2016-04-17 (Sun)✎
日本の滝を訪ねて 第138回 米子大瀑布 〔長野県〕
80m級の大瀑布が
そろい踏みで姿を魅せる
米子大瀑布
米子大瀑布
米子大瀑布 よなごだいばくふ 長野県・須坂市
権現滝 落差75m・不動滝 落差85m 他にも 奇妙滝 60m もあり
落差80m級の瀑布が2つ連なる、我が国では珍しい滝である。 ワテの知っている限りでこのような大瀑布が連なっているのは、北海道・層雲峡の『銀河・流星ノ滝』と知床・羅臼海岸の『男滝・女滝』位であろうか。 当然、我が国でも珍しいストレートの2本の大瀑布は滝信仰の不動尊として奉られ、御神体として崇められている。 それでは、5月の連休にこの滝を訪ねる事ができたので、その訪問記を書き記すとしよう。
米子大瀑布 位置図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
須坂市街〔須坂・長野東IC〕より車 (0:25)→米子大瀑布アクセス道路入口
須坂市街〔須坂・長野東IC〕より車 (0:25)→米子大瀑布アクセス道路入口
(0:25)→米子大瀑布・駐車場 (0:20)→米子不動尊・本堂 (0:05)→不動滝 (0:05)→権現滝
(0:10)→米子不動尊・宿坊 (0:10)→米子大瀑布(2つの滝)展望所 (0:20)→奇妙滝
(0:10)→米子不動尊・宿坊 (0:10)→米子大瀑布(2つの滝)展望所 (0:20)→奇妙滝
(0:15)→大瀑布展望あずま屋 (0:25)→米子大瀑布・駐車場より車
(0:50)→須坂市街〔須坂・長野東IC〕
この滝は長野市の郊外にある須坂市に位置し、前日に長野県内に入っていれば滝探勝がしやすくなるだろう。 だが、米子鉱山の跡地に設けられた遊歩道をめぐると2時間から3時間の時間を要し、じっくり滝探勝を望むのなら、前日アプローチの早朝出発が望ましいだろう。 それでなくても、人気スポットゆえに時間が経つにつれて多くの滝見観光客が訪れて、じっくりと滝探勝がし辛くなってしまうだろうから。
この滝は長野市の郊外にある須坂市に位置し、前日に長野県内に入っていれば滝探勝がしやすくなるだろう。 だが、米子鉱山の跡地に設けられた遊歩道をめぐると2時間から3時間の時間を要し、じっくり滝探勝を望むのなら、前日アプローチの早朝出発が望ましいだろう。 それでなくても、人気スポットゆえに時間が経つにつれて多くの滝見観光客が訪れて、じっくりと滝探勝がし辛くなってしまうだろうから。
この滝を探勝するにあたって私自身であるが、前日アプローチと早朝出発をするべく小布施にあるETC専用IC前の『道の駅・おぶせ』で車中泊を経た上で早朝6時過ぎに出発したのであるが、これは大正解だったようである。
この米子川渓流の奥に
大瀑布がひそんでいる
現に秋の紅葉シーズンでは、アクセス路のマイカー規制が行われ、マイクロバスへの乗換を要するのである。 そして昼前の多客時になると、滝前の駐車場が満車で車が止めれないケースも想定されるのである。 こうなると滝探勝の断念にもつながり、この地にやってくる事自体が徒労と化するのである。
駐車場は60~70台ほどの駐車が可能なスペースがあるがシーズン時は一瞬で満杯となり、最悪は駐車場の順番待ちに陥って狭い道ゆえに転回して戻る事もできない事態もあり得るので、人気観光スポットではできるだけ『夜討ち・朝駆け』(前日アプローチの翌早朝出発)を心掛けた方がいいだろう。 長々とアプローチの事について記したが、それでは滝探勝に出かけよう。
米子大瀑布 周遊ルート詳細図
紅葉シーズン時にはマイカー規制が行われる程の観光スポット故に、滝探勝の遊歩道は基本的に一方通行の周回ルートで上りと下りが分けられている。 そして、トイレは数ヶ所設置されているようだ。
もちろん、駐車場前にも公衆トイレがある。 ハイキングコースの如く整備された遊歩道を伝っていく。
最初の滝・《不動滝》までは800mの距離で200m毎に『あと○○m』の立札看板が立掛けられ、足元の装備がお粗末な一般観光客を意識した整備となっているようだ。 でも、だからといってスニーカー履きで行くと、露出した岩に気躓いたなら死ぬ程に痛い目を見るので御用心の程を。
滝への遊歩道を
ひと汗かく程に歩くと
頭上に天から掛る白布が現れる
頭上に天から掛る白布が現れる
それは真に
白い羽衣を纏う天女の降臨が如く
その姿に目にして
一刻も早く天女の降臨を
目の前で見たいと欲した
さて、沢を2ヶ所橋で渡って登り基調となった遊歩道をつめていくと、天から涼しげな風が吹きそよいでくる事だろう。 その涼しげな風の正体は、見上げる位置にある《不動滝》の大瀑布から吹きよせる滝飛沫を乗せた風である。 まずは、滝の落水を流す支沢に敷された桟橋の上から、見上げる位置にある《不動滝》を堪能しよう。
上を見上げると
繊細な調べながらも
豊富な落水量だとわかる
高さと美しく淑やかな滝姿を見上げていると、「この滝の前に立ちたい」との欲求が膨らんでくる事だろう。 そう思い立ったなら、この天から飛沫を乗せた風をそよがせる滝の目の前に急ぐとしよう。
天女の羽衣の下には
虹が架かっていた
先程の滝を見上げた位置から、滝の前までは歩いて10分程だ。 途中でシーズン中はあづま茶屋となるであろう『米子不動尊』(米子瀧山不動寺)の本堂が建っていて、その本堂より右に行けば《不動滝》、左に行けば《権現滝》に行き着く。 いずれの滝へも距離がそれぞれ200m程の登り道だ。
不動滝》と《権現滝》の間はトラバース道があってこの本堂には立ち寄る事がないので、此度一瞬の通過で終わってしまうのである。 これは宗教には全く興味のない私とはいえ、『米子不動尊』の要旨を一つまみは述べねばならぬだろう。
天女の羽衣たる
落水模様を狙って
何でもこの『米子不動尊』は、千葉の『成田不動尊』や新潟の『菅谷不動尊』と共に『日本三大不動尊』となって崇められているようである。 この『米子不動尊』の奥の院は大瀑布を背にして建っており、行者の水行の霊場となっているらしい。 また、調べていて新たに知った知識では、この不動尊は我が住む関西圏にある「牡丹まつり」で有名な奈良の『長谷寺』が総本山という事だそうである。
『米子不動尊』の概要を説明するに要する時間位歩くと、天から飛沫の白い羽衣をまとった美麗な滝が白布を掛けているのが見えるだろう。 その飛沫の羽衣が優雅でかつ淑やかで、その滝を望むと羽衣を纏う天女の姿を思い描く事だろう。 「♪深く瞳を閉じて、今~天女のようにお前は一人空へ帰る」という長渕剛の「祈り」という唄の寂の部分をハミングしながら、天女のような艶やかな滝をしばし眺めよう。
天女のような艶やかな滝を
しばし眺めよう
滝飛沫を浴びるのが寒く感じてきたなら、口惜しいが滝からの去り時であろう。 次は2つの滝を結ぶトラバース道を伝って、もう一つの大瀑布《権現滝》に向かう。 2つの大瀑布を結ぶ道は崖をヘツる経路で設けられており、一応はトラバース道という事で鎖は設置されてはいるが大した危険はない。
権現滝は遠望という事で
少し割引き感がある
少し割引き感がある
このトラバース道を100m足らず伝っていくと、《権現滝》が姿を現す。 だが、展望台は滝から100m程離れていて、《不動滝》の飛沫のおりなす天女に魅せられた眼にはもう一つ「物足りなさ」を感じるのである。 でも、落差75mの水量豊富な直瀑で、大瀑布の名を誇れる名瀑だよ。
周囲の灌木と岩盤を添えると
男滝も引き立って
男滝も引き立って
ちなみに、こちらの《権現滝》が『男滝』と呼ばれ、淑やかさを魅せる《不動滝》が『女滝』だそうだ。
男と女の別称は「さもありなん」であるが、ここでも女が男を凌ぐ近代世間の縮図が垣間見れるようである。
男と女の別称は「さもありなん」であるが、ここでも女が男を凌ぐ近代世間の縮図が垣間見れるようである。
《権現滝》の先で、遊歩道は階段の急降下となる。 遊歩道は全般的に完全整備されて危ない所は皆無だが、強いて言えばこの階段の下降が最も危険個所かもしれない。 なぜなら、踏み台の狭い簡易ハシゴの階段であるからだ。 でも、踏板にビニール芝マットの滑り止めが貼られるなど、致せり尽くせりな通路でもある。
不動尊の宿坊から
離れていくように
遊歩道はつけられている
遊歩道はつけられている
この階段を降り切ると不動尊の宿坊の脇を通って、いよいよクライマックスの景観に向けて進んでいく。 その「クライマックスの景観」とは、2つの滝を同時に眺める展望所である。 道標による表示によると、不動尊の宿坊から400m・徒歩10分程である。
宿坊を抜けると米子川の本沢を渡って、台形状に切られた米子鉱山跡へ緩やかに登っていく。
その登りの最中から、2つの滝を従える大岩盤が平行して立ちはばかるように対峙して、2つの大瀑布の観瀑台となるのである。 ここは紅葉時のパンフに乗る『米子大瀑布』最高の展望所で、通る行楽客の全てが立ち止まってカメラを構えるスポットでもある。 あぁ、秋にも一度は訪れてみたいものである。
二滝展望台
米子大瀑布のクライマックスだ
米子大瀑布のクライマックスだ
:
引いて背後の残雪の山を
引いて背後の残雪の山を
入れるのがいいね
二滝展望台から
不動滝をアップで狙う
この滝見銀座の眺めを目にしながら歩いていくと、台形状に切られた旧米子鉱山跡の広大な敷地の上に出る。 この旧米子鉱山は硫黄鉱山で操業は古く、江戸時代中期の頃からの歴史ある鉱山だったようである。 そして、日清・日露・世界大戦を経る明治から昭和の時代には火薬の原料としての硫黄が重宝され、最盛期には1500もの人が生活する鉱山街を形成していたとの事である。
説明版によると、この広い跡地に鉱山住宅が数棟建てられ、銭湯や映画館・学校もあったという。
説明版によると、この広い跡地に鉱山住宅が数棟建てられ、銭湯や映画館・学校もあったという。
そして麓との往来は、延長14kmもの索道(ロープウェイ)を建設してこれを使って往来していたという。
だが、戦争が終わって弾薬や火薬の需要が激減し、戦後15年を経た昭和35年に閉山となったようである。 今は、その跡片が全くといい程にない広大な芝の空地となっている。 説明版を読むと、平家物語の『祇園精舎の鐘の声』というあの句が頭を過るのである。
権現滝を食っていた!?
奇妙滝
遊歩道は旧米子鉱山の鉱山住宅跡地を縦断するように進み、鉱山跡地を抜けて林道に出る。 ここから林道を300m程下ると、奇妙沢から60mの落差で瀑布を掛ける《奇妙滝》が現れる。 だが、落石などがあったのか、滝への通路はかなり傷んでいた。 現地も、この滝は『米子大瀑布』の観光スポットから外す意向のような、そうでないような。 一応、林道は通行止だったし。
でも、この滝は滝つぼの前まで行けて、滝壺の前に立つと数分で濡れネズミとなる程に飛沫を浴びる。
飛沫で滝の落ち口が輝くその滝姿は、正直100m先の遠望である《権現滝》を食っていたような。
まぁ、これはあくまでも、私個人の感想であるが。
滝の落ち口に
光をかざしてみた
後は林道から旧鉱山跡の遊歩道に戻り、駐車場への下り口と示された下り専用道を距離にして900m下っていくだけである。 下り道は半分石畳、半分岩ガレの道で、イッキに下るとこの下りが最も体力を要するようである。
※ 詳しくは、『撮影旅行記』の『関東・甲信越の滝めぐり<1>』より
『米子大瀑布』を御覧下さい。
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