風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第245回  谷川岳・北部主稜線

『日本百景』 夏  第245回  谷川岳・北部主稜線  〔群馬県・新潟県〕


朝日を浴びて輝く峻崖・一ノ倉沢

   谷川岳 たにがわたけ (上信越高原国立公園)
群馬・新潟県境にそびえる谷川岳 1977メートル は嶮しい山容を示し、ロッククライミングのメッカとなっているが、その一方で遭難者も多く“魔の山”としても知られている。 
この山は、山頂部に三角点のある“トマの耳”と、その北に最高点の“オキの耳”の2つのピークを持つ双耳峰で、山麓から仰ぎ見ても、この『耳二ツ』はよく目立つ・・。 

群馬県側の東斜面は雪崩・豪雨などの浸食作用で嶮しい谷を刻み、中でも一ノ倉沢の谷は容易に人を寄せつけず、クライマー達の初登攀 とはん 争いの舞台ともなった。 
山頂からは、燧ケ岳・越後三山・苗場山などの眺望が素晴らしい。




谷川岳・北部山域周回ルート 行程図

    行程表             駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 JR水上駅より鉄道利用(0:15)→土合駅(1:00)→巌剛新道入口
     (3:40)→肩ノ小屋分岐(0:05)→谷川岳・トマの耳(0:15)→谷川岳・オキの耳
     (1:20)→茂倉岳(0:10)→茂倉避難小屋
《2日目》 茂倉避難小屋(0:15)→茂倉岳(1:40)→武能岳(0:40)→蓬峠
     (1:10)→新道・旧道分岐(1:30)→JR巡視小屋(0:45)→一ノ倉沢出合
     (1:10)→JR土合駅より鉄道利用 (0:15)→JR水上駅


マチガ沢の峻険な岩壁を
見ながら登っていく

  《1日目》 巌剛新道を使って谷川岳主稜線へ
谷川岳の東面にある《一ノ倉沢》・《幽ノ沢》・《マチガ沢》などの急峻な谷は、ハーケンの音が響くクライマーの世界だ。 とても、一般ハイカーが行ける領域ではない。 ならば、せめて壮大なスケールの谷を望み、歴々のクライマー達が馳せた登攀の夢を感じ取りながらこの山を極めたいものである。 

谷川岳登頂には数多くのルートがあるが、この行程では《マチガ沢》を眼下に見下ろしながら登っていく『巌剛新道』のルートを選んだ。 それでは、素晴らしい展望を望みながら“耳二ツ”の谷川岳へ登ってみよう。

・・谷川岳登山の窓口となるJR上越線・土合駅は、ある事で有名な駅だ。 それは下りホームが、何と地上まで486段の階段を経た地下の底にある・・という事である。 関東方面からの登山者は、谷川岳登山の前に“ひと仕事”を強いられる。 もし、体力を温存したいのなら越後湯沢まで新幹線に乗って、上越線の上り列車で土合に向かう方法もある。 

土合駅の上りホームは地上にあるので、何ら問題はない。 だが、現在のJR上越線の運行状況(1日上下5本)では、とても使えたものではないのである(まぁ、鉄道利用で登山する者は、ほとんどいないであろうが・・)。 安全登山を期す為にも、必ず前日までに登山口へのアプローチしておこう。

・・土合駅から『谷川岳ロープウェイ』の乗場を経て舗装道を約3km歩くと、『巌剛新道』の登山口である《マチガ沢出合》に着く。 谷川岳本峰まで、ほぼ垂直に突き立っている急峻な岩壁を魅せる《マチガ沢》の全容を眺めたなら、石を積み上げた道標のある『巌剛新道』の登山口へ入っていこう。

登山口に入ってしばらくは、ツガの樹木に囲まれた登り良い道が続く。 やがて《マチガ沢》が近づいてきて、《マチガ沢》を遡行する登攀コースを分けて、左側にそびえる《西黒尾根》の樹林帯の中へ入っていく。

分岐では、足元の岩にペンキで『ガンゴー↑』と指示してあるが、これを見落として沢の対岸にある『マチガ沢登攀コース』のペンキ印につられて、《マチガ沢》に入ってしまうことがあるので注意が必要だ。 道迷いを避けるため、“『巌剛新道』は、いっさい沢を渡らない”と憶えておくといいだろう(今は、ロープで進入を阻止しているようである)。 


谷川岳が生み出す水の第一歩
マチガ沢大滝
ぢ・つ・わ・・ 道間違えて
マチガ沢に入り込んだりして

この分岐を過ぎると、樹林帯の中につけられた幅の広い登山道を急登していく。 約1時間位の急登に汗を搾られると、ようやく樹木に切れ間が出てきて、《マチカ沢》の垂直の岩峰と天を衝くような尖峰・・、そして大きな雪渓より湧き出た水を落とす《マチガ沢大滝》を望む事ができる。 展望の利くこの辺りが、谷川岳とのちょうど中間地点くらいである。 


嶮しさ極めたる
マチガ沢東尾根の尖峰群
ちなみにこのアングルは間違ってマチガ沢に
入り込まないと撮れなかったりして

ここからつづら折りの登りを3~4度繰り返すと、シラビソなどの背の高い樹木からダケカンバなどの潅木に変わってくる。 登るごとに《マチガ沢》の展望が良くなってきて、更に峻嶮に、更に壮大なスケールで天を衝く東尾根の峰々が臨場感大きく迫ってくる。 また背後には、東尾根の尖峰とは対照的に、緑豊かな白毛門が端正な三角錐の容姿を魅せている。 


美しい姿を魅せる白毛門

展望が良くなってから更に急登でつめていくと、これまでの幅広い土道から、稜線直前の岩稜登りへと変わる。 ここからは、簡単ではあるが鎖場が2~3ヶ所続き緊張させられる。 この岩稜を鎖片手によじ登っていくと、《西黒尾根》の稜線に飛び出す。 ここは《ガレ沢のコル》といい、《西黒尾根》通しの道との合流地点だ。 

ここからの展望は、いままで下から見上げていた《マチガ沢》の大きな雪渓が遙か下に見下ろせて、かなり登ってきたことを実感できるだろう。 また、《マチガ沢》の尖峰群が、岩壁を連ねて谷川岳の主稜線につながり迫力満点だ。 一方、西側を見渡すと、緑濃き山なみとロープウェイの施設が見える。 

西側の尾根は総じて緩やかで、東側の《マチガ沢》の大岩稜とのギャップがすざましい。
稜線上からは、岩ガレが積み重なってラクダのコブのような峰を次々と越えていく。 この辺りは浮石が多く、足元に注意したい。 この岩ガレの峰を直登気味に登っていくと、《氷河の跡》と呼ばれる一枚岩のV字溝が現れる。 

これを越えて、西側から寄り添ってきた尾根直下の台地よりトラバース気味に斜めに登りつめていくと、《肩ノ広場》と呼ばれる広い稜線上に出る。 ここまで来ると、谷川岳の『耳二ツ』の片側・トマの耳へはあと一息だ。 ものの5分で頂上に登り着くだろう。


谷川岳“トマの耳”

・・谷川岳・トマの耳の標高は1963m。 もう一方の“耳”・オキの耳には標高で一歩及ばないが、三角点を備えて谷川岳主稜線の中で随一の眺望を誇っている。 岩の積み重なった細長い頂上では、ロープウェイ利用の日帰りハイカーが弁当を広げて思い思いに頂上を極めた充実感に浸っている。 

トマの耳でひと息ついたなら、もう一つの“耳”・オキの耳 1977メートル に行ってみよう。
こちらは谷川岳最高峰であるにもかかわらず、2つの“耳”をつなぐ吊尾根が嶮しいのが幸いしてやってくる人は半減する。 そして眺めも、こちらの方が《マチガ沢》を真下に見下ろせて、より迫力があるようだ。 


谷川岳“オキの耳”

オキの耳から、ハイカーがくつろぐトマの耳をカメラに収めて出発しよう。 ここからは、谷川岳東面屈指の険悪な谷が魅せる鋭い岩稜と岩壁を下に“覗き”ながら主稜線を伝っていく。 主稜線は細く、幅は1mそこそこしかない。 踏み外すと、結果はいうまでもない事はお解かりであろう。 


谷川岳“耳二ツ”

そして、特にオキの耳から大きな一枚岩を斜めに下っていく所は、目に入る景色が景色だけに緊張させられる。 この花崗岩の大きな一枚岩を斜めに下ると、西側斜面に移ってハイマツの中をトラバース気味に巻いていく。 これはたぶん、《一ノ倉沢》の中でも最も登攀が困難といわれる《衝立岩》やA~Dの各ルンゼが突き出している所を回避した為であろう。 


美しき山岳稜線を魅せる
谷川岳と一ノ倉岳


ハイマツの中の巻道を通り抜けると再び稜線上に出て、東面の鋭い岩稜と岩壁が眼下に広がってくる。
ここは、谷川岳と一ノ倉岳とを結ぶ主稜線の最低部に当たり、通称・《ノゾキ》と呼ばれている。
ここからは、壮大なスケールで切れ落ちている《一ノ倉沢》を見下ろす事ができる。 
実際、そのすざましい威圧感に足が竦み、その名の通り“覗く”のがやっとの事であろう。 


“ノゾキ”より覗くマチガ沢

この《ノゾキ》を通過すると、主稜線は一ノ倉岳へ向かって一直線に高度を上げている。
当然、これを急登で乗り越えなければならない。 標高差200m近くの急登と、日本屈指の鋭い岩稜が突き上げている“痩せ尾根”を通過する緊張感が合わさって、かなり疲れる事だろう。 緊張する事によって普段の倍は疲れて登り着いた一ノ倉岳 1974メートル 山頂は、今までの緊張がウソのようになだらか草原が茂倉岳に向かって続いている。 


仙ノ倉山や平標山など
“スパイス”の効いた名峰が連なる



雲海湧く夕空にそびえる仙ノ倉山

また、この頂上にある避難小屋は、ドラム缶を半分に切って伏せただけの“非難”したくなるような造りの小屋(というか・・本当にドラムカン)であった。 少なくともこれを目にすると、からかわれているみたいで、どっと疲れて“やる気”がそげる。


谷川岳名物 ”ドラムカン”

後は、草原の中を20分ばかり緩やかに上下すると、茂倉岳 1978メートル に着く。 茂倉岳からの展望は明日の行程で紹介する事にして、眼下に見下ろせる今日の宿・《茂倉岳避難小屋》へ向かおう。 


超”まとも”な茂倉岳避難小屋
まぁ・・コッチを拒否って
”ドラムカン”は有り得んでしょうな

茂倉岳から避難小屋までは、ものの10分もあればたどり着ける。 この避難小屋は新しく綺麗で、快適な一夜を過せることだろう。 また、水場も1分下った所・・と、ごく近いのが嬉しい。
さて、明日は、東面屈指の鋭い岩稜を見ながら風にそよぐ草原とお花畑の中を歩く・・という、変化に富んだ魅力あふれるコースを使って下山しよう。


明日はこの雲が
立ち去っていく事を期待して




願い通り
昨日の厚い雲は去ってゆき

  《2日目》 蓬峠・一ノ倉沢出合を経て下山
朝、天気が良ければ早めに小屋を出発して、茂倉岳頂上で爽快な“山の朝”を楽しもう。 茂倉岳の頂上より見渡せは、谷川連峰の全ての峰々と谷川岳の『耳二ツ』・・、清水峠へと続く草原のうねり・・など、絶景が周りを取り囲む。 特に美しいのは、雲海より浮き出る谷川連峰最高峰・仙ノ倉山 2026メートル の山らしい容姿である。 


朝の爽やかな雰囲気の中
谷川岳の峰々を望む

昔から“早起きは三文の得”との諺があるが、本当にその通りである。 早起きするだけで、このような景色を眺める事ができて、そして心に残る山旅を経験できるのである。 これは“三文”どころではない。
一生の財産となる“思い出”を得る事ができるのだ。 朝の素晴らしい景色をじっくり味わったなら、縦走路より離れて一段低い標高の武能岳を目指して、風にそよぐ草原の“うねり”の中へと下っていく。 


下に望む稜線の
”うねり”に向けて下っていく

《幽ノ沢》が奈落の底に向かってイッキに落とす荒々しい光景と、草原を飾るマツムシソウ・アズマギク・オヤマノエンドウ・ハクサンフウロなどのお花畑が奏でる優しい風景との両方を楽しみながら下っていこう。 

素晴らしき稜線漫遊
その1

朝露と朝の光を浴びる
ツリガネシャジン


花を広げて陽の光を一杯浴びる
ミヤマアズマギク


振り返ると谷川岳の
”オキの耳”が角を出し・・


視線をズラせば
谷川連峰の主稜線のおりなすスカイラインが

色とりどりの花々を愛でてはザックを下ろし、谷川岳の『耳二ツ』が角度を変えるごとに魅せるひと味違った姿に視線を奪われて、またザックを下ろす。 こんな事を繰り返しながら行くので、武能岳までの3kmはとてつもなく時間を食う。 


深い谷筋を刻む幽ノ沢

この3kmの内訳は、茂倉岳より400m下って、お花畑の最低鞍部を踏んで武能岳への200mの急登・・なのだが、途中に《幽ノ沢》の“崖っぷち”が縦走路に食い込んで、幅僅か70cmの痩せ尾根や、ハイマツのブッシュを掻き分けての急登・・と、結構色々とある道なのである。
しかし、何といっても一番しんどいのは、キツいアップダウンであろう。 

素晴らしき稜線漫遊
その2

昨日の水気が水蒸気となって
湧き上がり・・
今日は暑くなりそうだ


艶やかなピンクを魅せる
ハクサンフウロ


素晴らしき稜線漫遊に時を忘れ
こんな近くの移動に
随分と時間を費やして


朝露を抱くその姿とその色は
エロスな様相を示して
オヤマノエンドウ

武能岳 1760メートル の頂上に着いて茂倉岳の方向を見渡すと、あまりの近さに比較してかかった所要時間とのギャップに驚嘆するかもしれない。 でも、東方向に続く見渡す限りの大草原・・、その大草原の“うねり”がそのまま山の稜線となる雄大さを目にすると、時間など些細な事を気遣うのが滑稽に思えてくる。


蓬峠を望む
幾重にも連なる大草原は
“感動”そのものだ

せっかく、雄大な草原が目の前に広がるのだ。 ゆっくりと味わって行かなければ“もったいない”。 
大草原の向こうに建っている小さな山小屋に向かって、歌でも歌いながらのんびりと歩こう。 
そうすると、いつの間にか大草原の中の小さな山小屋にたどり着く事だろう。 時折振り返ると、谷川岳の“耳二ツ”がいかつく角を出していて、穏やかな情景の中での“スパイス”の存在となっている。


歩いてきた道を振り返り・・

 大草原の中の小さな山小屋・《蓬ヒュッテ》からは、今までの草原と違ってガレ気味の斜面を斜めに切るように下っていく。 10分程下ると、利根川の源流の湧き水がサラサラと流れる水場に出る。 
この水が、やがて流域面積日本一の大河川となって海原にたどり着くのだ。 ひとつのロマンがここにある。


この水がやがて
我が国最大の流域面積の川となるのだ

・・《蓬峠》からは道は整備されていて、距離は長いものの歩きよい。 1時間程下れば、《一ノ倉避難(非難!?)小屋(ドラムカン!?)》とほぼ同レベルの《白樺小屋》(少しましか・・、しかし、利用するのはマムシ位だ・・と小屋に書いてあった)を通過して、落葉混じりの道を少し行くと《旧国道・新道分岐》に差しかかる。 ここは道標の示す通り!?(道標に『旧道・通行困難 やめといた方が無難”とある・・ 目ざとい道標の多い山域だ)《新道》を下っていこう。 


”ドラムカン”よりマシっぽいけど
小屋の中に「利用するのはマムシ位だ」と
書いた紙が貼ってあったよ


入口にも「むやみに使用しないで・・」
と書いてあるし

道標の指示通りに進んだ《新道》はハイキングコース並に整備されて、歩き慣れた人には物足りないかもしれない。 分岐から1時間半程歩くと、下り始めに見た利根川源流の湧き水からなった沢の岸に下り着く。 この沢を渡ると、程なく湯檜曽川の本流に沿って歩いていく。 道自体は問題がないのだが、山肌より落ちる沢滝で濡れている所が多く、また長時間歩行で疲れてくる頃なので不注意によるスリップに気をつけよう。 

後は湯檜曽川の本流に沿って続く、《土合》までの最短コース・《新道》をそのまま歩いていくといい。 
だがワテは、途中の《JR巡視小屋》より《旧道》に渡って、谷川岳の誇る東面の壮大な谷を横目に見ながら歩いていくコースをお薦めしたい。 《幽ノ沢》・《一ノ倉沢》・《マチガ沢》のド肝を抜かれる壮大な景観を見ながら歩く、最後の最後まで魅せてくれる素晴らしいコースである。 谷川岳というば険悪な沢や岩壁。 これを見ずしてこの山の魅力は語れないのである。

     ※ 元ネタは、メインサイトの『谷川岳<1>』を御覧ください。
























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No title * by 鳳山
谷川岳、NHKの日本百名山で見た事がありますが雄大ですね。

ナイス

No title * by 風来梨
鳳山さん、こんばんは。

谷川岳は標高は2000Mに届きませんが、豪雪地域故に雪に削られた魅惑的な山容を示しています。

日本を代表する山岳景観の一つで、山の玄人から一般登山者を虜にしていますね。

コメント






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No title

谷川岳、NHKの日本百名山で見た事がありますが雄大ですね。

ナイス
2016-06-28 * 鳳山 [ 編集 ]

No title

鳳山さん、こんばんは。

谷川岳は標高は2000Mに届きませんが、豪雪地域故に雪に削られた魅惑的な山容を示しています。

日本を代表する山岳景観の一つで、山の玄人から一般登山者を虜にしていますね。
2016-06-29 * 風来梨 [ 編集 ]