風来梨のブログ

このブログは、筆者であるワテの『オチャメ』な日本全国各地への探勝・訪問・体験記です。

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第221回  沙留・流氷の丘

『日本百景』 冬  第221回  沙留・流氷の丘  〔北海道〕


もうこの国には存在しない鉄道風景

我が国では、オホーツク海沿岸でしか魅る事の叶わない流氷風景。 そして季節も、2月から3月初旬の限られた時期にしかやってこない流氷風景。 それも毎年必ず来るとは限らず、盛大に寄せ来る年もあれば全く来ない年もある”きまぐれ”な情景である流氷風景。


この丘には3度訪れたが
3度目でやっとこの丘で
流氷を目にする事ができた

そんな生き物の尻尾をつかむ様な性質の情景に加え、時の移り変わりとともに路線廃止により”もう二度と”この国では魅る事の叶わぬ情景を・・、今回はあの頃の憧れやまぬ流氷と鉄道の情景を回顧しつつ綴ってみようと思う。


この年は流氷が海上を埋め尽くす
流氷の当たり年だった

流氷の街・紋別の端の市街地・渚滑を出ると、かつてあった名寄本線の線路はオホーツク国道のR238と併走する。 位置取りはR238が海側、名寄本線が陸側の小高い土手をゆく。 やがて裏側に、土手上の駅への覆いのついた階段のある乗降場・富岡を通過する。


この富岡は乗降場としては格下で、朝夕の下り2本・上り3本が止まるだけの乗降場だ。
乗降場の名称の富岡集落は内陸に2kmほど入った所にあり、駅付近の土手裏にもまとまった集落はなかったようである。


路線廃止の年は
暖冬で流氷どころか雪もほとんど無かった

《富丘》を過ぎて、いよいよ『流氷の丘』の最寄り駅《沙留》に着く。 駅の手前で国道をクロスして、これよりピッタリと海に寄り添う。 列車の車窓から流氷を眺めるのもいいが、ここはこの駅で降りて“流氷と列車の情景”をカメラに収めよう。


流氷を望む波戸場の小集落・沙留

狙い時は、もちろん朝。 海の全てに敷き詰められた白い流氷群とピンク色に染まった空、そしてその中を行き交う赤い単行気動車の孤独な姿は、とても美しく崇高にさえ思う。


流氷は気まぐれ
来ない年もあれば貧弱な年もある
名寄本線廃止の年は
流氷が接岸しなかったので
この年が最後の情景となった

それは名寄本線が廃止となった今、この国では二度と撮れない鉄道情景であるのだから。 
流氷と列車の写真なら釧網本線の北浜付近で撮る事は可能だが、この区間のように前面に原野が広がる絶好の流氷スポットを走る鉄道路線は、もうこの国には存在しないのである。 
拙いあの頃の腕ではあるが、とにかくその貴重な軌跡を残せたのはとても幸運な事だと思う。


沙留を出ると流氷原に舞いおりる

寂れた波戸場の駅《沙留》を出ると、海に向けて掘立て小屋のような待合室がポツンと佇む“侘しい情景の駅”の筆頭候補に挙りそうな《豊野》と待合室もない乗降場の《旭ヶ丘》を過ぎ、興浜南線の接続駅である《興部》までオホーツク海に沿っていた。


早朝から朝へ
光が流氷原を眩く照らし始める


撮れた事が幸運だった
今となっては二度と撮れぬ情景だから


だから・・何も考えず
ただひたすら撮りまくった

今思えば沙留・流氷の丘だけではなく、寂れた情景を魅せた《豊野》や《旭ヶ丘》で広がる流氷情景も撮っとけば良かったかな・・と思うが、あの頃は二十歳になるかならんかの歳で足(車)もなかったし、二十歳そこらでそこまで思考はめぐらすのは酷でもあったろう。


二十歳そこらの経験浅き小僧に
撮影地変えの発想を求めるのは酷ってモノだろう

でも、もう二度と撮れぬ風景鉄道情景となった今では・・、例え撮影地の場所を変える発想を出す事が当時二十歳のガキには酷な要求であったとしても、あの時に発想の転換が出来なかった事やもっと多く撮っておくべきだった・・という思いが悔いとして頭にこびり着いて離れないのである。


敷き詰められた流氷原を前景にして
この時の発想の転換はこれが限界だった

それと共に鉄道情景だけではなく、沙留の流氷に埋もれた小さな波止場風景やカニ漁の捕獲カゴを吊り下げるなど海際の駅の雰囲気を漂わせた沙留駅などもしっかりと撮っておくべきだったと強く思う。


流氷の駅・沙留も
今や「思い出お~い」に

でも、そういった悔いを全て寄せ集めても、この素晴らしき流氷鉄道情景を撮る事ができた・・という幸運の大きさに比べたら微々たるモノだとも思う。 それは「撮れて良かった」と、心より思う鉄道情景だから・・である。


撮っても撮っても撮り足りない
それはこの時が最後のチャンスだったから

  ※ 詳細はメインサイトより、架空旅行『オホーツク縦貫鉄道の夢・名寄本線編』を御覧下さい。




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No title * by タワマンぶらり旅
このお写真は何年の物ですか?
ひょっとして、私も見ていたかも・・・

No title * by 風来梨
タワマンぶらり旅さん、こんばんは。

流氷が接岸したのは、この路線の廃止の1年前の'88年でした。
そして、廃止年の'89年は暖冬で流氷は一切接岸しませんでしたので、'88年が最後の流氷列車情景となりました。

最後の流氷列車情景を撮れたのは、真に幸運な事でした。

No title * by roba
言葉が無いですね。

今からでも守れるものは守りたい。
日本人はしらないうちに大切なものをたくさん無くして来たんだな~と思います。

No title * by 風来梨
robaさん、こんばんは。

大切なモノっていうのは知らず知らずのうちにポロポロと落とし・・、あるいはその時の不要の判断で簡単に切り捨てる事ができるが、時を経てその重要さに気づいた時に激しく後悔するモノなんですよね。

自然環境、鉄道風景、フイルムに代表されるアナログ映像、便利にかまけて鍛える事を放棄して落とす体力、便利なデジタル機器の使用によって失う分析力や判断力 etc・・。

私も気づけば、多くのモノを落して、その重大さに気づいて後悔しましたね。 でも、若さと同じで例え失う定めであっても、鍛える事で先送りする事もできます。

だから私も、少しでも守らねばならぬものは守り、維持できるものは維持していこう・・、そして楽しんでいこうって思ってます。

No title * by gre*n*hub*32
年とともに時代の波《少子化、モータリゼーション=車社会化)に翻弄されて、・・・歯が抜けるようにして消えていくローカル線!、やるせないです!。

流氷はカナダ大西洋岸州では毎年みられます。
ご存知だとは思いますが!〜、かのタイタニック号はニューファンドランド州沖を浮遊していた超弩級の流氷と衝突して史上最大の海難事故が起きました。

アップされている写真は貴重なもので鉄道博物館に、・・・日本の鉄道原風景と展示されるべき!と私は思います。

☆ナイス!〜

No title * by 風来梨
gre*n*hub*32さん、こんばんは。

鉄道は一度剥がすと、ほぼ二度と戻りません。
だから、一時の採算の成否で日本の財産を放棄してしまったら、後々後悔する事になると思います。

日本の財産・鉄道を採算だけ問うて棄てたツケ・・ それが、取り返しの着かない過疎化と地方の国土の退廃ですね。

あの頃夢中になった鉄道情景に共感頂き、とても 嬉しいです。 願わくば、もう一度撮りたいですね。

コメント






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No title

このお写真は何年の物ですか?
ひょっとして、私も見ていたかも・・・
2016-02-07 * タワマンぶらり旅 [ 編集 ]

No title

タワマンぶらり旅さん、こんばんは。

流氷が接岸したのは、この路線の廃止の1年前の'88年でした。
そして、廃止年の'89年は暖冬で流氷は一切接岸しませんでしたので、'88年が最後の流氷列車情景となりました。

最後の流氷列車情景を撮れたのは、真に幸運な事でした。
2016-02-07 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

言葉が無いですね。

今からでも守れるものは守りたい。
日本人はしらないうちに大切なものをたくさん無くして来たんだな~と思います。
2016-02-07 * roba [ 編集 ]

No title

robaさん、こんばんは。

大切なモノっていうのは知らず知らずのうちにポロポロと落とし・・、あるいはその時の不要の判断で簡単に切り捨てる事ができるが、時を経てその重要さに気づいた時に激しく後悔するモノなんですよね。

自然環境、鉄道風景、フイルムに代表されるアナログ映像、便利にかまけて鍛える事を放棄して落とす体力、便利なデジタル機器の使用によって失う分析力や判断力 etc・・。

私も気づけば、多くのモノを落して、その重大さに気づいて後悔しましたね。 でも、若さと同じで例え失う定めであっても、鍛える事で先送りする事もできます。

だから私も、少しでも守らねばならぬものは守り、維持できるものは維持していこう・・、そして楽しんでいこうって思ってます。
2016-02-07 * 風来梨 [ 編集 ]

No title

年とともに時代の波《少子化、モータリゼーション=車社会化)に翻弄されて、・・・歯が抜けるようにして消えていくローカル線!、やるせないです!。

流氷はカナダ大西洋岸州では毎年みられます。
ご存知だとは思いますが!〜、かのタイタニック号はニューファンドランド州沖を浮遊していた超弩級の流氷と衝突して史上最大の海難事故が起きました。

アップされている写真は貴重なもので鉄道博物館に、・・・日本の鉄道原風景と展示されるべき!と私は思います。

☆ナイス!〜
2016-02-08 * gre*n*hub*32 [ 編集 ]

No title

gre*n*hub*32さん、こんばんは。

鉄道は一度剥がすと、ほぼ二度と戻りません。
だから、一時の採算の成否で日本の財産を放棄してしまったら、後々後悔する事になると思います。

日本の財産・鉄道を採算だけ問うて棄てたツケ・・ それが、取り返しの着かない過疎化と地方の国土の退廃ですね。

あの頃夢中になった鉄道情景に共感頂き、とても 嬉しいです。 願わくば、もう一度撮りたいですね。
2016-02-08 * 風来梨 [ 編集 ]