2020-02-11 (Tue)✎
路線の思い出 第365回 只見線・田子倉駅 冬 〔福島県〕
かつては雪に埋もれて
立ち寄る事すらできない駅が
通年営業していたのだ
《路線データ》
営業区間と営業キロ 輸送密度 / 営業係数(’15)
会津若松~小出 135.2km 304 / 258
運行本数(’20)
会津若松~会津川口 6往復 ,会津若松~会津坂下 1往復
会津川口~只見 バス 下り6便・上り7便 、只見~小出 3往復 、小出~大白川 1往復
※ ’11年7月の豪雨災害により会津川口~只見の区間が不通となり、
この区間は現在バス代行輸送となっています。
今は駅廃止となり駅名標も刳り貫かれて
ただのシェルターとなってしまったが
田子倉駅(たごくらえき)は、福島県南会津郡只見町大字田子倉字後山にあったJR東日本・只見線の駅(廃駅)である。 線路の北側に棒線ホーム1面1線を有する会津坂下駅管理の無人駅で、大白川側の六十里越トンネルと只見側の田子倉トンネルの間で少しだけ外に出る地点に位置していた。
駅ホームは南側の田子倉湖と北側の崖に挟まれた低い場所にあり、スノーシェッドに覆われていた。
駅舎内はホームの中ほどにある階段と砂利の撒かれた通路のみで、これを昇ると駅舎を通って崖上の国道に出る事ができた。
駅自体がスノージェットの田子倉駅内部
※ ウィキペディア画像を拝借
只見~大白川の営業開始(’71年)と同時に開設された通年営業の一般駅で、’87年11月まで運行された冬季運休の急行【奥只見】の停車駅でもあったが、’01年12月のダイヤ改正で冬季(12~3月)休業の臨時駅に格下げられる。 臨時駅ではあったが、一般駅からの格下げの経緯から営業キロと換算キロの設定があった。
’11年夏の豪雨災害で只見線の只見~大白川が不通となり、同時に当駅も休止となる。
その後、1年4ヶ月をかけて同区間が復旧(’12年10月)した後も利用駅が皆無(’04年度の1日あたりの利用者はゼロ)とされた当駅には停車せず、引き続き休止扱いとなる。 休止扱いのまま、翌年3月のダイヤ改正で当駅は廃止となった。
当駅の廃止に伴って新潟・仙台支社の管轄境界駅は只見駅に移されたが、駅の大白川側にある六十里越トンネル内が、引き続き仙台・新潟支社の境界となっている。
雪に閉ざされ閉鎖中の
国道252号線を『絵』にしてみた
この駅のある地域は我が国でも最大級の豪雪地帯で、冬季は併走する国道252号線さえも、六十里越を含む県境区間が除雪不能で完全に雪に閉ざされる。 臨時駅に格下げられる’01年以前も、冬季は併走する国道さえも上記の如く冬季閉鎖となっていたので、当駅も外への脱出が困難になるほどに雪に埋もれて、利用者は氷結した田子倉湖へのワカサギ釣り愛好者のみという究極の秘境駅となっていた。
田子倉湖畔にあり、周囲数kmには商店はおろか自動販売機すら存在しない。
駅周辺には浅草岳や鬼が面山などの奥只見の山々への登山口が点在するのみで、民家は一切ない。
かつては登山者向けに
テント宿泊も可能な休憩舎があった
駅にはトイレがなかったが、大白川方向へ少し歩くと浅草岳の登山口と只見町が登山基地として設けた田子倉無料休憩所があって、その中にトイレがあった(現在は登山口にあった旧休憩舎は取り壊されて、田子倉湖観賞の観光客の為に100台ほどの駐車場が確保され、その前に多目的トイレの着いた休憩舎に建て替えられている)。
登山者向けでなく
車でやって来る観光客の為に
建て替えられた田子倉無料休憩所
建物内部は多目的トイレや展示パネルなど
車で来る一般観光客を意識して建てられている
※ 上下2枚とも只見町のウェブページより
駅前を通る国道252号は、上記の如く超豪雪地帯で除雪が困難の為にほぼ半年間は不通となり、春先の4月や晩秋の11月などは当駅周辺へのアクセス手段が只見線の列車のみとなっていたが、只見線の列車も冬季は当駅を通過していた。
だが、秋の紅葉シーズンなどは田子倉湖の紅葉目当てに多数の観光客が来訪する為に、列車到着時の駅周辺はかなりの混雑を見せていた。 往復の列車をうまく組み合わせれば数時間の滞在が可能である為に、この駅を利用したツアーも企画されていた。
どうして雪に埋もれて脱出が困難な
この駅が営業していたかというと
雪に埋もれた駅・田子倉駅
いつしか冬季閉鎖の臨時駅に格下げられ、’13年春のダイヤ改正で「利用客皆無」として廃駅となった田子倉駅。 だが、この駅はかつて、只見線の花形列車の急行【奥只見】も停車する急行停車駅だったのだ。 もちろん、冬の積雪で国道252号が閉鎖される冬季の半年間もキッチリ旅客営業していて、不思議にも乗降客がいたのである。
氷結した田子倉湖へ
ワカサギ釣りをする釣り好きや
※ グーグル画像を拝借
その乗客の層は、氷結した田子倉湖に穴を掘ってワカサギ釣りに勤しむ釣り人や、氷結した湖からワカサギやシラウオなどの冬の味覚を仕入れる旅館などの賄い職人などである。
自身で釣って自身で捌く
旅館の仕入れ業者の為だった
※ グーグル画像を拝借
ワテもこの項目を書く最中に調べて知った事だが、イワナやヤマメといった渓流の魚も、冬は餌を求めて沢から氷結した湖の方に向かって下り、そこで越冬するそうである。 そして、その越冬イワナなどの冬の沢魚は、時期が時期だけに稀少価値があって高値で捌けた・・との事である。
実際にワテがこの駅に降りた時も2~3人の釣り竿を持った乗客がいて、その乗客全てが雪で埋まって外に出られない田子倉駅で降りて、シェルターの脇から掘られた踏み跡を辿って氷結した湖へ出張っていったのである。
この立ち位置は
前人未到のアングルだと思うよ
:
だって氷結した湖の上だもの
ぢ・つ・わ・・、ワテ、この釣り師達の後を着いていって、「浅草岳を湖面から望む前人未撮のアングル」で撮ったんだよね。 でも、それで気を大きくしてしまって、浅草岳を望む定番のアングルでは撮りそびれる『オチャメ』をカマしたんだけど。
左の国道252号の橋の上の定番撮影場所は
完全に忘れて意識してなかったよ
:
でもコレも氷結した湖の上という
前人未撮のアングルでプレミアモノだよ
しかし、当時は降りる客がいた・・としても、列車ダイヤは今とさほど変わらずの日に4往復で、早朝(現在は朝の大白川始発列車が只見始発だった)と朝の2往復、昼過ぎと夕方前に1往復、夜に1往復の4往復しかなく、朝8~9時過ぎの1往復を撮ると途端にヒマとなるのだ。 なぜなら、帰りの小出行の列車は今と同じく15時半過ぎで、この1往復を撮ると6時間半に及ぶヒマとなるのだ。
朝の折り返し便は
ヤマに霧がかかって今イチだけど
本来なら掲載見合わせの駄作だけど
撮った場所と時期ゆえにプレミアが着いてます
もちろん、雪の原野に埋もれた駅の駅前にコンビニなんぞある訳もなく、水も雪を火で解かして調達するような所である。 それはもう、駅の外に出るにも駅舎を埋める雪の壁を這い上がって出ないとならないなど、駅のシェルターの中に閉じ込められて身動きが取れない究極のヒマなのだ。 ちなみに、この雪に埋もれた田子倉で朝の8~9時の1往復を撮るなら、この駅での駅寝もセットで実行しないと苦しいし。
次の10時前の便(この頃は日に4往復あった)は
さすがにアングルを変えて
オーソドックスに撮ったりしたが
この後16時前まで6時間
雪に埋もれた駅に閉じ込めとなる
そこで、高校部活で培った『奇跡の体力』を保持するハイティーン(死語)の真っただ中であった当時のワテは、駅舎を埋める雪の壁を這い上がって外に出て目にした田子倉湖の宝石のような青い輝きに絆されて、大胆不敵にも「あの青く輝く所まで歩いていこう」と、雪に埋もれた国道をラッセルで歩き出したのである。
雪に埋もれた駅舎から這い上がり目にした
宝石のような青き輝き
その青き輝きに魅せられて
「あの青く輝く所まで歩いていこう」と
おバカな事をしでかす若き日のワテ
幸い、冬季閉鎖中の間に雪崩や落雪から道を守るべく行程の半分近くに設置されたスノーシェードが多々あり、その中は雪もなく「ほぼ夏道」として歩けるのである。 その当時保持していた『奇跡の体力』も相俟って、思った以上に速い・・というか驚異的な2時間半で田子倉ダムの堰堤に着く事ができたよ。
苦難の末に着いたダムサイトで魅せられた『蒼』は
吸い込まれるような深い『蒼』だった
ダム展望台への道も積雪によって閉鎖中で、誰もいない『秘境中の秘境』であるダムの堰堤から目にした田子倉湖は、田子倉駅で魅せられた明るいライトブルーの輝きではなく、吸い込まれるような深い蒼だったの憶えている。
※ 続きは『日本百景 冬 第417回 田子倉湖・冬情景にて』
Yahoo!ブログからFC2に転送した記事は
リンクとかがメチャクチャで
文字も読み辛い最少フォントなんだよね
だから1つづつ文体のミディアム化と
リンク修正をしていってるけど
敵は1000記事以上あるので
終えるまで恐らく1年はかかるかと
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Re: No Subject * by 風来梨
hanagonさん、こんばんは。
> 今となっては撮影することが出来ないアングルがいっぱいですね。
> これは本当にお宝ものだと思います。
> 氷結した湖上からの浅草岳なんて世界に一枚きりかも?
この写真はプレミアな写真なものの、写真のデキが『残念』でして、永らくお蔵入りしてスキャンもしておりませんでした。
でも、メインページの撮影旅行記で『奥会津・大白川の四季』というのを作製した時に陽の目を見る事になった数奇な運命の『迷作』です。
それもこれも、フイルム写真でリバーサル原版を保持していたからですね。 フイルムを使い続けての幸運が、またここに一つ。
> 今となっては撮影することが出来ないアングルがいっぱいですね。
> これは本当にお宝ものだと思います。
> 氷結した湖上からの浅草岳なんて世界に一枚きりかも?
この写真はプレミアな写真なものの、写真のデキが『残念』でして、永らくお蔵入りしてスキャンもしておりませんでした。
でも、メインページの撮影旅行記で『奥会津・大白川の四季』というのを作製した時に陽の目を見る事になった数奇な運命の『迷作』です。
それもこれも、フイルム写真でリバーサル原版を保持していたからですね。 フイルムを使い続けての幸運が、またここに一つ。
これは本当にお宝ものだと思います。
氷結した湖上からの浅草岳なんて世界に一枚きりかも?