2016-07-11 (Mon)✎
路線の思い出 第159回 三江線・川戸駅 〔島根県〕
駅名標はやっぱり国鉄時代の方がいい
※ グーグル画像より拝借
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’16)
江津~三次 108.1km 46 / 1109
廃止年月日 転換処置
’18/4/1 備北交通・大和観光・邑南町営・石見交通
など区間によって分担
運行本数(’17)
江津~三次 下り2本・上り1本
江津~石見川本 上り1本
江津~浜原 3往復
石見川本~三次 上り1本
浜原~三次 2往復
口羽~三次 1往復
※ 廃止日までの残り2週間は昼間便の浜原~口羽の通し運行を実施した
江津~三次 下り4本・上り3本
江津~石見川本 上り1本
石見川本~三次 上り1本
江津~浜原 1往復
浜原~三次 1往復
川戸駅(かわどえき)は、島根県江津市桜江町川戸にあるJR西日本・三江線の駅である。
浜田鉄道部管理の無人駅で、駅舎には地域福祉関係の事務所が入っている。
2013年度の1日平均の乗車人員は40人である。
かつては交換設備と跨線橋があったが
どちらも取り払われたようだ
※ グーグル画像より拝借
浜原方面に向かって左側に単式ホーム1面1線を持つ駅で、かつては相対式ホーム2面2線であったが、片側の線路は撤去され、使われなくなったホームのみ残る。 当駅の他、川平・石見簗瀬・因原の各駅でも交換設備が撤去された為、現在の江津~浜原での交換可能駅は石見川本のみとなり、これによって三江線の列車運行能力が著しく殺がれる事となった。
三江線に沿って流れる江ノ川流域には魅力的な滝が数多く潜んでおり、滝好きならば一目置いている所である。 その滝めぐりをする事であるが、普通は・・というか、ほぼ全ての者が車を使ってしている事であろう。 要するに、江ノ川に合流する沢を遡った山奥にある滝も、車があれば容易にアプローチが適うのである。
だが、ローカル路線の廃止で鉄道に対しての興味が醒め、続いて滝めぐりに走った小僧には・・、未だ車の免許を持たぬ四半世紀前のこのタワケ小僧は、新しく興味を持った『滝めぐり』に鉄道を使う以外に手段が無かったのである。
”とことん使えない”鉄道を
使っての自然探勝は命懸け
そして、手段となる鉄道は、今よりは少しマシ(今5往復で昔は5.5往復と上り1本便数が多かった)だったが”とことん使えない”のは変わらない三江線なのである。 まぁ、鉄道に乗って島根の江津くんだりまでくるだけでも大変な徒労で、しかも山峡深くにあって探勝に時間がかかる滝めぐりをするなら、数少ない列車の始発に乗って行動すべく駅寝が必須条件となる。
名所案内には千丈渓が紹介されているけれど
※ グーグル画像より拝借
さて、その三江線を使っての滝見のターゲットは、県立自然公園の《千丈渓》である。
なぜ『県立自然公園』と表したかというと、それだけマイナーな景勝地だと言う事だ。
それに加えて、平成2年にグリーンルネッサンスが『百名滝』を選定するまでは、『滝見』という行為自体がマイナーで、そんな事をする人はほとんどいなかったのである。
渓谷の名称の由来となった千丈敷岩
このマイナーな景勝地に”とことん使えない”三江線を使っていく事自体が、ともすれば『命懸け』とも成り得るのである。 まぁ、『命懸け』は少しオーバーかもしれないけれど。 その今回の目的の《千丈渓》への最寄り駅が、今回取り上げる川戸駅なのである。 この川戸駅は、現在は江津市に編入されているが以前は桜江町という一つの町の中心駅で、当時は有人駅だったのである。
・・と言う訳でこの駅での駅寝は難しく、別の駅寝できる無人駅を探さねばならぬなど、更に《千丈渓》への滝見が困難となるのである。 これは『かつて取った杵柄』で、大きな籠状の長椅子のある『優良駅寝駅』の石見川越駅を憶えていたので事なきを得たのだが。←「憶えてた」と言う事は、撮り鉄時にこの駅で駅寝したんですね・・
・・で、翌朝の始発に乗って、《千丈渓》の最寄り駅の川戸へ。 さて、駅に着いたなら着いたで、マイナーな景勝地ゆえの難題が降りかかるのだ。 それは、マイナーな景勝地に向かう交通手段が皆無で、「タクシーを使うしかない!」って事だ。
マイナーな観光地へは
タクシー以外にアプローチ手段がない
※ グーグル画像より拝借
『行き』は高いタクシー代にうなだれるだけで済むが、問題となるのは『帰り』なのである。
それは、これよりどれ位の時間がかかるか判らない渓谷探勝を控えて、タクシーを予約する訳にはいかないのである。 また、携帯などは夢物語の四半世紀前。 タクシーを呼ぶ連絡手段も皆無なのだ。
「もちろん」の事、公衆電話もある訳のない無人地帯だしィ。
今回の《千丈渓》での一番星
三三ノ滝
「後から車で滝見にやってくる観光客をヒッチハイクすればいいや」と安易に考え、《千丈渓》の渓谷探勝に繰り出す。 その《千丈渓》はかなり大きく、渓谷探勝には4時間かかってしまったのである。
これでタクシー予約をしたものなら、予約時間に戻れずに置いてきぼり喰らっただろうね。
美しい4段斜瀑を魅せる松ヶ丘ノ滝など
壮大な渓谷を魅せる《千丈渓》
・・で、戻ってくる最中は誰一人すれ違わなかった・・っていうか、渓谷入口にある駐車場代わりの荒地に戻っても車一台存在しなかったのである。 とどのつまり、「マイナーな景勝地過ぎて、夏休み期間でも訪れる観光客が皆無だった」って事ですね。
コリは困った。 完全に目論見が外れたのである。 目論見が外れた上は、駅には歩いて戻るしかないのである。 「途中の道すがらで、ヒッチハイク出来たら幸運」と思いつつ、夏の炎天下のアスファルトの道を駅に向かって歩き出す。 でも、コレって若かったから出来た事で、今やったら熱中症でぶっ倒れるよ。
一縷の望みを託した「道すがらのヒッチハイク」も不発(北海道なら上手くいくかもしれないが、島根ではねぇ)に終わり、ギラギラした日照りが照り付ける炎天下のアスファルトを8km歩き切り、川戸の駅へ。 この時は、若いとはいえ多少の脱水症状を感じたよ。
夏は爽やかな涼しさを
冬はほのかな暖かさを抱く木造駅舎
早速、駅舎の中に入ってひと息着いてから、駅の向いにあった雑貨・駄菓子屋でアイスクリームを買って貪り食う。 この時のアイスの美味さは、今もおぼろげであるが憶えている。 これが、「”とことん使えない”鉄道を使っての自然探勝は、ともすれば『命懸け』とも成り得る」って事の一例なのである。
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No title * by 風来梨
風旅記さん、こんばんは。
三江線に沿って流れる江の川には、中国山地を源とする川がいくつも合流します。 その流れはいずれも急流で、多くの滝を潜ませています。
あの頃は、その滝達を訪ねたくても鉄道(三江線)と自分の足以外に手段がなかったですね。 でも、時間だけはたっぷりありましたね。 しかし、今は車もあるし金も不自由しない位はあるけれど、休日という時間は限られてます。
「果たして、今と昔のどちらが恵まれているのか?」と、よく考えますね。
三江線に沿って流れる江の川には、中国山地を源とする川がいくつも合流します。 その流れはいずれも急流で、多くの滝を潜ませています。
あの頃は、その滝達を訪ねたくても鉄道(三江線)と自分の足以外に手段がなかったですね。 でも、時間だけはたっぷりありましたね。 しかし、今は車もあるし金も不自由しない位はあるけれど、休日という時間は限られてます。
「果たして、今と昔のどちらが恵まれているのか?」と、よく考えますね。
三江線にはまた廃止検討の噂も出ているようですね。人口希薄な山奥をこのようなダイヤで運行していても、もはや乗客を増やすことはできないでしょうし、現状を維持しているだけの“抜け殻”のようにも思えてしまいます。
沿線(と言えるのか分かりませんが…)の見所へも、実際には交通手段がなければ、鉄道の存在価値がなくなってしまいますね。
一方で、三江線のような超閑散路線を使って、その土地にある交通機関を使って旅するスタイル、私はむしろ好きです。行ける範囲も狭くなりますし、自家用車で巡るよりも効率も悪いかもしれませんが、その土地に入り込んでいる感覚がいいものです。
この路線には、近々に訪ねてみようと思っています。
記事、楽しませて頂きました。
今後とも、宜しくお願い致します。
風旅記: http://kazetabiki.blog41.fc2.com/