これをしくじると、踏み出した足ごとボロボロと崩れて後退してしまう。
従って、たたが200m足らずの登りに1時間以上かかってしまうのである。 振り返って、《小窓ノ王》の岩塊が下に見下ろせるようになったなら、この難所の登りもようやく終わりとなる。
池ノ谷ガリーの上部より
小窓ノ王を望む
谷底から這い上がるような感覚で《池ノ平ガリー》を抜け出して、《チンネ》の岩峰の基部に登り着く。 ここは《池ノ谷乗越》といい、これより《池ノ谷ノ頭(ジャンダルム)》に向けて岩峰をよじ登っていく。
ジャンダルムの大岩盤
これをよじ登っていく
この登りは岩壁の直登で、見た目はほとんど垂直だ。 この登りは、ザイルのいらない限界のようである。 岩にある数少ないペイントされた丸印を見落とさずにいこう。 登攀ルートより外れると下る事が困難となり、崖の途中で行きづまる事になりかねないので注意が必要だ。
登りつめると、《池ノ谷ノ頭》だ。
振り返ると、針のように尖った《チンネ》や《八ッ峰》が間近に望まれる。 この時は筆者自身に余裕がなかった事もあり、残念ながら振り返り見た景色を撮影できなかった。 次回、再訪のチャンスがあれば、このシーンも映像にしたいと思う。 さて、肝心の剱本峰は、この辺りから頂上部だけが見えてくる。
ここから、最後の難所に取りかかる。
穏やかな眺めだが
オーバーハングの大岩巻きの
最大難所がある
それは、剱本峰を隠している《長次郎ノ頭》へ向けて岩峰を渡るのであるが、下がスッパリと切れ落ちたオーバーハングの大岩を巻くようにトラバースせねばならない。 オーバーハングゆえに進行方向のホールドが見えず、また下も足のかかと部分が空中に浮いている状態だ。 例えるなら、球体の真ん中を伝っているような感覚である。
これを越えて《長次郎ノ頭》に出ると、ひとまず“命の危険”もある難所は終わる。 後は《長次郎ノ頭》の岩盤を懸垂下降で下り、《長次郎雪渓》の源頭に出る。 なお、《長次郎雪渓》の登高ルートについては、本編である『日本百景』・《中部山岳編》の『剱岳』の『長次郎谷の大雪渓を登って剱本峰へ』で探勝調査しているので、そちらを御覧頂きたい。 こちらも、登った者しか解からぬ“熱い思い”がつまったルートだ。
剱岳本峰はもうすぐだ
これよりは、剱本峰に向かってガチャガチャした岩峰を登っていくだけだ。 この岩場を登りつめると“帽子”と呼ばれる雪田があり、これを渡ると“立入禁止”の看板の脇から剱岳 2998メートル 頂上の祠の前に出る。 頂上でひと息入れ目を閉じると、これまでの思いが瞼の奥で回想する事だろう。
剱岳山頂にて
“一般ルート”といっても、《カニのヨコバイ》を擁する岩稜の下りだ。 それに、今までの緊張による疲労が重なっている分、足元が疎かになりがちだ。 最後まで気を引き締めて、落ち着いて下っていこう。
明日は一般の登山道を
花を愛でながら下るとするか
今日は《剱沢》にデポってきたテントに戻り、明日の朝早くに下山・・としたい。 なお、下山ルートは登り時と同じであり、何度となく説明しているので割愛したいと思う。
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No title * by 風来梨
鳳山さん、こんにちは。
剱の刃先のような鋭い山容・・、アルピニストの憧れの山・・、それが剱岳ですね。 このルートを歩いた事で、自称「山ノボラー」もちょっとだけ箔が着きました(笑)
剱の刃先のような鋭い山容・・、アルピニストの憧れの山・・、それが剱岳ですね。 このルートを歩いた事で、自称「山ノボラー」もちょっとだけ箔が着きました(笑)
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